2021/05/01

ノマドランド


久しぶりに植物園へ行ってきました。

ツツジが満開。遅い桜も、木蓮も辛夷も、いろいろ咲いていてにぎやかです。



クリームイエローに濃いピンク。面白い色の八重桜。



いつも鳥を連想してしまう辛夷の花。


ちょっとホラーな木。


火曜日に、ショアラインのCrestシアターに『Nomad;and(ノマドランド)』を観に行ってきました。

映画館に行くのは去年2月以来、はじめてです。

予告編(ウェス・アンダーソンの新作だった)が始まったとたんに泣きそうになっちゃった。ああ映画館の画面ってこんなに大きかったんだっけね。

映画は良かったー。アカデミー賞とったので混んでるかと思ったけど、そこは安定のクレストシアター。ご近所の年齢層高めのオーディエンスで、客席は4分の1くらい埋まってました。

窓口に、「ほかのグループから3席離して座ってください」と、ダイヤグラムが書いてあった。前後左右3席ずつ離して座れというのだけど、なかなか難しい注文でした。



『ノマドランド』は淡々としていながらもとても面白かったし、画面が綺麗でした。

「ぜひ大スクリーンで」というのはうなずける。アメリカの平原をロードトリップしている気分が味わえます。

うちの青年と8年前のロードトリップで行ったサウスダコタ州のバッドランズ国立公園や、その近くの巨大みやげ物ショップWall Drugsが出てきて、懐かしかったのもあり。

主演は、『ファーゴ』の保安官役が素晴らしかったフランシス・マクドーマンド。『ファーゴ』はいろいろ個人的に思い入れの深い映画です。あれも平原の小さな町の映画でした。

Amazonの倉庫が、例年11月から新年にかけての最繁忙期に季節ワーカーを大募集しているのは聞いていましたが、そのなかにこういう高齢で車中生活を送っている人たちがかなり多いというのは、全然知らなかった。

鉱山が営業を停止して、町がひとつすっかりなくなってしまうところから始まる映画。

60歳すぎてなにもかもなくす。改造したヴァンに住み、年金暮らしもできず、アマゾンの倉庫やキャンプ場のトイレ掃除といった仕事をしなくてはならない未亡人の話、というと悲惨で暗い気がしてしまうけど、まったくしめっぽい演出はなくて、アメリカの広大で美しい荒野に向かって瞑想しているような主人公ファーンの姿が、のびのびした透明感をもって描かれていました。

この広々しすぎな国土よ。


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2021/04/26

ボストン美術館の怖い絵【閲覧注意】


 ボストン美術館にもいろいろ怖い絵がありますが、なかでも強烈だったのがこれでした。

英国の画家ターナーの『The Slave Ship(奴隷船)』。
1840年の作品ですが、1781年に起きた実際の事件を題材にしています。

限度を超えて奴隷をぎゅうぎゅうに詰め込んで船出した英国籍の奴隷船Zong号が、途中で飲料水が足りなくなったために、主に女性と子どもの奴隷132名を海のまんなかに投げすてたという事件。

水が足りなくて奴隷が衰弱死すると「自然死」とみなされて保険金が下りないために投げ棄てた、ということで後日保険会社とのあいだで裁判となり、世間の知るところとなって、英国での奴隷制廃止運動を後押しすることになった事件だそうです。

英国で奴隷制が廃止されたのは1833年。

ほかの国、とくにアメリカではまだまだその後30年以上も奴隷制が続いていた時代に描かれたものです。

 


ターナーというと水彩画で有名ですが、これは油彩画。

ダイナミックな波と夕陽の間に去っていく船の手前には、よく見ると波間にたくさんの手と鎖が目に入って、ぞっとします。

 


そして画面の右手手前には、まぎれもなく人の足が。女性のものらしい足が、足首に鎖をつけられたまま、一斉に寄ってくる魚たちの餌食になっています。


昨年ボストンに見に行ったときには、この絵にインスピレーションを受けて制作されたハイマン・ブルームの『Sea Scape II』という絵が、同じ部屋に展示されていました。



ふだんはボストン郊外のダンフォースアート美術館に所蔵されている絵。1974年制作。

このときは、ボストン美術館で開催されていたハイマン・ブルーム展のために貸し出されていました。

こちらはターナーの魚たちよりさらに凶暴さを増し、必死に肉を喰らう、命の恐ろしさが画面いっぱいに描かれています。

ハイマン・ブルームという人は全然知らなかったのだけど、50年代、ポロックと同時代に抽象表現主義で注目された人で、その後、皮を剥がれたり腐乱した動物や人体という独特の主題に入り込んで独自の境地をひらいた人。

ユダヤ系で、東ヨーロッパのリトアニアから第二次大戦前に迫害を逃れてアメリカに移住し、ボストンにずっと住んでいたようです。

 


ハイマン・ブルーム展は、全部で20点かそのくらいだったかと思います。わりあい小規模の展覧会だったけれど、題材がどれもこれも生々しくて、点数のわりにかなり体力を消耗しました。

たしかに恐ろしく引き込まれる題材ではあり、美しさがないかといえばこれも美しさであるけれど、日常的な感覚から「そちらの感覚」へよいしょと移行するには、やはり気力と体力を使います。

なぜこんな不快なものを見せるのだと怒る人も当然いると思う。それは責められるべきじゃないし、これを美しいと思えと強制すべきでもないかわり、こんなものを展示するなと規制すべきでもない。

アートは、ルノアールみたいにひとをキラキラ幸せにするだけでなくて、ときに異物を口につめこまれるような違和感や恐怖を催させるものですね。

何十年という時間をかけてそれを真剣にやっているひとの作品には、それなりに真剣に対峙するとなにかしら得るものが必ずあると思います。

そうしたくなければ対峙する必要もまったくないわけですが。でもそういう幅がひろくあることが、社会の豊かさなのだろうなと思う。

 


この足の絵は個人蔵で、どこかの美術館のキュレーター宅で食卓の上に飾られていたそうです。いい趣味ですね…。




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2021/04/25

「私たちはどこへ行くのか」の予言


青年はきょうボストン旅行から帰って来ました。
ボストン美術館でバスキア展を観たそうです。

去年の2月、ロックダウン直前に行ったときの記事に、そういえば続きを書こうと思ってたのでした。1年以上前に…。

ボストン美術館はほんとにみごたえたっぷりで、まる2日かけても全部は観きれない感じでした。


以前に東京で開催された『ジャポニスム展』のときにもお目にかかった、モネの奥様のコスプレ「ラ・ジャポネーズ」。



 ゴーギャンさんの傑作『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』は、やはり、とてつもない迫力でした。


制作は1897年。19世紀のおわり。

教会は権威を失い、新しい科学の見識がひとの思考をひろげ、工業化が恐ろしい勢いですすみつつあり、ヨーロッパの帝国が崩れはじめていた時代。

人の精神にも経済にも社会にも大きな変化が起きていた。

このあとに人類未曾有の世界大戦が立て続けに起こり、世界各地で何百万人という人が死ぬのだと思ってこの絵を見ると、迫ってくるものが重いのは当然だと感じられます。

ゴーギャンさんのダメ人間ぶりは以前にも確認しましたが、いかにエロおやじであっても、変わっていく時代の予感を全身でとらえていた人なのだと思います。
 

今の時代も、19世紀末と同じくらいの変化を前にしているのかもしれませんね。

 

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2021/04/23

昭和の遺物とラーメン

 

2回めのワクチン接種を受けてきました。

その晩からかなり腕が重くなったけれど、さいわいそのほかの副反応はとくになし。翌日はすこしだるくて良く寝たけれど、もともとキモセラピー中で基本的によく寝ているので、どこまでがワクチンの反応だかはわかりません。

うちの青年も東海岸に行く前日に2回めの接種を受けましたが、特に何事もなかったようでした。きょうはニューヨークのメトロポリタン美術館でゴヤを観てるそうです。いいなー。

 



あっという間に4月もそろそろ末。日本はそろそろゴールデンウィークですね。

先月から新しい治療をはじめて、ほんの少しだけど体力が戻ってきました。山登りは無理だけどすこし長い散歩ができるようになりました。

 


このあいだTwitterの話題になっていて、へー!と思ったのですが。最近の若い女性は「…なのよ」「…だわ」というような「女言葉」、もう使わないようですね。
昭和の遺物になってしまったのね。

「うちの親戚は普通に使ってるけど」…といった会話をみつつ、昭和は遠くなりにけり、と思いました。

という記事などをnoteに書いてます。お暇でしたらご笑覧くださいませ。

 


うちのすぐ近所にブリュワリーが何軒もできてビール横丁みたいになっている通りがあるのですが(横丁じゃないけど)、そこにラーメン屋さんの「屋台」がやってくるようになりました。(フードトラックだけど)

Midnight Ramenさん。パリやメキシコでフランス料理シェフのお仕事をされていたご主人のお店だそうです。
週末に行ったら売り切れで、平日午後5時に出直しました。それでも注文までに20分待ち。お二人だけで回している屋台なので待ち時間は長いけど、おいしかった。


テイクアウトのラーメンはスープを別容器にいれてくれます。でなければのびのびになってしまうよね。

醤油味「尾道ラーメン」(12ドル)と、たこわさのセビーチェ(6ドル)、ひよこ豆のカレーのバンズ(2個で6ドル)。
外食が高いシアトルでは、フードトラックとはいえかなり良心的なお値段設定。

わりとあっさりしていて胃にもたれないラーメンでした。麺は太麺。

たこわさとカレーも、真面目においしかったです。

早めに行って並ばなくてはならないのが難点だけど、近所にオーセンティックなラーメン屋さんができて嬉しいです。TARGETもできたし、この通りにいろいろ引き寄せてるなーわたし(違ww ラーメンはいいからいますぐ5億円引き寄せたいな。

しばらく快晴つづきだったシアトルですが、またあしたからはしばらく曇り空が戻ってくるもよう。

 

 


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2021/04/20

500円のカレーパンとハンバーグ

急に夏のような陽気になってしまったシアトル。

ありとあらゆる花が咲きまくっています。



ご近所の素敵なお宅のしだれ桜。外壁の色とガラスのついた風見鶏がお洒落。


 この春、とてもよい声で啼いているハウスフィンチくんたち。去年まであまり気づかなかった。

 


 青年は1週間ほどボストン&ニューヨークへ。早朝の高速道路、じつにひさしぶり。

 


 朝の街を見るのもとっても久しぶりだった。

 


ちょうどフジベーカリーさんの開店時間だったので、カレーパンを買って帰りました。うほうほ。

うめえー。しかーし。カレーパン4ドル95セントってめっちゃ高いよね。びっくりした。

日本でカレーパン1個500円って、かなりあり得ない価格設定では。
だって吉祥寺の「一圓」でぎょうざ定食500円(税込み)だったし。



こちらは先週のハンバーグ。1ポンド半(680グラム)ぶんのひき肉でハンバーグ8個つくって、翌朝までにすべて消えてしまいました。夜中の2時にとりつかれたようにハンバーグを焼く青年。牛肉にはなにか、脳に直接はたらく麻薬的なものがはいってるらしい。

ソースはケチャップ、赤ワイン、中濃ソース。ケチャップと赤ワインはほんとになんでもいいけど、ブルドッグの中濃ソースかとんかつソースでなければなりません。

 



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2021/04/17

バーク博物館

ワシントン大学では併設のBURKE MUSEUM(バーク博物館)に行ったのでした。

わたしが学生証持って通っていたあいだはずっと工事中で、一昨年の10月にリニューアルオープン。オープンしたばかりなのに、去年はコロナでほとんど閉まっていました。

建築はシアトルの有名設計事務所、Olson Kundig



入り口脇にカフェがあります。ここの表のガラスの壁が一枚の扉になっていて、ガーと上に引っ張り上げられるしかけ。開放的なつくりになってます。



このハンドルとギヤボックスで開閉する、ちょっとスチームパンク的な仕掛けはオルソン・クンディグ事務所のシグネチャー。かっこいいですねー。



室内も、まんなかに4フロア吹き抜けの階段スペースがあって、ひろびろと開放的なつくりでした。


考古学の資料と古生物学の標本がそれぞれテーマごとに展示されている「自然史&文化博物館」です。

19世紀から20世紀はじめ、各地の部族の村から白人の手によって持ち去られ、博物館のものになっていた先住民のトーテムなどが部族に返還されたいきさつなども紹介されてます。



ワシントン州となった地域で、かつて話されていた言語の分布図。こんなにたくさんあったんですね。ベーリング海が氷河だったころに東アジアのほうからわたってきた人たちなら、日本人に近いのかもしれません。


現在では「レーニア山」と呼ばれている山にも、当然それぞれの部族の名前がありました。


古生物学の標本はほんとに面白い。

インタラクティブな展示には、まだ「触らないで見るだけにしてください」と書かれていて、フルオープンではなかったけれど、小さな子どもたちを連れたお母さんが何組かきていて、だんだん日常生活が戻ってきた感を実感しました。



これはインドネシアの珍しいイノシシ「バビルサ」の骨で、税関で没収されたものが寄贈されたと書いてありました。

このイノシシ!この牙はちょっとどういう用途があるの?と思ったら、なんと自分の牙が脳天に刺さって死ぬこともあるのだそうです!!

じわじわと自分に向かって伸びてくる自分自身の牙を見つめながら生きるという……カミュもびっくりの不条理。

上階の半分近くはこういうぐあいにガラス張りの研究室になっていて、学生や研究者たちが作業をしているのを動物園の檻でシロクマかなにかを見るように眺められるのが面白い。


コロナ禍で研究室もまだフル稼働はしていないため、ちらほらと一人で作業している人が各部屋にいるほかはがらんとしていましたが。

ひとつの研究室の前には「ビジュアルが人によっては不快に思われるかもしれません」というような注意書きが。
クマの骨格標本が制作中で、まだ肉がいっぱいついた状態の骨がテーブルのうえにぽんと置かれておりました。

骨にするまでの過程の前半戦、肉を食べる力仕事は甲虫にやらせるんだそうです。



この手前の絵のなかで、ガイコツに乗った虫が「I made this」といってますが、奥に見えている冷蔵庫のなかで虫たちのその作業が進行中だそうです。

ドラマ『デスパレートな妻たち』で、こういう形の冷凍庫に夫の死体を保管していたっていうエピソードがあったのを思い出した。


美しい系統樹。規模は小さいけれど、展示に工夫があってデザインも素敵で楽しく眺められます。

入館料はけっこう高いけど(おとな22ドル子ども14ドル)。


保管庫(アーカイブ)もガラス張りで、正式に展示されていない「在庫」の一部がみられるようになっています。
これがまたけっこう面白い。


ウェブでもARでも情報は見られる時代になったけれど、やっぱりリアル空間の体験は別もの。


特別展。アーティストのRay Trollさんの作品で古生物とワシントン州など西海岸で発掘された化石の世界をみる『Cruisin' the Fossil Coastline』。

アンモナイトってイカとかタコの親戚だったのね。


ちょっと隠れたところに、巨大トパーズの原石なんかも展示されていました。





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2021/04/16

生計費500円

 

桜の花だけでなく、若葉もキラキラで美しい4月です。もみじの若葉。



イーストレイク(ダウンタウンのすこし北あたり)の、青年がボストンに行く前にしばらく住んでたアパートの近くのカフェに行ってみました。

屋外席が気持ち良い季節になってきて嬉しい。




 このカフェがある通りの名前がBOSTON STREETだって今気づいたw

そして、舗道に妙なタイルを発見……。海の生物たちだ。なぜ。

 


 

ところでさっき、YouTubeで『生計費500円』というとてもストレートなタイトルのドキュメンタリー短編を見ていろいろ衝撃を受けました。昭和21年の日本です。

終戦直後、日本は米軍の占領下にあって、食糧が配給制だったんですよね。

知識として知ってはいても、じっさいの映像でその生活ぶりを見ると愕然とする。

政府は、月額500円で生活できるはずだと言っているけれど、じっさいにはこんなにお金がかかる、500円じゃ薬缶も買えないしお風呂は4人家族が1週間に1回しか行けないし(銭湯に)、なにより食費が600円以上かかる!政府は労働者のためにもっとよい政策を!という映画でした。いまの物価だとどのくらいなんだろう。一軒家の家賃が35円だったそうです。

冒頭に「われわれ日本人は、いままであまりに数字でものを考えることをしなかった」と出てきます。「進め1億火の玉だ」で玉砕、敗戦から1年後の日本。

映像として衝撃的だったのが、東京の風景。


焼け跡に電車が走ってる。これはどこだかわからないけど、山の手線?

(前篇の5分あたりの映像です)

東京の中心には住めるような家がないのでみんな郊外に住み、電車で通っている、というナレーションもはいる。

わたくし昭和40年生まれなんですが、自分の生まれる20年前がこうだったんだということが、かなりがつんと来ました。

この窮乏の中で誰もがヤミ米を調達しつつ満員電車に乗って通勤して働いて、新時代の産業も科学技術も文学も築いていったのだなあと思うと、震える。 当時の日本人、いまの日本人より数倍元気な気がする。

この時代から昭和50年代くらいまでの文学も、今読むとほんとになんというか生命力にあふれているように感じます。猥雑さとうらおもてのパワーがあるというか。いまの日本はキレイで整っていて静かで生命力はあまりないような。

わたしが10代だった昭和50年代があんなに豊かな時代だったのは、敗戦後、この時代の日本の人たちの夢と希望とおそろしい馬力と歴史の奇跡のたまものだったんですね。

 



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