2020/05/29
集合トラウマ
悲しいです。かなり落ち込んでます。
まず、ミネアポリスが大変なことになっている。
今週月曜日に警官が丸腰の黒人の喉をふみつけにして死なせた事件の結果、ミネアポリスが炎上しています。大きなデモのあと、暴動が起こって、店が略奪されたり警察署が燃やされたりしています。デモは全米各都市に広がっています。
今月はじめ、ジョージア州で25歳の黒人男性がジョギング中に射殺された場面のビデオがネットに出てきて、事件から2か月以上経って初めてその犯人(白人の親子)が逮捕されるという事件があり、大きなニュースになっていましたが、わたしはその映像は見ないようにしてました。
うちの息子と同い年の青年が無駄に殺される場面を見たら、きっとメンタルに来るのがわかっていたので。
そのすぐ後にこの事件があり、今回は目撃者の撮った映像がすぐに全米のニュースでも取り上げられたので、見てしまいました。
地面に組み伏せられ、警官の膝にのどを抑えられたまま「息ができない」と何度もいっている被害者の声と、目撃者の「息ができないって言ってるじゃないか!」「大丈夫なのか、もう動いてないじゃないか!」という声も入っていて非常になまなましく、背筋が寒くなる衝撃的な映像です。
これがこの数日というもの全米の「集合トラウマ」になっています。
「息ができない」は、被害者に自分を重ねて怒りを感じる人たちのスローガンになり、ミネアポリスの怒った人たちの一部は暴動に走りました。
映像は本当に強力。いやおうなしにイメージを刻みつけて、その場にあるものを定義してしまうし、感情をかきたてる。
このコロナ禍は米国では完全に政治劇場の一部になっていて、分断を助長させる結果になってます。ふつう、危機に面したら組織は感情的にまとまりそうなものだけど、今回は米国ではそれがまったく反対に働いている。
米国ではCOVID-19の死亡率がマイノリティの中で異常に高いのも注目されてて、さらには「おうちですごそう」が実際問題として実現出来ない社会階級(多くはマイノリティ)が高いリスクを負わされていることも明らかに目につくようになってきて、それだけでも社会がヒリヒリし始めているし。
都市部といなか部の違い、経済的な格差、信条と感じ方と生活感覚の違いがイライラしたオーラを帯びて浮かび上がり、そしてその下にくっきりと、人種間の緊張がまた浮上してきています。
今まであった溝がますますハッキリした「分断」になってしまったような気がして暗くなる。
そこへ追い打ちをかけて、このミネアポリスの事件があり。
この世界にどれだけレイシズムとヘイトがはびこっていて、孫の孫の代まで待っても消えてなくなりはしないのはわかっているのだけれど、実際に目の前にヘイトの増幅を見るのは痛すぎてつらい。
そんなときに、まともなリーダーだったら「一つにまとまって困難な時期をのりこえよう」と少なくとも人心をなぐさめてまとめるような言葉を探してみるだろうに、この国のトップにいる人は率先して下品な言葉で人をけなし、組織をけなし、国をけなしている。
そしてこともあろうに、ミネアポリスの暴動へのレスポンスとして、公民権運動中の南部の悪名高い警察署長の言葉を投げつけて、ますますの分断と嫌悪を煽っています。
トランプの本当の功績は、エゴの醜さと政治の危うさを体現したことにあるのだろうと思う。
このとぼけた大統領はこんどはTwitterで「ウソかもしれない」ラベルをつけられた復讐にSNSのプラットフォームを相手に戦争を始めているし。
もうこれ以上の分断はありえないだろう、と思った翌日にまたさらに溝が深くなるし、もうこれ以上驚かないと思った翌日にさらに驚く。
というか、バランスがとれていたように見える今までのシステムがどれだけ繊細ではかないものだったかってことなんですね。トランプの城のような。
香港も大変なことになっているし。香港もはかないバランスの上に立っていたけれど。
コロナを機にまったく関係ないところからバランスが崩れはじめているような気がします。
植物園にて。ピーターがいた。
久しぶりに(3月はじめのニューヨーク以来)がっこーんと気持ちが沈みきっているので、しばらく静かに沈んでいようと思います。
人類はきっと大丈夫。でも今はまじで心が痛い。
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