2019/04/23

ダビデくんとプリズナーたち <フィレンツェ思い出し日記 その4>


リッカルディ宮殿の次に行ったのは、フィレンツェのメインイベントのひとつ、アカデミア美術館。

夏場は行列で入場するまでに長い時間がかかるそうですが、3月初めは並ばずに入れました。
「フィレンツェカード」というフィレンツェ市内の美術館の共通カード(85ユーロで72時間有効)を利用したので、次の日のウフィツィ美術館も優先入場できて便利でした。(その後ルールが変わって、フィレンツェカード持ってても入館時間の予約が必要になったようです)



世に名高いミケランジェロのダビデ像。ミケランジェロ27歳〜のときの作品。

実物を見て、思ったより大きい、という人が多いみたいだけど、私の脳内ではダビデくん超巨人化していたので、あれ、意外にちっちゃい、と思いました。

もとはドゥオーモの外壁の高いところに飾る予定だったのを、あまりにも美しく力強く感動的な作品に仕上がってきたので、政治の中心だったヴェッキオ宮殿の正面玄関に飾ることになったそうです。(今ではヴェッキオ宮殿の前には同じサイズのレプリカがあります)

これから倒そうとする巨人ゴリアテに目を据えるダビデ。
この素っ裸の像は、やっぱりかなり明白にローマ・ギリシアの異教の神々から受け継いだオーラをまとっていて、そして自信でいっぱいです。


リック・スティーブズさんは
「ルネサンスのフィレンツェ人たちはダビデ像に自分たちを重ね合わせていた。ほかの巨大な都市国家と互角に戦う、神に祝福された小さな存在として。そしてより深いところでは、中世の迷信や悲観的な世界観、抑圧という醜い巨人を倒す文化的なルネサンス人として」と書いてます。

このテーマはハリウッド映画にも簡単に移し替え可能。

中世の教会の抑圧と重い禁忌からの解放というルネサンスのシンボルとされる作品が、現代のひとにも同じくらいの熱さでアピールするという、そのオーラはほんとうにすごい。




時代に求められてちょうどぴったりのときに現れた芸術作品は、多くの人のものの見方を変えていく力があるんだなと思わされます。


ダビデ像と同じくらい感動的だったのが、ダビデくんのすぐ近くに並んでいる未完の作品群。
「Slave(奴隷)」または「Prisoner」と名付けられてますが、どちらにしても後世の学者がつけた名前。

ミケランジェロは、彫刻家の仕事は石の中に閉じ込められた彫像を見つけることだと思っていたそうですけど、この4つの未完の彫像を見ると、それがウソやハッタリではなくて、ほんとにそうだったんだと思わざるを得なくなります。



大理石の中に閉じ込められていた人物が徐々に姿をあらわすみたいに、石の中から人の体があらわれてくるプロセスが記録されています。

ほんとに石の中から解放されていく人を見ているようで、「プリズナー」というのはいいえて妙なネーミングだと思います。

ノミのあとも生々しく、石から切り出されたカタマリがなめらかな筋肉になっていくその過程が目の前に見えるよう。

粗いピクセルから細かいピクセルの精密画像が現れるような感じでもある。

人知を超えてるとしか思えない制作過程がうかがえます。


ダビデくんはフィレンツェのヒーローだけに、ダビデくんグッズは街中のお土産やさんで見かけます。
このエプロン、CT旦那さんにお土産にしようかなと思って画像をテキストしたら全力で拒否された。


こちらはアカデミア美術館のショップ。

やはり焦点はそこなのか!


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