2016/07/14

三宅一生とルノワール


広重展の翌日、大雨の中をまた六本木へ。こんどは国立新美術館。
なぜかGoogle Mapに騙され10分も余計に歩くはめに。しかも強風で傘がおちょこになり、ランチタイムで激混みのコンビニでビニ傘を買い、と、無駄に障害の多いRPGのような困難に次々みまわれた六本木。

でも梅雨の最中であったのにもかかわらず、この日とそのほか数日をのぞき、あまり悪天には見舞われませんでした。昔からお天気と駐車場には恵まれている、けっこう強力な晴れ女です。


故・黒川紀章さんのうねうね建築。ケヤキがいい具合に育ってきてます。
この波打つガラスの壁は雨の日に見ると風情がある。このビル、最初見たときにはあまり好きじゃなかったけど、こうやって雨や緑に包まれていると有機的なキャラクターがきわ立って素敵です。


この日は、これも最終日にギリギリ間に合った「三宅一生の仕事」展へ。
ロボットのような巨大びよんびよんがロビーにも吊るされていました。


展覧会はとてもおもしろかった!民族衣装を立体的にしたような初期の型破りなコスチュームから、シグネチャーのプリーツ加工の服、さらには最近の3Dプリンターなどを使った作品まで。プリーツを作るマシンも置かれていて実演が見られました。

会場にプリーツを着て来ている方もたくさんいました。来ている人の服装ウォッチも楽しかった。ふつうの美術展クラウドとは全然違って、文化服装学院ふうの若者たちや、スキのないファッション誌編集者ふう、60代+の年季のはいったオシャレおば様たちも。

うちの息子はイッセイ・ミヤケを初めて発見してびっくりしたみたいで、かなり時間をかけてよく見てました。 畑ちがいとはいえデザインの勉強をしててイッセイ・ミヤケを知らないってダメすぎるよ息子よ。


5階分くらい吹き抜けのアトリウム、1階はカフェテリア、原子力発電所の煙突をさかさにしたみたいなストラクチャーの上にあるのはお高いカフェ。

1階カフェで休憩してから、同じ建物で開催中のルノワール展もみて帰りました。


有名作品『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』が展覧されてました。

これこれ。

この人の絵は本物を見ないと意味がないのでこの機会に見ておくべきだと学生料金1200円も払ってチケットを購入してさしあげたけど、息子はほとんど興味を示さず、三宅一生の3分の1の時間で出てきてしまった。

わたしは別にルノワールのファンではない。ボワボワした変な絵だと思うものも多い。
 『ピアノを弾く少女たち』なんかも、いくつもバージョンがあったらしくて、今回展覧されてたのはなんだかやっつけ仕事で適当に描いたようなもののように見えて全然感心しなかった。

でも会場の最後にあった最晩年の作品だという『浴女たち』は最高でした。


ふたりの見事な4段腹の女が、なんとも曖昧な空間に寝そべっている。奥のほうには水浴びをしている女たちがいるけど、どうも尋常な空間のようではない。右手前にあるグルグルは、花なんだか模様なんだかもうわからない。
空から遠景から人物から地面まで、なにもかも均一に融け合って、つじつまの合わないボワボワした空間にこの浴女たちは気持ちよさそうにのびのびと存在している。

なんだか大変ありがたいものを見たような気がして、涙が出てきました。
 この展覧会のキャッチコピーのとおり、ルノワールの生涯は「幸福を祝うため」の色彩をキャンバスに塗ることに捧げられていたわけですが、老年にいたり、もうすべてに開き直って到達した境地であるらしいこの絵には、暴走すれすれの幸せがアクセル全開で表現されているように思いました。

多分少し見る位置を変えたら気持ちが悪いくらいの幸福。
この絵は少し時間を置いてもう一度見てみたい。

この絵最高、というと息子は怪訝な顔をして「フウン」とにやにや笑っている。
21歳のワカゾウにはわかるまい。たぶん年取ってきて少し脳がやられてきてから初めてわかるのよ。


東京には幸せそうな顔をして歩いている人があまりいない。
だからたくさんの人がルノワールを見に行くのでしょうか。

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