2012/03/20

Multiculturalism の死?



Multiculturalism
n. 多文化性、単一社会における異文化の共存 (研究社『リーダース英和辞典』)

10年以上アメリカに住んできて、いろいろな文化が共存するというのは当然の事だと思っていたのだけれど、ヨーロッパではそうではないらしい。

「多文化社会は完全に失敗した」と、2010年にドイツのメルケル首相も宣言してて、かの地では「多文化化」には臨終宣告が出ているらしいのです。知らなかった……

アメリカでいう Multiculturalism とヨーロッパ各国のとは、定義が少し違うようです。


先週提出した学校の期末ペーパーは、Christian Joppke  というUCバークレー出身の教授がイスラム移民のベールに対するヨーロッパ各国(仏・英・独)の反応について書いた『Veil』という本のレビューでした。これに関連していろいろ思ったのでちょっとだけその件について。

ヨーロッパで今移民に対してひどく排他的になってきているのは、実際に移民が増えたのと同時に、失業率が高止まりしている上に、戦後以来の体制だった福祉社会を含む「これまでのウチの国」の存続が危ぶまれているからで、その不安に乗じてウヨク政党がこれまでリベラルで先進的だといわれてた北欧諸国でまで、驚くべき速さで中央に進出してきています。

実際にモスリムの住民による事件も先日あったばかりですが、これまでの伝統と調和を乱す異文化と暴力を持ち込まれた、という感情が高まってるのは事実のようです。


前述のメルケル首相の発言も、念頭におかれているのはモスリムの移民です。

フランスでは2004年に、イスラム教のベールをつけて公立校に登校してはいけない法律ができました。
でもこれは宗教的シンボルを目立つような形で身につけてはいけない、という決まりであって、同時にクリスチャンの十字架も禁止しています。

これは20世紀初頭に政教分離に成功してからずっと長い討論を続けてきたフランスの伝統に基づいた議論であって、「laicite」 という概念に乗ったものだというのです。

子どもが、生まれた背景や伝統や因習から「解放」されて、「進歩的な」中立的な場で学ぶためには、学びの場所に各自の宗教を持ち込んではいけない、という決まりを作るしかない、という考え方。アメリカ的感覚からするとずい分極端で無理があるように見えますが、とにかくスジは通っています。

これは「多文化化」ではなくて、世俗化という一つの価値観を一種聖域化した、「統合」を重視した考え方。「多文化化」とはむしろ反対を行っているとJoppke先生は言ってます。

翻って英国の場合は、実は政教分離が中途半端な形でしか進んでいない。英国では実に3分の1の公立校は教会が経営しているうえ、全部の公立校に「祈りの時間」があるほど、宗教色が強い。教会(英国国教会とカソリック教会)が教育への影響力を手放さなかったために、移民が増えた80年代になって、イスラム教などほかの宗教に対しても 同じ権利を授与しなければならなくなった。結果、イスラムの公立学校もできたし、モスリムの住民はますますモスリムだけの学校に集まるようになってしまい、「お互いに全く無関心な閉鎖的な文化が、たがいに関わりを持たずに並んでいるだけ」な状況になってしまったというのです。

しかも英国というのはその中心に成文化されたミッションや思想がないのが弱点で、多文化化もなし崩し的に進んできたため、移民の側からの「極端なクレーム」にいちいち対応しなくてはならないんだ、と Joppke先生は言います。

だから真に先進的な文明的な国家に移民を統合していくためには、フランスのようなモデルでがっつりした決まりのある社会を提示していくべき、移民はそれに合わせるべき、というのが主張のようです。




フランスのモデルは確かに立派で哲学的な実験ではあるけれど、結局背後にあるのはイスラム原理主義に対する肌で感じる警戒感が主な理由です。

Joppke先生の著作は、イスラム移民全体を原理主義とひとからげに捉えて論じているところと、ベールの禁止令について女性の権利問題として論じてしまっているところがどうにもこうにもイライラしました。
モスリムから転じて反イスラムの闘士となって原理主義者から命を狙われているHarsi Ali のような女性を持ち出してきて、ベールは女性を服従させる封建的シンボルだからいかんといい始めるのは、どうにも看板のすり替えのような気がします。
だってヨーロッパのおじさんたちが本気でモスリムの女性の人権のためだけに憤ってるとは思えません。

 そうではなくて、主に旧植民地だった地域からの移民が本国にたくさん流れ込んで来て、経済格差に不満を持って暮らしていて、それがイスラム原理主義と結びついて社会不安になるから、イスラム主義を助長するようなベールをかぶった女の子たちが増えると困る、だってイスラムって時代錯誤的でヨーロッパの価値観と折り合わないし、てことではないですか。後者の方はつけたし的理由であって主な動機じゃないでしょ?と思ってしまいました。

シアトルにも結構モスリムの人口が多くて、ベール姿の女性はあちこちで目にします。
特にソマリアからの難民はシアトル周辺で3万人くらいいて、全米で第三番目に大きなソマリア人のコミュニティがある地域なのだそうです。

息子の学校にもモスリムの子はかなり多く、ベール女子もよく目にするけれど、ベールが何かの問題になったことはまったくなし。問題になり得るという感覚がたぶんアメリカ人には理解不能だと思います。
あの911のテロのすぐ後でさえ、むしろモスリムの住民に対する嫌がらせを心配する声のほうが多かったように思います。

Multiculturalism はアメリカの自負心の中心近くにあるのだと思います。

というか、アメリカ文化には、奴隷制度の遺産て形ですでに異文化が埋め込まれていたから、いやおうなしにリクツにあった「中間の場所」を確認していかなければならなかった。公民権運動で「アメリカの理想」は何なのかが激しく問われて、その結果、たとえ多くの場合タテマエであっても、きちんと明文化されて、アメリカのアイデンティティになっている。

次々に流れ込む文化を消化できるだけの国土の広さとリソースも、自負心になってると思います。

ソマリア人の子たちはやっぱりあんまり学校でほかのグループと混ざり合わないらしいけど、それこそ「FOB」とか陰で言い合いながらも、アメリカの若者文化には求心力があるんじゃないかと思います。

ていうかそれだけまだ社会に余力があるってことなのか、北西海岸の若者たちは、意外とのんきです。


日曜日、近所のショップの壁に例のOBEYの人のグラフィックがはがれかかってて良い感じだったのでお買い物帰りに息子を前に立たせてみるも、ぜんぜんドラマチックにならず。むしろなんか道に迷った人みたい。ププッ。


Ç…ÇŸÇÒÉuÉçÉOë∫ äCäOê∂äàÉuÉçÉO ÉVÉAÉgÉãÅEÉ|Å[ÉgÉâÉìÉhèÓïÒÇ÷

2012/03/18

バースデー寿司とIKEAのたらこチューブ



先週のことですが、わたしの誕生日に、うちの大家さんのCTちゃん夫妻が近所でお寿司を買って来てくれました。
Ballardにはベーカリーとカフェだけでなく、かなりちゃんとしたおすし屋さんもあるのです。
これはO'shan Sushi からのテイクアウト。(さすがに出前はありません)

ふんわり甘い帆立、ぷちぷちのイクラ、とろりとした甘エビ~。
甘エビの頭をからっと揚げたのもついてきます。

ここは日本? と思ってしまうような、オーセンティックな江戸前寿司でした。


ケーキはわざわざ Bakery Nouveau で調達してくれたチーズケーキ。
CTファミリーは(ご夫婦とビーグル犬の3人家族ですが、イニシャルが全員CT)、ハワイの時からそろそろ6年くらい、ハウスシェアさせてもらっている大事な友人です。

わたしには理解できないほどものすごく親切な心優しいご夫婦で、CTちゃんも大学生兼主婦で試験前でめちゃめちゃ忙しいのに、わざわざプレゼントの買い物に行ってくれました(涙。

うちの息子があまり曲がらずに育ってくれたのも、CTファミリーが(含むCT犬<とても重要)良い距離で見守ってくれたおかげだと思っています。

1000キロ圏内に親戚も家族もいない代わりに、友達にはほんとに恵まれました。



プレゼントの一部。IKEAで買って来てくれた「たらこチューブ」。

きっとカナッペ用なのでしょうね。
中身は、マジたらこ! これでさっそくたらこたっぷりスパゲティを作ってみる予定です。

IKEA、結局1年以上行ってないけど新製品が増えたもよう。ああ行かなくちゃ。

右奥のはアンチョビ缶、左側のはベリー入りチョコレート。どれもパッケージがシンプルで素敵。
直球ど真ん中です。

CTちゃんとは、誕生日にこういう取るに足らないけれどつまらなくない細かいものを詰め合わせたお楽しみ袋をやり取りするのが、最近のトラディションになっています。



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2012/03/16

メキシコの唐辛子ロリポップ


先日近所のメキシカン食料品店で、友人CTちゃんが買って来たキャンディ。 

普通の飴だと信じて食べたら、かっ、辛っ?

しかもなんだか、ブツブツしていてやすりのような食感。

二人とも驚いて、なめかけの飴をゴミ箱に捨てた
どうやらペッパーと塩入りのキャンディだったようです。

でも次の日、こういうものだと思って食べてみると、これが意外とおいしい。
甘酸っぱいに辛しょっぱいと痛いが加わった、妙な快感の飴。けっこう癖になります。
試験勉強中、この刺激はちょうど心地良かった。
でも二つ続けて食べると、かなり舌がびりびりになるので注意が必要です。

真ん中にはタマリンドの果肉が入ってて、ちょっと梅干しっぽいような、ハワイのリヒンムイのような駄菓子やさんな香り。
 

きっと日本で売りだしたら、一瞬だけブームになりそうな気がするのですが。
それとももう売ってる?


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2012/03/13

Procrastinate ぐずぐず延ばし。





Procrastinate

vi) ぐずぐずする。先に延ばす。  
vt) 延ばす。 

(リーダス英和辞典:研究社)

子どもが小学校のとき、最初に覚えてきた「ビッグワード」(になるのかしら?)が確か、これでした。

宿題をさっさとやらないので、早くやっちゃいなさいというと、得意げに
I am a PROCRASTINATOR! 

…自慢するんじゃないと叱ったものの、私も全くもってぐずぐず屋。

さあ寝る時間はもうありませんという状況に追い込まれるまで、なかなか腰が上がらない。

この数日間、期末試験とペーパーと仕事の締め切りとが重なって、大変なことになっていました。少し山は越えたもののまだ続行中。

時間がたっぷりあるように思われる時には気が散って資料を読んでもなかなか頭に入らないのに、切羽詰まると集中するものです。3倍速で読める。

どうしてこう、崖っぷちに立たないと頭が動いてくれないのでしょう。
日頃からこの集中力があればどんなに仕事も勉強もはかどることか。 

 読みたい本、片付けたい書類、やりたい事がいくつもあるのにいつまでたっても山のまま。

したいことにそれぞれ締め切りを設定すればよいのですが、自分で決めた締め切りに崖っぷち的拘束力をつけるには、もっと戦略が必要のようです。




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2012/03/10

Uヴィレッジの桜


数日前、Uヴィレッジのスタバに行ったら、お店の前に桜が咲いてました。
種類はわからないけれど、濃い色の可愛い花。「寒緋桜」でしょうか?

一瞬、造花?と思ってしまったほど、鮮やかなピンクでした。

寒さの中、全然調子が出ないんだけど、よろよろ、という感じの八分咲き。
クリスマスからつけっぱなしなのか、木全体に豆電球が巻かれているのがなんだか気の毒でした。

University Village(ユニバーシティ・ヴィレッジ)、通称「U-Village」 は、シアトル近辺で一番好きなショッピングモールです。

わたしはアメリカのショッピングモールが苦手。とにかく巨大であればあるほど駄目のようです。

スケールが無駄に大きすぎて疲れるし、のっぺりした照明や、どこに行っても同じ店構えのブランドがずらずら並んだディテールのない建物を見ていると、何かがらんとした気持ちになってしまいます。

Uヴィレッジは オープンエアに平屋の建物が点在しているタイプなので、「モール」という感じがしないし、Anthropologie とかWilliams-Sonoma とか、見るだけで5分間くらい幸せになれる店もいくつか入ってます。



 シアトルでオープンエアだから、雨の日用にお店の間を渡りあるくための傘もあちこちに用意されてます。(写真は去年の初夏に撮ったので季節感がまったくズレてますが…w)

リゾート風の演出ですね。
パーキングの真ん中へんにガーデニングとお花の店を置いているのも良いし、植え込みや鉢植えもとてもセンスが良くて、「街角感」がよく出てます。

考えてみると、ホノルルのパールリッジ・センターや、拡張し続けるアラモアナセンターなんかは、かなりローカル色いっぱいの楽しいモールでした。 アラモアナの白木屋に行きたい……。



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2012/03/06

Pankoちゃんの冒険

夜遅く、買い忘れたものがあって、めったに行かない全国チェーンのスーパーSafeway に行ったら意外な文字が目に飛び込んできました。

Pankoちゃん。



パン粉です。

15年以上前…Once upon a timeですね…アメリカに住み始めた頃には、この日本風の粒の大きなパン粉は貴重品でした。
スーパーで「Bread crumbs 」と書いてある箱を買ってきてみると、砂のように細かい粉で、えびフライの衣にはなりませんでした。

西友で100円くらいで普通に買えたはずのパン粉は、当時住んでいたホノルルに数軒の日本食品スーパーにしかなくて、しかもパン粉のくせにとても高かったので、フライやカツを作るときにはいちいちミキサーでパンを粉砕して生パン粉を作ったものでした。

 
それがいまや全米チェーンの棚に並ぶようになったとは。
Progresso社のだけでなく、 Safeway ブランドのも!


思えばこの10年ほどで、日本食はアメリカの日常生活にじわじわ浸透してきました。

どこのスーパーにでもデリの冷蔵ケースのところにプラスチックの箱にはいった(少々怪しい)「SUSHI」が並んでいるし。 (カニかまぼことかが巻いてある、海苔なし「スシロール」ばかりですが)

インスタントラーメンやカップ麺も、普通に食生活に浸透したし。


Nisshin食品さんが頑張っています。ラーメンも「Picante Beef Flavor」 とか、「焼きそば」じゃなくて「CHOW MEIN」とか、完全にローカライズずみ。アジア系とメキシコ系住民の多いカリフォルニアがメイン市場なんでしょう。

スシロールといいピカンテビーフ味ラーメンといい、中国の麺が日本人の手で「ラーメン」に翻訳されたように、日本の食もアメリカン文化に翻訳されていくのですね。

Pankoちゃんはどんなお料理に使われていくのでしょうか。



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2012/03/05

雛の夢


お雛祭りの夜、舞踏家のKaoruさんの公演に行ってきました。
 舞台はグリーンウッドのTaoist Studies Institute。

今回はすこし演劇仕立てで、女性舞踏家二人による「雛の夢」と題した3部劇。



赤い靴はいたおんなのこの夢。人形の夢。

お人形が命を得て動き出す、美しい春の夜の夢でした。

みながら、谷川俊太郎さんの文章と写真家の沢渡朔さんの『なおみ』という絵本を思い出しました。片時も離れなかった大事なお人形が、ある日死んでしまう。


「そしてあるあさ なおみは しんだ わたしのよこで めを みはったまま」

そしていつか母親になった女の子は、幼い自分の娘の隣に、屋根裏で眠っていた「なおみ」を置くのでした。

 


休憩時間には手作りの甘酒もふるまわれて、意地汚くもたくさんおかわりしてしまいました。

楽しいGirls Festival でした。




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2012/03/03

火鍋の魔力 小肥羊

台湾出身のEさんに教えてもらった、「火鍋」のお店、小肥羊

ベルビューのCrossroads Mallの向かいにあります。
台湾発のチェーン店で、日本にも赤坂や渋谷に支店あり。

これが火鍋だ!

スープは白いのか赤いの、または真ん中で仕切って半分ずつの紅白鍋にもできます。
まずスープをオーダーして、鍋が来てからおもむろに中に入れるものを注文するしくみ。

とにかく香辛料がたっぷり浮いています。ねぎ、クコの実、にんにく、生姜のぶつ切り、ライチ、そしてもちろん大量の唐辛子などなど。

赤いほうのスープは、かなり真剣に辛いです。
飲む前にまず辛い湯気が喉を直撃してむせるほど。

お玉で気軽にスープをすくうと、唐辛子とにんにくがこんなに↓↓こんもり!!
よけてもよけてもよけても唐辛子が次々に浮いてきます。


かすかにケモノっぽい匂いがあるスープは、こってり濃くて喉にじんじん刺激が来る、とてつもなく複雑な味。トムヤムクンとか上等のとんこつスープのように、味が何層にもなっていて飽きません。

急に思い出すとじわーんとスープの味に脳を占有され、すぐにも駆けつけたくなる、魔の鍋です。

クセが強いので、駄目な人と魔力にとりつかれる人に分かれるかもしれません。


お肉はしゃぶしゃぶ風薄切りです。
女ふたりで行って、羊肉と牛肉、野菜(白菜、えのき、レタス、豆腐)、魚介類、春雨のセットで、お一人様15ドル。おなかいっぱい食べて、スープもお持ち帰りできました。かなりお得です。

湖を渡ってイーストサイドまで行く価値のある実力派お鍋でした。



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2012/02/29

ご近所ベーカリー HONORE


クロッカスが咲いたとおもったらまた急に寒くなって、昨日今日は雪もちらついていました。
ゆっくりできる朝は、近所のパンやさんへお散歩。


 HONORE Artisan Bakery は、住宅街の中にちょこんとあるベーカリー&カフェ。
うちからはタテヨコ約10ブロックほどで、ゆっくり歩いて片道30分弱のお散歩コースです。

椅子席はカウンターが5席ほどだけですが、来ているお客さんがいつもとってもオシャレにみえる。 この日も、スティーブ・ジョブズ風の男性が(髪が薄くて黒いタートルネックだとジョブズ風に見えてしまうw シアトルにはそんな感じのお父さんが多いです)、ペストリーを食べながら難しそうな本を読んでいたり、 小さな女の子をつれたお母さんの押しているベビーカーもクラシックだったり、なんだかヨーロッパの風が〜。


スコーンはふつうにおいしい。グージェールという、シュー生地にチーズを練り込んだパンがわたしは最近お気に入り。

最近はケーキやタルトもあり、欧州風のこってり濃厚味です。
ここは時々、パンの出来に少しばらつきがあるような気がするのですが、とにかく気分はとてもオーセンティック。ご近所にこれだけ優秀なベーカリーがあるのは幸せです。

Honore Artisan Bakery 
1413 NW 70th St Seattle, WA
水曜日〜金曜日 7時〜4時、土曜日&日曜日 8時〜4時 


この一角は住宅街の中にある不思議なミニチュア商店街。隣は夕方だけ営業のビストロ、その隣は傘屋さん、向かいはアートスタジオと小さなレストランです。

ここを通るたびに、昔読んだ『霧のむこうの不思議な町』というお話を一瞬思い出すのは、この煉瓦の建物に入った傘屋さんのせいかもしれません。主人公の女の子はピエロの顔の傘を追いかけて、不思議な石畳の町に迷い込むのでしたね。


おまけ。帰り道、鼻つき電柱発見。





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2012/02/28

Concussionは「脳しんとう」?


昨日の日曜日のトーナメント決勝戦で、サッカークラブのシーズンが終わりました。
(息子のチームは決勝戦で負けてトーナメント準優勝でしたが、良いシーズンでした)
来週からは高校のほうのサッカーシーズンが始まります。

アメリカの学校のスポーツはシーズン制で、シアトルの公立校の男子スポーツだと、フットボールは秋(9月〜11月)、バスケットボールと水泳は冬(12月〜2月)、サッカー、野球、ラクロス、陸上は春(3月〜5月)です。

クラブでも学校でも、サッカーなどのコンタクトスポーツに参加する時に必ず書かされるのが「Athletic Concussion Information Form」。

Concussion が起きた場合の症状や対処法などの情報が列記してあり、本人も親も読んで理解しましたという署名をしないと、そのスポーツに参加する許可が出ません。

Concussion は辞書の訳語では「脳しんとう」と載っていますが、日本とは少し定義が違うようです。

AAFP(アメリカ家庭医学協会)のサイトではConcussion を「Mild traumatic brain injury」と定義して、3レベルに分けるガイドラインをいくつか紹介しています。
学会によって微妙に違うのですが、米国神経学会のガイドラインでは以下のとおり。

レベル1:意識喪失も意識の混濁もなし。頭痛など何らかの症状があるが、15分以内でおさまる場合。
レベル2:意識喪失はなし。記憶障害など意識の混濁があり、症状が15分以上続く。
レベル3:長さに関わらず意識喪失があった場合。重度のconcussionとみなされます。

「頭をぶつけて、少し痛いかも?」という程度のレベル1concussion は、日本では「脳しんとう」とはいいませんよね。

 

ワシントン州では、2009年に『Zackery Lystedt法』が可決されました。

この法律はワシントン州のスポーツ少年だった Zackery Lystedt君の名前を冠したもの。Zackery君は2006年、中学のアメフトの試合中に頭を強打したあと、少し休んで試合に戻り、その試合中に急に意識を失って倒れて病院に運ばれました。緊急手術を受けたものの脳機能は完全には戻らず、現在も全身が麻痺したままです。

頭を打ったあとすぐに試合に戻らなければ息子はこんな障害を負うことはなかっただろうと知ったZackery君のご両親が、二度と同じことが起きないようにと州議会に働きかけて制定されたのがこの法律。ニュースクリップはこちら

制定されたのは、ちょうどうちの息子が高校に入学した年でした。

この法律によって、クラブサッカーでも高校サッカーでも、試合中にconcussion が起こった場合には、その選手はすぐにプレーを中断して医療専門家の診断を受け、concussionによると思われる症状が完全になくなってから1週間(軽度の場合)は、試合にも練習にも出てはいけないことになりました。

そしてうちの息子、 か な ら ず 毎年1回は、頭を強打しちゃうのです。
新入生のときにはアメフトの試合でひっくり返り、数週間欠場。
去年は高校のサッカーのシーズン最後の試合の前にほかの選手と頭をぶつけ、重要な決勝に出場できず。



そして今回も、準決勝の試合でスライドタックルされて↑、この後に思いっきり後頭部を人工芝のグラウンドに打ちつけ、決勝には出場できませんでした。

大事な試合に出られないのがものすごく辛いようで、去年は悔し涙を流していましたが、脳みそには替えられないので、しかたありません。


いずれも意識を失ったりはしない「レベル1」のconcussionですが、昨日は試合後、シーズン打ち上げのチームパーティで、あちこちのお父さんお母さんから、小さな衝撃でも何度か続くと怖いから、ちゃんと検査を受けたほうが良い、と忠告されました。しかもパーティをホストしてくれた家のお父さんが脳腫瘍の専門医だったので、ものすごーーく説得力あり(汗)。



チームメイトの中にも、今シーズン中concussion で欠場した子が何人もいました。試合中にほかの選手と衝突して数分間意識を失い、夕食後もしばらく言動がヘンで、数日間記憶障害があったという 「レベル3」を被った子も。

頭の中の怪我というのは外からでは診断が非常に難しいし、本人にも自覚症状があるとは限らないので、こういうガイドラインが出来たのは喜ばしいことです。


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2012/02/25

『ヘルプ 心がつなぐストーリー』出版されました


もうひとつ、心待ちにしていた嬉しい本がとどきました。

『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(集英社文庫)。
原作はキャスリン・ストケットさんのベストセラー『The Help』です。(原作は一巻なのですが、日本語版は長大なため、上下巻になりました)

翻訳者の栗原百代さんのお手伝いで、この本の下訳を半分担当させて頂くという光栄にあずかりました。

昨年後半の数ヶ月、お天気つづきの週末もこもりきりで作業にかかったのでしたが、本当に楽しいお仕事でした!

舞台は1960年代後半のミシシッピ州ジャクソン、公民権運動がピークを迎えるまさにその頃。
語り手は3人の女性たち。大学を出たばかりの白人娘、ユージニアと、長年白人家庭のメイド「ヘルプ」として勤めてきたエイビリーン、そして 、その親友で毒舌家のミニー。

この3人が、白人と黒人が同じ場所に座ることさえ許されていない社会にあって(ほんの1世代前のことなのですが!)、白人家庭に仕える黒人メイドたちの本音を綴る本を出すという、弱い立場の女にとっては恐ろしく大それた危険な事業を成し遂げていくお話です。

カラフルな登場人物たちによるストーリーには、くすくす笑えるところ、爆笑してしまうところ、号泣してしまうところがいっぱいで、何度読み返しても同じ箇所でぼろぼろ泣いては、主人公たちのパワーに触発されて、たちまち元気になれます。

重いテーマを扱っているのにエンターテイメント性たっぷりで、あっという間に読めてしまいます。
ぜひぜひ、お手にとってみてくださいませ。 
  
映画はアメリカでは今年初秋に公開されてヒットし、日本では3月末から公開です。
アカデミー作品賞のほか、主演&助演の女優賞に3人がノミネートされています。

エイビリーン役のヴィオラ・デイヴィスは、言葉よりも雄弁で強い視線がぐさっとくる、素晴らしい演技でした。ミニー役のオクタヴィア・スペンサーは、作者が彼女を念頭においてミニーを書いたというだけあって、そのものずばり。映画の登場シーンから笑っちゃうほどの迫力でした。

ミニーと不可思議な友情を結ぶ、ホワイトトラッシュ出身のシーリアも、多くの読者から愛されている 忘れられないキャラクター。シーリアを演じたジェシカ・チャスティンも助演賞にノミネートされています。
 
明日のアカデミー賞発表が楽しみです!!

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2012/02/23

日曜日のホグワーツ(違


日曜日、ワシントン大学のスザロ図書館へ。
いつ行っても、ホグワーツな雰囲気です。

いつもは大学構内、1時間につき4ドルくらいのパーキング料金がかかるのですが、日曜&祝日は無料〜。クルマで行って見学するなら日曜が狙いめですよ。

もちろん閲覧室は誰でも使えます。


 大閲覧室は相変わらず静まりかえっていましたが、記念撮影している人も結構いました。
ここは天井が高いので、小さな音でも風呂場のようにわんわん響き渡ります。

シャッター音が響くと、静かに読書をしている人がちらっと目をあげる、視線が厳しい。

日本でもホノルルでも、図書館は飲み物食べ物持ち込み厳禁だったけど、シアトルの図書館は市立のも大学のも、まったくノーチェック。

本を読むのにコーヒーなしでどうするの?っていう文化なのか。
さすがにお弁当を食べている人はいませんが…。

ここも図書館1階のカフェテリアに(シアトルの施設だから当然)エスプレッソバーがあるので、カプチーノやアメリカーノを買って来て温かいカップを片手に、ゆったり読書ができちゃいます。
 

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2012/02/22

猫の日はジョージの誕生日


2月22日は日本では「ねこの日」だそうですが、ジョージ・ワシントンのお誕生日でもあります。
グーグルではヘルツさんのお誕生日を祝ってましたが。

2月の第3月曜日はいつの頃からか「Presidents’ Day」 と複数の大統領を記念するホリデーになり、12日がお誕生日のエイブラハムと一緒にお祝いすることに。
でもいまでも正式名称は「ワシントンズ・バースデイ」なのだそうです。

ところで、いま私が細々と通っているワシントン大学の「Red Square (「赤の広場」?)」入口に立ってるこの銅像。つい先日まで、誰なのか知りませんでした。

初代学長?なんて勝手に思い込んでたのですが、近くを通ったので足元からじっと見てみたら、ジョージ・ワシントンさんでした。
 
だからこの横の図書館にあるフードコートが「By George」って名前だったのか!と、やっと納得。 ワシントン大学だものね……。


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シンプルクッキーとケーキの本

おすすめ本もう一冊は、gigiさんこと西岡さんの、「洋書のようなシンプルクッキーとケーキの本」。

gigiさんのブログは、和洋のお菓子や和食や洋食のお惣菜など、シンプルだけれど手を抜かない食卓の風景がいつも紹介されています。毎回ため息がでるほど素敵なテーブル風景で、ブログに遊びに行くと、とびきりのお茶会にご招待頂いたようなほくほく気分になれます。

文章もとっても簡潔でシンプルなのに、教養の深さと、品のよさと、きりっとした人柄が感じられるのです。お会いした事はないのですが、きっととても柔らかで鋭い、芯の通った方なのだろうなあと想像しています。
 
さっそく、本の表紙にもなっているバターミルクパンケーキに挑戦。……恥ずかしながら、私、いままで、パンケーキミックスは箱から出て来るものだと思っていました。


バターミルクパンケーキって、わざわざバターミルクを買ってこなくても、牛乳とヨーグルトで出来るとは! 

卵、ヨーグルト、牛乳、バターと、小麦粉、ベーキングパウダー、ベーキングソーダ。これだけ。これならいつも冷蔵庫の中にあるもので出来るから、日曜の朝にミックスがないからパンケーキが出来ないなんて、間抜けな事はもう言えません。
Aunt Jamima にももうサヨナラです。


パンケーキを焼くのは息子の役目。 ふんわり!軽く、おいしくできました。

レシピはこちら。(レモンの絞り汁は本のほうには出ていませんでしたが、後は同じ)

お菓子もだけれど、おそうざいの風景もとっても素敵で、わが家の食生活改善にも活用させて頂いてます。和食編、洋食編、ランチ編……もお待ちしてます!


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2012/02/20

ブラックカルチャー観察日記


読みたい日本語の本がたまったので、アマゾンでまとめてオーダーしたのが届きました。送料高いけど、届くのは早っ。
さいきん、アマゾンドットコムはネット界のウォルマート化していると思う。シアトルの地元企業ではあるけど、あんまり応援したくない。でも他に並ぶものがないので使っちゃう。英語の本なら、地元の本屋さんで注文という手もあるのですが。使う側からすると、水も漏らさずという風情でスムースに使えるのですよねえ、アマゾン。

今回は、交流させて頂いているブロガーさんの方お二人が本を出版されたので、それも届くのが楽しみでした。

まずシカゴ在住のフォトグラファー、ジャンヌさんこと高山マミさんの『ブラックカルチャー観察日記』。
副題が「黒人と家族になってわかったこと」ときわめてストレートフォワードですが、すっごく面白い。結婚は「フィールドワーク」と考えて、出会った異文化に驚き、呆れ、楽しんで、ときに深く考察する、その面白がり方がとても真摯なのです。




シカゴのブラックファミリーの中にすっかり溶け込みつつ、アメリカの中の異文化、ブラックカルチャーを鋭く観察した報告書。
「ソウルフードの真実」から、ブルーズという音楽ジャンルが白人ファンのための伝統芸能と化しているという衝撃の事実、成功した黒人男性がクルマにお金を使う理由、キャリアの黒人女性が料理をしたがらない理由、黒人女性の髪への執念、などなど、アメリカで普通に暮らしていてもなかなか見えてこないことを、「内側」でも「外側」でもない、境界線から冷静に分析している貴重なフィールドワークです。

わたしの元夫もアフリカンアメリカンですが、なにしろ結婚生活が短かったし、二度ほど南部の実家に行って、昼間から酒屋の前にやたらフレンドリーな人たちがたむろしているとか、まずそういうところから大変なカルチャーショックを受けてはみたものの、あれこれ検証して学ぶ機会も余裕もありませんでした。

世界中を旅して来たマミさんと、シカゴのブラックコミュニティで育ちながら、東部の超エリート寄宿高校で4年間を過ごした旦那様。コスモポリタンなお二人の偏見のない視点が出会って、お互いの文化への尊敬に支えられた生活があってこその観察日記です。

この本を通して読んですごく思ったのは、うちの息子、半分はアフリカンアメリカンで外見はブラックのほうが強いのに、オアフ島とシアトルというぬるま湯のような環境で育っているし、親戚にも物心ついてから会いに行ってないから、本当にリアルなブラックカルチャーに触れたことはぜーんぜんないということ。きっと本人が思っている以上に、中身はほとんどアジア系。ブラックカルチャーも、そのプロトコルにもまったく無知なのです。 シカゴとか南部とかに「留学」させて、ちょっとは文化を学ばせたほうが良いかも。

アメリカ生活が長い方にも、音楽や本や映画を通してアメリカをよくご存知の方にも、楽しめること間違いなしの本です。


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