2017/07/27
ルーフトップのパーティー
メトロポリタン美術館のつづきです。1か月以上前の話ですみません。
1時間ばかり川久保さんの服を見ていたら、冷房で身体が冷え切ってしまったので、屋上のガーデンへ。
セントラルパーク越しにビル群がみえる。
スナックバーがあって、ワインも売っていた。
美味しそうなレモネードがあったので、それは何?ときいたら、それもアルコール飲料だった。お酒飲める人はいいなー。
仕方がないのでハムとチーズのサンドイッチ(14ドル。高っ)を買って、水筒の水を飲みながらもそもそと食べる。
なんだかシアトルのような空模様が落ち着く。
ルーフガーデンにはAdrián Villar Rojasさんという若いアーティストの作品が展示されてました。美術館のコミッションで、この展示のために作ったものだそうです。
1980年生まれ。37歳かー。アルゼンチンの人。
ニューヨーク・タイムズの記事があった。 この記事に出ているゾウやキリンのが素敵。イスタンブール・ビエンナーレのだという。
このガーデンでフィーチャーされる作家さんとしては最年少だそうです。
すっごく線の細そうな青年。
食べ散らかしたテーブルのインスタレーション。
作品には、メトロポリタン美術館の収蔵品がフィーチャーされてるんだそうだ。
このトリとか刀とかも多分。ファンタジーですね。
この人の有名作品は、パタゴニアの山の中のクジラのインスタレーションなんだそうだ。2012年の作品。
My Modern MET からお借りしました。
こちらも上のサイトから。これはツボだわー。好きー。
これを見たときは何も前知識なかったけど、きっと若い人なんだろうなと思った。
幻想的で詩的でアニメっぽくて、ストリートな感じ。すんごい雑な表現だけど。
随分と軽そうなカバである。
これが一番気に入ったイケメンさん。謎のサル的な存在を両肩にのせたノマド。
ホームレスなのかなにかと戦う人なのか。
このサル的存在と変なライオンみたいな刀だか笏だかがメトロポリタン美術館の展示品なんでしょうね。メソポタミアかメソアメリカの出土品かなにかか。
神話的雰囲気とストリートなコスチューム。やっぱりアニメやSF映画を思わせる。
なぜか脈絡なく、バンクシーを連想した。パワー的にそういう方面な気がする。
この人の作風、バンクシーのグラフィティアートが持っているポエムな感じに似た印象がある。ストリート的な人物がそう思わせるのか。
しかしながら、もっと柔らかい、線が細い感じ。
女性的といっていいのか、草食的というべきか。
えーとこれは、閻魔大王? このエヅプト的ななにものかに跨っている少年は、飛行帽のようなものをかぶっている。『鉄コン筋クリート』のクロを思い出した。
アジア系少年だし。あなたはジブリと松本大洋が好きではありませんか?と聞いてみたい。
イタチさんにも萌えた。全然知らないアーティストだったけど、好きだこの人。
きっと良い奴だ。
2017/07/25
川久保玲さんの服
メトロポリタン美術館では、2つの大きな企画展をやってました。
アーヴィング・ペン写真展と、
コム・デ・ギャルソンの川久保玲さんの「Art of In-Between」。
どちらも直球どまんなかのツボだった。
建物のあまりの大きさに呆然としながら、ペルセウス(だっけ?)の綺麗なお尻をちらりと横目に見ながら(しかし写真は撮る)、川久保さん展会場へ。
広すぎてなかなかたどり着けなかった。
川久保玲さんの服は、もちろん、持ってません!Tシャツですらも!
1980年代から現在までの川久保さんの服を「in-between」というコンセプトで振り返る大回顧展。
不在/存在、デザイン/非デザイン、ファッション/アンチファッション、モデル/複製、ハイ/ロウ、昔/今、自身/他者、オブジェクト/サブジェクト。
といった対立する概念のペアが各セクションに振られていて、川久保さんの服は、その相対する概念の間で生まれてきた服たちとして紹介されている。
コブを持った服。「Body Meets Dress - Dress Meets Body」、1997年。
川久保さんの服はなんだかすごいなあと遠くから思っていたけど、 こんなにすごいのだとは知らなかった。
もうすべてに圧倒されました。この展覧会だけでもう本当にノックアウトされて、見終わったら、しばらく呆然、ぐったり。
川久保さんは正当なデザインの教育は受けていないというのも知らなかった。
40年間前衛であり続けられるってどういうことなんだ。
「The Infinity of Tailoring」、autumn/winter 2013–14。
男性/女性、自分/他者、東洋/西洋、子ども/大人、といったカテゴリーを問う服。
ただその問いをもてあそんだり、もったいぶるのではなく、それを綺麗な形につくりあげてしまう天才。
こどもと大人。カワイイの究極。
「この服はだれが着るのかしらね。不思議の国のアリスに出てくる服みたいね」
と、アメリカおばさんが不思議そうにいっていた。うん私もそう思う。
「Ceremony of Separation」、2015-16。
喪服のような、死と別れを感じさせる作品。
この人はお坊さんのような真面目さで服を作り続けているんだ、と思う。
その真摯さに泣けてくる。
これだけ突飛なデザインが、まったく衒いを感じさせないし、わざとらしくない。
「Broken Bride」、2005-06
“The right half of my brainlikes tradition and history,the left wants to break the rules.”
「わたしの右脳は伝統と歴史が好きで、左脳は決まりを壊したがっているのです」(2005)
「Not Making Clothing」、2014。
このコレクションはビデオで見た。演劇的なショウだった。
子ども/大人、過剰/欠落。
この展覧会の、ふたつの相対する概念の中に表されているものをいったん取り壊して再構築する、というテーマが、いつも川久保さんの制作の中にあるのかどうかは知らないけど、そのように説明されると本当にしっくり納得ができるのだった。
「Invisible Clothes」、Spring/summer 2017。
そしてその形が本当に息をのむほどカッコ良いのです。
「MONSTER」、Autumn/winter 2014–15。
「怪物」というのは「人間性の狂気」を表現しているそう。
「私たちが皆持っている恐怖、常識を超える感覚、日常性の不在。なにかとてつもなく大きなものによって、なにか美しくも醜くもあるものによって表されるもの」
上の段は、パリに衝撃をもたらしたという1982年秋冬のコレクション「Holes」の穴あきセーター。
「無」「間」「わびさび」の表現だという。この穴は「破れではなく、布地に新しい次元をもたらす『オープニング』。カットアウトはある種のレースになる」というのが川久保さんの説明。
Blood and Roses、Spring/summer 2015。
「コレクションのテーマは、社会状況に対する憤りから来ることが多い」
というものの、
「自分のデザインを、世界のなにかの問題へのメッセージにするつもりは全くない」とも。
血と薔薇。
バラの花はヨーロッパのバラ戦争にさかのぼり、「血と戦争、政争、宗教上の紛争、勢力争いに結びついている」。
Blue Witch、Spring/summer 2016。
中世から迫害されてきた「魔女」というのはフェミニスト的なテーマではあるけれど「私はフェミニストではない」「私は白昼夢も追わないし、幻想的なイマジネーションも持っていない。私はむしろリアリストなんです」と川久保さんの言葉。
18th-Century Punk、Autumn/winter 2016–17。
秩序とカオス。
川久保さんの服には、形式に一切よりかからないで、自己満足をしない、緊張感があると思う。
きっと、その緊張がちょっとでも緩んだら一切がだめになって単なる混沌になってしまう。カミソリの刃の上のような危うい場所で成立している「醜の美学」。その引力がものすごい。
楽茶碗のような服だと思う。
この緊張感は、利休さんの時代のお茶道具の緊張感のよう。
異次元のような空間にひっぱりこんで、有無をいわせず「これは美しい」と思わせるパワー。
“My clothes and the spaces they inhabit are inseparable—they are one and the same. They convey the same vision, the same message, and the same sense of values.”
「わたしの服と、その服がある空間とは切り離せない存在。互いに一つなんです。どちらも同じビジョンとメッセージを伝え、同じ価値感の上に立っている」(2017年)
Body Meets Dress-Dress Meets Body のコブ衣装を使った舞踏の舞台もあって、ビデオで上映されていた。
1997年に上演されたもの。
「The Future of Silhouette」、 Autumn/winter 2017-18。
こちらも最新の「The Future of Silhouette」。
袖すらない。
VOGUEの記事にコレクションの写真とビデオがありました。モデルが着て歩くとピーナッツの殻みたい。
いったいこの次に何を作るんだろうか。
この展覧会の写真がたくさん網羅されてる記事がありましたます。ニューヨークに行かない方はこちらで。
会期は9月4日までです。
2017/07/23
メトロポリタンへの道
もう1か月たってしまいましたがニューヨーク日記の残り。
マンハッタンでの最後の3日は、イーストサイドのセントラルパークの端のあたりに滞在しました。
ここもAirBnBで、ちょっと変わった感じのビルだったんだけど、目の前にセントラルパークがあり、眺めがとても良かった。
部屋から見える空が広いのはいいよねー。
お向かいのビルの屋上にも屋上庭園があった。ビルの上がぜんぶ庭園になるといいのにね。コストはどのくらいかかるのだろうか。
それだけでだいぶ都会は涼しくなると思うんだけど。
ここのアパートから、5番街をとことこ歩いてメトロポリタン美術館に通いました。
片道30分弱。2日ともお天気がよくて、朝は爽快だった。
美術館は10時半からだったので、途中のカフェで朝食を。
教会の建物の中にあるBluestone Lane というオシャレカフェへ。
道端にヨーロピアンな感じのテーブル。
このへんは法外なお金持ちがたくさんお住まいでいらっしゃる感がプンプンするエリアでした。イーストヴィレッジとは違います。ゴミもさすがにあまり落ちてない。
キヌアとフェタチーズとケールやらの入ってるボウル、15ドルなり。
ケールはちょっとモソモソしてた。
手前はなにかのペーストを塗ったトースト(もう忘れてしまった)。
ここのコーヒーは美味しかった!
もう少し先にはグッゲンハイム美術館。
ここは見る時間がなかった。でもショップだけは覗いてみました。
(ショップのほうが美術館よりも早く開店)。
カルダーのモビールもあったし、小さいけど充実の内容。
ほしいものがいっぱいあったけど、買ったのは小さい強力磁石セット10ドルのみ。
冷蔵庫に貼っておくやつです。
でも帰ってからみたら、シアトルの会社のデザインだったww
これもグッゲンハイム美術館のショップで見たアクセサリー。ブルックリンのアーティストMeghan Patrice Rileyさんの。
このクシャクシャっとなってるワイヤのネックレスがすごく好き。
2日目は、ニューヨーク市立博物館の前庭にある、同じくBluestone Laneのキオスクで。
お客さんが他にいなくて暇そうなイケメンのお兄ちゃんが親切でした。
ギリシャ出身でオーストラリアにいて、これからパリで勉強するんだ♪といってました。しっかり学べよ青年。
そしていよいよメトロポリタン美術館へ。つづく。
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