先日、シアトル美術館の『Indigenous Beauty』という、アメリカ先住民のアートを集めた美術展を観に行って来ました。また例によって、会期終了間際。5月17日まででした。
アメリカ各地のネイティブ部族の作品を地域ごとにブロックにして展示してあって、緻密でモダンアートのような草のバスケットや、アリゾナあたりのホピの人びとの奇妙な人形や、北方の怖いお面や、大平原の人びとのビーズを沢山使った美しい皮の衣服がいろいろ。面白かったです。
平原インディアンの使った小さな「シードビーズ」って、ベネチアやベルギー産だったのだそうです。知らなかった。
インディアン=ビーズの刺繍、て図式が頭に出来てますけど、平原インディアンの間にビーズが流行して、あのビーズを刺繍した美しい皮の衣服がインディアンの様式になったのは、平原に白人が直接入り込み始めた19世紀半ばからなのだそうだ。
ローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』にも、インディアンのキャンプ跡でビーズを拾う場面があったと思う。
あの一家の話って、インディアンの滅びの時代。今思うと本当にインディアン戦争の前線すれすれにローラの一家は暮らしていたんだな、と、またもやこの展覧会を見ながらしみじみ思ってしまいました。
3年前にサウスダコタ州まで行って、スー族の土地や戦場跡を訪ねて以来、この大平原の人びとの生きていた時代とその最後の数十年間が、ずっしり感じられて仕方ありません。
上の絵は、大人たちがインディアン居留地に押し込められたあと、東部の寄宿学校に送られた少年が色鉛筆で描いた、ビジョン。
この展覧会は撮影禁止だったので、これは展覧会カタログから。
ほかの工芸品ももちろん素晴らしかったのだけど、この学校のノートのページに色鉛筆で描かれた絵が、一番印象に残りました。なんなんだこれ。
あと、ベーリング海のアリューシャン列島で発掘されたという、2世紀から5世紀の、セイウチの牙で作られた銛の部品も素敵すぎでした。
象牙のように白かったはずのセイウチの牙が、長年埋もれていたおかげで黒檀のように黒くなっていて、縄文風のグルグル模様が全体にほどこしてありました。
それを作ったのは、日本を通ってアメリカ大陸に渡った人たちだったのかもしれません。
常設展示もさっとつまみ食い。ガレの器がありました。うっとり。
19世紀の部屋にあった小さな油絵。あれ、モネかな?と思ったら、マチスだった。
カーネーションピンク &ブルー&ターコイズ&フューシャピンクの雪景色。
このスタイルだけで生涯を終わっても素晴らしい画家だといわれたに違いない。
何年の作品か見てくるのを忘れた。
手前の木の箱は、蓋も扉もつまみもなくて、時々ポロロンというような素朴な音が聴こえてくる箱。これちょっと欲しいかも、と思った。
テーブルとかたんすの中から時々こんな音がしてきたら、ちょっと嬉しい。
誰の作品か忘れました。1960年代の、たぶん。
昔からなぜか大好きな、ジャスパー・ジョーンズさんの「温度計」。
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