2017/07/04

雨のニューミュージアム


マグナムの展覧会を見たあと、まだ雨が降る中、お向かいのNew Museumへ。
ここは妹島和世さん&西沢立衛さんのユニットSANAAの設計によるビルディング。


フロアをつなぐ階段の途中に窓があって、コンクリの壁に自然光がきれい。

トイレのタイル。

1階のカフェ。

この美術館は同時代のアーティストに絞って紹介していて、この時はフロアごとに分かれて3人の作家さんの展覧会が開催されてました。


トップフロアはイギリスの作家Lynette Yiadom-Boakyeさん。等身大より大きなポートレイト。


黒人モデルのオーバーサイズの肖像というと去年SAMにみにいったKehinde Wileyさんの作品を思い出すけど、こちらはまったくトーンの違う抑えた色彩のスタイリッシュな肖像画。
この作家さんは、1977年生まれのガーナ系英国人女性だそうです。


真ん中のフロアはカリフォルニアのアーティスト、Kaari Upsonさん。1972年生まれ。
多作な人らしく、素材も手法もいろいろ。


コストコ風の棚にマネキンが詰め込まれてるインスタレーション。

そのそばをおんなじようなシャツを着た人が偶然歩いててびっくり。この人はインスタレーションの一部ではありませんでしたw。

畳3枚分くらいのドローイングが圧巻。



そしてその下の階は、イタリアのCarol Ramaさんの作品150点を集めた回顧展。
トリノ出身で、1912年生まれ、2015年に亡くなった女性画家。そういえばこの時の展示は上から下までみんな女性アーティストだった。


キャロル・ラマさんは独学でアートを学んだという人。正統派の芸術家ではない「アウトサイダー」のカテゴリーにはいるのかもしれない。「ほとんど顧みられていなかったが、そのきわめて予見的な作品は多くのアーティストに影響を与え、カルト的な存在になっている」そうです。

子ども時代、母が精神を病んでいて、大きく欠落した家庭で育った、自分はそれが自然なのだと思っていた、という。

初期の「bodies without organs(臓器のない身体)」というテーマの作品には、というよりも臓器ばかりでできているような身体ばかりが出て来る。
ペニスが何本もある生きもの、蛇が生えだした身体、盛大な女性器。


「性器はスキャンダラスなものではない。その正反対です。私は自分が本来そうである以上にリアリストでありたいと思うから、性器を自分の絵に入れるのです。それは静物なのです。それは、私の口から聴こえるささやき声の忠言のようなものです。でも、私の絵では口をカモフラージュすることが多いのです。口こそ、本当に欲望をあらわすものだから」
というキャロル・ラマさんの言葉が会場に貼られてた。

少し前に日本人アーティストの女性器をかたどった作品が話題になっていて、わたしはその作品は見てないけど、なんだか随分大仰な話をしているのう、という感じを受けた。

ラマさんの作品は、ほんとうになんというか純粋なオブセッションというのはこういうものなのだという見本のようなものばかりで、ひとつもこれみよがしなところがなく、ものすごく切実だった。


このマチス風の赤い壁紙がある画面にも、分断された割れ目からわけのわからないケモノが出てきてて超怖い。

アートは人を巻き込むオブセッション。おのずから毒のあるオブセッションには惹きつけられずにいられないものですよね。それも、わざわざ求めるのではなくて、もとからそこにある毒。

まったく作風もテーマも違うのだけど、ラマさんの絵をみているとなぜだか青島千穂さんの絵を思い出す。どちらも途方もない生命力があって、正直で、可憐で、絶望的に激しいなにかにとりつかれている。


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