竹橋の近代美術館。明治から現代までの、主に日本の画家たちの作品ががっつり見られる常設展が好きなので、必ず行きます。
お濠を望む「眺めの良い部屋」。
収蔵品がいっぱいあるので、毎年展示の内容が変わる。
前回行ったときにサイパン玉砕を描いた藤田嗣治の戦争画に衝撃を受けたので、ぜひ今回も見たいと思っていたら、今年展示されていたのは違う絵でした。
『哈爾哈(ハルハ)河畔之戦闘』。ノモンハンの絵。
ノモンハンで戦闘にたずさわった将校から、部下の鎮魂のために描いてほしいと頼まれたそうで、実はもう1枚、日本兵の遺体が累々と積み重なる悲惨な絵もあったのだけれどそれはどこかになくなってしまったと説明があった。
この絵は、南洋の玉砕を描いた絵とは違って、ぱっと見戦争画とは思えないようなのどかな色彩。日本兵がロシア軍の戦車に向かって攻撃をかけている場面なのだけど、画面はとても静か。
薄いブルーの空に綺麗な雲、地平線まで続く柔らかな草原。そこに走り回る、地面の色の兵隊たちと、同じ色の戦車。
音が消された映画の画面を見ているような感じ。遠くで多くの戦車が煙を上げているけれど、全体に明るいこの野原そのものが、もうこの世のものではないようだ。
そして画面の真ん中に描かれているのは、草原に咲く花。
これが鎮魂のための絵だという説明には納得。
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