2014/12/02
恒星間旅行
このあいだ、『インターステラー』を観てきました。
謎の多い映画だった。
『沈黙の艦隊』を見にいったつもりが途中から『宇宙戦艦ヤマト』になってしまったような。ちょっと違うか。『2001年宇宙の旅』かと思ったら『アルマゲドン』になっちゃったみたいな。
以下ちょっとだけネタバレ。
いまからたぶん数十年後の世界、アメリカ中西部。謎の気候変動かなにかによって、作物がどんどん育たなくなっている。国は農業を守るのに必死で、そのほかの科学、とくに宇宙工学なんかは全部無視。20世紀の月着陸なんかは歴史上存在しなかったことになっている。
才能あるパイロットだった主人公も今は農業に専念中。しかしひょんなことから地下組織と化していたNASAの秘密基地を発見……。
この映画はもしかして、宇宙開発のプロパガンダ映画なのではないだろうか、と思いました。
人類の未来を担保するには宇宙開発に投資しなければなりませんよ、という脅し、といって悪ければ、ケイモウしたいという意図が、ベタベタに感じられる。草の根啓蒙映画か!
NASAもどんどん予算を削られて、地下組織にはならないまでも、有人宇宙開発計画はどんどん先送りになってますし、ほかにお金のいることがいくらでもあるので、政治家的には宇宙はぜんぜん人気のない話題みたいだし。
中西部のとうもろこし畑が舞台で、元パイロットの農夫をカウボーイ的なキャラのマシュー・マコノヒーでという、文句のつけようのないアメリカンな主人公っていうところも、なんかアメリカ人のハートにがっちりアピールしようという下心がみえる、気がする。
「アポロ計画なんてなかったのよ。人類が月に行ったことなんかないの。あれはプロパガンダの作り話よ!」と中学校の教師がいうところはリアルで怖くてよかったです。
あと、ロボットのTARSは可愛かった。サブゼロ冷蔵庫みたいな外見なのに、ロボットっていうだけでどうしてこうかわいいんでしょうね。君、それができるなら最初からそうしなよ、っていう場面もいくつかあったけど。
くらくらしそうな5次元的世界の映像も、万華鏡みたいですごくよかったです。
異世界の惑星の超特大津波も怖くて綺麗。
アン・ハサウェイは素でCGみたいですね。
でも全体に突っ込みどころが満載だし、話の作りもディテールもなんかあちこち、とても雑。オチもちょっとアレはないだろうよ、と思う。うちの少年は感動してましたけど、うーん。
ハードコアじゃないけど、いちおう昔からSFファンです。
『スター・トレック』や『スターウォーズ』は、最初からワームホールとか超光速航法のある世界ってことで安心して楽しめるんだけど、こう片足を地面につけた上にワームホールを使って定石どおりのストーリーで啓蒙されちゃうと、どうもずっこけてしまうんです。
21世紀版『COSMOS』のナビゲーターの人気もの天体物理学者ニール・ドグラース・タイソンさんがこの映画について「インターステラーの9つの謎」というシリーズでツイートしてて、
「この映画に出てきた(ほかの銀河系の)惑星のどれよりも、(地球のすぐ隣の)火星のほうがぜーんぜん安全に見えるんだけど」
と言ってました。たしかに。
何年か前に読んだ『地球生命は自滅するのか』(ピーター・ウォード、2009年。ワシントン大学の教授が書いてる本です)という本がすっごく面白かったんですが、それによると、現在の重力アシストを使った推進技術の限界である秒速30キロメートルでは、たとえば、「手近な」プロキシマ・ケンタウリまでの旅は4万年かかるんだそうです。
4万年!
これまでの人類の歴史よりも、はるかに長い時間がかかっちゃうってこと!
現在の技術では部品の耐久年数は40年と考えられるので、自動修復できる技術が開発されない限り、星間旅行はいまのとこ事実上不可能だそうです。 うーん、寂しい。
やっぱ「ワームホール」でも突然出現するか、モノリスが来て何か教えてくれるか、現在の科学技術を塗り替える発明がされないかぎり、人類は地球で生きるしかないんですね。
ブレイクスルーが生まれるとしたら、それこそ人工知能が人間の能力を超えたあとではないかと思うし、そのときには人間の「個人」というものは今の考え方とは全然違っているんじゃないかという気がします。
だから、この映画が納得できないのはそこなのかも。
ヒトが恒星間(ブラックホールでもいいけど)を旅行するようになることがあって、行って還ってくる存在っていうのがあれば、それは「個人」じゃないのではないかと思う。
時間と3次元を超えたところに意識があるとすれば、それはもっとミツバチとかアリの巣とかに似たものなんじゃないか、なんて気がするんですけどね。
それより納得できないのは、アン・ハサウェイの髪型が長期間の宇宙旅行後も美容院行きたてみたいなこと。
もしかしてアンドロイドなのか!ならば納得!
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アン・ハサウェイの髪は、マネキンのように塗ってあるのです!だから乱れなし!
返信削除というのは、全くのウソですが・・・。
宇宙訪問用に便利ですよね^^。
実は私もSFは昔から好きです。
小学生の頃には、童話よりも星伸一とかあの辺の本をまず読み尽くしていました。
私も時をかけてみたかった!
Tomozoさんも、SFファンなのですね!?
ところでこの映画、あの海ばっか(?)の惑星、怖く無かったですか?
私はあの波の高さにびびりましたー!!
あんなにいつもじゃぶんじゃぶんしてたら、魚もおちおち泳いでいられんなー、と。
(魚はいないか。)
それにあの「塗りかべ」ロボット・・・。
動きがゴリラのようで、閑散としたビルの通路ではたっ!と出会ったら怖いなあ・・・と思いました。
追っかけられたらどうしよう~!!
私のこの映画の印象は、まだ人が良くわかってない事柄を「いいんだよ、詳しい事は考えないで。きっとこんな風になるんだよ。」って、結果をぽいぽい観てる人に投げつけてくる事で、すっきりした映画に作り上げた感がありました。
(>話の作りもディテールもなんかあちこち、とても雑。というご指摘の点ね。)
で、観てる方は「ほー、そうですか。そんな感じだと思っとけば良いわけね。」で、無理やり納得、と。
そう考えると以前観た”Event Horizon”の方には、『未知の恐怖』を押し出してた点で、ずっとおどろおどろしい印象がありました。
あの映画はちょっと怖かったわ。
まあでもきっと、SF系に興味の無い人にとっては、苦痛かな?
最初の”砂嵐ばっかりの世界・・・”というのは、将来そうなるのかも?というような気もしますけどね。
それだけはちょっと信じられるかな?
エンターテイメント!という点では、合格点をあげちゃいましたが。
津波の海は怖かったですねー。
削除でも「ぬりかべ」TARSちゃんは、だんだん見慣れてきたら可愛かったですよー。1台1000ドルくらいで売ってたら購入を検討します。
そんなに速く走れるなら最初から人間じゃなくて波が来る前にお前が行けよ、と思いましたけど。
「Event Horizon」という映画は、観てないです。Netflixにあるかしら。探してみます。
わたしがこの映画で雑だなあ、と思ったのは、衣装とセット。なんだか、少しも新しいものを見せてもらった気がしないんですよね。最後のほうの病院のセットなんかも、これは2010年のテレビドラマ?みたいな、見たことある感がありすぎて。新しかったのは津波とTARSちゃんくらいかな。NASAもちっとも地下に潜ってる組織っぽくなくて、ガックリしちゃいました。そういう見慣れた風景の演出が狙いだったのかもしれないんですけど。映画って嘘なりの説得力をもっててほしいんですよ。全然リアリティのない話でも、映像でねじふせてほしい。
なんだか予定通りのオチでちぇーっって思って帰ってきたんだけど、本格SF?とおもって、ちょっと期待しすぎちゃったのかもしれません。
公開されたら、ものすごく長いコメントでした・・・(汗)。
返信削除すみません!
いえいえとんでもない。こちらこそダラダラと長い記事を書き散らしてますのに。いつもお立ち寄りくださって、ありがとうございます♪
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