2011/05/03

Kill



日曜の夜に突然飛び込んで来た「オサマ・ビン・ラディン殺害」のニュース。
FOX だけは「ウサマ」と呼んでいるけど、これは「オバマ」といい間違えないためじゃないかと密かにおもう。
車でいつもラジオを聞いてるのだけど、翌日の解説番組でNPRのキャスターが2人も「オバマを追って、いやオサマを…」と言い直していた。おいおいー。

それはさておき、日本の主要ニュースサイトはどれもが「ビン・ラディン殺害」となっていたのがとても印象的だった。

アメリカの新聞の見出しは多くが「Bin Laden Killed」だった。
ニューヨークタイムスは「Bin Laden Killed by U.S. Forces in Pakistan, Obama Says, Declaring Justice Has Been Done」
LA タイムスは「US Kills Bin Laden」
ワシントンポストは「US Forces Kill Osama Bin Laden」
シアトルタイムスは「Bin Laden Killed」だった。


「殺害」は「害」であって、犯罪行為だ。「殺人」=「murder」と同じになる。

「Kill」には色がない。

アメリカ人で、ビン・ラディンに murdered という単語を使う人はいてもごくごく少ないだろう。なにしろ「正義がなされた」のだから。

事故で死なせても、恨みを持った殺人も、戦闘行為中に殺すのも、羊を屠るのもkill。

これこれの結果、相手が死んだ、という事実だけを述べる言葉。


「killed」「kill」にあたるニュートラルでフォーマルな日本語が意外にないことに今回改めて気づかされた。辞書をみてみたら古い法律用語で「殺死」という言葉があったけど、これは日常に使われない。

新聞の見出しにすっきりおさまる漢字熟語となると、「殺害」なのか。ちょっと新鮮な驚きだった。

日本の世論はアメリカの世論とは異なるわけで、 暗い罪のカゲを背負った「殺害」を使っても一向に構わないというか、むしろ積極的に人の家を襲って殺せば相手がだれであれ殺人じゃないか、という意見がさりげなく含まれているのかもしれない。

日本は今のところ、国の総力を傾け、エリート部隊を送り込んで他国に潜んでいる誰かを殺すことなどしなくて良い国だ。

そんなことにならないことを祈るばかり。でも、万が一そんな体制になった日にはきっと、「殺されるべき人物を処分した」という意味を含む事務的な言葉が新しく発明されるのだろう。



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