歴史地区の中心にある街の目玉、メキシコシティ・メトロポリタン大聖堂。
スペインから来てアステカ帝国を滅ぼしたコルテスが、アステカの古い神殿の上に建てさせたのがはじまりという教会です。
アメリカ大陸では最大の聖堂。
16世紀から何度も増築されて19世紀に完成したという巨大な建物は、なんだか要塞みたいです。外から見ると、ものすごい威圧感。明るくオープンに人を招く教会とは違います。
わたしはヨーロッパに行ったことがないのでわからないんだけど、この威圧感は、ヨーロッパの古い聖堂とはまたきっと違う種類なのじゃないかな。
異民族を征服して、その上に建てられた大聖堂。
そして今では8割の人がカソリックという国で、ありとあらゆる望みと祈りを何世紀にもわたって吸収してきた施設です。
ぜんぜん知らなかったんだけど、WIikiを読んだら、慶長使節船の支倉常長もここに来たことがあったそうです。そもそも慶長使節も支倉常長も知らなかった!日本史情弱!
伊達政宗はメキシコと交易しようとしてたんですね! そんなことすら知らなかった。すごいな戦国時代。伊達政宗の野望がうまく行っていたら東北はスペイン語圏になっていたかも?
巨大聖堂の中には普通の教会の大きさの祭壇が2つと礼拝室が16もあります。
現代では、聖堂のほとんどの部分は観光客のためにも開放されていますが、Altar of Forgiveness(赦しの祭壇)といくつかの礼拝室は「祈りのためだけ」に取り置かれ、写真撮影は禁止。
「祈りだけ」のスペース入り口にはおばさんが2名立っていて、「only for prayer!」と入る人に釘をさします。
それぞれの礼拝室には熱心に祈っている人もたくさんいました。
1960年代の火事でかなり損傷したそうです。内装はどのくらいがオリジナルなんだろうか。
聖壇横の観光客エリアから見たAltar of Forgiveness。
黒いイエス・キリストの像が有名ですが、なぜ黒いのかについて、伝説以外の説明はなし。
伝説というのは、聖職者が毎日祈りを終えた後、このキリスト像の足にキスをしているのを知っていた暗殺者が、足のところに毒を塗って聖職者を殺そうとしたら、聖職者がキスをする前に急にキリスト像が黒くなったという話。
だからこのキリスト像は Lord of Poisonと呼ばれているのだそうです。
そんな話をわざわざ作る必要があったのは、「黒」は忌むべきカラーだという前提があればこそで、有色人種の土地に白人が作った教会であればなおさらだったのでしょう。
でもこの黒いキリスト像には、引き寄せられるような迫力がありました。
巨大なパイプオルガンを2つも備えた聖堂。
何世紀もかけて増築されたので、バロックから新古典様式までいろいろな様式が入り混じっています。
これは中央の聖壇。
きちんとスーツを着た中年の男性が長い間祈っていました。
わたしが今まで見てきたアメリカのキリスト教会の空気とは、まったく違う世界です。
重々しくて、簡単につながれない。
正直、どう感じていいものかわからず、呆然としてしまった。
呆然としながら3つの入り口から入って3つの出口を出て、3通りの順路でうろうろと小一時間ほど過ごしました。
吸収したいんだけどもうどうにも歯が立たない、美味しそうだけれど油っぽくて固くて噛みきれないごちそうを前にしてウロウロする野良犬のような心持ちでした。
この複雑さ、壮大さ、壮麗さ、重々しさは、そのまま、スペインとメキシコの歴史と、カソリック教会そのものの複雑な存在感に重なると思う。あまりにも重層的で、理解はおろか、簡単に見尽くすことができません。
何十世代にもわたる祈りと、絶大な権力と、さまざまな思惑と争いのエピソードが何百も何千もあちこちに織り込まれている、壮大な物語。
午前中の強い日光がちょうど差し込んでいて、さらにドラマチックな効果を上げていました。
ステンドグラスだけが20世紀風の素朴でシンプルなデザインで、色合いも不揃いな直線もとても素敵なのだけど、いったいいつのものなのだか、サイトにも説明が見つからなかった。
ちょうど午前中の祈祷が終わったところでした。
制服姿の小学生男子が廊下でケロケロ笑っている姿にちょっとほっとしました。
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