キャピトル・ヒルに先週開店したばかりのスターバックスの新フラッグシップ店
Starbucks Reserve Roastery & Tasting Room に行ってきました。
パイク・ストリートの角に面した大きな建物。1500平方フィートだから約140平米で、ちょっとしたコンサートホールくらいの広さです。以前は画材屋さんが入っていた(もともとは1920年に建てられた自動車ディーラーでした)、クラシックな美しいビル。
よく見ると、建物の正面にはスタバのトレードマークのマーメイドじゃなくてサイレンのレリーフが。
外装のマテリアルからして、ちょっとお高めのレストランくらいな高級感を漂わせてます。
お店の外で掃除していたお兄さんも良い素材だった(笑)。黒いエプロンで、お掃除姿がとっても絵になってました。「リザーブ」店は緑のエプロンじゃないんですね。
「新しいスタバが開店したよ」というのは、中学生のおでこにニキビができたよというくらい実にありふれた出来事になってしまいましたが、この店は特別です。
創業40年以上、 全世界に21000店以上があり、スーパーの棚にも飲料を送り出してるスタバが、これからの社運をかけて本気出したお店。
飽和状態なマーケットで洗練されたお客さんを相手に小規模流通の豆「スターバックス・リザーブ」のブランドでハイクラス路線を開拓っていうのが今後目指す方向らしく、このお店はその宣言みたいな新機軸のフラッグシップ店です。
カフェというよりショウルームか、ちょっとしたテーマパークみたいです。
「ロースタリー&テイスティングルーム」というだけに、真ん中にはぴかぴかのロースターが据えられて、「マスター・ロースター」さんがつききりで面倒をみてます。
ノームのような顎ひげをネットでカバーしたこの道14年というロースターさん、くだらない質問にもなんでも嬉しそうに答えてくれました。
「スターバックスの豆って、なんでみんなあんなに深煎りなの?」と聞くと苦笑いして、「いや僕もライトなほうが好きでね、ここの豆はほとんど浅めのローストだよ」といってました。
この店で扱う「スターバックス・リザーブ」ブランドの豆はすべてこのマシンでローストしてるんだそうです。
なんといっても店の中央で強烈な存在感を放っているのが、ロースターの隣にあるこの銅製の「キャスク」。
ローストしたての豆がここに入っています。
そして、このキャスクから銅の気送管を通ってバリスタさんたちが働くバーに挽きたて豆が送られるというしくみ。
『チャーリーとチョコレート工場』 に出てくる、ウィリー・ワンカのあの工場みたいな場所を作りたい、というアイデアがベースになっていると主席デザイナーがプレスリリースで語ってました。
内装の基本は自然素材をたくさん使ったミッドセンチュリー風のシンプルでクリーンで落ち着いた、温かみのあるデザイン。そこにこんな銅を使ったスチームパンク的なデザインの仕掛けが大胆に組み合わされていて、すごく楽しい。
ウンパ・ルンパはいないけど、ノームっぽいロースターさんがいるし、開店当初だけに他のスタッフもみんなハイテンションで超フレンドリー、超親切。ちょっとテーマパークの「キャスト」的な魂が入ってます。
写真撮り忘れたけど、パタパタと字が変わる掲示板(電光掲示板じゃなくて)もあって、ロースターで今どんな豆がローストされてるかという情報が表示されていました。
ロースターの前には豆の量り売りコーナーがあって、挽きたての「リザーブ」の豆を1オンスから買うことができます。
豆のラインナップは毎月替わり、常時6種類くらい。ほとんどシングル・オリジンの豆で、今月はスマトラとコロンビアが2種類、あとどこかアフリカのがあったかな。この店だけの特別ブレンドもあります。
サビ色のクリップで留めたバッグに入れてくれます。
ペストリー類は普通のスタバにあるのと同じみたいですが、サンドイッチとサラダはシアトル地元のレストラン・キング、トム・ダグラス氏のプロデュースらしくて、ちょっと高級感がありました。
行ったのは日曜日の午前中で、飲み物を注文する「メインバー」のレジには長い行列ができてました。レジが1個しかあいてないというのにはちょっとびっくり。
バリスタさんたちは脇目もふらずテキパキと働いてましたが、コーヒーが出てくるまでにかなり待ったのも事実。週末に行ったらかなり待たされるのは必至です。
でもオフィスビルのカフェとは違い、ここに来ているお客さんは皆観光客気分なので、みなニコニコと待っていました。
待ち時間には新聞もございます。さりげなく社長ハワード・シュルツ氏の著書がおいてある。
日経新聞もあった!
そして注文はもちろん、ペーパーカップやプラスチックではなくて、ちゃんとした陶器のマグやグラスで木のトレーに載って出てきます。
淹れ方もドリップ、サイフォン、「クローバー」、フレンチプレス、エスプレッソ、ケミックスから選べます。
スタバでサイフォンが!
3種類試せるセットで、ドリップ式のスマトラとコロンビアとブレンドを頼んでみたら、すごい量だった。4オンスずつくらいかと思ったら12オンスずつポットに入ってやってきた。こんなに飲めないよ!
3人で行って分け合うのをおすすめします。
サイフォンか「クローバー」のほうが良かったかも。とすこし後悔。
豆量り売りバーのあたりはショップになってて、シアトル周辺の陶芸家の作品なんかもありました。
内装の椅子やカーテンなどもほとんど地元で特注したものだそうで、ローカルの職人やアーティストを起用してますよっていうのが強調されてます。
今までのスタバは全世界どこでもハンコで押したようなデザインで統一されてましたが、最近は、とくにこの「リザーブ」豆を出す高級めの店舗は、各地域の地元アーティストを起用した個性的な内装にシフトしてるようです。
店の一画には、シアトルのベルタウンにあるトム・ダグラス氏の人気ピザ店「シリアス・パイ」が入ってます。
このレトロっぽいワイヤー製のペンダントがかわいい。
コンベンション・センターからも坂を上がってすぐの場所だし、パイクプレイス・マーケットからも頑張ってまっすぐ坂を登ってくれば、たぶん徒歩15分くらい。絶好のロケーションです。
シアトルはスタバの地元なのに、グローバル企業のチェーン店でコーヒーなんか飲めるか!けっ!というスノッブなお客さんが多いため、いままではわりあいに遠慮がちで、このキャピトル・ヒルというインデペンデントカフェの牙城では名前を伏せてカフェを作ってみたりいろいろやっていたスターバックスでしたが、ここへ来て満を持して、この目立つ角に正面切って巨大な陣地を構えました。
ローカルのコミュニティに対する腰の低さと繊細さは好感度が高いと思います。
それに何より、どうせやるなら徹底的に、という姿勢がすみずみまで感じられるデザインの店内が圧巻で、とっても楽しい。普段はスタバをバカにしているうちのいっぱしスノッブ気取りの少年19歳も興奮してました。
「ロースタリー」店舗はこれが世界初。
プレスリリースによると、「リザーブ」の高級店を今後5年間で世界各地に100店舗作るほか、2016年にアジアで第2の「ロースタリー」を作る計画もあるそうです。日本かな?中国かな?
パイクプレイスの「1号店」を見たら、こちらも必見ですよ。