雪の夜の散歩。近所のおうちのディスプレイが綺麗でした。
こんもり雪が積もったガラス玉がかわいい。
ところで昨日、Netflixでみた『Don't Look Up』が最高でした。
目をみはるばかりの豪華俳優陣がみんなこれ以上ないほどのはまり役だし、(ディカプリオはちょっとロビン・ウィリアムズふうの冴えない大学教授が堂に入ってるし、ジェニファー・ローレンスはいつもの迫力だし、ジョナ・ヒルとメリル・ストリープの親子はおかしすぎるし、ケイト・ブランシェットとタイラー・ペリーのやたらにテンションの高いニュース番組キャスターもあまりにあるあるすぎて戦慄)ほんとに素晴らしい。
以下ネタばれあります。本当に面白いので、ぜひぜひ御覧くださいませ。
地方大学の教授(ディカプリオ)と博士候補の学生(ジェニファー・ローレンス)が、地球に衝突することまちがいなしの彗星を発見して大統領に進言するも…というお話。
大統領がメリル・ストリープ。その息子で大統領首席補佐官がジョナ・ヒル。
もちろん大統領は選挙のことしか頭にないし、スティーブ・ジョブズとイーロン・マスクとジェフ・ベゾズとレインマンをあわせて4で割ったような天才エンジニア企業家(ビジネスマンと呼ばれるのを極度に嫌う、風呂敷を広げるのが好きなナルシスト)に、あの彗星は貴重な資源のカタマリだと進言されて、シャトルをぶつけて彗星の起動を逸らせる作戦を中止する。
これはコメディなのだけど、最近見たどのSFよりも、ある意味、本質的にすごくリアルでした。
いま現実にアメリカで起きていることを、彗星という比喩を使って、まんま率直に描いているのがすごいです。
メリル・ストリープはもちろんトランプのパロディで、女性大統領、ゲイっぽい息子、IT企業のエキセントリックな大富豪創業者、という、トランプが自分のフォロワーに向かって「こいつらが敵だ、悪だ」認定をしてディスる対象のステレオタイプが、トランプとおなじ立場でおなじことをしている、つまり客観的事実をウソだと言い張り、極端なレトリックで群衆をあおって保身をはかっている、というのが最高におかしい。
映画ははっきり言っていないけれど、クリントンと抱き合っている写真をオフィスに飾っているところから、この大統領は民主党なのだと思われます。
民主党と共和党の、どっちの大統領がホワイトハウスにいても既存の価値観を上書きする力が働くことにかわりはないという状況をこの映画は無遠慮に描いていて、トランプ支持者が見ても、民主党支持者が見ても、ある程度は居心地が悪くなるようにできていて、そこが素晴らしい。
でもすっかりニヒリスティックな映画かというと、ぜんぜんそうではなくて、本当に価値があるのは大切な人と一緒にいることだよね、とか、自分が正しいと思うことを真摯にできるだけやってみるって大切なことだよね、というところは、しんみりと描いてくれている。
『デューン』の救世主、ティモシー・シャラメくんが劇中で世界の終末を前にして捧げるお祈りも、心に響きます。
彼はキリスト教福音派の、おそらく戦闘的で排他的な家族の出身で、教会は嫌いになったけれど、神様との個人的なコネクションを真剣に大事にしている若者、という設定。
メリル・ストリープの「マダム大統領」の小道具として黒いバーキンが何度も登場するのがすごく印象にのこる。
息子で側近のジェイソン(ジョナ・ヒル)がそれを小脇に下げて出てくるのが笑えます。
言うまでもなく、エルメスのバーキンはステイタスと排他性の象徴、物欲と拝金主義と、「持てるもの」の洗練と文化と、とほうもなく偏ってしまった富の象徴ですが、そのバーキンを、ママのカバン持ちとして抱えて歩くというのはジョナ自身のアイデアだそうです。
このジェイソンが捧げる、「素敵なモノたちがなくなりませんように」という祈りは、シャラメくんのお祈りと対をなしています。
このお祈りには、快適で素敵で高価なモノにしか価値を見いだせない精神のあり方がうきぼりにされているわけですが、なかなか含蓄あるというか、バカにしているだけじゃなく、自分たちの足もとを痛烈に指摘されているようでもあります。
クレジットの最後におまけ映像があるので、それもお見逃しなく!
2021年という年の最後を飾るにふさわしい、世界の終わり映画でした。
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