ドッグウッド(ハナミズキ)の実が、今年はコロナウイルスに見えてしまいますね。
このあいだ、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』を読みました。英語原作じゃなくて、ハヤカワ文庫です。
ずっと昔に読んだのかもしれないけど、何ひとつ覚えていなかった。
このシリーズがAppleTVでシリーズ化されるそうです。
主演のひとり、「歴史心理学者」のハリ・セルダン役は、『チェルノブイリ』で科学者を演じたジャレド・ハリス!
『チェルノブイリ』については、去年の8月に感動のあまりうっとうしいほど長文のレビューを書きました。
予告編をみると、さすがにビジュアルも役者さんたちも素晴らしく、見応えありそうです。
原作に出てくるのは科学者も政治家も男ばっかりで、女性といえば政治家の(とっても不機嫌な)妻くらいなのだけど、21世紀のAppleTV製作のシリーズでは、物語のナビゲーター的な役割で最初にでてくる主人公のひとり、若い学者ガール・ドーニックを、黒人女性が演じています。
1951年に出版されたこのSF古典。『スターウォーズ』シリーズにインスピレーションを与えたといわれているそうです。
銀河のすみずみまでいきわたった帝国。その滅亡を(心理学と計算によって!)正確に予言するたった一人の科学者。
1万2,000年つづいた帝国が崩壊し、そのあと暗黒時代が3万年続くことを計算により知ったハリ・セルダンが、その暗黒時代を1,000年に短縮するために、銀河のすみっこに人類の叡智の成果を保存する「ファウンデーション」を創設する、という壮大なお話。
1951年、広島と長崎に原爆を落として第二次世界大戦が終わってからわずか5年後の世界で書かれたこの作品には、いまの感覚からすると眩しいほどの科学への手ばなしの信頼があふれていて、そこにまず、うわあ、と思ってしまいました。
銀河のすみっこで、人類の知(すなわち科学)の砦として存在する「ファウンデーション」。
それをとりまく、封建主義の君主が治める凶暴な星系に対して、ファウンデーションは原子力科学技術を中心とした科学技術を擬似宗教として確立させ、遅れた星系の人々を「神聖」な科学の力で子どものように騙しつつ、絶対的優位を保つ、という発想がおもしろい。
ポケットにはいるサイズの携帯用原子炉とか、何千億人もの人類全体のゆくすえが計算できる「心理歴史学」とか。ほとんど魔術のような科学技術と、科学が政治を実に簡単に凌駕していけるという信仰。
半世紀の冷戦のあと、ベトナム戦争のあと、同時多発テロのあと、カブール陥落のあと、チェルノブイリのあと、フクシマのあとの現在から見ると、なんともはやあまりにもストレートな科学信仰、と、その無邪気さが眩しいほどです。
偉大なるアシモフ先生にむかって「無邪気(イノセント)」というのは失礼ですが、その後70年の集合知を通してみると、そう言わないわけにいかないのも事実。
日本では鉄腕アトムの時代だったんだよね、というのも思い出しました。
原子力と科学、人間の理性に対する、まさに信仰の時代だったんですね。
続きは本棚にないけど、機会があればぜひ読みたい(日本語で読みたい)。
AppleTVのシリーズは今月からだそうです。シリーズではそのへんをどのように料理しているのか。予告編を見ると人間ドラマに主眼が置かれているようですが。
1か月だけサブスク契約しようかな。
0 件のコメント:
コメントを投稿