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Capitol Hill |
Exit through the Gift Shop という映画をみた。DVDで。去年の封切時に行きたかったのだけど、単館で上映期間も短かったので見逃してしまった。
英国のストリートアーティスト、Banksy の監督するドキュメンタリー。今年(2011年)のアカデミー賞ドキュメンタリー部門にもノミネートされたようです。
Banksy はストリートアートの世界で超有名なカリスマアーティスト。作品は
こちら。
スケボー小僧のうちの息子も彼を神のようにあがめていて、私は息子から教えてもらった。
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Capitol Hill |
開発途上国に対する搾取を告発したり、軍や警察をちゃかしたり、強烈な政治的メッセージをもった、皮肉でポエティックな作品を世界各地で発表し続けている人。
イスラエルが建てた
ガザ地区の壁へのラクガキはとくに感動的。
ラクガキとして製作されたそれらの作品が、サザビーの競売で一千万円以上の値で取引されたりもしている。
これだけ有名なのに、今なお顔も素性も明かさない方針を守り続けている手際の良さだけでも、天才的だ。
この映画の中に登場するときも(監督なのにも拘らず!!)覆面のままカメラに向かってしゃべる。
でこの映画はBanksy についての映画かというと、そうではなくて、LA在住の陽気なフランス人、Thierry氏の物語なのだ。
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Capitol Hill |
以下、ドキュメンタリーなのでネタバレご容赦を。
Thierry氏はLAのブティック店主で、偏執的なムービーカメラ好きだった。とにかく肌身離さずムービーカメラを持ち歩き、何でも記録していたが、あるときふとしたきっかけで、ストリートアーティストの追いかけを始める。数年かけて、有名なラクガキアーティストをすべて テープにおさめることに成功し、アーティストとの間に信頼関係も築いた。
オバマの大統領選のときのポスターで一躍有名になった
Shepard Faireyを通して、ついに伝説のBanksy の制作現場に密着取材をはじめる。が、録画テープは何千本とたまったのに、編集して彼のつくった映画は見られたものではなかった。
Banksyは、Thierry氏には映像作家としての才能が皆無であるとみて、それじゃストリートアートを自分でやってみたらどうかと示唆する。これを神の啓示であるかのように受け取ったThierry氏は、自分に「Mr. Brain Wash」 と命名して、活発なラクガキ活動をはじめる。
それだけでなく、財産をすべてつぎ込んで広大なギャラリーを借り、人を雇い、作品を大量に制作して、大規模なデビュー個展を開く。
その作品は、アンディ・ウォホールのパロディのようなシルクスクリーンとか、みんなどこかから借りてきたようなものばかり。「アーティスト」になってまだ間もないのだから当然だ。
ここまでなら、痛いオヤジの話というだけなのだけれど、その後の展開がすごい。この「Mr. Brain Wash」、略して「MBW」、の個展は、Banksy やほかのアーティストの知名度を利用したMBW氏の飽くなき広報活動によって大成功をおさめ、作品売り上げだけで1億円もの利益をあげる。
彼はいまでもMBWブランドでアーティストとして活動している。
… 「あるいは、芸術なんてジョークだということなのかもしれない」
Banksy は「MBW」氏の成功について、映画の中でそう語る。
あまりにもできすぎた話なので、この映画のドキュメンタリーとしての信憑性を疑う批評家もいる。Banskyは最近の
インタビューの中で
「I guess I have to accept that people think I’m full of shit. But I’m not clever enough to have invented Mr. Brainwash, even the most casual on-line research confirms that. (僕がまったくのデタラメ野郎だと思われてる事実は認めなきゃならないんだろうね。でも、僕は Mr. Brainwash の話を創作するほど頭が良くはないよ。オンラインでちょっと調べてみればすぐにわかることだ)」
と反論している。
アートって結局、やったもん勝ちなんじゃないか。アートの価値って一体誰が決めるのか。
日本人アーティストの作った萌え萌え人形がニューヨークで3000萬円で売れてからというもの、なんだかアートの世界全般がうさんくさく思えてきた。
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Capitoll Hill |
専門に学んだわけではないけど昔から美術を見るのは大好きで、現代美術作品も、うわーなんて面白いんだろう、と若い頃は素直に感動してみていたのだけど、最近どうもアーティストに(アート作品にというよりも、アーティスト自身に)値段がつくその方法が、胡散臭くてたまらない。
昔から美術の蒐集家の世界なんか魑魅魍魎の領域なのかもしれないんだけど、それがコンセプト勝負の現代アートとなると胡乱さも倍増する。
売れても売れなくてもなにかに動かされて創作し続け、自分のスタイルを築いて発表し続けるアーティストの真摯さにはひたすら打たれるのだけど、いったんそれに値札がついて「これはいくらいくらの価値があるものですよ」となると、とたんになんだか居心地が悪く感じてしまう。
いったい何に値札がついているのか。たぶんすごく限定されたコミュニティの閉じた高級な部屋の中で、需要と供給に基づいて決まっていくのだろう。
そこにはしたたかな商売人がうろうろしているのだろうと思うとかなりうんざりしてしまう。あるいは、アーティスト自身が商売上手であることに幻滅してしまうのかもしれない。
閉じたドアの向こうで動いている金額を考えるとMr. Brain Wash は可愛いものなのだろう…。
Banksy 自身はギャラリーとも契約していないし、ウェブで作品を売ったりもしていない。どうやって生計を立てているのかは宣伝していないので、彼自身がプロデュースした過去のショウで売れた作品が収入になってるのかも不明だけど、彼の作品は社会告発である以上、少なくとも高級カバン屋とタイアップした作品を売ったりすることは今後もないに違いない。それでも、ハードコアなストリートの人からはBanksy はSell Out だ!と言われているようで、本当にアーティストに人が求めるものはそれぞれであるなあ、と思わされる。
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