2012/01/15

Seattle Freeze


シアトルはアメリカのほかの都市にくらべて、友達が作りにくいのだそうです。

そういえば、もうずいぶん前、まだハワイにいた頃に、シアトルで数年間仕事をしていたという日本人の女の子から、当地では友達を作るのが難しかったと聞いたことがありました。

ときどきそんなことを耳にしてはいたのですが、数日前にNPR系地元ラジオ局KPLU の記事で、シアトルで友人が作りにくい現象に Seattle Freeze という名前があるのを知ってびっくりしてしまいました。

「シアトル・フリーズ」って、カタカナで書くと、スタバの新しい甘い飲み物みたいですね。

記事ではUrban Dictionary を引用して、「シアトル・フリーズ」をこう紹介しています。

“A phrase that describes a local public consensus that states the city of Seattle and/ or its outlying suburbs are generally not friendly, asexual, introverted, socially aloof, clickish or strictly divided through its social classes, thus making the city/ area difficult to make social connections on all levels.”

(地域の特色をあらわすとして地元で広く受け入れられている表現で、シアトル市およびその周辺地域の一般的な傾向が、親しみに欠け、セクシャルでなく、内向的で、人と距離を置きがちで、仲間内にしか打ち解けない傾向を持ち、社会階層間ではっきりと分断されており、ゆえにこの地域で社会的なつながりを持つことがあらゆるレベルで難しいことを指す。)

へー。

この地域に2年半住んでみた感想として、「フレンドリーでない」というのはまったく当たっていないと思います。

たしかに、 知らない人から突然当然のように話しかけられる回数は、アメリカのほかの場所に比べてずっと少ないかもしれません。街を歩いていて知らない人と目が合ったとき、アメリカ人は久しぶりに会った旧友のようににっこりすることが多いのに、シアトルではまるでそこに突然出来た壁のように見つめられることが多いようには感じます。

でも、たとえば東京と比べたら、シアトル人のほうがずっと人なつこい度が高いです。

東京ではすれ違う人と目を合わせること自体がとても少ないし、駅で知らない人から「そのブーツいいね」なんて声をかけられることは(キャッチセールスか酔っ払いのおっちゃんかナンパ以外では)まずないでしょう。(先日、バス乗り場の係員の人から急にブーツを褒められたのでした。目が合ってもにっこりしない人もいるけれど、垣根の低い人も一定数いるのですよね。でもそういう人はたいてい他の地域出身かも)。

東京に帰るたびに、街ですれ違う人と目の合う回数がなんと少ないことよ、と思います。でもそれは、公共の場で他人の空間に踏み込まないという社会的プロトコルがあるからで、べつに東京の人が特別冷たいわけではありません。シアトルも、アメリカにしては珍しく、ちょっとそれに似たところがあるのでしょう。

晩秋のころの写真ですが。KirklandのCafe Zoka。
やっぱりコンピュータ開いて自分の世界に没入の人は多いかも。



南部などの、あけっぴろげで垣根の低いのがデフォルトな地域から来た人は、シアトルのそんな傾向に出会うと、冷たくされたと思うのかもしれません。
おととし、翻訳のクラスでフランス人のマダムと知り合いました。彼女はテネシーだったかアラバマだったかの公立高校で10年近くフランス語を教えていたそうで、旦那さんの転勤でシアトルに移ってきたのでしたが、彼女はシアトルの人は放っておいてくれるから良い、と言っていました。南部では皆親切だけれど、それは「すごくsuperficial (上っ面)で、人のことに鼻を突っ込みたがる人が多い」、とも言ってました。感じ方はほんとにいろいろです。

フレンドリーさの尺度はともかく、「introverted(内省的、内向的)で、人と距離を置きがち」というのは、たしかにあるあるある、と思い当たるふしが。自分とセカイの違う人にあまり関心がないという感じは、たしかに受けます。でも頭から拒否したりほかの価値観や暮らし方を否定するわけではなく、ただおだやかに、少し遠くから無関心な目を向ける。シアトルの人にはそんなタイプが多いのではないでしょうか。






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12 件のコメント:

  1. 確かにそう言われていますよね~。表面的には好意的で人当たりが良いけれども、深く関わることが難しい、と。
    でも、表面の良さというのもとっても大事だと思うのですよ、心の平穏のためには。
    NYerとかだと、人は基本的にけなすもの、競合するモノっといった感触を受けることが有り、心の境界線に防御ネットを張るかささくれ立たせるかしてなきゃいけないみたいで…
    シアトルの穏やかさが有り難い私であります。

    p.s. asexualで吹いてしまいました。他の形容詞はSeattle Freezeでいつも出てくるけど、これは初めて見た。でも、深く同意。性差が少ないって気もするんですが…。

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    1. ニューヨークには、行ったことないのですが、なるほど、やはり。競争心がないならここに住むな!って感じでしょうか? ニューヨーク市民みんながみんなそうというわけではないかもですが、業界?によっては相当激しそうですね。『プラダを着た悪魔』を思い浮かべてしまった。わたしもシアトルのメロウさが心地よいです。

      Asexual、わかりますよねー。男の子も女の子も、中性的な人が多いような。ラテン系のどうよどうよ!ってオーラを放ってる人は少ない感じがしますw

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  2. 頭から拒否したりほかの価値観や暮らし方を否定するわけではなく、ただおだやかに、少し遠くから無関心な目を向ける。シアトルの人にはそんなタイプが多いのではないでしょうか。

    これいいね。
    でも「無関心な目を向ける。」ってところが
    深い。
    行ってみたいなあ。

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    1. なんだか返信欄ができていて、使いやすくなりました。

      無関心、で合っているのかどうか、わかりませんが、じろじろ好奇心をあらわにしないのを美徳とするようなところ、東京と似てる気がします。

      シアトルいらしてください~~!お嬢様と二人でっていかが?

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  3. シアトルフリーズ!
    初めて知りました。
    つい、昨日からの寒い天気のことかと思ってしまった・・。

    そうなんですね。。
    アメリカの中では、ちょっと距離感が感じられる
    アメリカ人が多いということですね。
    でも・・・ほんと、
    日本に比べたら、、、ですよね(笑)
    そんな日本から来た私にしてみれば、
    こちらの人たちは、なんてフレンドリーなのかしら!?って
    思ったほどです(他の州には行った事がないので・・・)。
    でも、、、このぐらいでちょうどいいですね・・・。
    今以上にずんずんとパーソナルスペース内に入ってこられるのも、、
    疲れそうです(笑)

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    1. masakingさん、ほんとにほんとに、凍ってますよね、昨日あたりから(笑)。
      このあたりでは雪もぜんぜん積もっていないのですが、車のフロントガラスがすっかり凍ってしまったし、息子のサッカーの試合もキャンセルになったので、もう買い物もあとまわしにして、ぬくぬくこもってました。

      距離感があるんですよね。日本人からしたら、よほどフレンドリーに感じられますけれどね。カリフォルニアの人なんかとは、またずい分違う気がします。

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  4. Seattle Freezeなんて言われているのですね~。
    私は他の州に住んだことが無いので違いが分からないのですが、
    旅行や映画などで比べる限りは、
    やはりAntisocial寄りのネクラタイプが多いのかもしれないですね(笑)。

    これってやっぱり、天気のせいでもともとネクラ系が多くて、
    Geekの資質を持った人が必然的に多くなっちゃって、
    MicrosoftができたりGoogleなんかが入り込んできたのも当然のことなのかな、
    と思ったりしています。

    でも私は生まれてからずっと東京で、東京以外の人達が歌にもしてしまうような、「冷たい東京」が当たり前で育ってしまったし、
    やはり私もIntrovertが過ぎて、日本でも窘められてた方なので、
    ここでもうじゅうぶん過ぎるくらい、皆さん人懐こいし親切です。
    これ以上があったらしんどくなりそうです(笑)

    「頭から拒否したりほかの価値観や暮らし方を否定するわけではなく、ただおだやかに、少し遠くから無関心な目を向ける。」
    というところ、
    すごくうまく言い表されているなあと思いました。

    そういう感じの人たち、いますね!
    人の話を尊重して穏やかな笑みで興味有りげな上手い相槌を打ちつつ、後日展開はない(つまり本音は興味なし)、みたいな(^^;

    日本人のアメリカ人へのステレオタイプのイメージに、
    「アメリカ人はハッキリ本音を主張した付き合いをする」というのがあると思うのですが、
    私が見る限り、周囲のアメリカ人は、表ヅラがとても良くて本音を綺麗に隠してて、東京人よりもさらに浅い付き合いを好んでるように見えます。
    (確かに言わねばならないここぞという時には、日本人のようにオブラートに包まず思い切りスパッとやられてびっくりってことはあるわけですが(笑)。)

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    1. >天気のせいでもともとネクラ系が多くて、Geekの資質を持った人が必然的に多くなっちゃって、
      あははっ、たしかに、天候が性格に影響するのって、あるかもしれませんね。
      もともとここに多かった北欧の人も、わりに個人主義なのかな。

      アメリカ人、本音と建前がかなり違う!というのは、ありますよね~。 本音は何層にも隠してるっていう場合が、とてもありそうです。プレゼンテーションの社会ですから、建前をいつでもきっちり綺麗に作れるように、叩き込まれてるのでしょうね。

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  5. へ~っと、私も思いました。
    そう思うと、シアトルも、ニューヨークも(行ったことないけど、そう聞くだけ。)、東京もそうかも?と思ったり。
    他人とはかかわりたくない・・・と言う気持ちでしょうか?

    確かに思います。
    東京と比べたら、シアトルの方が絶対人なつっこさは勝ちですよね。

    でも!私大阪に行った時に、駅で全く知らないおばちゃんに「あらっ、そのセーター素敵やね~!どこで買ったの?」って肩たたかれたの。
    大阪だったからか、気のいいおばちゃんだったからか、それは定かじゃあないんですが。

    たぶん・・・自分でニコッとしてみることも大事かしら・・・?とも思ったり。

    『お財布なくして、戻ってくる率が高いのはシアトル』っていうのを聞いたことあります。
    もしかして、気持ちはあっても恥ずかしがり屋さんが多いのかも??

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  6. オレンジ猫さん、そうそうそうそう、関西の人って、わたしひそかにラテン系だと思ってるのですが(笑)、とくに大阪のおばちゃんときたら、とっても垣根が低そう。
    ほかの地域でも、いえきっと全世界的に、おばちゃんは他人との垣根が低いのかもしれませんね。

    「お財布なくして戻ってくる率が高いのはシアトル」それは知らなかった! うんうん、わかる気がします。ハワイの人も「アロハ・スピリット」で人には親切にっていうのが当然のように期待されてますけれど、シアトルの人はことさら目立たずにさらっと親切にしてくれる感じですね。そういえばm去年、家の近所で家と車の鍵をなくしたとき、だれかがそっとドアの前においていってくれたことがありました……。

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  7. 面白い言葉ですね!自分が、なぜアメリカではシアトルに住みたいって思ったのか、が分かりました!
    旅行でフレンドリーにガンガン話しかけられるのは楽しいのですが、住んでてそれをやられると、疲れると思ってしまいます。
    大阪のおばちゃんワールドも大好きだったですけど(笑)ほんと、ラテンだと思います、特に大阪!金色のハイヒールが普通に売ってたし!
    セカイが少しでも被ると、興味を持って入ってきてくれる、くらいが、丁度よいですね。シアトルは、まさにそんな感じ。先日、髪がピンクの若い女の子に話しかけられて、子育て楽しいよねー!って言われたのに、ちょっと感激しました!
    でも、シアトルに限らず、アメリカ人も、意外と深いところまで簡単には入らせてくれないっていう印象があります。フレンドリーっていう尺度自体が、表面的な部分に使う言葉なのかな・・・。

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    1. ZIZIさんもそう思う? この距離感が心地良いのですよね。近すぎず遠すぎず。好奇心むき出しにしないし、押しつけないし。
      ピンクの髪のヤンママ(…死語?)、いいですねー。そういう若くてちょっと多方面にとんがった感じのオシャレなお父さんお母さん、シアトルではよくみかけますよね。
      アメリカ人のフレンドリーさって、たしかに表面的な社交上の礼儀みたいなところがありますよね。外側に対してはトーンの高いお面をかぶってるというか。

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