2022/02/02

柳の木とソフィーの呪い


 ある日の朝、窓のそとの景色。ロビンかな、ブルージェイかな。

寝室の窓のそとに、路地をはさんでヤナギの巨木があって、アライグマやカラスやリスや、ありとあらゆる小鳥たちがやってくるのです。

以前この家に住んでた一家が去年コロナ渦中で引っ越してしまい、デベロッパーが裏庭にもう1軒別の家をたてるそうなので、この樹も伐られてしまうのかな。

朝晩、この窓から見えるこのワシャワシャした枝が、ほんとうに心の癒やしなのですけれど。

ヤナギの木にはキャラクターがあります。

日本の古い物語にも、柳の木が人になるお話がありましたよね。

 


 『ハウルの動く城』の話つづきもうすこし。(全面ネタばれです。)

2004年公開。

ハワイにいた時で、映画館で見たような記憶がありますが、ストーリーはよく覚えてなかった。

今回見直してみて、ああ、いい話だなあ、としみじみ思いました。

個人的に、ほんとにタイムリーなお話でした。

 


 
声の出演者がすばらしい。

 主人公ソフィーちゃんは、戦後の明るい少女、「下町の太陽」、倍賞千恵子さんそのもの。
意思の強そうな顔が似てる! 倍賞さんをイメージしたキャラなのでしょうね。

60代で少女の声ができる人が、ほかにいるだろうか。永遠の少女。

 


 

荒れ地の魔女の美輪明宏さんも、絶対にほかにありえないキャスティング。

このひとほど声に特徴のあるひとも、珍しいのではないかと思います。

魔力を失って、ただのおばあちゃんになってしまったあとの、毒気が抜けたものの生命力とワガママは旺盛なありかたもすごくよくって、なんとなしに『贅沢貧乏』の森茉莉さんをちょっと思わせる、かわいらしさ。(お二人は同時代で親しく、いろいろあったようですが)



ソフィーちゃんのすごいところは、呪いがかかってしまったことに、まあ当然驚くものの、泣いたり叫んだり嘆き悲しんだりしてないで、できることを考えて、すぐに行動しはじめることですね。

 


 

逃げるのではなく、問題解決にむかって、淡々と、乗り込んでいく。

そしてその途上で、必然的に出会う人たちに、ふつうに、親切にしてあげる。

 


 

自分に呪いをかけた魔女にも、「がんばりなさいよ!」って応援してしまう。

敵のスパイも、自分を呪った人も、悪魔も、みんなみんなフラットに、家族と、というより自分と同じように扱ってしまう。

これってふつうの社会では異常なことだし、さらっとできる人はあんまりいないですよね。

でもたまにいるし、そういう人は、人混みにいても、ピカーっと光っている。

たぶん「菩薩」とか「天使」っていう存在に似てる人たちです。

だからみんな、ソフィーが大好きになっちゃうんですね、彼女から自然な愛があふれているからです。


『風の谷のナウシカ』の(映画ではなく原作のマンガ版の)最後のほうのナウシカと、ソフィーちゃんの行動は、まったく同じです。

敵だった魔王も、破壊的な兵器の巨神兵も、自分の家族と同様に抱きしめてしまう。本気でかかわってしまう。




そうせざるを得ない。ナウシカにはほかのあり方はないのです。

だからその愛にうながされて、魔王も成仏してしまう。ナウシカはまさに「菩薩」。

 

 


 

ソフィーちゃんは、呪いをかけられたからこそ、ゆいいつ解決策がありそうな荒れ地を目指し、 冒険をはじめて、自分の物語を新しいレベルで生き始め、結局まわりにいる人を助けることになるんですね、とっても淡々と。

呪いがあったからこそ、自分のいくべきところ、会うべき人に導かれる。


 

という、スピリチュアル・ジャーニーのお話だったんですねー、この映画って!!

呪いを解くために動き始めることによって、初めて、自分が本当になにを求めているのかがわかってくる。

だから呪いはソフィーにとって恵みだった。

そして、ハウルという、とても大きな才能があるけれど、心がアンバランスで、不安が大きくて、怖がっている人をも、助けてしまう。ソフィーちゃんが、自分の心としっかり向き合っていたからです。

だから、ハウルもソフィー自身も、自分を縛っていた恐れから自由になることができた。

最後はハッピーエンド。こんなにいい人ばかりなわけない、うまくいくわけがない、と恐れているときには、やはり何もうまくいかないし、停滞していくものなのでしょう。

 目の前の問題とまっすぐ向き合い、対話をして、手を動かすこと、そして、自分のためだけでなく、目の前の人を惜しみなく助けることを通して、呪いが新しい恵みに変わり、世界を変えていくというお話なのでした。

病や老いや逆境といった、理不尽におもえる「呪い」は、新しい世界へ入っていくためのきっぷ。そう思うと、なにもかもが変わってしまいます。

変わらなければならないのは、自分のほうなのでした。

 

 

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