2014/10/18

日本のアール・デコ at シアトル・アジア美術館


その日暮らしのフリーランス生活。なんだか今週後半はとってもヒマでした。

こういうときにこそたまった用事を片付けなければ。でもお天気が良かったので、ダウンタウンまで用があってちょっと出かけたついでにふらふらとシアトルアジア美術館に行ってきました。

この美術館探訪日記は前にも書いてました。わー、4年前だ。

 

玄関前のラクダも健在。




この美しいアール・デコの建物で、「Deco Japan: Shaping Art and Culture, 1920–1945」という、日本のアール・デコ美術の展覧会が開催されてました。

今ちょっと個人的に大正モダニズムのブームが起きているので、これはどうしても見ておきたかったのです。

展示を観ながら、 そもそもアール・デコって何?ということじたい、きちんと把握できていないことに気づきました。見れば「アールデコね」と思うけど、その要素をちゃんと説明できない。

直線的、幾何学的なデザイン、でもそのココロは後のモダニズムよりもずっとずっと装飾的で、明るい原色も散りばめたポップな感覚もある。というところか。

アール・デコの最盛期は日本の大正末期から昭和初期で、展示品の中には折り鶴や干支のシンボルなどを取り入れた派手な壺や花器、水辺の草のデザインに金属をあしらった斬新な欄間飾りなど、いかにも昭和初期っ!という顔のものがたくさんありました。

まぎれもなく大正・昭和の日本工芸品、この流れにおいてみればなるほどアールデコ。

そしてこの時代のものには、やっぱり帝国の香りがただよっているのですね。

日露戦争以降、西洋の仲間入りをして満州や朝鮮に植民地を置いていた大日本帝国の人びとが感じていた自負心が、展示されている壺やら絵画やらにみなぎっているように感じました。

ちょうどこの間『ダウントン・アビー』のシーズン2を見終わったところで(これも個人的に大ブーム中)、あの時代にも重なってくるんですよね。

第一次世界大戦が終わって、これまでの秩序が少しずつ崩壊しはじめて、政治も社会も産業も文化も生活も、くらしも考え方も、何もかもが決定的に変わりつつある時代が描かれてたのがシーズン2。 まだアール・デコ前夜の時代ではあるけれど、ダウントン・アビーの館が象徴するような19世紀的な価値観や美意識が少しずつ押しやられていくその後にやってきたのがアール・デコ、と考えるととても理解しやすい。

アール・デコって、ふたつの大戦の間の、熱狂的で先が見えない、ほんとうに激動の時代のものだったのだなあ、とこの展覧会ですごく納得できました。それまで、あまり時代的な背景を考えてみたことなかったんだけど、こうして並べられてみると、この時代の必然的な形でありデザインだったのだというのが、よくわかる。

現代から振り返れば「過渡期」のような時代だった、というのが見えるけれど、当時の人はそれを「いま」として、不確かな未来を目指して生きていたわけで。

どの時代だって常にそうではあるんだけど、この大戦の間の時代というのは特に、1つの崩壊がひとまず終息して、次の大崩壊が来るまでの短い台風の目のような平和な時代だっただけに、後から見るとなおさら、はかなく感じられる。

新しい技術が次々に生活の中にも入り込んで、どんどん進歩している!という感動があっただろうし、一方で社会の多くの人びとは圧倒的に貧しく、その格差や植民地の人びとの不満が社会不安のたねとしてあって、共産主義や社会主義を言論弾圧という形で押さえつけているという、無理な力がなければ成り立たない社会でもあった。

日本のデコ時代の工芸品や「モガ」たちを描いた美人画を見てると、そういう時代の共通項的な不安が底に流れていることと、「文明」の進歩や帝国の未来を信じないわけにいかない、という一種の強迫観念に近い熱気が、伝わってくる気がする。

アールデコの直線や幾何学模様のデザインは、現在から見ると静的なすっきりした印象をじていたけれど、この時代に身をおいてみれば、もっとずっとダイナミックな、前世紀の体系を壊して、というよりむしろ、それが壊れた後にタケノコのように、野をおおいつくす雑草のように急に伸びてきた、勢いのある形式だった(そしてその勢いは、爆走機関車のような帝国主義と運命を共にしていた)んだ、ということが、この展覧会を見てはじめて体感できました。
 
マネの「オランピア」をそのまま借りた、昭和初期の美人画がとても面白かったですよ。



激動の時代の美術品を見て少し疲れた頭を癒してくれる、中国磁器の部屋。

窓の外のボランティア・パークの緑と磁器が目においしい。



13世紀、元の時代の龍泉青磁。 



こちらは紀元前13世紀のものだという、殷の時代の青銅器。羊がカワイイですね。
「なぜワタシがここに?」みたいな、ちょっと心外だという表情。


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