もっとも翻訳しづらい言葉のひとつに、呼びかける言葉、「対称詞」があります。
これはきっと英語と日本語だけではないと思うけれど、いちばん文化の違い、関係性の違いが現れるところなのでしょう。
Darling とかHoney、Sugar、なんて呼びかけ言葉は、もうそのまま訳すしかありません。
南部のダイナーでウェイトレスがお客に「シュガー」と呼びかけるのを、いったいどんな言葉に置き換えられるでしょう。
呼びかけの「Son」というのも訳せない言葉だと、映画を観ていて思いました。
地位も年齢も相手よりも圧倒的に高い男性だけが、青年や子どもに対して語りかける言葉。
たとえば、「僕は嘘なんかついていない」と主張する被告席の青年に向かって、判事が
- I KNOW you are not a liar, son.
と言う。日本語にするなら、「きみが」しか思いつきません。
「君が嘘つきでないことは分かっているよ」
または、南アフリカで開催されたラグビーワールドカップを題材にした映画『Invictus 』で、モーガン・フリーマンが演じるネルソン・マンデラ大統領が、自国代表チームの一人ひとりの手を取って、
- Good luck, son.
と激励する場面。
日本語では、年齢が上の人に対して、一般的な親族名称の「おじさん」「おじいちゃん」と呼びかけることはあるものの、この「son」に相当する言葉はありません。
圧倒的に自分のほうが経験を積んでいるという自信と、相手との距離感と、親しみと、時には愛情も言外にこめた、年若い相手に対する呼びかけ。
この自信というのは、威圧的なのでなくて、「きみと僕とはこれだけ離れているが同じ線上にいるので、きみもそのうちここに立つのだ、頑張りたまへ」という目線が感じられて、良い距離感だと思うのです。
日本のお父さんたちにも、こういう言葉があったらいいのに。
そういえば、日本語では「おねえさん」「おにいさん」という呼びかけが成立するのに、「いもうと」「おとうと」とは普通呼びかけませんよね。(かぐや姫の『妹よ』は例外…)
返信削除「おとうさん」「おかあさん」「おじいちゃん」「おばあちゃん」はアリで、「むすこ」「むすめ」「孫」はナシ。
Tomozoさんご指摘のように、年長者には関係の名前で呼びかけるけど、逆の場合には関係の名称を使わない。ん~やはり名前で呼ぶのかな。
とすると年長者に対しては、名前を直接呼ぶことが不敬と感じられるので関係名で呼ぶことになったんだろうか?素直な疑問…
確かにー!!翻訳ってほんとに難しいです。
返信削除英会話を学ぶ時の最初の壁は、日本語⇔英語の翻訳をしてから話すのを止めることだったのですが、日本語は日本語、英語は英語で思考するようになってからは、今度は翻訳ができなくなりました(笑)
古代だと、妹(いも)とかあった筈ですが、年下への呼びかけ語というのは、日本語にはほとんどないですよね。名前ですもんね・・・。
Kaoru さん、そうですね! 「孫や」とは言いませんよね。
返信削除年長者に関係の名前で呼びかけるのは、ポジションが上であることの確認&敬意をあらわす意味もあるのじゃないかと思います。
自分よりあなたのほうが格が上ですよという確認というか。
フィリピンパブの女の子がお客さんを「社長さん」と呼ぶのも、相手の格を持ち上げてるわけで…(ちょっと違うか…)
ZIZIさん、わかります〜! 「英文和訳」で考えていた時分には、英語のニュアンスが理解しづらかったです。翻訳となると、どちらの言葉のもつ背景も汲み取らないとならないのですよね。
返信削除「妹」がありましたね!万葉の時代には「かわいい人」くらいの意味だったのでしょうか。ほっこり感のある呼びかけな気がしますが、とくに目下、年下とは限らなかったのかな。
この記事いいですね〜。
返信削除そしてモーガンさんの映画、観ましたよ〜。モーガン・フリーマンとマット・デーモン両人好きなので、もうそれだけが理由で観て、他の事はあまり覚えてないけど(笑)そういえばそんな場面あったかも〜。試合前にヘリで選手達に会いに行った時かな?
私もうちのガールズをsweetieと呼ぶことがよくあって、タジャーナが小さかったころ父に「何て呼んでるんだ?」と聞かれ、返事に困ったことがあります。スウィーティはスウィーティだよね。笑
これ系の記事、もっとよろしくお願いします!
Motokoさま、ありがとうございます〜
返信削除ヘリで会いに行った練習のときも、決勝の試合の前と、両方言ってたと思う。クリント・イーストウッド監督らしい、抑えめの良い映画でしたねー。マット・デーモンは、映画ごとに顔も体つきも変わるよねえ。私も好きです。
Sweetie♪ いいなあ、うちの子も今度sweetie って呼んでみようかしら(似合わん〜〜!。