『ソイソース』、本日8月25日発行の号には、「らっこ」についてのお話を書いています。
「お父さんかららっこの上着が来るよ」
と、『銀河鉄道の夜』のジョバン二は学校の友達にからかわれて心を痛めますが、賢治が執筆していた大正頃には、すでにらっこは禁猟の対象になってました。初稿では、ジョバンニのお父さんはオホーツク海でらっこの密猟をして捕まったという設定であったらしいのです。
らっことオットセイが禁猟の対象になったのは、なんと1915年。明治時代です。動物を保護の対象にしようというアイデア自体が、まだとても新しいものだったはず。それだけらっこ達は大変な目にあってたのですが。
大航海時代から怒濤の19世紀をへて、乱獲によってドードーやら旅行バトやら、いくつかの種が絶滅してしまったあとで、ようやく保護の必要性が説得力を持ったのでしょう。バッファローもらっこも、かろうじて絶滅をまぬがれて、よかった。
シアトルご在住の方、よろしかったらぜひご笑覧くださいませ。
そして、らっこの運命やらっこ貿易についてもっとお読みになりたい方は
表紙の、怒った顔のらっこがなんとも言えない。そりゃー怒りたくもなりますよね。わかります。
18世紀〜19世紀のノースウェスト沿岸の部族の生活や、捕鯨以前の太平洋航路、らっことクック船長、ハワイとノースウェストとらっこと白檀貿易の関係などについての話がいっぱいです。
アカデミックの人なのでまだるっこしいところも多々ありますが、巻末のデータはとても充実してて、見やすいです。
それから、1960年代に出て絶版になっている本ですが、クック船長の航海に参加したアメリカ人を主人公にした小説仕立ての本、Sea Otters and China Trade も、なかなか面白いですよ (まだ途中までしか読んでないんですが)。シアトルの図書館で借りられます。
3年間の航海をしている間に、アメリカが英国から独立しちゃっていて、航海中に新しい祖国が出来ていたっていうのも、すごい話ですよね。
ぜひ行ってみたいのは、オリンピック半島の沖合に浮かぶ Destruction Island 。
むかしは灯台があった島ですが、いまは無人。保護区域で、らっこ天国になっているそうです。
『銀河鉄道の夜』初稿ブルカニロ博士篇(ますむらバージョン)を引っ張り出して読んじゃいました~。
返信削除「ジョバンニのお父さんはそんならっこや海豹をとる、それも密漁船に乗っていて、それになにかひとを怪我させたために遠くのさびしい海峡の町の監獄に入っているというのでした」
だから貧しい…という設定だったんだ。
最終稿では、最初の部分がばっさり切られていて、逆に最後にカンパネルラのお父さんが、「あなたのお父さんはもう帰っていますか。僕には一昨日大へん元気な便りがあったんだが」という一文が入っているのね。思わず検証しちゃいました。
Kaoruさん、初稿ではそんな哀しい設定になっていたので、ザネリに『らっこの上着』でからかわれるとつらかったんですね。
削除わたしも新潮文庫版をひっぱりだして読みふけってしまいました。未完成とはいえ、やっぱりイメージだけでもすごすぎる、と改めて感動しちゃいました。