2011/04/25

Attentions


『The Social Network』を見た。おもしろかった!

調停のシーンで、弁護士が何か聞いてるのに「雨降ってきたね」とか関係ないことを言ってちゃんと返事をしないザッカーバーグ氏に向かって、相手方弁護士が

Do you think I deserve your full attention?

と聞く場面があった。
ザッカーバーグはこれに答えて、

「あなたの言うことには最小限のアテンションを向けてますよ。僕の残りのアテンションは、Facebookのオフィスでの仕事に向かっている。僕らはそこで、あなたのクライアントも含めてこの部屋にいる誰一人として知的にも創造能力的にも絶対遂行不可能な仕事をしてるんだ」

と言ってのけ、全員が鼻白む、という、この人の(少なくともこの映画で描かれた)性格を象徴する場面だった。ものすごく傲岸だけれど、自分の才能と使命に燃えていて空気が読めない/読む必要を認めないために孤独になってしまう人で、曲がった奴ではないという描かれ方だった。


で、この「attention」て、そういえば日本語に訳しにくい言葉だなあ、とあらためて思った次第です。

弁護士のセリフは、字幕ならたぶん「私の言うことを聞いてないの?」とでも訳すと思う。文章だったら「私の言うことは集中して聞く価値がないとお考えですか?」かな。
「私にはアテンションを向ける価値があるかないか」というと日本語にするとずいぶんとなまなましくなってしまう。日本語では注意は人に向けるのではなくて人の言うことに向ける。


Attention の訳語は『リーダーズ英和辞典』だと「注意、留意、心の傾注、目、注意力」。


注意力をすっかり傾けて、相手の言うことを聞いたり、何かに取り組むこと。

「気をつけ!」は「Attention! 」。
「アテンション、プリーズ!」と言われたら注意を完全に向けることを期待されている。

 スピーチの最後などに、半ば形式的に「Thank you for your undivided attention」と言うこともある。皮肉で言う人もいる。

「脇目もふらずがっちり集中して聞いてくださってありがとう」。

子どもや犬や恋人が、attention が必要で床にひっくり返ってみたり靴をかじったりすることがある。この場合は「関心を引きたくて」「気を引きたい」が自然な訳ということになるのだろう。He wants attention  という時にはちょっと注目してもらいたい、という程度で、一瞬、傾注してもらったらとりあえず良い感じだ。

attention hungry という言い方もある。いつも人に構ってもらっていないと不安になっちゃうタイプの人のこと。犬とか猫にもattention hungryな子とそうでない子がいる。人間では「目立ちたがり」な人の場合と「寂しがりや」の場合とがありますね。

「アテンション」は、その対象や内容が高度であるかどうかに関わらず、かなり温度の高い言葉だって気がします。





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4 件のコメント:

  1. TomoQさんのこんな評論?を読んでしまうと、もう一度映画を見直してみたくなるわー。アテンションひとつでここまで深く考えられるTomoQさんにひたすら脱帽!accoでした。

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  2. この映画、我が家でも1ヶ月ぐらい前に見たばかりです。
    プログラマーはコミュニケーション能力に欠けていたり、アンバランスだったりするオタクが多いので、「ありがち〜。」と思いながら私も楽しく見ました。彼らのフル・アテンションは、プログラミングをする事以外に向けられないのだと思われる。笑

    Napsterの創始者がfacebookに関わっていた所が、私的には面白い発見でした。だーいぶ前にNapsterを無料お試し期間中使ってみたんだけど、あまり意味のない音楽サイトだった。でも映画ではfacebookに知恵を貸してる感じだったよね?それより自分のビジネスどうにかしたら良かったのに・・・。

    温かいアテンションと供にポニョさせてもらいました。

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  3. accoさん、いや全然深く考えてないのです…思いつくままで…。
    ほんとのところは謎だけど、特撮で撮ったという双子とか、人間関係がコミカルで面白かったー。ハーバードのソサエティってああなんだろうなーって、なんだかすごく説得力がありました。きっと描かれた人にとっちゃ面白くないのだろうけど。この時間差で映画を作ってしまうアメリカってすごいと思った。

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  4. Motokoちゃん、ジャスティンも(でなくてもよかったような気もするけど)熱演だったよね。ああいう人、いかにもカリフォルニアにたくさんいそう。またその周辺に投資家や弁護士がうろうろしているのだろうな。
    スタートアップの会社が2、3年で億のお金を動かすようになるって本当にどんなんだろうか、想像もつかないんだけど、そのスピード感が少しだけかいま見られたような気がした。あの早口、映画始まって早々どうしようかと思ったけどっw
    温かいボニョ多謝♪

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