2021/05/15

WANDERER


先日行ったラ・コナーで、運河沿いに小さなかわいい本屋さんを見つけました。

これです。
Seaport Books。かわいいでしょう。


地元ワシントン州やパシフィックノースウェストに関連する本を多めに集めておいている本屋さんです。


 
ここで、地元作家ではないけれど海つながりということで目立つところに陳列されていたこの本、『WANDERER』が、今回のラ・コナーでの最大の収穫でした。

Peter Van Den Ende さんというベルギーの作家さんの作品で、言葉はない絵本です。



小さな紙の船が大洋を旅する話。

ちょっと佐々木マキさんのタッチや、画風は違うけどクリス・ヴァン・オールズバーグさんの作品をほうふつとさせる幻想的なお話。

海をとりまく環境破壊へのメッセージもこめられています。




 もうもうもう、超ツボで、迷う間もなくお買い上げでした。

 昨年出版された本で、ニューヨーク・タイムズの2020年のベストにも入ってます。

ヴァン・デン・エンデさんは、まだ30代の若い作家さん。絵本はこれが第一作みたい。以前はケイマン諸島でネイチャーガイドのしごとをしてたとグーグル先生がおしえてくれました。



 動画もあった。

日本での出版はまだかな。日本でもきっとファンが多くなること間違いなしだと思います!!
翻訳作業がないので翻訳に手を挙げることができず残念だ(笑)けど、はやく紹介されるといいな。

あ、タイトルがありますね。「ワンダラー」。「冒険者」かな。

 

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2021/05/14

卓上に藤棚が!&治療の経過



いつも豪快にお庭の花をプレゼントしてくれるジェニファーちゃんが、なんと今回は、バラやヤマアジサイやキャットニップといっしょに藤の花を2枝くれました。

 


 青年が、壁にテープでインスタントな藤棚をつくってくれた。

花瓶は取り付けられないのでジップロックバックを荷造りテープではりつけの簡易インスタレーション。

 


吸い上げがよくないので(なにか工夫のしようはあるのかもだけど)あまり長持ちはしそうもありませんが、テーブルの上に藤の花があるって不思議だー。



お天気つづきのシアトルです。

午前中曇っていても午後からは快晴で、日没が8時半すぎなので1日がとても明るい。
ビタミンD作りまくり。
ていうかもうそろそろ2021年も半分に近づいてきてしまいましたね!

3月からはじめたあたらしい分子標的薬を入れた化学療法の治療は、きょう(木曜)で5回めの投与。ほんとにおかげさまで、ここまでのマーカー値が爆下がってきて、けっこうひどかった咳も止まり、呼吸もだいぶラクになってきました。



医学と皆さんのお祈りと、いろいろ全方面に感謝です。世界よいろいろありがとう。まだここでやることがあるらしいよ。分子標的薬すげー。あと、きのこ(ターキーテイル)のサプリもとってます。きのこすげー。そしてなによりもなによりも、みなさまの応援してくれてる(まだやれるだろうという叱咤の声含めw)力強いお祈りをほんとに肌に感じてます。お祈りすげー。神様すげー。ほんとにみんなありがとうです。

今回の治療を始める前には、ちょっとこのままだと夏が越せないのかもな、と思っていたのだけど、この体調がしばらくキープできたら日本に一時帰国もできそうな気がしてきました。

コロナが落ち着くまで、わたしの体力が持つか。勝負ですな。

今は、湘南の生しらす丼と、どこでもいいから温泉が夢です。(ひさしぶりにまるべん読んだら、羨ましすぎる逗子の飯テロに泣きそうになった。あんなお魚定食毎日食べられたらあと80年くらい生きそうな気がする)

ただし副作用で皮膚がサンドペーパーのようにガサガサでつらい。この治療はいまのとこあと1回だけど、次のやつまで1週間のばしてもらえないかななんて相変わらずヘタレです。

あと睡眠時間が、猫にも負けない驚異の記録を更新中です。
ヒトとしてはちょっとどうかと自分でも思いつつ、それも許してあげる修行をしています(ラクな修行!)

 

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2021/05/11

日曜日のラ・コナー


母の日にはなぜか、ハワイっぽい熱帯の花をもらった。
「これが一番面白かった」と青年。 

 どうでもよいけれど、ふつうのバラとかを買ってこない男である。

ルイジアナのグランマにも、金曜日にやべぇ!と母の日を思い出してあやうくオンラインでお花を注文。ほっ。まにあった。

ちょうど教会から帰ったところに届いたと、電話がありました。

花をもらうのは、ともかくも嬉しいですよ。


遅く起きてのワッフル朝ごはんを食べて、天気がよいので遠足にいってきました。



古めかしい鉄橋をわたってゆく。



もうチューリップは一本も残っていないけれど相変わらずいつ行ってものどかなスカジットのファー・アイランド。

遠くの山にはまだ雪が少し残っている。


 前にも何度か立ち寄った、昔のガソリンスタンドの食料品屋さんが、広い屋外席を設けたカフェにアップグレードしてました。

ハーレーダビッドソンのバイカーさんのお気に入りスポットになっているらしく、バイカーさんの姿が多かった。


 ミートローフサンドイッチも健在だったけど、以前のほうが美味しかったような気もする。



 満開の白藤とライラックの下でごはんが食べられる贅沢なしつらえでした。濃い香り。

 


運河沿いの観光町、ラ・コナーへ。

雑貨屋さんや庶民的なギャラリーやカフェ、ワインバーなどが並ぶ町です。


快晴の母の日で、けっこう人出が多かった。母の日向けの町だしね。
店内ではマスク着用だけれど、営業完全再開という感じでした。

町並みの写真を一枚も撮らなかった。前にもたしか、一度記事を上げたなと思ったら、もう9年前だった〜!

 


謎なものがたくさんある楽しいガラクタ屋さん。


アウトドアインテリアの店には、かならず、かならず、かならず、なんらかのブッダが売られている。




かわいい郵便局。

 
アイスクリーム屋さんの前には長蛇の列でした。並ばなかった。


その昔、切り出された樹齢約800年のもみの木が展示されていました。


 昔はこのあたりにも、こんな巨木がにょきにょき生えていたのでしょうね。

 

 

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2021/05/08

水門と跳ね橋を通る


先週末はまたCTちゃんちのボートに乗せてもらいました。
こんどは、バラードの水門(Ballard Locks)をとおって、フリーモントの運河を経て、ユニオン湖へ。

うちの青年も、来週、セイリングのクラスを受講しにいくそうです。
つねに一切なんのお手伝いもしないで乗ってるだけのワタクシ。ほんとに紐とかロープとか苦手なんです。まるで一日じゅうブイに乗っているアザラシのごとく何もしない。


水門を通過。夏場の週末はとっても混み合い、順番まちのボートがずらっと並びますが、この日はほかには、前に豪華クルーザーが一隻いただけでした。



このあいだ水辺を散歩したフリーモントの運河。グーグルとAdobeに占拠された水辺ですね。
ここは両側に緑が濃くて気持ち良い。




ガスワークス公園。ピクニックの人がたくさんいました。だんだん日常が戻ってきたなという感じ。のどかな土曜日でした。


シアトル名物のフローティングハウス。こんなおもちゃみたいなかわいい家でも1億円とか軽くするみたいですよ。地面もついてこないのに。

そして湖沿いには大小さまざまな超豪華クルーザーがたくさん目につきます。お金持ちの方々はわたしどもの知らない世界に住んでいらっしゃるのねぇ、ていうかシアトルってやっぱりあるところにはウンウンお金が唸ってるのねえ。
かと思うと、漁船やタグボートやロシアの名前がついた冷凍食品の船などはたらく船もいろいろ。ふだん陸からは見えない部分がみえて面白いです。





ユニオン湖まではバラードの水門のほか、バラード橋とフリーモント橋というふたつの跳ね橋の下をとおります。セーリングボートはマストが高いので、通過のたびに橋の上の交通をストップして跳ね橋を上げてもらう必要があるのですが。

いつも、車を運転してて目の前で橋が上がってると、ちっ、と思うのだけど、はじめて反対の立場に。
フォッフォッフォッ、陸の民よ、ワタクシが通りますよ。しばしお待ちなされ。

これって、通行料がかかるのかと思ったら、ノーチャージなんだって。水門も。へえええ。

少し前に新しくなった州道520号線の浮き橋とか、州道99号線のトンネルとか、たった1回通るだけで5ドルくらい徴収されることもあるのに、こんなメカニカルな仕掛けを動かしてるのに無料とはちょっとびっくり。それに水門もね。




船はいろいろとやることがたくさんあってまー傍からみてるだけで大変。わたしみたいなズボラでずさんな人にはぜったいに無理です。

だけど、いったんマスターして身についたら、世界が広がって自由でいいなあ。 

 

 

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2021/05/01

ノマドランド


久しぶりに植物園へ行ってきました。

ツツジが満開。遅い桜も、木蓮も辛夷も、いろいろ咲いていてにぎやかです。



クリームイエローに濃いピンク。面白い色の八重桜。



いつも鳥を連想してしまう辛夷の花。


ちょっとホラーな木。


火曜日に、ショアラインのCrestシアターに『Nomad;and(ノマドランド)』を観に行ってきました。

映画館に行くのは去年2月以来、はじめてです。

予告編(ウェス・アンダーソンの新作だった)が始まったとたんに泣きそうになっちゃった。ああ映画館の画面ってこんなに大きかったんだっけね。

映画は良かったー。アカデミー賞とったので混んでるかと思ったけど、そこは安定のクレストシアター。ご近所の年齢層高めのオーディエンスで、客席は4分の1くらい埋まってました。

窓口に、「ほかのグループから3席離して座ってください」と、ダイヤグラムが書いてあった。前後左右3席ずつ離して座れというのだけど、なかなか難しい注文でした。



『ノマドランド』は淡々としていながらもとても面白かったし、画面が綺麗でした。


「ぜひ大スクリーンで」というのはうなずける。アメリカの平原をロードトリップしている気分が味わえます。

うちの青年と8年前のロードトリップで行ったサウスダコタ州のバッドランズ国立公園や、その近くの巨大みやげ物ショップWall Drugsが出てきて、懐かしかったのもあり。

主演は、『ファーゴ』の保安官役が素晴らしかったフランシス・マクドーマンド。『ファーゴ』はいろいろ個人的に思い入れの深い映画です。あれも平原の小さな町の映画でした。

Amazonの倉庫が、例年11月から新年にかけての最繁忙期に季節ワーカーを大募集しているのは聞いていましたが、そのなかにこういう高齢で車中生活を送っている人たちがかなり多いというのは、全然知らなかった。

鉱山が営業を停止して、町がひとつすっかりなくなってしまうところから始まる映画。

60歳すぎてなにもかもなくす。改造したヴァンに住み、年金暮らしもできず、アマゾンの倉庫やキャンプ場のトイレ掃除といった仕事をしなくてはならない未亡人の話、というと悲惨で暗い気がしてしまうけど、まったくしめっぽい演出はなくて、アメリカの広大で美しい荒野に向かって瞑想しているような主人公ファーンの姿が、のびのびした透明感をもって描かれていました。

この広々しすぎな国土よ。


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2021/04/26

ボストン美術館の怖い絵【閲覧注意】


 ボストン美術館にもいろいろ怖い絵がありますが、なかでも強烈だったのがこれでした。

英国の画家ターナーの『The Slave Ship(奴隷船)』。
1840年の作品ですが、1781年に起きた実際の事件を題材にしています。

限度を超えて奴隷をぎゅうぎゅうに詰め込んで船出した英国籍の奴隷船Zong号が、途中で飲料水が足りなくなったために、主に女性と子どもの奴隷132名を海のまんなかに投げすてたという事件。

水が足りなくて奴隷が衰弱死すると「自然死」とみなされて保険金が下りないために投げ棄てた、ということで後日保険会社とのあいだで裁判となり、世間の知るところとなって、英国での奴隷制廃止運動を後押しすることになった事件だそうです。

英国で奴隷制が廃止されたのは1833年。

ほかの国、とくにアメリカではまだまだその後30年以上も奴隷制が続いていた時代に描かれたものです。

 


ターナーというと水彩画で有名ですが、これは油彩画。

ダイナミックな波と夕陽の間に去っていく船の手前には、よく見ると波間にたくさんの手と鎖が目に入って、ぞっとします。

 


そして画面の右手手前には、まぎれもなく人の足が。女性のものらしい足が、足首に鎖をつけられたまま、一斉に寄ってくる魚たちの餌食になっています。


昨年ボストンに見に行ったときには、この絵にインスピレーションを受けて制作されたハイマン・ブルームの『Sea Scape II』という絵が、同じ部屋に展示されていました。



ふだんはボストン郊外のダンフォースアート美術館に所蔵されている絵。1974年制作。

このときは、ボストン美術館で開催されていたハイマン・ブルーム展のために貸し出されていました。

こちらはターナーの魚たちよりさらに凶暴さを増し、必死に肉を喰らう、命の恐ろしさが画面いっぱいに描かれています。

ハイマン・ブルームという人は全然知らなかったのだけど、50年代、ポロックと同時代に抽象表現主義で注目された人で、その後、皮を剥がれたり腐乱した動物や人体という独特の主題に入り込んで独自の境地をひらいた人。

ユダヤ系で、東ヨーロッパのリトアニアから第二次大戦前に迫害を逃れてアメリカに移住し、ボストンにずっと住んでいたようです。

 


ハイマン・ブルーム展は、全部で20点かそのくらいだったかと思います。わりあい小規模の展覧会だったけれど、題材がどれもこれも生々しくて、点数のわりにかなり体力を消耗しました。

たしかに恐ろしく引き込まれる題材ではあり、美しさがないかといえばこれも美しさであるけれど、日常的な感覚から「そちらの感覚」へよいしょと移行するには、やはり気力と体力を使います。

なぜこんな不快なものを見せるのだと怒る人も当然いると思う。それは責められるべきじゃないし、これを美しいと思えと強制すべきでもないかわり、こんなものを展示するなと規制すべきでもない。

アートは、ルノアールみたいにひとをキラキラ幸せにするだけでなくて、ときに異物を口につめこまれるような違和感や恐怖を催させるものですね。

何十年という時間をかけてそれを真剣にやっているひとの作品には、それなりに真剣に対峙するとなにかしら得るものが必ずあると思います。

そうしたくなければ対峙する必要もまったくないわけですが。でもそういう幅がひろくあることが、社会の豊かさなのだろうなと思う。

 


この足の絵は個人蔵で、どこかの美術館のキュレーター宅で食卓の上に飾られていたそうです。いい趣味ですね…。




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2021/04/25

「私たちはどこへ行くのか」の予言


青年はきょうボストン旅行から帰って来ました。
ボストン美術館でバスキア展を観たそうです。

去年の2月、ロックダウン直前に行ったときの記事に、そういえば続きを書こうと思ってたのでした。1年以上前に…。

ボストン美術館はほんとにみごたえたっぷりで、まる2日かけても全部は観きれない感じでした。


以前に東京で開催された『ジャポニスム展』のときにもお目にかかった、モネの奥様のコスプレ「ラ・ジャポネーズ」。



 ゴーギャンさんの傑作『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』は、やはり、とてつもない迫力でした。


制作は1897年。19世紀のおわり。

教会は権威を失い、新しい科学の見識がひとの思考をひろげ、工業化が恐ろしい勢いですすみつつあり、ヨーロッパの帝国が崩れはじめていた時代。

人の精神にも経済にも社会にも大きな変化が起きていた。

このあとに人類未曾有の世界大戦が立て続けに起こり、世界各地で何百万人という人が死ぬのだと思ってこの絵を見ると、迫ってくるものが重いのは当然だと感じられます。

ゴーギャンさんのダメ人間ぶりは以前にも確認しましたが、いかにエロおやじであっても、変わっていく時代の予感を全身でとらえていた人なのだと思います。
 

今の時代も、19世紀末と同じくらいの変化を前にしているのかもしれませんね。

 

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