2020/03/17

ドライブスルー夕日とアマビエちゃん


ついに、昨夜の知事命令で、州内のレストランやバーは店内での飲食提供を禁止されてしまいました。テイクアウトとデリバリーのみはOK。

シアトル有数の高級店Canlisも先週のうちから、今週からドライブスルーとデリバリーに切り替えると告知を出していて驚いたのだけど、さすがに先を見越していたんですね。

シアトルの外食産業はここ数年、街そのものの景気の良さを反映して次々に新しい店が増えていたのだけど。


これがひと月も続いたら、残っている店はきっと半分もないのでは…。閉鎖は現状3月末までの措置になっているけど、2週間だって個人経営の店にとってはつらすぎる。

毎日テイクアウトで地元ビジネスをサポートしたいけどこちらもそれどころの余裕はなくてごめんなさい。 余裕のある方はじゃんじゃん外食テイクアウト&デリバリー使ってあげてください!!


カフェで仕事もできないし、うちのリビングから見えるのはおもに隣の家の灰色の壁だけなので、また昨日とおなじ公園に。

公園の前に車を停めてドライブスルーで景色が眺められるので便利です。

ラップトップを持ってって、車のなかでオーシャンフロントの日光をあびながら仕事しようと思ったんだけど、やっぱり寒かった。

今日はそれでも昨日よりずっと暖かかったせいか(10度Cくらい)、 昨日より人がいて、芝生の上でピクニックしている家族や小さなグループもいくつかありました。



はーゴージャスな夕焼けでした。ずいぶん日が長くなった。日没は7時すぎ。
もうすぐ春分ですね。


 京都大学附属図書館蔵。

話題のアマビエちゃん。これよくできたネタだとおもったら、ほんとうに江戸時代の資料だったのね。水木しげる先生もお描きになっていた。インスタグラムやツイッターの力作がすごい。

まことに日本は絵師の国です。


わたしも描いてみました。疫病退散!
アマビエちゃんよろしく!



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2020/03/16

本日の売り場情報と、アンビリーバブル


快晴のシアトルです。引き続きまだ寒い!3度C! 花が長持ちするけど。桜もひらきかけて、あれ?と迷っている感じです。ソメイヨシノはまだ。

近所の散歩、ちょっと足をのばしてみた。なぜか前庭に木馬が埋もれている家がありました。
快晴だけど歩いている人がほとんどなくて、不思議なほど静かな日曜日の住宅街。

しかし車で前を通ったら、Goodwillの不用品受付のドライブスルーには車の行列ができてて10台くらい並んでました。
みんな家にいて、することがないから断捨離にはげんでいるのでしょうか。

バラードのダウンタウンを午後3時くらいに車で通ったら、お店はみんな普通にあいてて、カフェやレストランもそこそこ、お客さんがはいってました。

あと、マリファナ屋さんは商売繁盛しているそうです。
みんな時間があって家にいるなら当然か!

卵を買いにスーパーのFredMeyerへ。むやみに出歩くなと息子に怒られる。だって卵が。
ゾンビ映画だったらたぶん2番めくらいに死ぬタイプですね、わたし。いらない紐とかひっぱったらゾンビが出てきてやられるタイプ。

きょうはそんなに混んでなかったので、慎重にほかの買い物客との距離をおきながらそそくさと広すぎる店内を物色。人をみたらコロナと思え。お互いに。ゴム手袋して買い物してる人もいた。わたしは入り口においてあるカート用の除菌ワイプを1枚とって、お守りのように握りしめていました。
 
今日の売り場情報。野菜や卵や果物や乳製品や肉などはごくふつうにありました。
トイレットペーパーはまだなし。漂白剤もサニタイザーもなし。ティッシュとキッチンペーパーは入荷してた。

そして食料品の棚が部分的にからっぽになっていて、軽くおどろきました。



「ハンバーガーヘルパー」(ひき肉に混ぜるだけのインスタントパスタ)が超品薄状態。
ふつうのパスタの棚もからっぽ。


あとはパスタソースともきれいになくなってる。
冷凍のピザやなんかも品薄でした。

CTちゃんは昨日トレジョに行ったら冷凍食品の棚が空っぽだったといってた。
手早くつくれて保存のきくものからはけているようです。みんな、野菜も食べよう。

みなさん、ロックダウンが来ると予想しているのか、自主的に籠もることを決めてるのか。2週間くらい買い物しなくてもいいように賢く多めに買っておくってことなんでしょうね。

うちは一人なので、パントリーに入ってるものでとりあえず全く外に出られなくなっても3週間くらいは食べていけると思う。でも食べざかりの子どもがいたら大変だなあ。



ちょっと広い景色が見たくて、近所のサンセット・ヒルというミニ公園の前に車をとめて日に当たる。すがすがしい。

ゼロ金利とか渡航禁止国とか毎日状況が変わりますね。
わたしのまわりにも、仕事に直接影響でてる人が増えてきた。

この騒ぎでマリファナとトイレットペーパーのほかに売れているのは銃だそうです。
ゾンビ来ないから!恐ろしいのはゾンビより人。恐怖心にかられた人。

昨日見終わったNetflixのシリーズ『Unbelievable』のマリーちゃんも、ゾンビより人のほが怖いといってました。

波乗り翻訳者ラウぴょんが教えてくれたこのシリーズ、すっごくよかったです!

自主隔離中で見るモノ探しているならおすすめ!


邦題は『アンビリーバブル たった一つの真実』
レイプの被害者と、連続レイプ犯を追うふたりの女性刑事の話。
実話にもとづいていて、舞台のひとつはワシントン州リンウッド。

ちょっとネタバレになります。

主人公のマリーちゃんは、虐待家庭で育ち、フォスター家庭を転々として、誰にも心から信頼を築けずに成長してしまった「難しい子」。彼女が自宅でレイプ被害にあって警察の捜査が始まるなか、まずフォスターペアレントが彼女の証言を疑い出し、警官に問い詰められて、被害は嘘だったという証言をしてしまう。

まわりの誰にも信じてもらず助けを求めることもできないマリーちゃんの、刻々と悪くなっていく日常が淡々と描かれて、ものすごく腹が立ってきます。

マリーちゃんの話だけだったらとてもつらいだけの話になっちゃうけど、コロラドの敏腕でバッドアスの二人の女性刑事の捜査劇と交互に話がすすんでいくので、救われる。二人のキャラクターが最高です。

人の話まったく聴いてない、理解してるつもりがぜんぜん相手のことを見てない、ということに、 善意のつもりの人ほど気づかないことが多い。わたし自身、身に覚えがあるあるある。

決して悪人ではない善意の大人たち、警官やフォスターペアレントやカウンセラーといった、人を助ける立場の大人たち、たぶんそのことに生きがいを感じている人たちが、圧倒的に無神経になれることだってある。

マリーちゃんみたいな子が昔、私のすぐ目の前にいた。よく考えると何人もいた。

誰かのことを理解したと思ったら、その瞬間に、それは大きな勘違いかもしれない、自分はなにか見えないメガネをかけちゃってないかどうか点検しなおさないとな、と思わされます。何ができるか考えるのはその後ですね。


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2020/03/14

SUICIDE FOREST



ひな祭りの日、ニューヨークで、シアトル在住の歌人で文筆家でパフォーマーのあふひさんが出演する舞台をみてきました。

娘さんのHARUNA LEEさんが脚本・主演の母娘共演。

SUICIDE FOREST (自殺の森)というタイトルは、自殺の名所といわれる富士山の樹海のことです。

昨年ブルックリンの劇場での初演が好評で、ことしマンハッタンのオフブロードウェイの劇場での再演となりましたが、なんと昨年末にはニューヨーク・タイムズの劇評で「[The Best Theater of 2019(2019年のベスト舞台10)」に選ばれるという快挙もなしとげました。すごい。

舞台のあと初めてお会いしたHarunaちゃんは、お母様とおなじく華奢で繊細でイノセントな印象だけれど、意思がものすごく強くてまっすぐな感じの人(これもお母様と同じ)。



日本語の文化で生きる母と、アメリカ文化の中で育った娘のコミュニケーションギャップ。

従順な性的オブジェクトとしての役割をおしつけてくる社会。
その日本社会の何重にもかさなった、砂糖をまぶしたようなゆるやかでやんわりとした、でも強烈な圧力。
性的なはけぐちとして若い女の子を求めるサラリーマンも、会社のなかで強烈な抑圧の下にいるし、家族ともつながりをもてないでいる。

社会的なコンテクストと役割、アイデンティティ、セクシャリティ。
ぐちゃぐちゃしている社会の中で自分の居場所と生き方を模索する娘と、すぐそばにいるのに謎でありつづける母。

前半は日本的世界がコミカルでテンポのよい展開で描かれ、後半は急に暗い樹海の(ヤギたちがさまよう)世界から急に劇場の「いまここ」へ(観客席にも眩しいライトがあたり、観客はそわそわと自分の足元を見つめずにいられなくなる)、そして語り手Harunaちゃんの心の中へ、謎めいた母との対話へ、と、くるくると時空を超えながら、まじめな葛藤を明るくシャキシャキと描いた舞台でした。

要は女の子の成長の物語、なのだけれど、肉声で語られる100パーセント真摯な物語に引き込まれます。

そしてなんといっても実の母親が実の母親役で、しかもちょっとこの世のものならぬ空気をまとって登場する迫力。

実際はとてもキュートで蚊も殺さない感じのあふひさんなのだけど、舞台では優しい母から凄みのある怖い存在に急変してほんとうに怖い。暗闇で出会ったらトラウマになるレベル。
舞台のあとで本人は、あの怖さは監督(舞台監督も日系の若い女性)のキャラクターなのよ、と言ってましたが、母なるもののわけのわからない恐ろしさが、地の底から引き出されてる感じでした。

娘が母に感じるもの、求めるもの、共有するものは、息子と母との関係にあるのとはまたぜんぜん違うのだろうな。

うちも日本語文化のなかで生きる母がワンオペで運営してきた片親家庭で、子どもが二重のアイデンティティを持っていて、という面では立場が同じだけれど、娘と母って、息子よりもずっと難しそうです。

男の子はもっとずっと単純で、女の子の取り扱い説明書があるとしたらたぶん300ページくらいあるところ、男の子は3行くらいで済みそうな気がする。

ひな祭りの日は初日。観客は白人が圧倒的に多かった。オール日本人のキャストで、脚本も監督も日系の女性による舞台がニューヨークの観客に深く理解されてるのにもちょっと感動しました。

公演は3月21日までの予定だったのだけれど、COVIDの影響でブロードウェイの大きな劇場が閉鎖されたのを受けて、木曜日の夜で終演にしたそうです(´;ω;`)

10日前にはそんなことになるとは思わずのんきに観劇していたのですが。
最終日も満席で、とてもよい舞台になったとのことですが、本当に残念。

また再演のチャンスがありますように。Harunaちゃんはこれを機にテレビの仕事が入っているそうですが、今後の活躍も楽しみです。
 


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2020/03/13

本日のシアトル市内の売り場状況とキャベツ炒め


今日のシアトルは一日雨でした。シアトルらしい、細かい雨。気温は3度C。まだ寒い。
天気予報では雪マークがついてたけど、市内はそこまでは冷え込みませんでした。

ホワイトハウスから非常事態宣言のでた金曜日。

シアトルでは市内の図書館が明日から全館、まる1か月閉鎖されることになりました。

バラードの映画館もしばらく閉館するそうです。



昨日も散歩以外ずっと家にいたので近所のお店パトロール。

TARGETは、トイレットペーパーはなかったけど、ワイプ(除菌じゃないやつ)は少しあり、「品薄につき、本日よりお客様お一人につき1点のみとさせていただきます」というお知らせが貼ってありました。


 そのとなりのバラードマーケットには、まだトイレットペーパーがありましたよ。

サニタイザーはどちらにもなし。消毒用アルコールもまったくなし。いつになったら店頭に戻ってくるんだろう。

アマゾンでも、トイレットペーパーは80個入りのしか在庫がなくなってます。80個…。
うちにはまだ2週間分くらいはあるので買わないけど、来週になっても店頭に在庫が戻らなかったらちょっと心配になってくる。節約して使おう。

むかしむかし、石油ショックというものがあってのう。そのときも店頭からトイレットペーパーが消え、小学校では「トイレの紙は30センチ以上使わないようにしましょう」というお達しがあったのじゃよ。


スーパーの入り口には、ショッピングカートを消毒する部隊が配置されてました。

そして今日はお店が混んでいた。

いつもの金曜の夕方より少し混んでるくらい。紙以外の食品は品薄ではないし、みんなニコニコもしてないけど殺気立ってるわけでもなく、みなやや疲れた顔で、しかし落ち着いてお買い物をしていました。

思いのほか混んでいたので、売り場で人とすれ違うときにちょっと息をとめてみたりした(笑)。



歩いていける近所にお店があって日用品がなんでも苦労せずに手にはいるのが当たり前だと思って暮らしているなんて、まあなんて贅沢な生活を送っているのでしょう。

野菜やトイレットペーパーを買いにいったり、コーヒーを飲みに出かけたり、友人と集まったり、映画を見に行ったり、が当たり前にできてる毎日って、奇跡のように幸せな毎日ですよね。




ボストンへの往復の飛行機などでちょろちょろと読んでいた井上荒野さんの中編を読み終わりました。

私鉄沿線の商店街でお惣菜屋さんを営む、50代〜60代の3人の独身おばちゃんのお話。
井上荒野さん大好き。いい人なんだろうなーと思う。
登場人物に、底意地の悪い人は一人もでてこない。

若いときのようなベタベタの「ベストフレンドフォーエバー」を夢見る関係ではなく、お互いに期待せず、ある意味冷めた目で突き放すようでありながら、それなりにいたわりあい、心地良い距離を保って生きている、愉快なおばちゃんたち。それぞれちょっと残念な過去とつきあいつつ、おいしいものを食べて日々を楽しむ。

料理ができるっていいなー。わたしは料理は好きなほうではあるけど「得意」とまではいえなくて、記憶力が悪くてレシピが覚えられず、いまでも苦手意識のほうが強いです。
母のほうがだんぜん料理上手でした。片づけられない人だったけど、母。

「料理が得意な人にならなければ」という謎の焦りがあるのに、素材を手にとると次々にレシピが浮かんでくる域には達してなくて、アイデアの貧しさに冷や汗がでてくる。

なにを力んでいるんだろうか、自分(笑)。クックパッドがあってとりあえず助かってます。

3人がキャベツを前にメニューを相談している場面。

***
「ロールキャベツもちょっと暑苦しいわねえ」
「カレー味にしたらどう?鶏、買ったんでしょう?挽かないで賽の目にして、ピーマンかなんかと包んで」
「コールスローは?鯵フライのつけあわせにもいいんじゃない」
「甘酢もいいよね、さっぱりしてて。唐辛子いれて、ちょっとぴりっとさせてさ」
「すぐ食べるんだったら、やっぱいちばんおいしいのはキャベツ炒めだよねえ」
「ああ、そうねえ、キャベツ炒め、わたしも大好き。バターで炒めてお醤油じゃっとかけて」
***

わたしもキャベツ炒めはバターに醤油が好き。かつをぶしを入れるのも好きです。
きょうはキャベツ炒めにしようかな。 




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2020/03/12

知事命令


ワシントン州ではCOVID-19感染拡大防止のために、11日から250名以上の集会やイベントに全面中止令が出ました。日本みたいな「おねがい」「要請」じゃなくて、州知事による「命令」です。違反すると刑事罰に問われます。

シアトル市内の公立校もついに、当面月末まで休校になりました。

そしてなんと、ニューヨークのブロードウェイの劇場が今日夕方から閉鎖というニュースが!
世界の終わりまでにぎやかであってほしかったブロードウェイが…。

毎日、昨日まで当たり前だった世界が急激に変わっていく。ニュースをきくたびにぎくっとしてひんやりとしまいます。




3月中に事態が収束するとよいけれど、まだ感染者はこれから増える(というか明らかになる)だろうしパニックのピークはこれからなのかもしれません。

うちの息子の会社(ボストン)のも、スタッフの家族に感染の疑いがあったとかで今週はキャンパスを閉鎖しているとのこと。

会社の株もおととい1日で14パーセントも下落したそうです。しぇー!!どちらかというと不要不急のものをあつかう業界だし、中国市場が落ち込んだままなら、今年はこれが収束しても厳しいとの見込み。

うちには失くす財産はありませんので直接すぐにのダメージはないものの、毎日の株の乱高下を見てると、ヒュルヒュル〜って音がしてきそう。経済が下むいたらすぐにダメージをがっつりくらうフリーランスですので間接的には大打撃の重い足音がきこえます。

いちばん直近に大打撃をくっているのはパフォーマンスアートの現場ですよね。
そのために生活のすべてを傾けて準備している舞台や音楽の発表の場がなくなり、演奏家や役者さんだけでなく劇場の裏方さんたちの仕事も一斉になくなるという状況を考えるとほんとうに胸が痛い。

シアトル交響楽団では、ホールを閉鎖するかわりにストリーミングで無料コンサートを行って、寄付をよびかけています。
こういう試みがどんどん出てくるといいですね。

こんなときには不安をまきちらすモンスターが跋扈するものです。

そんなのにやられないように、手を洗ったら落ち着いておいしいお茶でも飲んで、静かな通りを散歩して、車が少ないので特別おいしくなっている空気を吸って、心静かにできることを考えてすごすことにします。


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2020/03/11

サウンドボード


自分が漠然と考えていること、感じていることをきちんと言葉化してみると、考えていたことや自分自身についての理解が、ひとつ次元が変わるほど深く変わりますよね。

わたしはふだん一人暮らしだし家で仕事をしているので、下手をすると1週間くらい人と口をきかないこともあります。テキストやメールでクライアントさんや友人と連絡はとっているものの、リアルに人と話をしないと少し頭がぼんやりしてくる気がする。




ボストンにいるうちの青年を訪ねて2月末から2週間ほど滞在して、今回はずいぶん深い話ができ、うちの少年がこんなに率直に話ができる友人に変身していたんだ、と驚きました。ほんとに行ってよかったです。

仕事やキャリアについて、観た映画や絵や読んだ本について、価値観について、集中したいときのフローの入り方や意識のもち方についてなど、青臭い話題をながながとお互い気楽に真剣に話せたことが、びっくりするくらいのデトックスになりました。





わたしは過去に鬱をわずらったことがあり、近年はいろんな方法を使ってずいぶん気楽な人になってきたものの、ときどき謎の落ち込みにアタックされます。ニューヨーク旅行中にも突然どーんと恐怖の大王みたいなのが降りてきたのですが、息子を相手に言葉化することで、謎の下方スパイラルを軽度にくいとめられました。

このとき、息子が本当によい「サウンドボード」になってくれてるのに気づきました。




まじめに聞いてくれる人にむかって話すと、自分も真剣にならざるを得ず、言葉にしていくことで自分の考えがかたまって、一歩引いて見られるようになる。いまさらながら、ひとに話すことの効果を実感しました。

文章で言語化するのもよいけれど、人を相手に話すのはスピード感が桁違い。

人の話をまじめに聴くというのは意外に難しい。自分の考えを押しつけず、一歩下がって相手の思考に心をあわせていくのはけっこうなエネルギーを使います。


うちの息子はいつの間にか、ぬるい励ましなど言わず、ときどき的確な質問をしつつ集中して耳を傾けることができる、かなり優秀な聞き手になっていた。わたしのほうが、人の話をいままであまり真剣に聞いてなかったし、真剣に話してもいないことが多かった、と反省しました。もはや親子の立場は逆転していることが多いです。とほほ。

自分の息子に対して言うのもなんだけど、この人随分苦労したんだな、と思ってしまいました。

親が甲斐性なしだと逆に子どもはしっかりするものなのかもしれませんよ。

ときにはお互いに意見が違うことがあっても、基本的な価値観が合っていて、互いを尊敬でき、大切に思い、安心感を持てる友人がほんの数人でもいれば、それにまさる幸せはないです。

わたしはまったくもっておっちょこちょいなので、自分自身よりも信頼のおける友人がまわりで見守っていてくれることがほんとうにありがたいです。


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2020/03/10

ハーバードの自然史博物館


ハーバード大学の自然史博物館。


前回は近くのサイ像をみただけで帰ってきてしまいましたが、今回は中も見物してきました。

入館料は、大人15ドルなり。

 地味な建物にある地味なミュージアムですが、みごたえたっぷりでした。


お宝のひとつは、入ってすぐの部屋にある、ガラス製の植物標本のコレクション


ハーバード大学の依頼でチェコのガラス作家、ブラシュカ父子が1887年から1936年まで、半世紀をかけて制作した、780種!4,300点!の植物モデル。
 


解像度の高いカラー写真もない時代に科学教育用の教材としてつくられたもので、あくまでも正確でほんものそっくり。素晴らしい3D資料。

そしてほんものと同じに美しい。


果物に生えたカビ!!や、腐った果物!!のモデルもあり、実物大だけじゃなくて、部分の拡大モデルもあります。


バナナの花。


かびの拡大モデル。かわいい。

ひとつひとつ本当にきれいで、見飽きません。



もともとブラシュカさんは、19世紀なかばにイソギンチャクなどの海の生物のモデルを大学の研究室むけに作っていたところハーバードから声がかかって植物標本制作の大事業にとりかかることになったそうです。


海の生物モデルは数点しか飾られてなかったけど、これがまた植物モデル以上に繊細で素晴らしい。クラゲ、アメフラシ、イソギンチャク。触手の繊細なこと!神モデル。


こちらは岩石標本の部屋。

高校のとき地学の先生と地学室が大好きで、地学部にはいってたことがありました。

地学室のなにが好きって、引き出しに入ってる岩石標本が大好きで、暇さえあれば石をながめていた。


たんに結晶と岩石が好きだったのでした。だったらもうちょっと真面目にサイエンスを勉強すればよかったのにねえ。


超特大のデザートローズ。


さすがに高校の地学室とは比較にならないコレクションでした。ものすごい標本がたくさんあった。


超特大のアメジストもあるし。

石たちに真剣に見入っているひとびとがけっこう多かったのも印象的でした。


これは鳥がつくった家。こんなの鳥がつくれるなんて絶対おかしい。ニューギニアの踊る鳥の仲間も絶対にヘン。鳥ってあやしい。

このほかにも、剥製の部屋や化石標本の部屋もあり、さらに、ピーベリー民俗博物館という博物館も併設されていて、同じ入館料で見ることができます。

ピーベリーのほうは、4階に展示されている19世紀末のシカゴ万博の展示がおもしろかった。

しかし、3時間ばかりかけてガラス製植物や化石や剥製や岩石標本を見たあとで、もうすっかり疲労困憊してしまい、民俗博物館のほうはもうほとんどなにも頭にはいりませんでした。

美術館や博物館は見ているだけなのに、すごく消耗することがある。
とくに古いものをたくさん見ると、とてつもない情報がうわーっと押し寄せて来て知らない間に疲れていることが多いようです。


クジラちゃんもいました。なんと大きな生物なのだ。こんなに大きな身体を持って生きるというのはいったいどういう気持ちのするものなんでしょうか。

身体の端まで5メートル以上先ってちょっと想像できない。


  鯨の世紀恐竜の世紀いづれにも戻れぬ地球の水仙の白

  大きなるステゴサウルス小さなる頭脳もて草食の夢いかにみし

(『世紀』馬場あき子)

今朝たまたま開いた本のページに馬場あき子先生のこの歌が出てきました。なんてタイムリー。

「いづれにも戻れぬ地球」はどこにいくのか。


ぜんたいに19世紀の風情がただよう博物館でした。(古い建物なので古い匂いがする)

自然史博物館というもの自体、19世紀〜20世紀初頭の産物なのですね。

「博物学」の時代は、未知の世界をコレクションするというロマンが熱い時代だったのだな、としみじみ思いました。



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