2017/01/15

宇宙と核ミサイルの時代のスペースニードル

 Seattle library アーカイブより

今回のソイソース『たてもの物語』には、スペースニードルのことを書いてます。

1962年のシアトル万博「Century 21 Exposition」のときに建てられたスペースニードル。

スペースニードルがなかったら、シアトルは今とは違う街になったのじゃないかと思うほど、シアトルとはきってもきれない存在。

シアトルにとってのスペースニードルは、東京にとっての東京タワーやスカイツリーよりも、さらにもう一段重要な存在という気がする。ランドマークや建物が土地とそこに住む人に与える影響は、きっとかなりある。
その中でもスペースニードルはかなり特別な存在だと思う。

今回参考にさせてもらったのは、シアトルのコラムニストKnute Bergerさんの、この本



ミッドセンチュリーな素敵イラストもてんこ盛りの美しい本です。

スペースニードルは万博の構想の最初からあったのではなく、ほかのパビリオンの建設がもうはじまった後になってから実行委員のひとたちが「そうだ、タワー建てよう!」と思い立って、たった2年半でガシガシと作ったというのにはびっくり。

1962年頃というのは、そんな突貫工事が可能な時代だったんですね。

シアトル万博の実行委員長的な人が、シュトゥットガルトのラジオタワーを訪ねてインスピレーションを受けて、「こういうのをシアトル万博に建てよう!」と思ってから、用地も建設資金もないままに設計を完成させて発表。設計の仕上げはワシントン大学の教授でもあったVictor Steinbrueck氏も加わって、モダニズムの彫刻をヒントにあの有機的なシェイプをデザインしたのだそうです。

その後半年で出資者と用地を確保して、建築許可を取って即工事にかかり、8か月で完成したのだそうで、ほんとにすごいスピード。
現在だったら、建築許可が下りるまでに普通に3年くらいかかりそう。

そして、1962年というのは、そういえば、冷戦のもっとも緊迫していた時代で、前年にはベルリンの壁ができ、この秋にはキューバ危機があった年でもあったのだった。

ベルリンの壁とスペースニードルは同い年だったんですね。ちょうど同じ時に建設されていたという。

ケネディ大統領もシアトル万博にくるはずだったのだけど、ちょうどミサイル危機のときで風邪を理由に欠席したそうです。

以前、学校の地下に残っている核戦争用「フォールアウトシェルター」の存在を知っておどろいたのだけど、スペースニードルが建てられていた時代は、そんなシェルターがあちこちに作られていた時代でもあった。みんなが核戦争の可能性をリアルに感じていて、学校でも核戦争に備えた避難訓練があったり、地下室にシェルターを作る家もたくさんあったというそういう時代に、宇宙時代の明るい未来をプレゼンテーションしたのが「21世紀の博覧会」、シアトル万博だったということを、60年後に覚えている人はあんまりいない。

スペースエイジといえばドナルド・フェイゲンの曲を思い出すなあ、と思っていたら、スペースニードルをフィーチャーしたこんなビデオがありました。公式ではないですけど。



この時、まだ宇宙開発競争はソ連が大幅にリードしていて、アメリカは必死であとを追っていた。

連邦政府がおカネを出した「科学館(World of Science)」はミノル・ヤマサキの設計で、NASAの人工衛星のモデルや、チャールズ・イームズの作った短編映画も上映されていたのだった。

seattle municipal archive

当時6歳だったビル・ゲイツ少年にも、9歳だったポール・アレン少年にも、この博覧会はきっと強烈な印象をのこしたことでしょう。

20世紀の終わりに、この二人が作る会社がシアトルに莫大な富をもたらして、21世紀のはじめには、ポール・アレンさんの建てたフランク・ゲーリー作のEMP(最近名前がまた変わってMuseum of Pop Cultureになった)がスペースニードルのすぐ横に、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の建物も通りをはさんですぐとなりに並ぶことになった。


Seattle Library アーカイブより。

この頃の溶接技師は、命綱なんか使わなかったらしいです。 そんなものァかえって動きがとれなくなって危ねえってんだよ、と、まるで鳶職のようだ。

幸い、スペースニードル工事現場で死者も大怪我人も出なかった。

ニードルのてっぺんの展望レストランの大枠が完成した時には、まだ壁のない吹きさらしのレストランの現場にシェフを呼び、展望レストランで一番最初のディナーを職人さんたちにふるまった、というちょっといい話も、『Space Needle』の本で紹介されてました。

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