2017/07/11
巨大すぎる新興成金国の駅
ニューヨークのグランドセントラル駅。
広っ。
隣接する地下鉄の駅から出てきて、このとほうもなく広いコンコースにとにかく圧倒されてしまいました。
このムダな広さ。宮殿のようなきらびやかさ。
近郊へ行く列車が発着する現役の駅だけど、ホームは地下にあるので、このコンコースは駅だかなんだかわからない不思議な巨大空間。
いろんな映画でも見たはずなんだけど「あー映画で見た見た!」とはならない、既視感を感じようのない広さ。
とにかく広さとむやみな天井の高さにおされて「うわー」「すげー」しか言えなくなる。
ティファニーブルーの天井に星座が描かれている。こんなディテールも全然知りませんでした。
この駅はボザール様式の代表作なんだそうだ。落成は1913年。
『ダウントン・アビー』シリーズ1の時代ですよ!タイタニックが沈没した翌年。
第一次世界大戦が始まる前年。
ドラマチックな時代だ。
ボザール様式というのは、パリの建築学校École des Beaux-Artで学んで帰ってきたアメリカの建築家たちとその弟子たちがアメリカのあちこちに建てた、新古典様式のきらびやかで壮麗で装飾の多い、神殿チックな建物。
シアトルではせいうちビルとかがボザール様式なのだそうだけど、うーん、やっぱりニューヨークの建物はスケールが違う。
なぜこんなにでかいのだ。
『ダウントン・アビー』にも克明に描かれてましたが、ヨーロッパ諸国が大戦を経てだんだんと傾いていくのに対して、アメリカは飛ぶ鳥落とす勢いでのし上がっていく、ちょうどその勢いがつきはじめたのが1913年頃だったといっていいんでしょう。
まだ当時、文化の中心はヨーロッパ。
マンハッタンの上流階級の方々は、あからさまに新興国の成金をバカにするヨーロッパの貴族な人々に若干の引け目を感じつつ、ふん実力はこっちの方が上だぜバカヤロー、これからはアメリカの時代だ、と思っていたのではないでしょうか。
ボザール様式のこのムダに巨大な駅にも、マンハッタンにあるそのほかの巨大建築にも、そういう新興国アメリカのヨーロッパに対抗する強烈な自意識がいっぱいな気がする。
『ダウントン・アビー』の見すぎかしら。
シーズン3くらいで出てきたシャーリー・マクレーン演ずる強烈なママを思い出す。
マギー・スミスのバイオレットおば様との毒舌対決が素敵だったなー。
そしてこのボザールな大空間の中二階にはなんとアポーストアがあった!
前知識いっさいなしで旅行をすると、さくさくと効率的に観光地をまわったりはできないし致命的な見落としをしたりするけど(カッツ・デリカテッセンのパストラミを食べ損ねたりねー)、新鮮なびっくりがあって楽しいです。
オープンは2011年、当時は反感かったりもしてたようですが、待ち合わせ場所には最適だよね。
20世紀初頭のアメリカの野心あふれる駅にあまりにも自然に溶け込んでいて感動。
でもここ、ジーニアスバーだけじゃなくてカフェにしたらいいのに。
シアトルだったら絶対にコンコースにエスプレッソスタンドが2つはできると思う。
このシャンデリアがいいなー。これは最近のものなのか、モダンな雰囲気だけど出しゃばらず、派手すぎず、適度に華麗でボザール空間にすごく良く合ってる。
(追記:これは1913年のオリジナルでした!当時の最新テクノロジーを駆使したむきだしの電球でいっぱいのマーベラスな駅だったそうです)
参照サイト:Everything You Never Knew You Wanted To Know About Grand Central Terminal
デコレーションがっつりのボザールなファサード。
ティファニー製の時計が有名なのだそうだけど、もちろん知らなかった。
グランドセントラル駅のすぐうしろには1960年代のインターナショナルスタイルのメットライフビル。
背景にはアールデコの代表作クライスラービル。
いろんな時代の様式のサンプルを集めたみたいな一画。
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アポーストアとは??と思ったら、PPAPのアポーですね!(って、暗号のような^^!)
返信削除うん。シアトルだったらきっとカフェが出来てますね。
私もあのシャンデリア、素敵!と思いました。
家につけたら一部屋がそれで埋まりそうですが・・・^^;。
おれんぢ猫さん、こんにちはー!そうですアポーペン!
削除あの照明器具、あとの時代のかと思ったらオリジナルでした。
うん、うちのリビングに吊るしたら、通行できなくなりますね…。