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2020/12/04

プサルタリー


 YouTubeで、またラブリーな中世音楽チャンネルを見つけてしまいました。

Musica Medievale。こちらです。

不思議な楽器がたくさん出てくる。そして何がおかしいって、貼ってある画像が変すぎて萌える。なにと戦ってるのこの人。そしてこの盾は一体なに。

 

 

この大変情けない顔のウサギが弾いているのは「プサルタリー」という24弦の楽器。

聖書の詩篇の伴奏にも使われたとWikipediaに書いてあった。へええ、あれは歌うものだったのね。

ハンマーダルシマーやハープシコードに発展していった楽器の原型のようです。

しかしどうしてこんなに困った顔をしているのだ。死ぬまで飲まず食わずで演奏し続ける刑でも受けてるみたい。それとも曲がむずかしすぎるのか。

中世音楽は日本の民謡に節回しが似てるやつもあったりして、音楽の理屈はまったくわからないなりに面白いです。盆踊りみたいな舞曲もあって、ゆったり安心して聴いていられるかというとそうでもないのだけど。


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2020/09/16

イケメン満載のお宝マタイ受難曲

 


YouTubeでバッハをきいていたら、AIにおすすめされたマタイ受難曲。

なんと、ミュンヘンのテルツ少年合唱団と、バロック楽団ミュンヘン・ホーフカペレの、聖堂らしき会場でのライブ・コンサートという、お宝映像でした!

2017年のコンサートです。素晴らしいーーー。

テルツ少年合唱団は日本でもファンが多く、何度か来日公演もしてますね。

わたしは80年代にたらさわみちのマンガ『バイエルンの天使』で知ったのでした。「プチフラワー」と新書館の「グレープフルーツ」で連載読んでました。内容はうっすらとしか覚えていないけど。

(いまWIKIを読んで、「グレープフルーツ」の存在を思い出した。萩尾望都、大島弓子、佐藤史生、坂田靖子。少女マンガからスピンオフしたちょっとマニアックなマンガの黄金期でしたねー。雑誌もいっぱいあったし!!SF系が多かったな)

その後とくにフォローしてたわけではないんですが、この映像を見て、何十年かぶりに『バイエルンの天使』を思い出しました。

ソプラノとアルトのアリアは、交代で少年たちが歌ってる。もちろん、大人のプロ歌手にくらべると繊細な表現や技術には欠けるけれど、天使だよ天使。

 


第一部のアリア「 Blute nur, du liebes Herz!(血を流すがよい、汝、愛する心よ)」(15.44)は、4年生くらいの、ハリー・ポッターみたいなメガネ少年が歌っててカワイイ。髪の毛が寝癖みたいに立ってるとこもwww

 

 

ソプラノとアルトの二重唱「So ist mein Jesus nun gen」(こうしてイエスは捕らえられてしまった)(52:50) は、透明感半端ない。天使の声だ。


そしてね、一番出番の多い「福音史家」、これは金髪のテノール歌手の青年が歌っているのだけどね、この青年がなかなかのイケメンですよ。


Benjamin Glaubitzさんという、クリーンな正統派ドイツ青年。

ヘアスタイルも分け目正しい。
歌声も素晴らしいし、凛々しくも繊細な表現が福音史家にぴったりで素敵です。

 イエス・キリストはバリトンのSamuel Hasselhornさんという方。


こちらは外見がGEICOのちょっと昔のCMに出てた知的な穴居人を思わせる(いやあれは今ではNGだよね)ワイルドな髪型で、これもキリストの役柄にぴったりの、権威ある声が素晴らしい。

この二人の強烈なコントラストが、少年たちの合唱を背景に際立つことこの上なし。

Geduld! Wenn mich falsche Zungen stechen (耐え忍べ、私を偽りの舌が刺すときも)」(1:12)のテノールのアリアも繊細で素敵なのですが、伴奏のヴィオラ・ダ・ガンバが雰囲気のある素敵なイケメンで、そちらに目がくぎ付け。



チェロの前身、ヴィオラ・ダ・ガンバ。この楽器の音が好きなんです。
古楽器楽団でのマタイ受難曲は初めて聴いたかもしれない。

この受難曲中でたぶんいちばん有名なアリア「 Aus Liebe will mein Heiland sterben (憐れみ給え、我が神よ)」(01:40)は、わたしも超超大好きな曲なのですが、これだけはちょっと違和感あった。ソロのヴァイオリンが華麗にでしゃばりすぎなで、テンポが先走ってる感じ。このアリアは、特にこのヴァイオリンの部分など、イタリア的な要素が多いのかな、もしかして。初めてそんな印象を受けたのですが。とにかくヴァイオリンのおっちゃんはイタリアっぽかった。所作が。

 


「Aus Liebe will mein Heiland sterben  (愛ゆえに、私の救い主は死のうとしておられます)」( 1:40)。このアリアを歌ったソプラノの美少年は、ほんとうに綺麗な声です。

 もちろんドイツ語なんてぜんぜんわからないので、このサイトの対訳にお世話になっています。 

 

そしてこの指揮者も大好きー。顔と手の表情がとても雄弁で、ほんわかします。結婚するならこういう人がいいよ。

 


 古楽器だけの小さな楽団と少年たちの合唱。狭い舞台の上での演奏がとても親密で、今まで聴いたなかで(そんなにすごくたくさん聴いてませんが)かなり好きなマタイ受難曲でした。

テンポもかなりゆっくりで、丁寧な、心のこもった演奏だなあと思いました。

子どもたちの個性も豊かで、ぽっちゃり君もいれば優等生っぽい子も、ずっとキョロキョロしてる内気そうな子もいて、『バイエルンの天使』思い出した流れもあって微笑ましくてならぬ。

 この少年たちは今、どうしているのでしょうね。

こんなにぎゅうぎゅうに人が集まって合唱を聴くことが、また可能になるのはいったいいつのことか。と思うと、かなり切ない。

世界にはなんだかたくさんの災厄がふりかかっていますが、人類にはトゲトゲした嘘つきもたくさんいれば、優しい人もたくさんいる。

人類はこんなに美しい物語を長年たいせつにしてきたのだから、もうそろそろ、くだらぬ争いと怖れを卒業してはどうか。と、神様が言っているように思います。

 


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2020/05/16

私を泣かせてください



きのうの朝、ひさびさにSpotify(有料会員ではないのでコマーシャルが入るため、あまり使っていなかった)の「Daily Mix1」を開いてみたらこの曲がかかり、感動の涙をしぼり取られました。

この↑歌手の人は不思議の国のアリスみたいな帽子をかぶってますが、帽子と歌はたぶん関係ありません。

あまりにも気に入ったのでAppleMusicで開き直してこのオペラをフルで2回繰り返して聴いてしまいました。


こちらのバージョン。メゾソプラノはチェチーリア・バルトリさんです。
この人の声素敵ー。オペラはほとんど知らない世界です。父が晩年、オペラ好きになって東京でよく通ってたみたいだけど一緒に行く機会はなかったし、自分でチケット買って見に行けるような余裕も皆無だったし。そもそも歌曲って、最近まで不思議と興味なかった。

「私を泣かせてください」ってどストレートな題名です。

バッハとバロックが大好きっていってるわりに、ヘンデルって「メサイア」と「王宮の花火の音楽」くらいしか知らなくて、なぜかこれまでまったく興味を惹かれず、ほっとんど聴いてこなかったのでした。でもこの曲、それにこの歌劇『リナルド』に、今、なぜかどはまり。

こんな曲を書いてたんだー。隅に置けないじゃん(いや全然隅には置かれてない) 。

これ、なんと、ヘンデルさん26歳のときの作曲なんですってー。ヘンデルってバッハと同年生まれ(1685年、スカルラッティも一緒!)だけど生涯一度も会ったことなかったとか、21歳のときからイタリアに行ってフィレンツェやヴェネツィアでイタリア語のオペラを書いて大評判をを得たとか、ぜんぶWikipedia情報ですが、ぜんぜん知らなかったー。超新鮮。無知ってステキ。

18世紀初頭、北国からやってきた天才青年にとって、イタリアってどれだけキラキラした舞台だったんだろうか。


このオペラはロンドンで書かれてロンドンで公演されたもの。そうか、ヘンデルさんはイギリスに帰化したんですね。

このオペラを聴いてると、18世紀には歌劇は当然イタリア語でなくてはならないと思われていたのが納得できる気がします。何言ってるかぜんぜんわからないけど、言葉そのものが音楽的ってこういうことかと思う。鳥がさえずるみたいなキラキラ感のある言葉。華やかだ。



しかしー、昨日も鉄腕翻訳者みぽりんに熱弁をふるってしまったけど、Spotifyは優秀ですねー。

iTunesから引き継いでいろいろ蓄積しているライブラリがあるので毎月11ドル払ってAppleMusicを使ってるけど、おすすめエンジンの優秀さはいまだにSpotifyが抜群で、比較にならないです。クラシックもジャズもセレクションが素晴らしい。

Spotifyは99セントで3か月というお試し期間に使ってみてとても感動したんだけど、AppleMusicを捨てるには踏み切れず、両方におカネを払い続けるのも財政上はばかられるので今は無料会員です。

Spotifyのいいところのひとつは、お気に入りやよく聞く曲にもとづいたおすすめミックスをジャンル別にいくつも用意してくれること。3か月使ってるあいだに、6種類の「Daily Mix」ができてた。

AppleMusicも似たような「あなたのための新しいミュージック」のリストを週いちで作ってくれるけど、全ジャンルがごちゃまぜなので、バロックあり、ヒップホップあり、ポップスあり、ジャズありで、今こういう方針の音楽を流しておきたい、というときに安心して聴けない。


コンピュータとスマートフォンの連係もSpotifyのほうが快適だし。

…といってたら、またSpotifyで「プレミアムにカムバック!3か月9ドル99セントでどう?」というキャンペーンが始まっていました。いいとこ突いてきた!引っ張られています。


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2020/03/21

よく効きそうなオルガンと19世紀ロマネスク


ほんの2週間ばかり前にふつうの生活が営まれていたとは、もう信じられない。
2月の終わりのボストン日記です。

うちの青年の話だと、今はもちろんこの教会も、近くの高級ブティックやレストランのある通りも、みーんな閉鎖されているとのこと。

ボストンのバックベイ地区のまんなかにあるトリニティ教会

1733年創設の、アメリカ建国よりも古い教会です。 エピスコパル派。最初は英国国教会だったんですね。いかにもあんぐり感じゃないよアングリカンのエスタブリッシュメントの教会だねって感じがする。宅は由緒正しゅうございますのよ、て感じの教会。

いまの場所に移転したのは1872年で、ヘンリー・H.リチャードソンという建築家の設計

ヨーロッパの中世の教会をベースにしたロマネスク・リバイバル様式で、ビザンチンの要素もちょこっとはいっているそうです。
この様式は「リチャードソニアン・ロマネスク」と呼ばれるようになり、19世紀後半に流行って、全米あちこちの都市の教会や公共のたてものに応用されたそうです。

多色使い、たくさんのアーチ、ぼってりしたボリュームのあるプロポーション。装飾過多な感じ。どこか1980年代のポストモダンのビルに似てると思うのはわたしだけでしょうか。なんかこう、キャラクターがかぶる気がする、80年代と。

あっそうだ、もしかしてと思ったらやっぱり、ハワイのホノルルにあるビショップ博物館の建物もこの様式でした。もっと装飾は少なくて多色づかいはしていないけど。 これも同時代のたてもの(1898年完成)。

(ビショップ博物館、ウィキコモンズより)

なんかこう、ちょっとテーマパークっぽい感じがする様式だとわたしは感じます。

成り上がりと旧大陸の人たちに思われていた新興国家のアメリカ人が、中世ヨーロッパの重厚さに憧れて、その雰囲気を表現しました、という素直な、すこし恥ずかしいくらいの憧れがバーンと臆面なく表現されているように見えます。

建国から19世紀末までのアメリカの教会には、ゴシックやロマネスクのリバイバルが多いんですね。
裁判所や役所はギリシア・ローマ神殿みたいな新古典様式のやつが多いけれど。



すぐとなりにはガラス張りのジョン・ハンコック・タワー(62階建て、1976年完成)があって、晴れた日にはきれいな青空を背景に、19世紀の教会が20世紀のオフィスビルにくっきり映ります。


重厚な正面扉。これも中世のお城みたいなおもむきがありますね。

毎週金曜日のお昼に、パイプオルガンのコンサートが開かれていました。
サジェスチョンは寄付10ドルだけど強制ではありません。

10月と2月に1度ずつオルガンを聴きにいきました。

毎回違うオルガニストが来て演奏する、30分ほどのミニコンサート。
2月の演目はバッハ2曲のほかは、Richard Purvis 、Robert Hebble、William Mathias、Louis Vierneという、いずれも知らない作曲家の20世紀の曲でしたが、面白かった。

演奏家は、東京の芸大で教えていたことのあるボストンのオルガニストさんでした。



教会内部は外から見た印象よりさらに広く天井が高く、壮麗。ステンドグラスや壁画も豪華です。

そして前の壁にも横の壁にも後ろにもオルガンのパイプ。
7000本以上のパイプがあるという、どこがどういうふうにつながってどこで鳴っているのかシロウトにはさっぱりわからないオルガン。

いってみれば教会堂全体が楽器です。
こんな大きな楽器を演奏できるオルガニストは楽しいでしょうね。

カンカン、というかねの音が入っている曲もあり、いろんな音があってとても面白かった。シンセサイザーのようだ。

オーボエのようなはかなげな音や、身体にごうごう響く低音が、本当に気持ち良いのです。

「セロ弾きのゴーシュ」の、チェロの中につまんで入れてもらったネズミの子みたいな心持ち。

このオルガンをこの聖堂で一日聴いたら、ちょっとした風邪や肩こりくらいならたちまち治りそうな気がします。

また教会でオルガンが聴ける日が、すみやかに来ますように。


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2020/03/06

春を信じるのじゃ


きのうの夜、ボストンからシアトルに帰ってきました。

今週のボストンより気温はちょっと寒い。今日のシアトルは4度C〜6度C。東海岸がこの冬は異常に暖かかったのです。

でも花はさすがにシアトルのほうが早い。プラムの花が満開です。水仙もたくさん咲いている。ボストンではまだやっと球根類の芽がでてきたところでした。


夕方6時すぎのフライト。到着は10時すぎ。

飛行機はガラガラってほどじゃないけど空いてました。3列の席を独占して横になってる人が多かった。

コロナ感染者が多数確定しているシアトル行きだから特別に空いてたのかどうかはわかりませんが、空港のセキュリティチェックも行列がなくてものの数分で通過できたし、全体に空いていた。



コンフォートシートだと軽食も出るのだ。豪快にごろんと切ったりんごとチーズとナッツ。
わたしは飲まないけど頼めばワインもついてくる。今回も隣の席が空席でラッキーでした。


到着したら大雨だった。上空では窓の外を雪が川のように流れていくのがきれいでした。

機内でマスクをつけていた人は皆無だったけど(最後尾のトイレに行くあいだに観察した)、着陸と同時にマスクをつけた人が2名。ひとりは中国系らしい若い男性、もうひとりはインド系風の美女。

LyftやUberの待合場所では使い捨てゴム手袋をしている人がいた。白人のビジネスマン風。医療関係者かな。

空港から乗ったLyftの運ちゃんは、道も空いてるし、バーも映画館もガラガラだよ、といってました。

アマゾンもフェイスブックもマイクロソフトも社員にできるだけリモートで仕事するように推奨しているそうなので、ほんとに道はガラガラみたいです。

シアトル側から湖をわたってイーストサイドに通勤しているCTちゃんは、朝の高速道路が異常に空いててほかの車が飛ばしているので勝手が違って運転が怖いといってました。

ワシントン大学も、来週からオールキャンパス、クラスルームは閉鎖だって!!
3キャンパス、学生4万人以上。
今学期の残りは全部、できる部分はオンラインに移行するそうです。



飛行機に乗ってるあいだにメールで翻訳の打診がきてて、超急ぎ!というのでなにかとおもったらCOVID-19関連のお知らせ文書でした。帰ってきていきなり朝からコロナの仕事。ここしばらく遊びほうけていたので、ありがたいですが。

仕事がなんとか片づいて、夕方散歩がてら買い物に行ったら、バラードマーケットの棚にはトイレットペーパーがぎっしりありました。日本の友だちに送ってあげたい。

イーストサイドなどアジア系の人口が多い郊外地域では東京なみに買いだめが激しく、コストコもパーキングが満杯で入れないなんて話も聞きます。

東京の中央線沿線に住んでる一人暮らしの友人が、ようやくトイレットペーパーをみつけて友人と分け合った!と喜びのメッセージを送ってきてくれました。まだ品薄はつづいてるようですねー。世界に誇るはずの日本の流通網はいったいどうしたのだ。

ワシントン州で感染者が多いのは、ほかの州と違って検査キットがあるからだよ、と行きつけの病院の薬剤師トラヴィスくんが言ってた。 この国って検査キットの数が笑うほど少ないので、潜在的な感染者はもっといっぱいいるはずだしこれから確実に増えてくる、と。

陽性の確認数が爆発的に増えてきたら、シアトルからもトイレットペーパー消えるのか??
ではないことを願う。

ありがたいことにもうすぐ気温があがってきますよ。


もう春です。


超絶好きなビル・エヴァンスの『You must believe in Spring』。亡くなったあとにリリースされたアルバム。

春を信じるのじゃよ。

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2020/02/15

世界の終わりに聴きたいやつ



Happy Valentines Dayでした! 

個人的には一切関係ございませんがにゃ。(・д・)チッ

暗くて雨の多い冬だったけど、この金曜日のバレンタインデーは明るくてわりに暖かく、いつの間にか沈丁花やプラムが咲いていて、すっかり春仕様の一日でした。


散歩の途中で出会ったハミングバードちゃん。

拡大。

ニュースをつければ不穏な知らせばかりの春ですが。春は春。

心穏やかに、しかししっかり心の底から怒りを感じつつ、全身全霊で政権交代を祈るよ。
日本もアメリカも。

ウイルスもはやく終息しますように。
  



最近Apple Musicでおすすめされて以来はまっているピアニスト、ヴィキングル・オラフソン。

なんだか難しいウイルスかなにかの名前みたいですけど、キラキラした硬い音と内省的で繊細な表現が好きすぎる。

このビデオめっちゃいいです。ツボツボ。
この絶望的に冷たい北欧の色と、『ブラック・ミラー』的な、ディストピアSFのようなミュージックビデオ。

地球にバッハの曲があってよかった、としみじみ思う。

死ぬまで一種類の音楽しか聞けなくなったとしたら、迷わずバッハを選びます。


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2020/02/12

頭上の触手とロシアの苦悩



シアトル交響楽団の本拠地ベネロヤホールに飾られている、デイル・チフリさんの巨大触手シャンデリア。

このあいだものすごーく久しぶりにシンフォニーのコンサートに行きました。
ギター中年M太郎くんが連れ出してくれた。

演目はグリーグの『ペール・ギュント』序曲、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲(作品77)、ニールセンの交響曲1番。

ショスタコーヴィチとニールセンはぜんぜん聴いたことのない曲でした。

ショスタコーヴィチの協奏曲をユーチューブで予習してみて、 なにこれ難しい、退屈したらどうしようと思ったけど、実際にホールで聴いてみると、その密度と緊迫感、音の痛々しいほどの美しさに引きこまれて、涙でるほど感動しちゃいました。

ヴァイオリンのソロが静かな苦悩と葛藤をながながと語り、だんだん激しくなっていく3楽章が、特にもう、有無を言わせない迫力がありました。


(動画はヒラリー・ハン& ベルリン・フィル、サントリーホールでのコンサート)

1947年、第二次大戦後の曲。スターリン政権下で前衛的音楽が弾圧されていたあいだ発表を控え、スターリンの死後1955年になってから初めて初演した、とパンフレットに書いてあった。

クラシックは好きで子どものときからけっこう聴いているけど、聴く範囲がとっても偏っていて、20世紀の、とくに戦後の音楽はほとんど知りません。

行く前にはえーなんでこの演目なんだよM太郎、もっとポピュラーな曲が聞きたいよと内心こっそり思ったんだけど、行ってよかった。

自分の知らないものに向き合って時間を使うのはめんどくさくてちょっと怖いけれど、必ず報いがあるものですよね〜。人生の目的ってそれだったのなー、と最近しみじみ思っちゃってる。

ヴァイオリンはパトリツィア・コパチンスカヤさんという華奢な若い女性ソリストで、すごーくエネルギッシュでした。
ティム・バートンの映画でいつも奇妙な役を熱演するヘレナ・ボナム=カーターに似てるwと思いました。顔がというより、全体の雰囲気が。

モルドヴァ生まれ。モルドヴァってどこだろうとぐぐってみたら、話題のウクライナの隣りにある小さな国だった。

シアトル交響楽団を観に行ったのはじつはたったの2回めです。

ずっと前にピアニストのランランが来たときに息子とピアノ協奏曲を聴きに行ったのが最初で最後。でもそのときにくらべて、今回のオーケストラの演奏は格段にかっこよかった気がする。

指揮者のトーマス・ダウスゴーさんという方、今のシアトル交響楽団の音楽監督だそうですが、素晴らしかったです。見ていてほんとに楽しい指揮だった。

素手で音楽が作り出せるってすごい。機会があったらまた観に行きたいです。

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2019/12/12

ブーマーズのボビーといえば


気づくと町はクリスマス一色になっている。仕事に追われてクリスマス的なことにはなにも手についてない。何がクリスマスでーい!とグリンチのようになりがちなひとりものの12月。
そしたらM太郎くんが突然ジャズ・アレイにつれてってくれました。うひょひょ。 


ボビーといってもブラウンじゃないよ。

ボビー・コールドウェルをフィーチャーしたバンド。1978年のこの歌以外、よく知らないんだけど。そういえば、「AOR」なんていうジャンルがありましたねーー!

ええ〜スムーズジャズってやつぅ?(苦手)。その上クリスマスソングぅ?(グレている)。うーん、まあいいか(高飛車)。と、あまり期待せず行ったんだけど、すごくよかったです。


舞台もクリスマスでぺかぺか。

ギターの人、ノーマン・ブラウン。いきなりブルージーで、のりのりで楽しい。これはスムーズジャズなんだ?
ドラムの人もすごくよかった。
ソプラノ・サックスの人はヘヴィメタルバンドの人みたいなカッコウででてきてケニーGみたいな笛を吹くのが笑えました。

ボビーのおっちゃんはオースティン・パワーズみたいかった。もう本当におじいちゃんで杖ついてましたが、40年来の持ち歌を歌う声はさすがにハリがある。伝統芸か。

店内はブーマーズ度90%。ところでわたしはギリギリ、Xジェネレーションなのだ!「Zers」からしたらまったく見分けがつかないしどうでもよいでしょうけどね。

楽しかった。いっときクリスマシーな気分になりました。ありがとうM太郎ちゃん。


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2019/11/25

レドモンドにて、奇妙な楽団の夜


金曜日の夜。イーストサイドのレドモンドというところにあるファンキーなコーヒーショップSoul Food Coffee Houseでライブをみてきました。

レドモンドってマイクロソフト本社のある町です。

イーストサイド、すなわち湖の対岸は、シアトルとぜんぜんカルチャーが違ってて、ざっくり一言でいうとお金もちが多くて保守的でアジア系が多いんだけど、その真んなかにこんなヒッピー生き残り系のカフェもあったりする。

この日はひさびさ登場のM太郎くんが、混み合ってきたシアトルを嫌って東海岸に行っちゃったナサニエル・ジョンストンさんのノースウエスト短期再結成ライブがあるよと教えてくれて、たまたま今レドモンドからクルマで15分の距離にいることなのででかけてみたのです。

着いたらステージの上で、でっかいツノのある子がウクレレを弾きながら悲しい歌をうたってた。

シアトルいちのディーバ、Dogwoodちゃんです。
この子が最近sheをやめて「they」になった歌姫。いや姫じゃないのか。

ほんとにすっごくパワフルで才能ある歌い手さんです。動画録ればよかったな。



Dogwoodちゃんの一人舞台のあとは、ギター2本、バイオリン、バンジョー、チェロ、オーボエ、パーカッション、それにハーディーガーディーまで登場してのバンド。

なんかのRPGに出てきそうな人ばっかり。
中世かワイルドウエストを舞台にしたファンタジーに出てくる旅の楽団ってかんじでおもしろかったです。

ハーディーガーディーの実物見たのは初めて。

舞台おわってから見せてもらおうと思ってて忘れてしまった。

さらにおどろいたのは手話通訳がついていたこと。ギターのソロのところではじゃんじゃかエアギターをひいたり、アクションもりもりの通訳でした。

店内満席で、来てる人も興味深いミックスだった。

ずっと編み物しながら見ていたおばさまはじめ、わりあいに年齢層高いカップル多め。

そしてLGBTQな若ものたち、シアトルダウンタウンにいそうな身なりのよいカップル、その他いろいろ。年齢層は10代から70代まで多彩でした。



からまるねこ。今月はなにげに忙しかー。あっという間にサンクスギビングである!どひゃー。

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2019/11/09

イザベラさんの庭で


ときどき、自分がもう死んでいるんではないかと思うことがある。

ボストンで絶対行きたかった場所のひとつ、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館。ここでもそんな思いをしました。


イタリアン・ルネッサンス様式(19世紀末〜20世紀の建築なのでリバイバルというべきなのだろうけど)の緑ゆたかな中庭。

とぽとぽと小さな噴水の水音もして、大輪の菊の花と熱帯の花が咲く中に、とつぜん美しいソプラノが流れてくる。

はい?ここはあの世ですか?と思うほどの、尋常ではない美しさ。
ありがたやありがたや。なんだこれ。



中庭で突如はじまり、突如終わった歌の一幕。うちの息子と「いったいこれは何だろう」 と言いあっていると、黒と金が鮮やかなキモノをアレンジした衣装に身をつつんだ歌い手がしずしずと息子にむかってやってきて、
「あなたに音楽の贈りものをさしあげたいのですが、受け取っていただけますか」と言う。

台湾のアーティスト、リー・ミンウェイさんのSonic Blossom』というインスタレーション作品なのでした。

ふたりの歌手がかわるがわる、中庭をぶらぶらしている観客を選んで唐突に「音楽のおくりもの」を申し出て、観客がOKすれば(たいていする)、中庭の真ん中に特別にしつらえられた椅子に案内され、 シューベルトの歌曲をプレゼントするという、そういう作品。




特別席に案内される青年。なんか渋谷にいる兄ちゃんみたいだな。

この小柄な歌手の方、ヘアスタイルは刈り上げで90年代ロックバンドのボーカルのようなんだけど、ほんとにこの世のものとは思えないほど素敵な声で、最初は録音なのだと思った。(伴奏のピアノは録音でした)



この世のものとは思えない庭で、とくべつな椅子に案内されて、この世のものならぬ歌を贈られたうちの息子は、この世ならぬ経験をしたようです。

ミンウェイさんの、この作品についてのアーティスト・ステートメントには、お母さんが手術を受けて入院していたときに、唐突にどこかから聴こえてきたシューベルトの歌曲に言い尽くせないほどの癒やしを感じた、とあった。

「老い」や「死」が、抽象的なものではなくて現実として突然目の前にあらわれるという体験を経て、この作品をつくったという。

ああー。このうちの息子がこのおくりものをもらったのは偶然じゃないのね。

この青年も、本人はまあ言わないけど、去年の暮れから今年にかけてわたしが入院したりしていたときに、ずっとそんな経験をしてて、今もし続けてるんですよ。

「シューベルトの歌曲のように、私たちの生涯もごく短い。でもだからこそ、さらに美しいのです」とミンウェイさんのステートメント。



曲は、「Du bist die Ruh(あなたはわが憩い)」、D776。


熱帯植物やコーニスや大きな菊の花が配されていて、真ん中にはイタリアの遺跡から運ばれてきたというメデューサのモザイクがあり、イタリアふうの噴水がある。

ほんとうの折衷主義だけどとても落ち着いている、不思議な庭。



このあとこの青年は、しばらくの間、頭があの世に行ってしまったらしく、何を見ても何も頭に入らなかったそうです。

このインスタレーション作品はNYCのMETとか、あちこちの美術館などで行われてきたけれど、ここの美術館では今ずっと継続的に進行中。これほど作品に合った場所、場所に合った作品はめったにないのではないかと思います。


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2018/11/26

巨大リュートとカウンターテナー




さいきんのお気に入り。

昼間は古楽(バッハかそれ以前の音楽)を聴いていることが多いですが、このあいだAppleMusicのバッハラジオでおすすめされたこの歌手がすごく気に入ってしまいました。

フィリップ・ジャルスキーさん。

こちらに詳しい記事が。

最初聴いたときは絶対女性歌手だと思ったんだけど、男性だった。

わたくし、「カウンターテナー」という声楽のパートがあることも知りませんでした。

クラシックは好きで長年聴いてるけど、教養はないのよ。

このYouTubeビデオはどこかの教会で開催された小さいコンサートで、すんごい巨大なリュート(きっと名前があるのだろうけどわからない)を弾くジュリエット・ビノシュ似の奏者も素敵です。

年末にかけて、クリスマスソングは聴きたくないってときにいかがでしょう。癒やされますよー。


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2018/09/15

9月がここに。




いつのまにか、8月が怒涛のように終わり、9月が怒涛のようにやってきて、そればかりではなくもう半分すぎていました。おお!
すっかり秋がはじまっているではないか。

1か月気を失っていたわけではありませんが、夏の関東関西の猛暑の中であちこち歩き回り過ぎたものか、日本から帰ってきてからすこし体調を崩したりしつつ、かなり猛然とバタバタしておりました。


「9月が終わったら起こしてね」by Green Day

しかし9月が終わってもたぶんまだあの人はホワイトハウスにいてなにか新しいたわごとをわめきちらし、それを喜ぶ人びともまだいっぱいいるのだろう。

ところで、先日、ほぼ同年代の翻訳者さんと話していて、彼女が『スターウォーズ』シリーズを1本もみたことがないという事実に衝撃を受けました。

ハン・ソロって誰?って聞かれた!

わたしたちの年代で『スターウォーズ』を観ないという選択肢があるとはまじで思ってもみなかった。

たとえばキリスト教徒ばかりの町で育ってきて、ふと出会った同じコミュニティの人が聖書の有名な物語とか聖句をひとつも知らない、そもそも福音書を読んだこともない、ペテロって誰?って言われたら、同じくらい衝撃を受けるとおもう。

同じ時代に同じ国に生きていてもエクスペリエンスは違うものだなあ。まあ当然なんだけど。


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