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2021/05/15

WANDERER


先日行ったラ・コナーで、運河沿いに小さなかわいい本屋さんを見つけました。

これです。
Seaport Books。かわいいでしょう。


地元ワシントン州やパシフィックノースウェストに関連する本を多めに集めておいている本屋さんです。


 
ここで、地元作家ではないけれど海つながりということで目立つところに陳列されていたこの本、『WANDERER』が、今回のラ・コナーでの最大の収穫でした。

Peter Van Den Ende さんというベルギーの作家さんの作品で、言葉はない絵本です。



小さな紙の船が大洋を旅する話。

ちょっと佐々木マキさんのタッチや、画風は違うけどクリス・ヴァン・オールズバーグさんの作品をほうふつとさせる幻想的なお話。

海をとりまく環境破壊へのメッセージもこめられています。




 もうもうもう、超ツボで、迷う間もなくお買い上げでした。

 昨年出版された本で、ニューヨーク・タイムズの2020年のベストにも入ってます。

ヴァン・デン・エンデさんは、まだ30代の若い作家さん。絵本はこれが第一作みたい。以前はケイマン諸島でネイチャーガイドのしごとをしてたとグーグル先生がおしえてくれました。



 動画もあった。

日本での出版はまだかな。日本でもきっとファンが多くなること間違いなしだと思います!!
翻訳作業がないので翻訳に手を挙げることができず残念だ(笑)けど、はやく紹介されるといいな。

あ、タイトルがありますね。「ワンダラー」。「冒険者」かな。

 

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2021/04/26

ボストン美術館の怖い絵【閲覧注意】


 ボストン美術館にもいろいろ怖い絵がありますが、なかでも強烈だったのがこれでした。

英国の画家ターナーの『The Slave Ship(奴隷船)』。
1840年の作品ですが、1781年に起きた実際の事件を題材にしています。

限度を超えて奴隷をぎゅうぎゅうに詰め込んで船出した英国籍の奴隷船Zong号が、途中で飲料水が足りなくなったために、主に女性と子どもの奴隷132名を海のまんなかに投げすてたという事件。

水が足りなくて奴隷が衰弱死すると「自然死」とみなされて保険金が下りないために投げ棄てた、ということで後日保険会社とのあいだで裁判となり、世間の知るところとなって、英国での奴隷制廃止運動を後押しすることになった事件だそうです。

英国で奴隷制が廃止されたのは1833年。

ほかの国、とくにアメリカではまだまだその後30年以上も奴隷制が続いていた時代に描かれたものです。

 


ターナーというと水彩画で有名ですが、これは油彩画。

ダイナミックな波と夕陽の間に去っていく船の手前には、よく見ると波間にたくさんの手と鎖が目に入って、ぞっとします。

 


そして画面の右手手前には、まぎれもなく人の足が。女性のものらしい足が、足首に鎖をつけられたまま、一斉に寄ってくる魚たちの餌食になっています。


昨年ボストンに見に行ったときには、この絵にインスピレーションを受けて制作されたハイマン・ブルームの『Sea Scape II』という絵が、同じ部屋に展示されていました。



ふだんはボストン郊外のダンフォースアート美術館に所蔵されている絵。1974年制作。

このときは、ボストン美術館で開催されていたハイマン・ブルーム展のために貸し出されていました。

こちらはターナーの魚たちよりさらに凶暴さを増し、必死に肉を喰らう、命の恐ろしさが画面いっぱいに描かれています。

ハイマン・ブルームという人は全然知らなかったのだけど、50年代、ポロックと同時代に抽象表現主義で注目された人で、その後、皮を剥がれたり腐乱した動物や人体という独特の主題に入り込んで独自の境地をひらいた人。

ユダヤ系で、東ヨーロッパのリトアニアから第二次大戦前に迫害を逃れてアメリカに移住し、ボストンにずっと住んでいたようです。

 


ハイマン・ブルーム展は、全部で20点かそのくらいだったかと思います。わりあい小規模の展覧会だったけれど、題材がどれもこれも生々しくて、点数のわりにかなり体力を消耗しました。

たしかに恐ろしく引き込まれる題材ではあり、美しさがないかといえばこれも美しさであるけれど、日常的な感覚から「そちらの感覚」へよいしょと移行するには、やはり気力と体力を使います。

なぜこんな不快なものを見せるのだと怒る人も当然いると思う。それは責められるべきじゃないし、これを美しいと思えと強制すべきでもないかわり、こんなものを展示するなと規制すべきでもない。

アートは、ルノアールみたいにひとをキラキラ幸せにするだけでなくて、ときに異物を口につめこまれるような違和感や恐怖を催させるものですね。

何十年という時間をかけてそれを真剣にやっているひとの作品には、それなりに真剣に対峙するとなにかしら得るものが必ずあると思います。

そうしたくなければ対峙する必要もまったくないわけですが。でもそういう幅がひろくあることが、社会の豊かさなのだろうなと思う。

 


この足の絵は個人蔵で、どこかの美術館のキュレーター宅で食卓の上に飾られていたそうです。いい趣味ですね…。




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2021/04/25

「私たちはどこへ行くのか」の予言


青年はきょうボストン旅行から帰って来ました。
ボストン美術館でバスキア展を観たそうです。

去年の2月、ロックダウン直前に行ったときの記事に、そういえば続きを書こうと思ってたのでした。1年以上前に…。

ボストン美術館はほんとにみごたえたっぷりで、まる2日かけても全部は観きれない感じでした。


以前に東京で開催された『ジャポニスム展』のときにもお目にかかった、モネの奥様のコスプレ「ラ・ジャポネーズ」。



 ゴーギャンさんの傑作『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』は、やはり、とてつもない迫力でした。


制作は1897年。19世紀のおわり。

教会は権威を失い、新しい科学の見識がひとの思考をひろげ、工業化が恐ろしい勢いですすみつつあり、ヨーロッパの帝国が崩れはじめていた時代。

人の精神にも経済にも社会にも大きな変化が起きていた。

このあとに人類未曾有の世界大戦が立て続けに起こり、世界各地で何百万人という人が死ぬのだと思ってこの絵を見ると、迫ってくるものが重いのは当然だと感じられます。

ゴーギャンさんのダメ人間ぶりは以前にも確認しましたが、いかにエロおやじであっても、変わっていく時代の予感を全身でとらえていた人なのだと思います。
 

今の時代も、19世紀末と同じくらいの変化を前にしているのかもしれませんね。

 

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2021/04/17

バーク博物館

ワシントン大学では併設のBURKE MUSEUM(バーク博物館)に行ったのでした。

わたしが学生証持って通っていたあいだはずっと工事中で、一昨年の10月にリニューアルオープン。オープンしたばかりなのに、去年はコロナでほとんど閉まっていました。

建築はシアトルの有名設計事務所、Olson Kundig



入り口脇にカフェがあります。ここの表のガラスの壁が一枚の扉になっていて、ガーと上に引っ張り上げられるしかけ。開放的なつくりになってます。



このハンドルとギヤボックスで開閉する、ちょっとスチームパンク的な仕掛けはオルソン・クンディグ事務所のシグネチャー。かっこいいですねー。



室内も、まんなかに4フロア吹き抜けの階段スペースがあって、ひろびろと開放的なつくりでした。


考古学の資料と古生物学の標本がそれぞれテーマごとに展示されている「自然史&文化博物館」です。

19世紀から20世紀はじめ、各地の部族の村から白人の手によって持ち去られ、博物館のものになっていた先住民のトーテムなどが部族に返還されたいきさつなども紹介されてます。



ワシントン州となった地域で、かつて話されていた言語の分布図。こんなにたくさんあったんですね。ベーリング海が氷河だったころに東アジアのほうからわたってきた人たちなら、日本人に近いのかもしれません。


現在では「レーニア山」と呼ばれている山にも、当然それぞれの部族の名前がありました。


古生物学の標本はほんとに面白い。

インタラクティブな展示には、まだ「触らないで見るだけにしてください」と書かれていて、フルオープンではなかったけれど、小さな子どもたちを連れたお母さんが何組かきていて、だんだん日常生活が戻ってきた感を実感しました。



これはインドネシアの珍しいイノシシ「バビルサ」の骨で、税関で没収されたものが寄贈されたと書いてありました。

このイノシシ!この牙はちょっとどういう用途があるの?と思ったら、なんと自分の牙が脳天に刺さって死ぬこともあるのだそうです!!

じわじわと自分に向かって伸びてくる自分自身の牙を見つめながら生きるという……カミュもびっくりの不条理。

上階の半分近くはこういうぐあいにガラス張りの研究室になっていて、学生や研究者たちが作業をしているのを動物園の檻でシロクマかなにかを見るように眺められるのが面白い。


コロナ禍で研究室もまだフル稼働はしていないため、ちらほらと一人で作業している人が各部屋にいるほかはがらんとしていましたが。

ひとつの研究室の前には「ビジュアルが人によっては不快に思われるかもしれません」というような注意書きが。
クマの骨格標本が制作中で、まだ肉がいっぱいついた状態の骨がテーブルのうえにぽんと置かれておりました。

骨にするまでの過程の前半戦、肉を食べる力仕事は甲虫にやらせるんだそうです。



この手前の絵のなかで、ガイコツに乗った虫が「I made this」といってますが、奥に見えている冷蔵庫のなかで虫たちのその作業が進行中だそうです。

ドラマ『デスパレートな妻たち』で、こういう形の冷凍庫に夫の死体を保管していたっていうエピソードがあったのを思い出した。


美しい系統樹。規模は小さいけれど、展示に工夫があってデザインも素敵で楽しく眺められます。

入館料はけっこう高いけど(おとな22ドル子ども14ドル)。


保管庫(アーカイブ)もガラス張りで、正式に展示されていない「在庫」の一部がみられるようになっています。
これがまたけっこう面白い。


ウェブでもARでも情報は見られる時代になったけれど、やっぱりリアル空間の体験は別もの。


特別展。アーティストのRay Trollさんの作品で古生物とワシントン州など西海岸で発掘された化石の世界をみる『Cruisin' the Fossil Coastline』。

アンモナイトってイカとかタコの親戚だったのね。


ちょっと隠れたところに、巨大トパーズの原石なんかも展示されていました。





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2021/03/06

ちょうど1年前に本物のプーに会ったこと



だんだんとあたたかくなってきたシアトルです。今日はほぼ雨がちだったけど、気温は12度。

iPhoneが最近、アルバムに何千枚も撮りっぱなしでほとんど忘れている写真を使って勝手にムービーを作ったり、「この日」とポイントを絞って思い出を押しつけてきます。

それがなぜか気味の悪いほどピンポイントに良いツボを突いて来て、思わず号泣してしまったりするのがくやしいのですが、今朝は朝からいきなり「この日」と、1年前の3月4日の写真を勝手に選んで出してきました。

そうだった、1年前の3月4日は、ニューヨークにいたのでした。コロナですべてがシャットダウンする、ぎりぎり直前。

まだニューヨークの街でマスクをしていたのは東洋人の女性が2人くらいだけだった。
なんとなく重苦しい予感が街にあふれていて、消毒液や除菌ワイプはもう売り切れになっていたけれど、ふつうの生活が続いていた。


たった1年前なのに、隔世の感。

最後にきれいな青空の下のニューヨークを見られたのは幸いでした。


このあとに行ったイサム・ノグチ美術館のことは書いたのだけど、図書館を見に行った話は書いてませんでした。

 


 観光名所でもあるニューヨーク公共図書館の「本館」。

ものすごく立派で巨大な建物です。完成は1910年だけれど、設計は19世紀末。

いかにも19世紀の「GRAND(壮大)」さが鳴り響いているような建物です。


 

この過剰なまでの重厚な装飾、壁画。図書館というのは、都市のなかの聖域のひとつだし、都市の誇り、集合的自意識の反映。

建設や運営の資金は、19世紀から20世紀のはじめにかけて、カーネギーさんはじめ多くの富豪がお金を出したそうです。



 

建材も大理石がふんだんに使われていて豪華だしとにかく広いし天井高いし。まるでお城。なんでこんなに巨大でなければならないんだろうか、と困惑するほど。

当時のアメリカの、ヨーロッパに追いつけ追い越せという気概が感じられる気がします。
イギリスやフランスからは、まだ文化度が低く洗練を知らない田舎者扱いされていたアメリカ人たちの、鼻息荒く「今に見ていろ」っていう感じ。

「アメリカの青春」というのは1950年代ではなくて1900年代だったのじゃないかな。



 

でも、中の壁画や天井画は、圧倒的にボストンの中央図書館のほうが素晴らしかった。
ボストンのは、なにしろサージェントさんたちの筆だしね。
ボストンの図書館のことも書こうと思って後回しになっていました。

しかしこの図書館の宝は、壁画ではなく、目立たない1階のすみの児童書コーナーにあるのです!

 


例によって何も調べずに出かけたので、行くまで知らなかったのだけど、ここには「本物の」くまのプーと仲間たちが保管されているのです!!



ほんもののクリストファー・ロビンが持っていた、プーと、イーヨーと、ティガー(トラー)と、カンガと、もちろんピグレット(コブタ)も。




よこから見たところ。


コブタちゃんはかなり使い込まれた感があり、小さいけど存在感が強い。




なんで英国じゃなくてニューヨークに?と思ったけど、図書館のサイトの説明によれば、プーと仲間たちは1947年に米国にわたってきたらしい。どうやら出版社がブックツアーのために米国に持ち込み、そのまま出版社に飾っていたようで、1987年からこの図書館に展示されるようになったそうです。

1998年には英国議会が返還を求めたものの、その後「プーと仲間たちはアメリカの地で幸せですこやかに暮らしていることがわかり、英国の人もアメリカの人も、プーと仲間たちがニューヨーク公共図書館にとどまることに意見が一致しました」とありました。



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2021/01/26

激似ドーナッツとアメフラシの服


ひさびさにダウンタウンのウワジマヤへ行ってきましたら、フードコートにあの日本のドーナツチェーンの定番、○ンデ○ング(二文字隠すとなんかの感染症みたいですね)そっくりの「ジャパニーズもちもちドーナツ」やさんができていました。

もちろんフードコートはまだイートインができませんが、改装されててピカピカになっていた。

生地はUBE(紫色のタロイモ)を織り込んだきれいな明るいパープルで、おいしゅうございました。しかし1個2ドル75セントはたけえわ! 



マンガみたいな山盛りごはんを食べる人がいるので、お米がすぐになくなってしまいます。

きょうは日本産のお米が安かった。


たまたまなにかで目についた、オランダのデザイナー、Iris Van Herpen (アイリスじゃなくてイリスなのらしい、イリス・ヴァン・ヘルペン)の2021春夏コレクションがあまりにも素敵で何度もみちゃいました。

知らなかった、この人。ウミウシとかアメフラシみたいなオートクチュールのコレクションです。


上のYouTube動画より。この動くドレープやフリルの美しいこと。



映画『LUCY/ルーシー』(面白かった!)でスカーレット・ヨハンソンが着た衣装や、ビョークのアルバム・ジャケットの衣装、レディ・ガガちゃんの衣装も手がけてる人でした。はあ、なるほどですね。失礼いたしました。

生活にはまったく関係ないけど、はあー、綺麗だなやー。



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