2016/04/07

富豪の愛した野原とクレーターズ・オブ・ザ・ムーン


なぜか急に思い出して始めた4年後の旅日記、最後です。

イエローストーンのすぐ南側にくっついているGrand Teton(グランド・ティトン)国立公園はとても静かな場所。大混雑のイエローストーンから入ったので、特にそう感じました。急に空気がしーんとする。

グランド・ティトンの土地の大部分は、1930年代、富豪のジョン・D.ロックフェラーが自然保護活動家に説得されて、開発から守るためにあちこちの地主から買って国立公園にするために寄付したもの。
ロックフェラーは地主たちに自然保護の意図を知られないように仮面会社を作って土地を買い集めていたのですが、それを知ったワイオミング州の地主たちから猛反発があったり、せっかく土地を寄付するといっているのに議会から公園にする予算がつかなかったりして難航し、ようやくグランド・ティトンとして統合されたのは第二次大戦後のこと。

富豪が作った国立公園って、アメリカらしいというか。

このティトンにもロッジが4つありますが、その中でもジェニーレイクの湖畔のロッジときたら、朝晩の食事つきで1泊800ドル。イエローストーンの混雑はスルーして静かに大自然を楽しむお金持ち向けなんですね。食事も高級リゾート並みに美味しいそうですよ。

 アンセル・アダムスが撮ったグランド・ティトンの山々。神々しい。

ジャクソン・ホールは不思議な土地でした。

ジャクソン・ホールというのは、クレーターみたいな穴があいているわけではなくて、こういう山々に囲まれた平らな土地です。まわりは山だらけなのに ぽっかり空いた穴みたいだという印象だったので、19世紀はじめにこの土地に出入りしていた毛皮猟師たちがそう名付けたのだとか。ジャクソンというのも、この辺で活躍してたわな猟師の名前だそうだ。
『レヴェナント』に出てきた人たちみたいな、まさにああいう感じだったんでしょう。

わたしたちはイエローストーンからの帰り道に急いで通っただけなのですが、どうしてか、落ち着かない気持ちにさせられる場所でした。
 

こちらもWikiコモンズより、アンセル・アダムスのティトンとスネークリバー。
富豪のおかげで、アダムスの時代とほとんど同じ風景を見ることができます。


ジャクソンの街に寄って昼ご飯を食べました。

スキー場があるリゾート地なので、ちょっと小洒落たレストランやカフェなどもある。そしてカウボーイバーもある。
すぐ目の前の山腹にスキー用のリフトがいくつも見えました。

ほんとにちっちゃい町なのだけど、こんなところで経済シンポジウム(ジャクソンホールサミット)をやるのだというのは後から知った。

町の真ん中にある公園には、エルクの角だけで作られたこんな門が。
これを見て、バッファロー乱獲の時代のこれを思い出してしまうのは私だけでしょうかね。

 Wikipedia より。1870年代のアメリカ西部のどこか。


富豪たちの集まるリゾートタウンに残る、ワイルドウェスト魂。なのか。

この日は、イエローストーンの湖からアイダホ州のボイシまで、400マイル近く走りました。


ジャクソンホールを出るとすぐにアイダホ。
アイダホフォールズから州間ハイウェイを外れて、地図上でみつけて面白そう!と思った「クレーターズ・オブ・ザ・ムーン・ナショナル・モニュメント」というものがある裏道を走ってみました。

この道がまた、予想以上に奇妙な場所でした。

古い火山の火口が大草原にぽつぽつとあって、ところどころにいきなり溶岩原が現れる。ほんとに月面みたいな世界が広がってます。

何があるのかまったく何も知らずに行ったので、いきなりの火山地帯に圧倒されました。
『Xファイル』に出てきそうな場所。

ここの溶岩は、最近のものでも2000年、古いものでは1万5000年ほど昔のものだそうです。ほんとに有史以前の火山。

イエローストーンみたいに大人気のイキの良い活火山公園があるかと思えば、人の住まない平原にこんな古い火山も隠れているなんて、アメリカって広すぎる。


そしてこの旧道は、その昔、中西部から太平洋岸を目指して移住した最初の幌馬車隊が通った「オレゴン・トレイル」の一部だったというのを、このモニュメントのビジターセンターに書いてあった説明を読んで知りました。

小さな馬車に家族と家財道具を積んで、こんな奇妙な土地を通って、見たこともない新しい「ホーム」へ向かうっていうのは、どういう心境だったんでしょうね。

宿泊地のボイシまで長い道のりがあったので、さくさくと通過しなければならなかったのですが、この土地はかなり強烈に印象に残ってます。機会があればまた行ってみたい。


この時はまだ若かった、マイ愛車。よく走ってくれたー。今もまだ現役ですけど、もう長旅はちょっと無理かなー。

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