2016/06/22

IJET-27(3)イディオムの国のアリス


仙台のIJET、1日目の夜の交流会は仙台駅隣のホテル・メトロポリタンにて。これがまた、美しくて美味しいものてんこ盛りでびっくり!
ずんだ味噌の田楽、なす田楽、ローストビーフにラムチョップにお刺身に揚げたて天ぷらに秋刀魚のお寿司。サラダも煮物も中華も。そして魅惑の地酒、大吟醸も種々。


予算オーバーしなかったのかしら、それとも仙台の方々が特別に豪華なごちそうを振る舞ってくれたのかしら、と色々考えてしまうほどレベルが高くてほんとに感激。ちょっと顔出して早めに帰ろうなんて思ってたけど、お会いした方々との話も面白く、最後まで居残ってしまいました。



こちらは仙台の街角カフェ。仙台はオシャレなコーヒーショップがたくさんありました。


小さいミルク入れにクリームが入って出てきた。懐かしいー。

さてさて、IJET2日目は、腱鞘炎や肩こり対策(深刻な職業上の問題です!)の大変ためになる講義、エージェント経由と直接クライアントからの仕事のPROS&CONSについてのパネルディスカッション、そして午後は日英翻訳者の方の表現に関するプレゼンテーションを2コマ拝聴しました。

最後のプレゼンテーション、「Alice in Idiomland: Dealing with Idiomatic Expressions in Japanese Document」がとてもおもしろかった。

ウィスコンシン大学の「技術日本語」というプログラムの主任であるJames L. Davis教授の講義でした。

日経新聞の記事から採取した日本語のイディオムを、ウォール・ストリート・ジャーナルの読者むけに翻訳するという前提で、ひとつひとつ取り組んでいきます。
「接点」「重い腰を上げる」「頭を抱える」「救世主」「可能性を秘める」「尾を引く」「臨機応変に対応」など、どれもそのまま訳してはかえって誤訳になってしまうイディオムをどう訳すか。

エンジニアの学位を持つDavis教授は、「大きな問題に出会ったら、小さく切り分けて取り組みやすくする」のがエンジニア流アプローチだといい、その通りに、日本語の文章を解体し、単語の背後にある意味を特定して、読める英文にするために足りないものを足していきます。

たとえば、
「安倍政権は医薬品の国際競争に打ち勝ち、成長の柱に据えようと矢継ぎ早に政策を打ち出す。だが過去の出遅れは今なお尾を引く
の下線部分は、
< past delays are still holding the industry back>

のように、「尾を引く」の意味するところを読み取って、なにがどう尾をひいているのかをまず考え「過去の遅れにより産業が遅れを取っている」と言葉を足す、など。

イディオムや表現を頭の中で解体して、原文の意味を忠実に再現するために言葉を足したり削ったり。
英日翻訳でも、読んで意味の通る自然な文章にするためには同様の作業が必要です。

訳しにくい単語やイディオムに常日頃苦しんでいるので、こんなふうに他の人が頭を悩ました経過を聞くのは楽しいです。

Davis教授の講義は歯切れよくて軽快でした。

こうやってわざわざカンファレンスに出てくる特典はいろいろあるけれど、最大のメリットの一つは、共感でき尊敬できる同業界のプロフェッショナルの方と直接会って同じ空気を吸えることです。賢い分子が鼻の穴からいくつか忍び込んで、ちょっとだけ脳のシワが増える気がします。


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