2021/12/08

ほんとうに面白い「What if...」シリーズ

 


近所の道に落ちていた、なんだかわからない赤い実。

このへんは果樹や木の実のなる樹が多いので、鳥たちやリスたちには安心安定の環境なのだと思う。
けっこうより好みもあるようで、まったく見向きもされていない果樹や実もたくさんあるかと思うと、思い出したようにある日とつぜん大群がやってきて食べ始めることも。不思議です。


AppleTV+で『For All Mankind』シーズン1と2を一気に観ました。

これが実は、『ファウンデーション』よりも、はるかに面白かったです。

いま盛んに宣伝してるトム・ハンクス主演の近未来SF映画『Finch(フィンチ)』よりも、ずっと面白かった。

脚本も演出も、けた違いに素晴らしいです。

キャラクターも陰影と説得力があっていいし、演技も素晴らしいし、ストーリーのテンポもいいし、会話のスクリプトもいいし、美術もいいし、非の打ち所がなくてほんとうに楽しめました。このシリーズを観ていたら、正直なところ『ファウンデーション』はかなり頑張って観ていたことに気づかされてしまいました……。

もしも米ソの宇宙開発競争が途中で止まらず、どちらの国も予算をじゃんじゃんつぎ込んで開発を続けていたら……という設定の、現実とは違う1960年代後半〜1970年代と1980年代を描く「歴史改変SF」です。

邦題は『ニクソンの女たち』。シーズン1のエピソード3のタイトルをそのまま使っているのですが、この邦題はよくないと思う。

ニクソン大統領の強い希望というか命令により、女性宇宙飛行士たちの訓練が始まり…というお話なのですが 、シーズン2の舞台は1982年〜で、大統領は(テッド・ケネディを破って、実際の歴史よりも4年早く1977年に就任したという設定の)2期目のロナルド・レーガンです。

いかにもレーガンが言いそうな「レーガン節」や、いかにもレーガンがしそうな行動がすごく巧みに織り込まれ、登場人物と世界の運命に影響していきます。

シーズン2の時代には、もはやニクソンのことなんか誰も覚えていないのです。

『ニクソンの女たち』はシリーズ内のひとつのエピソードのタイトルとしては気が利いていて、内容にも合っててとてもよいと思うけれど、このシリーズ全体をあらわすタイトルとしては意味が弱く、物語のほんの一部しか語っていないし、全体の構想の壮大さがまったく伝わっていません。

このシリーズは政治ドラマの部分はもちろんあるけれど、それは魅力の3分の1くらいでしかないのに、「ニクソン」と「女」というのを強調しすぎて、しかも「の女」と所有格がパワーゲームとジェンダー問題まで匂わせて、内容にそぐわないドロドロ感を醸し出してしまっていると思うのです。それに、女性宇宙飛行士は重要な要素だけれど、このドラマの主題はそれだけじゃないし。

 このタイトルだけみて観るのをやめちゃう人がいるとしたら、あまりにもったいないです。

シーズン1の後半以降、宇宙飛行士だけでなく、女性が長官とかオペレーションディレクターといったトップに進出していき、現在でさえまだ実現されていないほど、重要な地位を女性たちが次々と占めていくのも、シリーズの見どころです。

(ひとつだけ難をいえば、ドラマの中で女性が破竹の進撃をしているのに比べて、黒人、ラティーノ、アジア系が主要登場人物に占める割合が少ないことです。それぞれのマイノリティからまんべんなく一人か数名ずつ印象深いキャラクターが出てきて、さらには同性愛者の主要キャラもいて、それぞれのストーリーをちょっとずつ見せる。それぞれ真摯に扱われていて説得力があり、そつがないなあ、という印象を受けましたが、だからこそもう一押し!)

『宇宙兄弟』が好きな方にはぜひぜひみてほしいなあ。 「宇宙もの」全般が好きな人には全力でおすすめです。

 



あと、詳しく知っていなくても面白く観られますが、1960年代以降のアメリカ現代史をざっとおさらいしてから観れば、さらにさらに楽しめると思います。

わたしも20年以上アメリカに住んでいるとはいえ、そしてわりに最近(20年前とかではなく)大学でアメリカ現代史の授業を2コマ受けたにもかかわらず、なにしろ記憶力がアレなもので大統領の順番くらいしかろくに覚えておらず、観終わってからウィキペディアでいろいろ確認したりしてました。

歴史を知ってると「あら、これは…」と、現実とは違う設定がいろいろとチラチラ出てくるのが楽しめるし、そのときの状況を新鮮な方角からみてみることもできるのが面白いです。凶弾をあぶなくかわして生き延びたジョン・レノンが平和コンサートを開いているニュースが流れたり、電気自動車が80年代に実用化されていたりといった小ネタがちりばめられています。

うちの青年は、シリーズ1で宇宙飛行士たちが運転しているコルベットにくぎづけで、「この時代のコルベットは最高にかっこよかったんだよなー」と言ってました。
いまのコルベットやムスタングには馬力だけがあって思想がない、いかにも退屈なミッドライフクライシスの車、という位置づけだそうです、彼のなかでは。

ドラマに登場する女性宇宙飛行士のなかで、訓練生中トップの成績に輝くモーリー・コッブというめちゃくちゃかっこ良いキャラクターがいるのですが、この人には実際のモデルがいます。

ジェラルディン・コッブという人。
シーズン1のエピソード4は、この人に捧げられています。

わたしもぜんぜん知らなくて、さっそくウィキペディア先生におたずねしてみました。

そしてびっくり。本当にリアルにすごい女性だったのでした。

1950年代〜60年代、20代のときに飛行の世界記録を3つもうちたて、アメリカ初の友人宇宙飛行をめざしたマーキュリー計画で、男性と同様の試験に合格していた女性たちがいて、コッブさんはその中でも、男性を含むすべての候補者のなかで上位2%の成績を示したのだそうです。

この「マーキュリー13」と呼ばれる女性たちのことは、わたしはまったく知りませんでした。

 しかし「社会的秩序」を重んじる60年代のおっさんたち(ジョンソン大統領を筆頭に)やおばさんたちに阻まれ、女性宇宙飛行士の訓練は実現せず。

その後、コッブさんは30年にわたり、アマゾンで宣教活動と航空機による支援活動を行い、ノーベル平和賞の候補にもなっています。熱心なクリスチャンだったのですね。

『For All Mankind』のモーリー・コッブは、たぶん実際のコッブさんよりもずっと行儀のわるい、口もわるい人。でもねじまがったところのない、人間味のあるヒーローです。「竹を割ったような性格」の人という言い方が日本にはありますが、まさにそれそれ。

彼女の旦那さんは自分の感情を(フェミニンな面を)恐れずにさらすことのできる、素晴らしいキャラクター。2021年になってもなかなかお目にかかることのできないタイプの男性です。

わたしはこのカップルが大好きで、旦那さんが登場するたびに嬉しくなってました。

シーズン3はもう撮影が終わっていてポストプロダクションに入ってるそうなんだけど、公開は来年5月の予定だと!ポストプロダクションってそんなに時間がかかるのか!

シーズン2のエンディングにはNIRVANAの曲『Come As You Are』が流れ(いや〜本当にかっこいい曲だなあ)、チラ見せの場面に「1995年」というテロップが流れました。シーズン1が1970年代、シーズン2が1980年代なら、やっぱり次のシーズンはその10年後ですよねー。

あの登場人物はまだ生きているのか、あの人はほんとに政界入りしたのか、あの夫婦は結局別れたのか、あの人はあの学校に入ったのか、その後のキャリアはどうなったのか、まるで友人のその後のように、いやそれ以上に、気になるー!

そして、このパラレル世界の1990年代では、ソ連は崩壊ずみなのか、ベルリンの壁はどうなったのか、大統領はクリントンなのか、もしかして共和党政権なのか。技術がかなり前倒しになっていて、1980年代なかばの設定で携帯電話が登場しているので、90年代なかばでもうスマートフォンの第一世代が出てきているかも…。スティーブ・ジョブズはまちがいなく登場するに違いない!でもどんなふうに? 

早くリリースしてくれー!お願いApple!




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