2016/12/20
考えるちくわ、ゆるい淀み
福岡伸一ハカセの『動的平衡』という本をよみました。
こむずかしいのかと思ったらとても読みやすく書かれていて、ぐいぐいと引き込まれてあっというまに読んでしまった。
モヤモヤと考えていたことを、誰かがすぱっと言い切ってくれると、すごくスッキリすることがありますよね。まさにそんなかんじ。
「食物は情報を内包している」
「生命体は口にいれた食物をいったん粉々に分解することによって、そこに内包されていた他者の情報を解体する。これが消化である。消化とは…情報を解体することに本当の意味がある。タンパク質は、消化酵素によって、その構成単位つまりアミノ酸にまで分解されてから吸収される」(68)
「胃の中は「身体の外」
「消化管の内部は、一般的には「体内」と言われているが、生物学的には体内ではない。つまり体外である」(68)
「人間は考える管である」
「私たちは、もっぱら自分の思惟は脳にあり、脳がすべてをコントロールし、あらゆるリアルな感覚とバーチャルな幻想を作り出しているように思っているけれど、それは実証されたものではない」(73)
脳につかわれている神経ペプチドというホルモンとほとんど同じものが、消化管の神経細胞でもつかわれている。
そうして、これらのペプチドがいったいなぜこれほど多種類、大量に消化管の近くにあって、何をしているのかはまだわかっていない、のだそうだ。
「消化管神経回路網をリトル・ブレインと呼ぶ学者もいる。しかし、それは脳とくらべても全然リトルではないほど大がかりなシステムなのだ。私たちはひょっとすると、この管で考えているのかもしれないのである」(74)
あああー、リトルブレイン!!
最近の人工知能の議論で、脳の情報をすべてどこかにアップロードできるようになればもうフォーエバー死なない世界がやってくるという意見がなんか変だと思っていたけど、 あれは、それだから間違っているあるね!
「ガットフィーリング」というのは本当に消化器のあたりで感じているものだものね。
そもそもヒトの脳というのは、身体中にはりめぐらされた感覚器官のセンサーなしにはたぶん、あまり機能しないんじゃないだろうか。機能しても、その脳がいる世界はごく限定された世界になるよね。
感覚器官と脳はそもそも発生当初からセットで発達してきたのだし。
…とつらつらと思ってきたのだけど、分子生物学のハカセにこうわかりやすく言ってもらえるとすっきり納得なのだった。
「生命活動とはアミノ酸の並べ替え」
「(タンパク質の)合成と分解の動的な平衡状態が「生きている」ということであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」であるからだ」(75)
おおおお!
ここを読んだときにはなんだかそわそわして、立ち上がってうろうろ歩き回ってしまったのよ。
「個体は、感覚としては外界と隔てられた実体として存在するように思える。しかし、ミクロのレベルでは、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい「淀み」でしかないのである」(231)
淀み!淀みなんだね!
福岡ハカセは、そのような見識から、遺伝子工学とかES細胞を使った治療とかには批判的な立場をとっている。 そういった、ヒトを部品として扱う還元主義の考えかたは、全体を見逃しているのではないか、という立場なのです。
どうも科学の立場、理性の立場のひとたちは還元主義(reductionism)でなければヒトにあらずみたいな考えかたが主流のようです。
白黒ハッキリつけたがるし、すべて白黒決着がつくものだと信じている。
前に還元主義について書いてみたときに思ったけど、還元主義のひとたちとキリスト教やイスラム教原理主義のひとたちは同じ思考パターンを持っていると思う。
お互い忌み嫌いあっているけど、おなじ穴のムジナっていうか、鏡にうつっている姿じゃないかと思うよ。
あと、ミトコンドリアはもともと細胞とは別の生物だったっていう説を最近聞いて仰天したのだけど、それについても詳しく説明されてて面白かった。
最後にライアル・ワトソンが出てきたのでそれも驚いた。
「心の理論」が豚に備わっていないと考えるひとはちょっとどうかしていると思う。
ねこにも犬にも「他人にも自分と同じ心がある。しかし他人はそこに自分とは違う考えかたを持っている」ということは、理解できているのではないでしょうか。
それを証明する実験なら簡単にできそうな気がするんですけど!
いやーほんとに面白かったー。これは2009年の出版で、続編がでてるらしい。
福岡ハカセの著書は『生物と無生物のあいだ』を何年か前に読んで、こちらもとてもおもしろかったんだけど、『動的平衡』のほうは今、まさに読みたかった言葉が降臨!という感じでした。
淀みなんですね。分子の淀み。そして考えるちくわ!
帯に書かれてるとおり、「読んだら世界がちがってみえる」のは間違いなしですよ。
超アグリーなセーターがもはや風物詩に
近所の庶民派スーパーFredMeyerにいったら、すんごいアグリーなセーターの売り場ができていた!
今すぐエルフ(じゃなくて「くるみ割り人形」なのかもしれない。本当にどっちでもいいや)またはパグになれるベスト! 『宇宙兄弟』にでてくるパグちゃん、アポ君みたい。
80年代から飛び出してきましたよみたいな、ちょっと韓国風なテイストの微妙なクマとスノーフレークの組み合わせ。
これも素材のチープさといい、確信犯的なスパンコール使い。
4〜5年前に「アグリーセーター・コンテスト」がはやりはじめたころには、クロゼットから発掘してきた年代物のものすごいセーターを自慢するという主旨だったはずなのだけど、今年はわざわざ中国とかベトナムの工場で作らせたアグリーなセーターをスーパーで売るという、妙ちくりんな季節の風物詩に変わってしまったらしい…。
なんかハロウィン的な方向へいきつつある。そのうちこれがクリスマスのトラディションになってしまうのかもね。
ちなみにこれらのアグリーなセーターには正札55ドルとか60ドルとかがついてたよ!
もうすでに半額近いセールになってたけどww
とどめに!となかいブリーフもあった!
写真じゃよく見えないけどちゃんとツノが横についてるのよ。
旦那様へのプレゼントにいかがでしょうか。ご希望の方、教えていただければ今ならエクスプレスでお送りしますよ♪♪
2016/12/19
香りだけツリーとマグノリアの種
クリスマスツリーを屋根にのせたクルマが行き交う12月。
リビングにクリスマスツリーを置くと針葉樹の良い匂いでいっぱいになるのが良いのよね〜。
うちのはチャーリー・ブラウンもびっくりの南国ツリーなので、雰囲気だけでもとspruce(トウヒ)のアロマオイルを焚いてみる。
と、たちまち部屋が正しい北国のクリスマスらしいの香りに。
でもこの香りはあんまり長持ちしないのが残念。
近所を散歩していてひろった、奇妙なたね。
M&Mチョコレートみたいな種がたくさんはさまって、じゃなくて中から出てきている。
マグノリア(タイサンボク)の木の下に落ちていた。
タイサンボクの人形のような花芯は子どもの時によく拾って遊んだけど、それがこんなに大きくなるのだとは、ぜんぜん知らなかった。
自然のデザインってとにかくなんだかすごいですね。
この花です。
この記事を書いてからまた1年半たってしまった。あああ。
2016/12/18
字が書けない
気づいたら12月ももうなかばを過ぎていた!今月はそれほど忙しくなかったはずなのに。あわあわ。わたしの半月はいったいどこへ。
というわけで急ぎホリデーカードを書いて、ようやく数日前に投函したところ。
日常、ペンを手にもって字を書くことはとても少ない。
誰かほかの人が読むための(自分用のメモとかノートじゃなくて)字を書くことは、さらに少ない。
しかも日本語で書くことはさらにさらに少ない。
むかしお世話になった日本の会社の方々(今年の夏に再会できたみなさま)や、現在のクライアントさんなどにメッセージを書くのだが、自分の字のあまりの下手さにもだえ苦しみ、カードを4枚くらい無駄にした。
その上、漢字をわすれているー!
なんだかもうほとんど文盲状態。
最初の1枚を書くのに25分を費やし、ぐったり疲れてしまった。
もうだめだ燃え尽きる。と思ったのだけど、5枚くらい書いたところで、ちょっと調子が出てきて、字を書くのがだんだん楽しくなってきた。
文字をタイプするのと、ていねいに文字を書くのって、クルマに乗って通りすぎるのと、自分の足で歩くのくらい違う。
ひとつひとつのハネやはらいやまるみに目を近づけながらゆっくり書いていくと、ひらがなは生きもののような形をしているし漢字には思考がぎゅっと詰まっているのが見える。
本当にごくたまにしか手で丁寧に字を書かなくなってしまったので、まるで字を習いたての小学校1年生みたいな頭になっているようです。
2016/12/17
ゴムの木に無理やり
この部屋に越してきてもう4回目のクリスマス!
ここ数年、12月はほとんど猫たちの家にシッターに行っていたこともあり、クリスマスツリーを買ったことがない。
ちょっと思い立ってクリスマス飾りの箱をしばらくぶりに取り出してみた。
うちの息子がひろってきたゴムの木ガルダちゃんに赤いガラス玉をつけてみたら、あら意外にかわいい。
ついでにプレゼントの箱も置いてみたら、あらちょっとクリスマス。
チャーリー・ブラウンのクリスマスツリーよりは、少し豪華かもwww
2016/12/16
Aesopのフンドシの人の正体
このあいだ、無料のデザインレクチャーに行ったら思いがけずオミヤゲをたくさんもらって、その中にAesopのサンプル品があり、すっごく良いニオイで気に入ったので、若い友人のバースデープレゼントにすることにした。
シアトルではFremontにお店がある。
久しぶりに「宇宙の中心」フリーモントの街へ。
ドアには「試用品」のローションがついていて、通りすがりにお試し可。
店内はとってもZENな雰囲気です(禅じゃなくてZENね)。オシャZEN。
ハーブティーをすすめてくれました。
ペパーミントの爽やかなお茶で、おいしゅうございました。
インダストリアルな感じのすっきりしたディスプレイに木の根っことか石とかの天然の素材が組み合わされていて素敵。
今年のホリデーギフトセットは6種類のパッケージがあって、「Pursuit of Passion」をテーマに、それぞれ6人の「ナチュラリスト」の名前がついている。
この人たちにインスパイアされたというテーマなのだそうだ。
お洒落な店内に、やたらキノコを強調したディスプレイ。そして箱の絵もオシャレなのだが描かれているのはフンドシをはいた小さな人である。
「それにしても一体全体なぜキノコなの」
とかわいい店員さんに聞いてみると、この「The Constant Gatherer」と名づけられたギフトパッケージは、なんと南方熊楠がテーマなのだという!
フンドシをつけて巨大キノコをよじ登っているこの方は、南方熊楠さんだった!
みなかた・くまぐすさん。恥ずかしながら数年前まで読み方を知らなかったよ。この人の伝記をそういえば前から読みたいと思っててまだ手にとってない。相当強烈な人だったらしいですね。
そして相当のイケメンだったという。
よく見ると桜のような木の花が描かれてる。日本を代表する博物学者ということをあらわしてるんですね。
キノコの上の赤い蜘蛛が素敵。
イソップのサイトで、期間限定だと思うけどこのフンドシの人やその他のフィーチャーされてる5人のイラストがアニメーションで公開されている。 (ページを開いてしばらく待つとアニメーションが始まります)。日本語サイトもあった。
日本語サイトはフォントがいまいちで残念ですね。
南方熊楠さんのところには「才能あるエキセントリックな日本のナチュラリストで、地衣類や菌類の専門家であり、世界中で研究を行った。ときにフンドシ一丁の姿で標本を採集していた」と書かれていて、エミリー・ディキンソンの詩が添えられている。
こちらは「ジョン・ミューア」。アメリカが国立公園というものを作るための大きなインスピレーションとなった、森の人。
ギフトボックスにフィーチャーされていたのは、このほか、精密画で知られるマリア・ジビーラ・メーリアなど。後の3人は全然知らないけど、クセのあるナチュラリストばかりのようです。
面白い会社だー。
2016/12/13
チップ先生お元気で
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