2010/10/27

雨紅葉


シアトルに来て2度目の秋です。

今年は秋に入ってからぱっとしたお天気の日は少なく、週末も雨模様。

うちからもダウンタウンからも車で10分くらいのグリーン・レイク(Green Lake)は、池のまわり一周4.5キロくらいで散歩に最適なので、晴れると犬と歩く人と走る人と自転車の人ローラースケートの人で渋滞になるけれど、先週末は人も犬もまばらでした。

夏にはミニチュアの「ビーチ」に飛び込み台も設置されて、貸しボートも出て、池の上も周りもたいへん混み合ってますが、今はもう静まり返って鴨たちだけの世界でした。





ちょうど雨がぱらぱら振ってきて、色づいた葉に雨粒が落ちると、水彩絵の具を溶かしたような色あいに。さわったら手に絵の具がつくんじゃないかと思うような、鮮やかな赤色。

東海岸のニューイングランドから来た人に言わせると、ノースウエストには本当の紅葉はないのだそうです。
「こんなサビみたいな色は秋の色とはいわない」と、どこかのコラムに書いてあった。
…さようですか。
でも南国で10年過ごして秋の色に飢えた目には、充分鮮やかで綺麗です。



願わくばもうちょっとゆっくりしていってほしい秋の色。
今週の大風でずいぶん飛んでいってしまいましたが。

2010/10/23

母蜘蛛たち

10月は蜘蛛の季節。

9月ころから庭に蜘蛛の巣がものすごく多くなる。

通るたびに、庭の小道に新しく張られた見えない糸が顔を直撃するので、顔の前で手を振りながら家を出ていかなければならない。
大きな巣の真ん中には気の毒なミツバチや小さな蛾がいつもぐるぐる巻きになっている。
母蜘蛛はせっせと働き、栄養をつけて、冬の来る前に卵を目立たないところにひっそり産んでいなくなる。


霧の朝、ベランダにハロウィーン風のディスプレイが出来ていた。




ほんの一時だけのはかない飾り。

制作者本人たちには嬉しくもなんともない霧の朝だろうけれど。

2010/10/22

殺人山羊

先週、オリンピック半島のハイキングコースで、mountain goat にハイカーが襲われて亡くなるという悲惨な事故があった。
ここはつい2ヶ月ほど前に行ったばかりのとこ。たしかに、駐車場ハイキング道入り口に、「Mountain goat を見たら大声を出して追い払うように」「絶対に近づかないように」と注意書きが貼ってあった。

 …ヤギ?なんて思ったけど、冗談じゃなく怖いらしい。

こんな人です。

 この角がめちゃめちゃヤバそう。体重は130キロ超え。

襲われた人も、家族を先に逃がして追い払おうとしたところ、ヤギが向かって来てしまったらしい。

8月末にこの近くに行ったときには幸いヤギにはあわなかったが、鹿がたくさんいた。
鹿は野生なのに、いじめられたり狩られたりしたことがないので人をほとんど恐れない。大きな牡鹿がどんどん近づいて来たので、けっこう焦った。



私が行ったのは、オリンピック国立公園(Olympic National Park ) の、Hurricane  Ridgeというトレイル。簡単なコースなので小さな子ども連れも多かった。
ヤギが人を襲ったKlahhane Ridge は、もうちょっと健脚向けの隣のコース。8月に行ったとき、ほんとはこっちに行こうかなと思ってたのだ。




国立公園は車で入るときに1台15ドルくらいの入園料を徴収される。ここにこなくても、どこかに必ずまた行くだろうと思って、全国どこの国立公園も共通の年間パス85ドルを購入したのだが、結局どこにも行かないうちに10月がもう終わってしまいそう。
今頃はここも草紅葉が終わって、もうそろそろ霜が降りるころだろう。


この公園内のヤギの中でも攻撃的なのは数匹だということで、今はレンジャーがほかに目立って危なそうなのがいないかどうか見まわっているそうだ。この殺人ヤギは、当然のことながら血まみれのところを見つかって射殺されてしまった。


もともとヤギたちは1920年代に、多分狩猟のために外から持ち込まれたのが野生化して今では公園内に1000頭以上に増えてしまったもの。昔話題になった琵琶湖のブラックバスみたいなものでしょうか。

高山植物を踏み荒らすし、一掃してしまおうという意見がもうずいぶん前からあるらしい。

ヤギにしてみたら曾祖父さんのそのまた前からずっと住んでいる山であって、勝手に入ってきてウロウロしているのはハイカーのほうだ。どちらからしても迷惑な話。

2010/10/19

秋のマーケット

街はかぼちゃ色。



近所のお気に入りスーパー Ballard Market にて。
ここは 日系人経営のローカルチェーンTown and Country の系列です。
このチェーンはシアトル近辺に5店舗くらい展開しているちっちゃいチェーンで、地元産の野菜や果物をいつも豊富に揃えている。鮮魚もデリもワインショップも充実してる上に、オリエンタル食品も充実していて、しかもお値段も庶民的。

バラードマーケットがなかったらうちの食生活は成り立たないといっても過言でないくらい、お世話になってます。

同じ系列のスーパーで、車で15分くらい北のショアライン(Shoreline) のCentral Market に行けば納豆も油揚げも手に入る!のですが、バラードのほうはもっと小規模であまりアジア系住民がいないせいか、オリエンタル食品はせいぜいお豆腐やラーメンどまりです。


今年はキノコの当たり年らしく、去年は見たことのなかったキノコ類がスーパーにもたくさん登場しています。

地元の山で採れた松茸もたくさん入荷していて、1ポンド20〜30ドルくらい。3本買って6ドル弱でした。オイスターマッシュルームや黄色いシャンテレルきのこ、見るからにワイルドな朱色の「ロブスターマッシュルーム」などなど、きのこ祭り絶賛開催中です。

 ハロウィーンの飾り用のかぼちゃもいろいろ。スイカ大から、てのひらサイズまで。

いろんな色と形。


店先に並ぶ地元産のダリア。
だんだん本格的に寒くなってきて、暖炉に火を入れ始める季節、明るいオレンジが目に温かい。

2010/10/16

都会でニワトリ


シアトル市図書館から、毎月Eメールで「今月はこんなことやってます」というお知らせのニューズレターが届く。作家や建築家の講演や、キッズ向けのイベントなど、各図書館での催し物がかなり充実していて、実際に行ったことはまだないけど、面白そう。今回はニワトリの写真が目をひいた。

Urban Self-Reliance (都市的自足生活)』というお題のワークショップ。ヒップな町の真ん中のキャピトルヒル図書館で、8回連続で開催中。


Sustain your household by consuming less and saving more.
「消費を抑え、より多く貯めて、家計を支えましょう」

というテーマで、毎回ぜんぜん違う方角の講義が行われる。たとえば「保存食の作り方」「家計予算の立て方」「自転車通勤の初歩」「自転車メンテナンスの基礎」「家庭菜園ワークショップ」そして、「都会でニワトリを飼う」…。

通勤通学は自転車でガソリン代を抑え、 食べるものも出来るだけ裏庭で調達して、環境にも財布にも優しい生活をしましょう、というワークショップなのだ。いかにも不景気の時代らしく、すごくシアトルらしい講座だなあと思った。

シアトルは、自他ともに認める「tree hugger」、環境保護派の人が多い。どのくらい多いのかの統計は見てないけど、たしかに多い。アメリカの平均値から比べたら、エコな人の割合はかなーり濃いとおもう。ビル・ゲイツ財団の屋根も市庁舎の屋根も環境のために草を生やしてるし、エコバッグの普及率も相当なものだ。 環境への影響を軽減することに、大真面目に取り組んでいる個人や企業が目立つ(もちろんみんながみんなというわけじゃないけど)。

「サスティナビリティ」は「持続可能性」という訳語が固まっているけど、この漢字熟語は意味を少し取りこぼしている気がする。
「Sustain」のもつ、供給する、支える、という意味を「サスティナビリティ」も、その背景にニュアンスとしてもっている。「サスティナブルな事業」というような言い方がされる時には、やり方を変えたり、積極的に働きかけることで継続を可能にする、という行動と責任の自覚が意識されている。「自律的な存続可能性」くらいの意味が込められている場合も多いと思う。

このワークショップは、経済的な自律性と環境への責任とを一挙に満たしてしまおうという試みで、超ミクロに地に足がついたとこが良い。

企業や官庁の「サスティナビリティ」への取り組みは過分に宣伝されてるなと思うことも多いけど、個人レベルでとりあえずできることを地道にやろうという人がたくさんいるのは頼もしいし、健康的だ。
そのうち、ペット可じゃなくて家畜可のアパートとかも出来るんじゃないかな。シアトルだから。

2010/10/09

辺境の小さな町

スノホミッシュのつづき。


スノホミッシュ( Snohomish )には、住宅街にも19世紀末から20世紀初頭の家が保存されている区域がある。

様式はまったくバラバラで、材料は細かい意匠の部分も木製がほとんど。洗練されているというより、どちらかというと奇抜なのが多いのだけど、絵本の家みたいで可愛い。
どの家も現役で人が住んでるので中の見学はできないけれど、外から眺めるだけでも楽しめる。


きっと町の創成期に当時の有力者たちがお隣に負けじと張りあっていろんな意匠を凝らしまくったのだろう。

町のサイトによると、19世紀なかば、町には最初、一番乗りの入植者のうちのひとりCadyさんの名前をとってCadyville という名前がつけられていたのだが、のちにそのあたり一帯にもとからいたネイティブ・アメリカンの部族の名をとってスノホミッシュと改名したとか。

Cady さん、あんまり人望がなかったのか…。単に最初に来たというだけの同胞の名よりも、(もう当時、すでに消え去りつつあって白人にとって脅威じゃなかった)土地のネイティブの伝統のほうが町の名にふさわしかったのだろう。北西部でも、ハワイや北米のほかのインディアンと同じように、白人と接触した部族は免疫のない病気にやられて人口が激減してしまった。今ではスノホミッシュ部族の生き残りはずっと北のほうの居留地に少し住んでいるだけで、町には皆無のようだ。

西の果ての辺境の町で、表通りに競って瀟洒な家を建てた町の有力者たちって、どんな生活をしてたんだろうか。


この変わった様式の家を建てたのは東部から家族を連れて移り住んだ木材業者。メイン州から家族を連れ、家財道具と一緒にホーン岬を回って移住した。まだパナマ運河の開通前ですね。
ワイルドウェストって感じではない静かな土地なのだが、世界のはてに来ちゃった気がしたかもしれない。奥さんも、こんな田舎(怒)とかひそかに思いながら東部から大切に運んできた家具調度を並べていたのかも。
何もなかったところに通りを作った家族たちには、ここは自分たちが作った町、という強力な自負があったことだろう。



住宅街にぽつんとある、営業時間の短い床屋さん。いつからあるものなのか不明だけど、例のグルグル回る看板が木でできてるの、はじめて見た。なんでも木で作っちゃった大工さんの伝統なのかもしれない。

2010/10/03

Antique Capitol

スノホミッシュ(Snohomish) は不思議な町。

 シアトルからは車で北に40分くらい。新しいバイパス道沿いに並んでいるのは全米どこでも変わらないチェーン店ばかりだけれど、 旧市街に入ると途端にがらっと19世紀末のような町並みに。
そして、お店はどれもこれもがアンティークショップばっかり。



ここには最初、息子のサッカーのトーナメントで行った。

何も知らずに旧市街を通ったら、あまりにもアンティークショップばっかり並んでいてびっくりしてしまった。

帰ってちょっと調べてみたら、スノホミッシュは「ノースウェストのアンティーク・キャピトル」と宣言している町なのだった。「米国北西部アンティーク界の中心地」って書いてあるパンフレットもあった。
すごいのか控えめなのかよくわからないけど。


スノホミッシュ市のサイトによれば、70年代中盤に町の旧市街ごと国の歴史地区(Historic District) に指定してもらって、ほぼ同時期に「アンティークの中心地」として売り出しはじめたそうです。

男子高校生と一緒じゃお話にならないので、アンティーク好きガールズ2名と一緒に再訪してみました。


ダウンタウンは狭い川に面している。川の反対側には製材所があって、材木の新鮮な香りが漂ってくる。

線路が通っていて、『スタンド・バイ・ミー』に出てくるような旧式の鉄橋がある。 西部劇に出てくるみたいな構えの店が続く通りには、小さなアンティーク店のほかに、アンティーク店を集めた「アンティーク・モール」が数軒。

これは広い店舗を小さな区画にわけて、それぞれの区画で個人ブローカーが委託式にお店を広げているもの。

狭い入り口を通って中に入ると、3フロアくらいにわたって、迷路のような世界が広がっている。



60年代のノベルティを集めた店、馬具や鞍や木馬など馬関連製品ばかりの店、ファイヤーキングやパイレックスの店、家具やジュエリー、古着。

あまりにも品数が多くてとりとめがなくてどこまでもどこまでも続くので、だんだん頭痛がしてくるほどである。 こういう「モール」はたいてい、入り口あたりにあるレジで暇そうな話好きのおばちゃんが2人くらいで店番をしていて、品物について質問してみると滔々とウンチクを語ってくれたりする。



高級なお品はないけれど、細々したカワイイものや変なものが好きな人には、きっと一日楽しめる。

19世紀からあまり景色が変わっていない感じのきれいな川沿いに公園も整備されているし、まったりできるカフェや、レストランも数軒。


観光地としてはパンチに欠けるのだろうが、農業ゾーンの緑に囲まれた秘密の小箱みたいな素敵な町だ。私は偽ドイツ村なんかよりもスノホミッシュのほうがずっと好き。


女同士でおしゃべりしながら無駄な買い物をして、のんびり午後を過ごすのにはぴったりの気のおけない町ですよ。