2021/11/24

不気味でかわいいものたち

 


このあいだマダムMにいただいたお宝、ヒグチユウコさん絵皿。 

すこしホラーでかわいい細密画、好きです。

 

 

不気味かわいい細密画といえばこちらも。


ことしの初夏に、海辺の小さな本屋さんで見つけて即買いしたお気に入りの言葉のない絵本『WANDERER』。

日本語版が、今月出版されたようです。ぐうぜんアマゾンでみつけました。


訳者は岸本佐知子さん! やはりタイトルの訳か!
解説かエッセイを寄せているのかな。

日本語タイトルは『旅する小舟』という、とてもロウキーな、けれんみのない選択で、なるほどさすがですね、と納得。

求龍堂という出版社からです。ほんとに不気味で詩的でステキな本なので、書店でみかけたらぜひ手にとって見てみてくださいね。

USのアマゾンでは、なんとKindle版も出ています。でもやっぱりこれは紙でないと!!

 

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2021/11/19

わたしたちがいない世界で

 

フィニーリッジの住宅街で見かけた、古いベッドを利用した花壇。英語で苗床や花壇のことをbedといいますが、これが本当の「フラワーベッド」……😀😀😀(ついにブロガーでもEMOJIが使えるようになっていたのでためしに使ってみました)

先日、Apple TV+のドキュメンタリー『THE YEAR EARTH CHANGED』を観ました。


 





コロナ禍のために世界中で人間の活動が止まった年に、自然環境に起きたことの記録。

インドの町では30年間スモッグで隠されていた200キロ先のヒマラヤ山脈が突然見えるようになり、アラスカでは海が静かになったのでクジラが安心して子育てできるようになり、フロリダでは人のいなくなった砂浜でウミガメのお母さんがゆったり産卵できるようになり、奈良では鹿が鹿せんべいをもらえなくなって、かわりにヘルシーな食事をするようになり…。



15年くらい前に、『The World Without Us』という、人間が急にいなくなった世界はどうなるか、を描いたノンフィクション本が ありましたが、まさかヒトがいない世界を本当に目撃する日がくるとは。

人間の経済活動が止まり、人の姿がなくなった世界のあまりの清浄さに衝撃を受けました。

急激な「浄化」ともいえる作用をなんとも胸が痛くなるような美しい映像で見せられて、涙が止まらず。

サバンナで、チーターの狩りを見に来る観光客たちの車の騒音で、チーターのお母さんが子どもを呼ぶ小声が聞こえづらくなっていた、というのが哀しい。見物の観光客が減ってノイズがなくなったぶん、子どもたちがすばやくお母さんの声をききつけられるようになり、子どもの生存率が上がっているそうです。

(チーターのお母さんはシングルマザーなので、子どもを安全な場所に残してひとりで狩りをするのですが、獲物を捕まえたあと大声で呼ぶと、幼い子どもが天敵の注意を惹いてしまうため、小さな声で呼ぶのだそうです。そして、チーターが獲物をつかまえる狩りは、観光客にとってもっとも見たいショウのひとつ。)

野生動物を野生の環境で見たいという欲が、動物の迷惑になっているんですね。


人類の経済活動って結局あくなき欲望の追求なのだということが、あらためて、単純に衝撃的に、ずしんと響きました。

経済活動をちょっと差し控える、たとえばカメのために一定期間ビーチを立ち入り禁止にしたりするだけでも、かなり大変な反対に遭うことだろうし、動物のためだけでなく環境のためになにかをやめる、開発や便利さをあきらめる、なにかを手放す、ということは極端にむずかしい。

コロナが落ち着いたらすっかり元通り、になるのか、前より悪くなるのか、よくなるのか、何かが変わるのか。

50年くらいあとになって、あのときに人類が気づいて経済活動をスローダウンさせられていたらよかったのにね……なんてことになりませんように。


いまの時代はいろいろな意味でターニングポイントなのかもしれないですね。


 

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2021/11/18

夕方の虹


快晴の火曜日夕方、フィニーリッジの丘の上を散歩していたら、急に夕立ちがぱらぱら降ってきて、鮮やかな夕日の虹が立ちました。

ちょうどとおりかかったカナディアンギースのみなさんをフレームに入れようとがんばってみたものの…。


すこしあとのダブルレインボー。これはカメラの設定を間違ってポートレイトモードにしたままでピントが合わず、なんだかポラロイドぽく懐かしいぼんやりモードの仕上がりに。

淡いピンク色の雲が夢のように綺麗でした。


フィニーリッジの丘の上は、東にグリーンレイクとカスケード山脈、西にはピュージェット湾とオリンピック山脈が見えるというぜいたくな場所です。

これはフィニーのコミュニティセンターの横のところから見えるグリーンレイク。

山にはきらきらした新雪が積もっていました。



真新しい雪をかぶった山の上に、だいぶ太ってきた月がのぼってくるところでした。





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2021/11/16

だいぶ違うけどそれなりに



きょうも朝のうち灰色の雨が降ってびゅうびゅう風が吹いていましたが、午後から久しぶりに快晴に!なんとまあ、違う惑星にいるかのような明るい色彩であることよ。

 


あともう数日の紅葉。

先日デンワを買ったら、おまけにApple TV+のサブスクリプションが3か月無料でついてきたので、いま『ファウンデーション』を観ています。

とりあえずのシーズン1は10話完結で、最終回は今週金曜日に配信。

 


 

やはりやはり、アイザック・アシモフの原作とはかなりかけ離れた内容です。

原作はシリーズ1冊めしか読んでいませんが、だいたい50ページくらいごとに50年くらいの時間が経過し、そのたびにすっかり登場人物が入れ替わる壮大な時系列の話なので、そのままドラマにするのはかなり困難と思われ、やはり原作にはまったくないテロや撃ち合いや恋愛や殺人がドラマを添えています。

中学生のときに原作を熱愛していたという経済学者のポール・クルーグマンさんなどは、このあいだのニューヨーク・タイムズのニューズレターで(『デューン』を激賞する一方で)あまりにも原作と違っているので「オレはもう観るのをやめた」と言ってらっしゃいましたが、まあそう捨てたものでもありませんよー。

帝国のクローン皇帝たちは面白いし、ビジュアルも、そりゃ『デューン』とくらべものにはならないにしても、主人公のひとりガールの故郷の水の惑星なんかとてもキレイでした。

トランターとターミナスの描写は原作よりもかなりスケールダウンしていて、目の回るような壮大さまでは感じられないのが残念だけど。とくにターミナスのファウンデーションは10万世帯が移住して、少なくともつくば学園都市くらいの規模があるはずなのに、ちょっとスケールが小さすぎてがっかりでした。でもトランターの図書館はステキ。

それとタイトルのタイプフェイスがかわいい。



 

この間、ドラマを見る前にも書きましたが、原作はなにぶん1951年、戦後まもなくの出版で、科学万能の時代の楽観主義にあふれています。

科学の子・原子力の子『鉄腕アトム』の楽観主義と同じ色合いの楽観主義。

なにしろ原作は、人類の科学の知を守るファウンデーションが近所の野蛮な惑星に対して、科学技術を神秘の宗教として印象づけ、その司教たちを派遣することでうまいこと優位に立ってパワーバランスを保つという、21世紀のいまよく考えるととてもとてもポリティカリーにインコレクトなひどいお話ですが、ドラマのほうでは、低レベルの蛮人を騙してまるめこもうというのではなくて、正攻法で話し合ってみんなで力を合わせよう!というような方向にひっぱっていきそうな感じです。

なによりも、原作の登場人物は男性ばかりだけれど、ドラマシリーズの中心キャラクターは二人とも黒人の若い女の子だし、ファウンデーションを襲ってくる近隣惑星の軍団のいちばん強い戦士も女子戦士です。

第9話のラストではファウンデーションの創始者ハリ・セルダンが「えっそこからか!」と思うところから登場してびっくりでした。

原作では、セルダンが生前に録画した立体ビデオが再生されるのでしたが、ドラマでは、どうやら、わたしの理解が正しければ、セルダン博士はAI的な意識存在になっているらしい。つまり時空を超えている。それも面白いなと思います。

金曜日の最終話がかなり楽しみ。なんだかものすごく久しぶりに「放映を待つ」感じが懐かしいです。



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2021/11/15

雨ととんかつ


とんかつを食べにいってきました。おいしかったです。



土曜日の夕方。午後5時なのにもうこんなにまっくら。
雨のなか、開店前に行列ができていました。

キャピトル・ヒルの「こぶたとおおかみ」。とんかつ、人気ですね。

人気なので並ぶのがつらいけど、6名以上だと予約ができるということなので、7名で集合。コロナ以降初めての再会メンバーでした。

ワクチン接種証明書の提示がもとめられますが、写真をスマートフォンの画面で見せる人が圧倒的に多く、店員さんも画面をちらっと確認するだけでした。わたしも一応紙版もお財布に入れてはいるけど、スマートフォンで提示。

ワクチンパスポートのようなアプリで本人確認ができればよいのでしょうけど、アメリカではそもそもワクチン接種そのものが政治的な論争のたねになっていることもあるし、いろいろ複雑な理由があるようで、連邦から市にいたるまで政府はまったくそんなもの開発する気はなさそうだし、民間もあえてだれも手を出そうとはしてないようです。触れてはならぬ領域になっているような。



冷静に考えるととんかつ店としてはかなりブラックな店名だけど、ロゴのデザインがかわいい。



ソースにすりたての白ごまを混ぜて食べるように、小さなすり鉢とすりこぎが出てきて楽しいです。

きゃべつの千切りの細さは日本のスタンダード。かつもかりっとあがっていておいしかったです。

日本語の店名にするのならば、ごはんとお味噌汁はもうひと息がんばってほしい。

9月にオープンしたばかりで、押し寄せるお客さんをさばくのにまだスタッフが右往左往してる感じでした。

しかし、生活がもとに戻ってきたなー、と実感しました。道も混んでるし。

完全にもとには戻らない部分ももちろん出てくるだろうし、なにが変わってなにが変わらないのか、目に見えてくるのは来年あたりなのかもしれませんね。


今週はずっと雨。朝から夕方みたいに薄暗い、ザ・シアトルの晩秋、という天気が続いています。



 雨のなか、キャピトル・ヒルの町ではワカモノたちがぞろぞろ密に歩いてました。

 

 

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2021/11/11

数に入っていなかった(悲)

 


予報通りの雨が降るシアトルです。

火曜日の晩ごはんはエゼルのチキン。青年はチキンを食べてから飛行機に乗っていきました。




雨のグリーンレイク。車で通りすがりに。

一日家にいる日の雨は、ほっとします。




雨で洗われて、空気がすがすがしい。




ところで、外務省の水際対策が緩和されて、ワクチン接種ずみの人は日本入国後の「行動制限」期間が14日から3日に短縮される!というニュースを聞いて喜び、よっしゃー!行くか日本!と思ったのもつかのま。

きのう届いた領事館からのメールでよく読むと、この措置は「受け入れ責任者」となる企業や団体が外務省あてに申し込む場合のみ、ということが判明して、がっくり肩をおとしています。

やっぱり日本は企業が大きな組織に属している人が優先というか、基本、その他は眼中にないのね。

わたくしのようにフラフラとどこにも属さず漂っている浮遊分子は、日本国民といえどまったく火急の存在ではないのね。数ならぬ身ってやつを痛感させられる。


ガラスの壁にぶちあたって脳震盪をおこした鳥の気分ですよ。

元気に歩けるうちに帰国して東京を闊歩したいんですけどー。んもー。




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2021/11/10

ムーミン谷の不干渉



今朝はきもちよく晴れました。治療の翌日、ステロイド剤などが利いて眠れなかったので、早朝(←自社比)7時半ころ散歩。朝は爽やか。

みごとな真紅のモミジが、ロイヤルブルーのかわいいおうちに、ものすごいコントラストで映えていました。
階段の上から覗いているパンプキンもかわいい。

てろてろ歩いていると、たったった、と後ろから軽い足音が近づいてきて、ピンク色のバックパックを背負った3年生くらいの女の子が全力疾走でわたしを追い抜いていきました。近所の友だちと待ち合わせて、一緒に学校に行くのかな。

子どもたちが学校に行く時間なのね。そんな生活時間に触れたのも久しぶり。




星型の落ち葉が敷きつもる歩道に、なにやらがさがさと頭の上から音がするのは…。



この人でした。近づいて逃げないように遠くからズームでとってトリミングしたので画質が粗いです。

あんまりジロジロ見ていたら、「いつまで見てんのよ」とばかりに、キーキー声で怒られた。





先日ふと、本棚の永久保存版『ムーミン谷の冬』を読み返してみました。

びっくりするほどきれいに話を忘れていました。『楽しいムーミン一家』はじめ、シリーズのほかの本はけっこう覚えてるのだけど。

なんて素晴らしいお話なんだ!と感動できるので、記憶力の悪さもわるいことばかりではない、かもしれない。

冬は松葉を食べて冬眠してしまうムーミンたちなのですが、なぜか真冬にムーミンがひとり目覚めてしまい、雪におおわれたムーミン谷でいろいろな生きものに出会い、いろいろなチャレンジをくぐり抜けていくというお話です。北欧なので、冬は太陽も上らない、まっくらな季節。

慎重派のムーミンが慣れない環境と孤独にさいなまれてオロオロしているかたわらで、ちびのミイも目覚めてきて、ムーミンママの大切な銀のお盆でそりすべりをしたり、凍死してしまった(ように見える)知り合いのりすのしっぽでマフをつくろうとしたり、いつもの通りの傍若無人なマイペースで冬を十二分に楽しみます。

この本のナビゲーター的なキャラクター「おしゃまさん」は、ムーミン谷の冬をしずかに見守る人。冬の生きものたちは変わりものばかりで、あまり人と関わりを持ちたがらないので、そっとしておくように、とムーミンに教えます。


「この世界には、夏や秋や春にはくらす場所をもたないものが、いろいろといるのよ。みんな、とっても内気で、すこしかわりものなの。ある種の夜のけものとか、ほかの人たちとはうまくつきあっていけない人とか、だれもそんなものがいるなんて、思いもしない生きものとかね。その人たちは、一年じゅう、どこかにこっそりとかくれているの。そうして、あたりがひっそりとして、……たいていのものが冬のねむりにおちたときになると、やっとでてくるのよ」

ムーミンシリーズの素晴らしいところは、キャラクターがほんとに多様でいきいきしていて(こういう人いるいる、というリアリティがあって)、だれもがそれぞれ好き勝手に好きなように生きていて、お互いが尊重しあって相手の好きなようにさせてあげ、意見は言っても干渉しすぎないこと。

人間の世界ではそんな一見簡単そうなことがなかなか実現しませんね。

このあたたかな不干渉、互いへの理解と思いやり。
あまりに感動したので、青年にも読ませようと、書店で英語版を見つけて買ってきました。


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