2020/11/23

とんでもないギャンブル [DAY 8]


ロードトリップ8日目。魔の?ルート93号線に拒絶されて、州間高速「I-15」号線へ迂回した午後。

93号からI-15への出口にあったガソリンスタンドで少し長めに休憩して、夜になってからもう一度給油とトイレのために小休止したほかは、ひたすらまっすぐ走りました。



それでも遠い道。


I-15号は、ザイオン国立公園のすぐ西側あたりを通ります。
ほんの数日前にいたばかりなのに、なぜかとても懐かしかった。

ソルトレイクシティを通過するころにはとっぷり夜になり、たまたま何かのイベントがあったのか、高速沿いで花火が上がっていました。



これはザイオンの西側あたり↑。のどかな牧草地を走るプリウスちゃんの影がかわいかった。

「インターステート」つまり州間高速道は、どんなに荒野のまんなかであっても片側2車線で、それなりに照明もあり、なによりも携帯通信がつながりやすい(うちはT-Mobileという会社と契約してるのですけど、この日行くはずだったルート93号のあたりはほとんど電波がとどかない地域だったのでした。それも当然、あとから知ったわけですが)。

というわけで、様子のわからない地域を夜間移動しなくてはならないときには、やっぱりインフラの整っているインターステートが安心です。

トイレと案内版などがある「レストエリア」もところどころに配置されているし(日本のサービスエリアみたいにお土産屋さんやレストランはないけれど)。

ソルトレイクシティからこの日の目的地、ウェルズまでは別のインターステート「I-80」号線の西行きに乗り換えて3時間弱。

 ソルトレイクシティの外に出ると、また丘陵と荒れ地がつづきます。外はまっくらで何も見えない。

もうこの時点で8時を過ぎていたでしょうか。この日も朝からずっと青年が運転していました。わたしはこのへんで少しウトウトしつつナビゲートしていて、どこかに寄ってごはん食べなくて大丈夫〜?と尋ねたのですが、朝から缶コーヒー3本を飲んで目が冴えていた青年は、特におなかは空いていないという。わたしも別段空腹ではなかったので、そのままホテルまで直行することに。

ソルトレイクシティから1時間半ほど、ネバタ州境を越えたあたりに小さな町がありました。

そこを通過するちょっと前に、青年が

「ガソリン入れたほうがいいかな。保つかどうか50/50チャンスだけど…?」

とつぶやくように言ったのですが、わたしは

「?ふーん?」

と聞き流していました。

あとで聞いたら、あれは私に意見を求めたのだ、と主張していましたが、そんなん知らんわ!自分で決めろー!

そこからウェルズまでは60マイル(約96キロ)。

その町への出口を通りすぎて10分か20分かしてから、青年が急に焦りだしました。

「……ガソリンが足りないかもしれない…。あと何マイル?」

燃料ゲージが最後の一本になってしまったというのです。

予備タンクで走れるのはおそらく30マイルくらい。いくら燃費のよいプリウスちゃんでも、山道ではアクセルを踏み込まないといけないので消費が上がります。

まわりは人家ひとつない、まっくらな砂漠。

 


このときわたしの頭に蘇ったのは、青年が高校生のときに敢行した第1回ロードトリップで、ワイオミングの山道を走行中、やっぱりガス欠寸前になって大焦りした日のことでした。あれは昼間だったけど。あのときは私が運転してて、青年は爆睡してたんでした。

グーグル・マップによれば、ウェルズまでの間に出口はひとつだけ。

それも「オアシス」という、いかにも天の助けのような名前の出口でしたが、検索してみると人家すらほとんどない場所で、もとよりガソリンスタンドなどありませんでした。

上り坂さえなければなんとかなるかもしれない…」

とのぞみをつなぐ私たちの前に、当然のように、次々に山が…のぼり坂があらわれる。

ついに青年は、プリちゃんの速度を落としてエコモードで走りはじめました。


制限速度70マイル(時速約113キロ)のところ、35マイル(時速約56キロ)で走行。

わたしもワイオミングでガス欠寸前になったとき、ガソリンを使わないようになるべくニュートラルにして、しかも外は摂氏40度くらいの猛暑だったけどエアコンも消して走ったのだった…。親子で同じようなことを……。

時速56キロって、首都高速だったら普通の速度だけど、アメリカの夜のインターステートハイウェイでは、カメの歩みのように感じられます。

右側車線(遅い車の車線)を、ハザードランプを点灯して35マイルで走っていると、次々にトラックに追い抜かれていきました。

あまりに面白いので記念に撮っておいた。左の「35」と表示されている速度メーターの横が、燃料ゲージです。


快晴で良い月夜だし、インターステート上だし、人家はないとはいえ携帯もつながるエリアだし、まあ最悪ほんとうにガス欠になっても町まで20キロくらいの地点までは行っているだろうから、死ぬことはなかろう、と、いちおう保険会社のロードサービスの番号を確認しつつ、さすがに少しテンパってきた青年を眺めていました。

うちの息子は、年のわりにかなり落ち着いていると親ながら思います。高校のときは決してこんなではなかったのだけど、いつの間にかずいぶん成長して、わたしよりずっとしっかりしてると思うこともよくある。親が知らない間に色々苦労したんですね。

でもその青年も、このときばかりはけっこう狼狽していた。しかし、たとえばお父さん(元旦那)だったら、きっとこういう場面で逆ギレして大騒ぎだろうなあ、と思うとおかしかったです。 あの人だったら間違いなく怒り出すと思うな。

ま、情緒面ではわりに「しっかりしている」といっても、とつぜんこういう謎の大ボケ(「50/50だよ」とか言ってる時点でそもそもおかしい。なぜそこで給油に行かず無駄なギャンブルに走るか、そこが不思議)をかますところは、母親ゆずりです。 

 

そして、いよいよ「要給油」の黄色いランプが点灯して、ウェルズまであと17マイル!16マイル〜!とカウントダウンしていたところ、まっくらな道路の右側に「近隣に刑務所あり。ヒッチハイカーを乗せるの禁止」という趣旨の看板をみつけました。


「ひー、ここでガス欠になって、停まってるあいだに脱獄囚に襲われるってどうよ?」

と最悪のシナリオが浮かび、親子で大笑いしてしまいました。

幸いにもそのさきはゆるやかな下り坂で、脱獄囚に襲われることもなく、ウェルズの町までたどりつくことができました。

ガソリンスタンドの照明が神々しく見えたw

ホテルに着いて車を下りてみたら、寒いのなんの。零下4度Cでした。

ひー。ガス欠にならなくてよかった〜。真っ暗な夜道で助けを待っているあいだに凍える羽目になるとこでした。



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