先週、雨の土曜日にシアトルで開催された
The Work of Byron Katieのワークショップにいってきました。
行ってよかった。
ザ・ワークについては以前にも書きましたが、ワークショップの印象など、長くなると思うので何回かにわけて書きますよ。
えーと、まず開催場所!
The Center of Spiritual Livingって初めて知った、なんだかプログレッシブでニューエイジな場所だった。
ワシントン大学の近く。ユニバーシティ・ヴィレッジの先、チルドレンズホスピタルの少し先、マグナソン公園よりはちょっと手前です。
なんだかさすがにシアトルだなあ、としみじみ思った。
名前から、いったいどんなニューエイジなところかとちょっとドキドキしていたのだけど、垢抜けた小さな大学のような建物で、明るくて、とても感じがよかったです。
ここって教会もあって、宗教じゃないんだけど宗教を超えた礼拝を毎週日曜にやってるのだとランチのときに隣りになった人が教えてくれた。よくわからないけど、面白そうだから今度見に行ってみようー。
立派なオーディトリアムはとても広く、2階もあって1000人くらい収容できそう。
この日は1階はほぼ満席。全部で600名か700名はいたんじゃないかと思う。
そしてやはりオーディエンスは、40代〜60代くらいの中年白人女性が多かった。駐車場から乗った無料シャトルは、私と中年男性一人をのぞいて全員がそのカテゴリーだった。
でも会場に着くと、意外に若い人も一定数いて、あら、と思いました。
若い男の子もちらほらといたし、男性は全体の3割弱くらいの印象。
私が座った席の近くには20代後半くらいのカップルが何組もいて、ぺたーんとくっついていた。
もしかして、結婚する前に行ってきなさいと何かのカウンセラーに奨められたのかも。
ケイティは、ゆったりした心地よさそうなセーターを着て舞台に登場。
スタンディングオベーションで迎えられていました。
真っ白な髪に瞳がキラキラしていて、おっとりした口調で、もう常に楽しそうな笑顔で、ユーモアたっぷりに、きっぱりと話す。
去年だか、かなり大きな病気をしたと聞いたけど、動きはゆっくりだったけれど、本当に楽しそうだった。見ているとこちらも楽しくなってくる。
最初の小一時間は、「このワークショップに来た目的は?」とケイティが語りかけ、それに観客が手を挙げて答え、ケイティがコメントしたり、質問に答える対話で進行。
そのあと、会場入口で配られた「Judge your neighbor worksheet(ひとを批判するワークシート)」に、実際にいま自分が持っている問題をそれぞれが書いてみる。
そして、「何を書いた?」とまたひとしきり、観客との間のやりとりがあり、そのやりとりの中から希望した人がステージの上で実際にケイティと一緒に「ワーク」をする。
(ステージの真ん中にオプラ・ウィンフリーのトークショウに出てくるみたいな長椅子が置いてあって、参加者とケイティはそこに座って「ワーク」を行いました)
という構成で、ランチをはさんで「ワーク」をステージでやったのは全部で5名。
「このワークショップに来た目的は?」という質問には、いろんな答えがあった。
PSTDの治療中で、カウンセラーに奨められたという男性。
夫が数ヶ月前に出ていったという女性。
娘にすすめられて、はるばる中西部から来たというお母さん。
近親者をなくした人。
そして、今はとにかくトランプのことで不安だったり怒りで頭がいっぱい、という人多数。
わたしも「人を批判するワークシート」には、現職大統領についての怒りをぶちまけました。
「わたしはトランプに対してハラをたてている。なぜなら彼がうすらトンカチで人を平気で傷つけ、国のリソースを使って無駄なことばかりしているから」
「わたしはトランプに自分の馬鹿さ加減に気づき恥じ入ってほしい」
など。
会場でもトランプに怒りや不安を持っている人はとても多くて、ステージにあがって「ワーク」をした5人のうちの2人はトランプ問題を抱えている人でした。
ステージに上がって「ワーク」をした1人目は、「兄が妄想に取り憑かれていて、誰かに盗聴されているとかその手のことばかり話すので、つらい」という女性。
2人目は、とても品の良い60代くらいの婦人で、「トランプの大統領令で家族が引き離されたり、空港に留置されたり、苦しんでいる人がいることに我慢がならない、私はトランプに、人の思いが分かる人になってもらいたい」という思いをワーク。
3人目は、数ヶ月前に恋人が自殺してしまったという、20代後半くらいのきれいな女の子。
4人目は、大統領選挙の際に中西部の州に選挙運動を手伝いに行っていたという筋金入りのヒラリー支持者で、 「わたしはトランプ支持者の馬鹿さ加減に我慢がならない。なぜ自分たちの首をしめるような人や政策を支持して国をダメにするのだ」と怒っている50代くらいの女性。
そして最後も50代女性で、「自殺願望が止められない自分が許せない」という人の、これはもう本当にパワフルなワークでした。
性格は変わらないとか人は変わらないという人もいるけど、人は事実、変わります。
「自分」だと思っているものの大部分は、実は考えかたや感じ方の習慣であって、意外とそのことに自分では気づいていないことの方が多い。
世界や自分についてどんなふうに自分に説明しているか、ということが、その人の世界を作っている。誰でもそうですよね?
「ワーク」では、怒りや不安や悲しみを抑圧するのではなくて、ワークシートに短く書き出すという作業を通して、客観的に見られる対象にする。
書き出す作業を通して、悲しみや怒りや不安をしっかり感じる。
そして、4つの質問をそのワークシートに書いた自分の気持ちにぶつけてみる。
「これは本当か?」
「絶対に真実だといいきれるか?」
「この考えを信じることによって、自分に何が起きているか?」
「この考えがなかったら、自分はどんな人になるか?」
という4つの質問で、事実だと思っていた考えを、いままで見ることができなかった場所から眺めてみる。
そして、自分の頭をさっきまで占領していたその考えを、「ひっくり返して」眺めてみる。
その過程で、その人にとって世界がひゅっと変わるのです。
そして、世界が変わると、人は変わります。ていうか変わるほかないのです。
「ワーク」は、あまりにも慣れすぎて自分自身に牡蠣殻のようにくっついてしまっている、だから自分自身と切り離せない一部と思ってしまっている、その思考パターンをこそぎ落とすための、とても役に立つツールです。
自分がとらわれていた思考パターンに気づくとき、人の意識は変わる。
もちろん、生活の中でまたすぐに元に戻す力がはたらくので、何もしなければすぐに葛藤に戻ってしまいます。
だからこれは腹筋運動やラジオ体操のように、毎日やったほうがいいのです。
そうするとだんだん、脳が慣れてきて、「考えを調べてみる」ことが習慣になります。
わたしはかれこれ10年以上、ずっと毎日やってるわけじゃないけどこの方式に慣れてきて、だんだんダウンしている時間が減って、ほんとにラクになってきました。
ずっと毎日取り組んでいればよかったと、この日ワークショップに行って、つくづく思った。
昔、いちばん暗かったときは1日の95%くらい怒っていたり恨んでいたり後悔していたり落ち込んだり自分を責めたり人を責めたりいろいろ大変でした。
本当に自分は時間を無駄に消耗していると思い、どうしてこの無駄な時間をもっと有効に使えないのか、なんて自分はダメなのかと、さらに悩んだ。
いまは、機嫌が悪い時間は1日の5%以下に減ってると思う。切り替えるのが、われながらだいぶうまくなってきた。もちろん調子の悪い日もありますけどね。
自分が苦しんでいるシステムは別に必要のないものだったと気づくことで、急に体が軽くなる。
この日の「ワーク」では、そうやって人が変わる瞬間をたくさん見ることができました。
それは本当にパワフルでした。