2020/12/04

プサルタリー


 YouTubeで、またラブリーな中世音楽チャンネルを見つけてしまいました。

Musica Medievale。こちらです。

不思議な楽器がたくさん出てくる。そして何がおかしいって、貼ってある画像が変すぎて萌える。なにと戦ってるのこの人。そしてこの盾は一体なに。

 

 

この大変情けない顔のウサギが弾いているのは「プサルタリー」という24弦の楽器。

聖書の詩篇の伴奏にも使われたとWikipediaに書いてあった。へええ、あれは歌うものだったのね。

ハンマーダルシマーやハープシコードに発展していった楽器の原型のようです。

しかしどうしてこんなに困った顔をしているのだ。死ぬまで飲まず食わずで演奏し続ける刑でも受けてるみたい。それとも曲がむずかしすぎるのか。

中世音楽は日本の民謡に節回しが似てるやつもあったりして、音楽の理屈はまったくわからないなりに面白いです。盆踊りみたいな舞曲もあって、ゆったり安心して聴いていられるかというとそうでもないのだけど。


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2020/12/03

桁ちがい&なかよし君、離反か


師走ですねー!

コロナ禍が米国では日々大変なことになってます。

日本も感染が広がってるようだけど、桁が、違う。

米国の1日の感染者数は約20万人に。1日のです。

そして亡くなる人の数も、1日2000人台をさくっと越えてしまいました。
日本に帰れる人は、もはや帰ったほうが安全なのかもしれない。

最悪はこれから、と専門家は予見してます。来年前半はどんなことになるのやらー。




そんな中、CTを撮りにまたワシントン大学の病院に行ってきました。
放射線科の廊下には、チューリップのレントゲン写真??が貼られていて素敵。

さいわい、腫瘍は思っていたほど進行してなくて「わりと安定」しておるという所見でございました。

感染拡大の危機にあたって、病院はとっても静か。どうしても必要な予約以外はキャンセルする人が多く、付添いは必要な場合のみ、成人1名だけに限定されているからです。


わたしは一昨年の12月に手術を受けたのだけど、友人がたくさんお見舞いに来てくれて嬉しかったし元気づけられた。CT3号まで(表に)きてくれて。
みんなが花を持ってきてくれたり顔を見せに来てくれたから、のんきに楽しく入院生活が送れました。
今、手術などで入院しなければならない人はとても寂しいことと思います。




今週は快晴つづき! うっかり受けてしまった仕事で缶詰めなのだがー。


 
夕焼けすごいです。サンセットヒル公園にて。

現職大統領はあいかわらず「不正選挙だ!」と叫んでいて、コロナ禍についてはまったく言及せず。

日本でニュースになってるのかどうか、トランプのなかよし君だった司法長官(BLMのデモ鎮圧に軍隊を投入した人)が、AP通信とのインタビューで「司法省は大統領選挙の結果を覆すような選挙上の不正は発見ていない」と語って、きのうのトップニュースになってました。

トランプ派による選挙不正追求の訴訟はことごとく失敗しているし、だいいちたしかな証拠はひとつも提出されていないっていうのは、トランプ側近と支持者以外には世界中に周知の事実なのだけどー!

それをこの司法長官の口がしゃべったということが、大ニュース。トランプもこの人がお墓までついてきてくれるとは思ってなかっただろうけど。

いくら忠実な側近とはいえ、司法の世界には司法の世界のルールがあるのだから、いつまでもトンチンカンな主張を応援してはいられなくなったのでしょう。

どこの裁判所も、証拠もないトランプの言い分をまともに相手にできないということ。

とりあえず、アメリカの司法システムがまだちゃんと機能しててよかった。
トランプ派は司法の世界もすべて(自分が指名した裁判官や長官も含め)陰謀に加担してるって言い出すのかな。

 

 



 

Netflixの『The Trial of Chicago Seven』(『シカゴ7裁判』)おもしろかった。
史実にどのくらい忠実なのかしらないけど。この事件の顛末はアメリカ60年代史の授業で読んだはずなのだが。すっかり忘れてしまいました。

俳優陣が超豪華でびっくり。サシャ・コーエン(鉄板)、魔法使いのエディ・レッドメイン君(推し)、綱渡り映画『WALK』や『インセプション』にも出てたジョセフ・ゴードン=レヴィット(ひそかな推し)。

「BATMAN」マイケル・キートンが前司法長官役で、存在感ずっしり。「ボス」って感じね。



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2020/12/02

USルート93号線で遭遇したもの [DAY9]


10月のロードトリップ、最終日第9日。これで最後です。

ネバダ州ウェルズから、例のUSルート93号線というこの対面通行の国道↑↑を北上し、アイダホ州ツインフォールズへ。
そこから州間高速道に乗って、シアトルまでは計11時間の道のりです。



寒いけど(4度Cくらいでした)快晴で、前の晩はよく眠れたし、ガソリンも満タンにしたし(笑)、夜中に着けばいいやと思って、のんびり9時頃出発。


ツインフォールズまではまっすぐ荒野をつっきって1時間半ほど。

ほ ん と うに、道の両側には荒野しかないので、ずーーーっと交差路はありません。が、ところどころにこのような歩道橋がある。放牧地があるので、人間よりもおもにウシやシカが利用しているみたいです。

このUSルート93号がいわくつきだということは前日に知ったわけですが、いくらなんでもこんな快晴の朝ならノープロブレムだろう、と思っていたら。



曇ってきた。というより、わたしたちが雲の中に突っ込んでいったわけですね。

いちばん上の写真で、低く地面すれすれにたれこめている、不吉なかんじの雲がありますね。

よく見れば、そのまんなかに自分たちが入っていくのは一目瞭然だったのでした。

Amazonプライムのトラックは、ほんとにいたるところで見た。こんなルート93にも。




そして、雲の中ではなんと雪が降っていたのだった。つい10分前まで快晴だったのに!

スノータイヤなんか履いてないプリウスちゃんが心配でしたが、くっつく雪ではなくて、サラサラと地面を流れていく乾いた雪で、幸いスリップなどはせずに済みました。

低い山をひとつ越すと、すぐにやみました。こんな天候の激変があるとは!

 

 
突然の雪に遭遇したときには、前夜の真夜中ガス欠ギャンブルの坂道よりもずっと動揺したけど、逆に運転していた青年は落ち着いたものでした。




穴からでてきた動物的な。




アイダホ州に入ったあたりかな、このあたりの景色もほんとうに綺麗でした。

丘陵の下にぽつぽつと牧場があり、雪の降る枯れた牧草地に牛たちが点々と散らばっている。
荒々しい砂漠や荒野に挟まれた、こぢんまりした谷あいの牧場。

枯れた牧草の色、丘陵の紅葉、霧の濃淡。限定された色あいの中の繊細なグラデーション。
そこに雪。



 

ここに1週間くらいいたら、すごく綺麗な写真が撮れるかもしれない。

このような道ばたスナップではその1000分の1も伝わらないんですが。もうちょっとゆっくり景色をみていたかったけど、まだこのさき10時間のドライブが待っているので、一度路肩に停まっただけで通過。





帰りの道で、しかもネバダ〜アイダホのこんなマイナーな場所で、これほど景色に感動するとは予想していませんでした。

国立公園に行くときは、世界的に有名な景色を見にいく!と、最初から期待値が上がっていますが、何も期待していない場所でこんな光景にでくわすと、すんごい拾いものをした気分です。




ツインフォールズからインターステート84号に乘るまでの道も、スネーク川沿いの景観がのどかで美しかった。


一瞬で通り過ぎた小さな家の日の当たる裏庭で、7歳か8歳くらいの金髪の女の子が白い馬の首に手をかけて頬を寄せているのを目撃。

いったい今のはなに?マボロシ?と、絵本の表紙みたいな光景に震えてしまいました。


 

 
ツインフォールズからオレゴン州の途中まで、3時間くらいわたしが運転。(9日間の全行程で運転したのは3回くらいだった)

インターステート84号のツインフォールズからオレゴン州境あたりまで、気持ちのよいカーブやスネーク川を見下ろす谷あいなどがあって、変化にとんだ楽しいコースでした。 
 
 


オレゴン州で日が暮れ。
 
 
 


シアトル帰着は、やっぱり真夜中近くになってしまいました。


なんだかんだで珍道中でしたが、面白かった。行ってよかった。こんな時期に思いがけず念願のグランドキャニオン覗きがかなって、ほんとに嬉しいです。




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2020/11/29

初・鶏の丸焼き


あっという間に長い週末が終わってしまってびっくりだ。

シアトルは、冷たい雨の降るしっとりした感謝祭(木曜日)でした。

ことしはワシントン州全域に「同居人以外の人とは屋内で集まらないように」というおふれがでているため、例年だったらCTちゃんたちと感謝祭ディナーにするのですが、自粛。

うちで青年とふたりのディナーだから、お鍋にしようかなんて思っていたのですが、やっぱりホリデーらしいものが食べたくなり、ターキーでなくて鶏を一羽焼きました。

せっかく巨大オーブン(アメリカではむしろ小さめだけど、オーブントースター4個分くらいの場所を取っており、無駄にでかい)があることだし。



レシピはこちらを参考にしました。


にんにくみじん切りと塩こしょうをたっぷりまぶして、レモンとバターとオリーブオイルと白ワインを混ぜたものをたっぷりかけ、ローズマリー、絞ったレモンの皮まるごと1個分、にんにく3かけ、セージをつめて、焼くだけ。シンプル。



4ポンド半(約2キロ)の鶏一羽で、1時間半くらい。



こんがり焼けたー。これまでも毎年どこかにおうちにおよばれしていたので、七面鳥も自分で焼いたことはないのです。結婚してたときは元夫が焼いてたし。

鶏の丸焼きもはじめてのこころみでしたが、意外にかんたんにカリカリに焼けて大満足でした。
身もジューシーでおいしかった。



あとはコーンブレッドとカラードグリーン、そしてクランベリーソースのみ、というささやかな感謝祭ディナー。キャンディヤムかマッシュポテトを作ろうかと思ったのですが、食べるのは2人なので、苦渋の決断で思いとどまりました。

やっぱりマカロニチーズとマッシュポテトとヤムがないと、すこしさみしい。あとグレイビー!

マッシュポテト&グレイビーの組み合わせはやばいです。時々無性に食べたくなる。



パンプキンパイは冷凍のクラストが割れており、そこから滝のように中身が漏れ出すという事故があったものの、なんとか形をとりとめました。(だいぶ薄くなったけどww)

静かで平和な感謝祭でした。


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2020/11/26

圧倒的に強い女と魔女


Netflixの『The Queens Gambit』(クイーンズ・ギャンビット)面白かった!最高でした。

『マーベラス・ミセス・メイゼル』とおなじく1950年代から60年代の話だけれど、こちらのほうが画面もしっとりしてて、映画っぽい。とても綺麗で空気感のある映像でした。





子役もいいけど、アニャ・ティラー=ジョイ。
この人の眼ぢからをここまで活かせるドラマはなかなかほかにないかも。

恵まれない孤児の境遇で、母の死などのトラウマを抱え、向精神薬やアルコールに依存する天才チェスプレイヤーのお話ですが、そう聞いて想像するような湿っぽさがほとんどない。

 



画面はしっとりしてるのですが、話の運びはまったくドライできびきびしていて、前向きで小気味よいです。

話がしめっぽくならないのは、主人公のベスが、アスペルガー?と思うくらいに感情をあらわにせず、動じず、人の目を気にしない意思の強い人だからでもあり、登場人物の心理がわかりやすいけれどとても抑えた表現で描かれているからでもあり。

ほんとに、これのすぐ前に見た『ミセス・メイゼル』はコメディだけど、共通点がいっぱいある。どちらも、1950年代〜60年代という、まだガチガチにしゃちこばった白人男性優位の価値観が全く揺らがなかった時代に、スタンダップコメディやチェスという女性の存在をほとんど認めていない世界に若くてきれいな女性の主人公が斬り込み、圧倒的な実力で居場所を獲得していく話。

どっちの主人公も挫折してもぐずぐず泣き言をいったりしないし、人間関係をおいてけぼりにしてまでも自分のやりたいことに突っ込んでいく。

でも2人ともオシャレでガーリーで、服や髪型が毎回すごくかわいい。まったく肩肘はらず、いばらず自信をもってカワイイを楽しんでいるのも素敵で、新しいヒロイン像だなあと思いました。

アニャ・ティラー=ジョイちゃんは96年生まれ、うちの息子より1歳下の24歳。
少女マンガのような顔だと思いませんか。

この人はなんといっても、2015年の『The Witch』(ウィッチ)が印象的だった。



アメリカ独立前の東海岸、ニューイングランドの村を追放されて森のほとりに住む家族の話。

お父さんは敬虔なキリスト教徒だけれど、頑固もの。信仰も頑固がすぎて村を出ることになる。

人に頼れないプライドの高さにくわえ、狩りなどの実用的な仕事が得意ではないので、家族はだんだん困ったことになっていく。お母さんはイギリスが恋しくて、人里離れた森に住むのは不本意で幸せではない。赤ん坊がいなくなった日から次々に不気味なことが起こりはじめて、両親も幼い妹と弟も長女のトマシンが魔女ではないかと疑いはじめる、という話。

わたしはホラー映画にはあまり興味がないのだけど、これはとても面白かったです。

ピューリタンの信仰にからみつく罪の意識と恐怖が、説得力抜群に描かれていました。

会話はすべて17世紀の英語で、聞き取るのがすごく大変だった。ていうか正直あまり聞き取れなくて字幕が頼りでした。ふだんから家でドラマや映画を観るときはクローズドキャプションの英語字幕を出しっぱなしにしてます。



全体に画面全体が陰鬱で、森も暗いし登場人物も暗い。 アニャちゃんの演じる長女トマシンだけがみずみずしく輝くように描かれているのだけど、魔女への恐怖が育ちはじめると家族がどんどん疑心暗鬼で崩壊していく。

出てくる魔女(こわいよ!!)のエピソードはすべて、当時のニューイングランドで採集された「目撃談」や噂話にもとづいているそうです。まじこわいよ!

サンクスギビングにぴったりの映画かどうかはわかりませんが……サンクスギビング発祥の地ニューイングランドを舞台に、恐怖とはなにかを解剖してみせてくれるような映画です。

 きょうのシアトルは、ちょうどこんな感じの暗くてしっとりした雨。

 

たのしいサンクスギビングを〜。

 

 

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2020/11/25

コロナ禍中の旅でおどろいたこと [DAY 9]

 

ロードトリップ、最終日。
真夜中近くにようやくたどりついた、ネバダ州ウェルズの宿。

当然、着いたときは真っ暗でなにも見えませんでしたが、朝起きたらこんな景色が窓の外にひろがっていました。

この窓の外を突っ切っている道路が、前日に通ってくるはずだったUSルート93号線です。


こうやってみると、壁に大平原の絵でもかけてあるみたいに見えますね。


人口1292人の町。州間高速道と国道ルート93の交差点なので、ホテルとガソリンスタンドが何軒かある。高校と小学校がひとつずつ。
むかしは大陸横断鉄道の駅があったそうです。

鉄道が通っていたときには、西部劇にでてくるような町だったんでしょうね。

チェックアウトのときにフロントの女の子に「きのうはルート93でくるつもりだったんだけど通行止めで大迂回しちゃった」と言ったら、やっぱり同じようにルートを変更しなくてはならず予約をキャンセルしたお客が多かったそうです。

「あの道本当にみんな大嫌いなのよ!すごく危ないから!」
と、地元育ちらしいフロント嬢は熱弁をふるっていました。危ないんだ、やっぱり。

 

 


 泊まったのはヒルトン系のビジネスホテル、ハンプトン・イン。新しくオープンしたてのようで、まだピカピカでした。

大手だけにコロナ対策もしっかりアピールしていて、チェックインする前の部屋にはドアにシールがはられて「消毒済み」を明記しています。

 

 

朝食も、自分で取ってくるのではなくて、係のお兄さんがサーブしてくれる形式になっていました。

こういうビジネスホテルの朝食で、セルフサービスのワッフルメーカーでワッフルを作るのが庶民のたのしみだったのに、あれももうしばらく見られない光景なのだろうなー。

 


シアトルまであと740マイル!寂しい道もがんばった、うちのプリちゃん!

コロナ禍のなかで、10月は感染者数もわりに安定していたとはいえ、ユタ、アリゾナ、ネバダはホットスポットでもあり、どんなものかな、とある程度身構えていましたが、どこに行ってもマスク着用が徹底されていたので、ほっとすると同時にちょっと拍子抜けしました。

国立公園内やホテルやスタバなどのチェーン店はもちろんですが、どんな辺境のガソリンスタンドに行っても、ドアに「マスク着用必須」と書いてあり、実際、店内でマスクをしていない人は一度も見かけませんでした。

ニュースで威勢のいいトランプ支持者がマスクをしないで集まっている写真や「マスク強制は独裁だ!」と騒いでいる人のニュースばかり見てたので、ほとんどの人がふつうにマスクをして生活していたのを見て、少し驚いてしまいました。(もちろん、観光客の多いエリアしか行きませんでしたが)

行ってみないとわからないものです。決めつけはいけませんね。

 

 

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2020/11/23

とんでもないギャンブル [DAY 8]


ロードトリップ8日目。魔の?ルート93号線に拒絶されて、州間高速「I-15」号線へ迂回した午後。

93号からI-15への出口にあったガソリンスタンドで少し長めに休憩して、夜になってからもう一度給油とトイレのために小休止したほかは、ひたすらまっすぐ走りました。



それでも遠い道。


I-15号は、ザイオン国立公園のすぐ西側あたりを通ります。
ほんの数日前にいたばかりなのに、なぜかとても懐かしかった。

ソルトレイクシティを通過するころにはとっぷり夜になり、たまたま何かのイベントがあったのか、高速沿いで花火が上がっていました。



これはザイオンの西側あたり↑。のどかな牧草地を走るプリウスちゃんの影がかわいかった。

「インターステート」つまり州間高速道は、どんなに荒野のまんなかであっても片側2車線で、それなりに照明もあり、なによりも携帯通信がつながりやすい(うちはT-Mobileという会社と契約してるのですけど、この日行くはずだったルート93号のあたりはほとんど電波がとどかない地域だったのでした。それも当然、あとから知ったわけですが)。

というわけで、様子のわからない地域を夜間移動しなくてはならないときには、やっぱりインフラの整っているインターステートが安心です。

トイレと案内版などがある「レストエリア」もところどころに配置されているし(日本のサービスエリアみたいにお土産屋さんやレストランはないけれど)。

ソルトレイクシティからこの日の目的地、ウェルズまでは別のインターステート「I-80」号線の西行きに乗り換えて3時間弱。

 ソルトレイクシティの外に出ると、また丘陵と荒れ地がつづきます。外はまっくらで何も見えない。

もうこの時点で8時を過ぎていたでしょうか。この日も朝からずっと青年が運転していました。わたしはこのへんで少しウトウトしつつナビゲートしていて、どこかに寄ってごはん食べなくて大丈夫〜?と尋ねたのですが、朝から缶コーヒー3本を飲んで目が冴えていた青年は、特におなかは空いていないという。わたしも別段空腹ではなかったので、そのままホテルまで直行することに。

ソルトレイクシティから1時間半ほど、ネバタ州境を越えたあたりに小さな町がありました。

そこを通過するちょっと前に、青年が

「ガソリン入れたほうがいいかな。保つかどうか50/50チャンスだけど…?」

とつぶやくように言ったのですが、わたしは

「?ふーん?」

と聞き流していました。

あとで聞いたら、あれは私に意見を求めたのだ、と主張していましたが、そんなん知らんわ!自分で決めろー!

そこからウェルズまでは60マイル(約96キロ)。

その町への出口を通りすぎて10分か20分かしてから、青年が急に焦りだしました。

「……ガソリンが足りないかもしれない…。あと何マイル?」

燃料ゲージが最後の一本になってしまったというのです。

予備タンクで走れるのはおそらく30マイルくらい。いくら燃費のよいプリウスちゃんでも、山道ではアクセルを踏み込まないといけないので消費が上がります。

まわりは人家ひとつない、まっくらな砂漠。

 


このときわたしの頭に蘇ったのは、青年が高校生のときに敢行した第1回ロードトリップで、ワイオミングの山道を走行中、やっぱりガス欠寸前になって大焦りした日のことでした。あれは昼間だったけど。あのときは私が運転してて、青年は爆睡してたんでした。

グーグル・マップによれば、ウェルズまでの間に出口はひとつだけ。

それも「オアシス」という、いかにも天の助けのような名前の出口でしたが、検索してみると人家すらほとんどない場所で、もとよりガソリンスタンドなどありませんでした。

上り坂さえなければなんとかなるかもしれない…」

とのぞみをつなぐ私たちの前に、当然のように、次々に山が…のぼり坂があらわれる。

ついに青年は、プリちゃんの速度を落としてエコモードで走りはじめました。


制限速度70マイル(時速約113キロ)のところ、35マイル(時速約56キロ)で走行。

わたしもワイオミングでガス欠寸前になったとき、ガソリンを使わないようになるべくニュートラルにして、しかも外は摂氏40度くらいの猛暑だったけどエアコンも消して走ったのだった…。親子で同じようなことを……。

時速56キロって、首都高速だったら普通の速度だけど、アメリカの夜のインターステートハイウェイでは、カメの歩みのように感じられます。

右側車線(遅い車の車線)を、ハザードランプを点灯して35マイルで走っていると、次々にトラックに追い抜かれていきました。

あまりに面白いので記念に撮っておいた。左の「35」と表示されている速度メーターの横が、燃料ゲージです。


快晴で良い月夜だし、インターステート上だし、人家はないとはいえ携帯もつながるエリアだし、まあ最悪ほんとうにガス欠になっても町まで20キロくらいの地点までは行っているだろうから、死ぬことはなかろう、と、いちおう保険会社のロードサービスの番号を確認しつつ、さすがに少しテンパってきた青年を眺めていました。

うちの息子は、年のわりにかなり落ち着いていると親ながら思います。高校のときは決してこんなではなかったのだけど、いつの間にかずいぶん成長して、わたしよりずっとしっかりしてると思うこともよくある。親が知らない間に色々苦労したんですね。

でもその青年も、このときばかりはけっこう狼狽していた。しかし、たとえばお父さん(元旦那)だったら、きっとこういう場面で逆ギレして大騒ぎだろうなあ、と思うとおかしかったです。 あの人だったら間違いなく怒り出すと思うな。

ま、情緒面ではわりに「しっかりしている」といっても、とつぜんこういう謎の大ボケ(「50/50だよ」とか言ってる時点でそもそもおかしい。なぜそこで給油に行かず無駄なギャンブルに走るか、そこが不思議)をかますところは、母親ゆずりです。 

 

そして、いよいよ「要給油」の黄色いランプが点灯して、ウェルズまであと17マイル!16マイル〜!とカウントダウンしていたところ、まっくらな道路の右側に「近隣に刑務所あり。ヒッチハイカーを乗せるの禁止」という趣旨の看板をみつけました。


「ひー、ここでガス欠になって、停まってるあいだに脱獄囚に襲われるってどうよ?」

と最悪のシナリオが浮かび、親子で大笑いしてしまいました。

幸いにもそのさきはゆるやかな下り坂で、脱獄囚に襲われることもなく、ウェルズの町までたどりつくことができました。

ガソリンスタンドの照明が神々しく見えたw

ホテルに着いて車を下りてみたら、寒いのなんの。零下4度Cでした。

ひー。ガス欠にならなくてよかった〜。真っ暗な夜道で助けを待っているあいだに凍える羽目になるとこでした。



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