2021/09/28

ウィドビー島の牡蠣とソーシャルプレッシャー


快晴の土曜日、ウィドビー島(Whidbey Island)に行ってきました。

華氏77度(摂氏25度)という、夏が戻ってきたかのような気候。
あったかくて爽やかな秋の一日でした。




ウィドビー島は、くにゃっと曲がったドアの取っ手みたいなかたちの細長い島で、北側には橋がかかっているので地続きで車で行けますが、島の南端にフェリー港があって、シアトルからはフェリーで行ったほうが早い。フェリーだと島の南端までは1時間とすこし。

シアトル側のフェリー乗り場は、ボーイングの工場に近いマカティオにあります。

真新しそうなゲートに、ネイティブ部族に敬意をあらわすアートが設置されてました。



 さすがに快晴の土曜日、フェリーは混んでいて、1隻待ちでした。


いつものことながら出足が遅いわたくしたち、午後2時すぎにようやく島に到着。


 
今回は島の南側だけを訪問しました。

フェリーターミナルから近い小さな町ラングレー(Langley)と島のまんなかへんのクープヴィル(Coupeville)へ。

ラングレーでは往年のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの名前を冠した小さい音楽フェスティバルが開催中で、あっちこっちでジャズのバンドが演奏してました。
 
 


 アーティストもたくさん住んでいる島で、ギャラリーも多い。

ラングレーのMUSEOはとっても洗練されたギャラリーで、 素敵な作品がいろいろありました。

すごく気に入ったのが、ROBIN & JOHN GUMAELIUSさんのセラミック作品でした。

左側の、顔のついている大きめの作品は、2,800ドル。お買い得じゃありませんか。
ウマの上に、おなかがたらり〜んとなったおじさんが座っていて、その上にトリが止まっています。なんだか心あたたまる、不思議な味わいの作品です。

日本の人の作品っていわれてもなるほどって思うような、日本っぽい感覚だと思います。

日本に持っていったら人気がでそう。雑貨カフェとか書店に置きたい感じです。
日本のギャラリーの方、いかがでしょう。

テクスチャがとても面白いです。




クープヴィルは、貝の産地で(このへんでは)有名な、ペン・コーヴという入り江に面した小さな町。



ここのお店で牡蠣を食べるのが遠足の目的だったのだけど、当然のように予約などしておらず(笑)。


開店1時間前にウェブサイトから予約をしてみたら、携帯に電話がかかってきて、本日は満席です、とのことで、ウェイティングリストにのせてもらいました。

午後5時の開店後、直接行って、青年が食い下がる。
実際行ってちょっとねばってみたら、1時間後に席を作ってもらえました。

クレイマーじゃなくて、にこやかな「ソーシャル・プレッシャー」を実践しているのだと青年。
担当者も人間なので、まずラポールを築き、申し訳ないような気分にさせて、そこをやんわりとつつく。するとうまくいくことが多いと。

これほんとに、アメリカでは窓口の担当者次第でかなり融通が効くことが多いので、重要です。銀行とかクレジット会社とか電話会社とか役所とかでも。

日本では、個人としての裁量よりも決まりが優先されていることが多くて、あまり考える余地がないようなのが残念です。


このお店ではQRコードじゃなく、クラシックな紙のメニューでした。



牡蠣。美味しかった。幸せだ。

「カバナ」「クマモト」「ロックポート」という品種。
で、やはり、クマモトがいちばんおいしいね、ってなる。

このほかに、ベーコン味でグリルした牡蠣、フライしたオクラとグリーントマト。

メインはハリバットのグリルをいただきました。


テーブルにかわいい花が飾られてました。

外から見ると漁師の倉庫みたいな建物なんだけど、かなりおしゃれ。

お値段もそれなりにおしゃれ!

ビーツのサラダのアミューズと、メインの前にかりんの小さなジェラートがでてきました。



写真撮り損なってすごいエフェクトになった、ハリバット(オヒョウ)です。

走り去るハリバットみたいな。

日本じゃあんまり見向きもされない白身魚だけれど、ハリバットはアメリカでは高級魚です。繊細なうまみがあって美味しいです。

パンフライで、カリカリの表面がおいしかった。

 

デザートにベニエ。 

ニューオーリンズに行った頃には高校生だった息子も、いっぱし、わたしよりもたくさん稼ぐようになって、ごはんをおごってくれるようになりました。めでたし。

食べるのは2人前以上で、3人分くらいの食費がかかるのに財布はひとり分という、釈然としない時代が長うございましたのよ。





最後に小さいチョコレートのサービス。ローズマリー味でした。


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光の部屋


シアトル美術館で開催中のもうひとつの小さな展示。

地元シアトルの切り絵作家、バーバラ・アール・トーマスさんの「The Geography of Innocence」。



ものすごく美しいインスタレーションでした。

 



今回、お皿の部屋で見つけた衝撃的な1枚。どこの国のか見てくるのも忘れた。フランスかな。

 


 いまSAMの常設のなかで一番好きなアンゼルム・キーファーさんの作品。


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2021/09/27

モネさんの海


 シアトル美術館で開催中のMonet at Etretatをみにいってきました。




ノルマンディー地方のエトルタという海岸で描いた作品を中心にした小さな展覧会です。

点数は少ないものの、見応えがあって面白かったです。

今あんまり体力がないので、規模的にちょうどよかったかも。


当時から観光地だった、エトルタ。日本でいったら「松島」みたいな感じの景勝地なのかな。

モネさんは、海を目の前にした、こんな可愛らしいホテル↑に泊まって制作をしていたそうです。


モーリス・ル・ブラン作アルセーヌ・ルパン・シリーズの『奇巌城』に出てくる有名な海岸で、この海岸に突き出した奇岩や波の表情を新鮮に捉えるために、モネさんは崖のうえから眺めたり、後ろ側からみたり、色々とご苦労をかさねたようすがわかります。

 


このエトルタの海岸は、画家たちにも人気のスポットであったそうで、有名作品もたくさん生まれています。

同じ場所で制作していた、モネさんよりちょっと先輩の世代の画家たちの作品も並べて展示されていました。

クールベさんとコローさんの作品が印象的だった。




クールベさんの作品は、自然をあくまでも対象/他者として見ていて、その自然のなかにはなんなら敵意に近いようなものも、危険な性格も、見ようと思えば見ることができます。

一方で、モネさんの絵は、ひたすらに自然と一体化してる感じがします。

描かれた波のひとつひとつにエモーションのようなものを感じてしまうほど、波や光に心を寄せているというか。でもエモーションではなく、それ以前のもっと未分化なエネルギー。

自分の感情を自然に投影しているのではなくて、あくまでネタはネタとして冷静に見つめながらも、生命が響き合っている感じ。

そのような自然との一体感が、とくにモネさんが日本人に超絶人気がある秘密の一つなのではないかと、今回クールベさんの絵のとなりでモネさんのこの波の絵を見ていて、そう思いました。

 

モネさんの絵は、とにかくまっすぐにキレイなものを見ることの純粋な楽しみを提供してくれるっていうことを、あらためて感じた展覧会でした。

眼福ってやつですね。 この楽しみっていったい何なのだろう。

 


 楽しかったです。お風呂と美術館は命の洗濯です。



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2021/09/26

バラードのフライド寿司


先週木曜日、ひさびさに外食に行ってきました。

バラードのダウンタウンは、いまこんな具合に、車道に張り出した屋外席が両側に設置されています。

だからますます、パーキングがチャレンジングになっているけれど。
でも割合に平日でも、どのお店も賑わってます。



コロナ禍以降、紙のメニューがなくなり、QRコードを読み取って自分のスマートフォンでメニューを見る形式に変わったお店が多くなりました。



この日は、バラードの寿司店。ここでは握りなどを頼んではなりません。

メインは「ロール」!

単に巻きずしではなくてフライド寿司です。揚げ物です。

アボカドとサーモンとクリームを巻いて全体を天ぷらにした「バラード・クランチ」。
これはちょっとタレが甘すぎかな。

そして、なんとターメリックごはんをディープフライにしたうえに、アイオリソースとスパイシーツナと玉ねぎとコリアンダーをのせた「ターメリッククランチ」。これがなかなかおいしかったです。




 もはやぜんぜん寿司ではないけど、これはこれなりに謎のインターナショナルな美味しさ。

カリカリっと焦げたお米が、お祭り屋台風の味わいというか。

 これを「スシ」と呼ぶと怒る人もいるかもしれないけど、SUSHIはこの国ではこういう食べものにトランスフォームしているのですね。


 

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2021/09/25

ナポリタンとかき揚げ


秋分も過ぎて、かぼちゃの季節になりました。スーパーの前にも、かぼちゃが登場。

暗くなってくる季節に、明るいオレンジ色のかぼちゃ。

夜がどんどん長くなるし雨が多くてどんよりグレーになってくるシアトルみたいな地域では、この明るいビタミンカラーが、とてもありがたい存在です。



アバンギャルドなかたちのかぼちゃたちも。こういうの、ずっと昔にうちのじいちゃんが育てていたような記憶があります。

やましたひでこさんのほかにここ最近YouTubeではまっているのが、コウケンテツさんの動画。

食べるのも作るのも面倒くさくなったときに見ると、いつの間にかごはんを作りたくなっている幸せ動画です。

コツを的確にいくつか教えてくれつつ、気軽に手早くできそう!と思わせてくれるところが素晴らしい。

この間女子会にもっていったチャプチェも、初挑戦だったけど好評でした。


この人のすてきなところは、とにかく終始心からたのしそうにニコニコしているところ。

ケンテツさんが家族5人分の朝食を黙々と作っている動画をぼーっと流しっぱなしにしていると、なんだかひたすら癒されます。

起きてきた3歳くらいの末娘ちゃんが
「パパー、おみじゅのみたい」
「ねーはやくひこうきつくってよー」
とかいろいろ要求してくるのを、フライパンをふるいつつニコニコと相手してるのみてると、心あたたまりすぎて涙でてくる。神様なのかこの人は。

さいきん加齢のせいか、犬がめっちゃ喜んでしっぽ振ってるところとか、子どもと親が楽しそうに遊んでるところをふと見かけるだけで、嬉しくなって涙腺がゆるんでしまうことがあります。

散歩しながら涙ぐんでいる怪しいアジア人のおばさんであるよ。

 

 


でコウケンテツさんです。きのうはこの動画をみて作りたくなったナポリタン。

喫茶店ふうナポリタンは、いろいろなレシピがあるようですが。

ケンテツさんのナポリタンは、玉ねぎとソーセージのみ、最初にマヨネーズでパスタを和えておく、ホールトマトとウスターソースでソースを作り、「追いケチャップ」をする、最後にバター。というレシピ。



ケンテツさんは「ピーマンはナポリタンには不要!」と力説されてましたけど、わたしはやっぱりピーマンと、できたらしいたけも入れたい派。

このあいだつくった別のレシピは、ケチャップと牛乳で和えるレシピ。

どっちのレシピも、ペコリーノチーズをたっぷりかけたらとりあえず美味しくいただけました。

ナポリタンはやっぱり銀色のお皿で食べたいな。



人参のかき揚げも、動画をみたら作りたくなって、ひっさびさに天ぷらを。

かき揚げって即「面倒」って思ってしまっていたけど、その心理的ハードルを取り去ってくれたのがありがたい。


翌日リピートして、かき揚げ丼に。

ちょっと油っぽくなってしまい、「サックサク」にはならず。

うちのレンジは電気コンロみたいなやつなので、火加減が難しい。ガスはいいなー。


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2021/09/24

断捨離の人と、カオナシだった人たち


 またダリア。微妙にベージュとオレンジの混じったピンク。この色好きです〜。


元祖・断捨離の提唱者で教祖的存在のやましたひでこさん。
ごくさいきん、ていうか先週、初めてYouTubeで見て知りました。

断捨離に財団があって検定まであるってところがさすがに日本!てびっくりだけど、それだけ、必要とされているんでしょうね。


BSの番組もあるんですね。



やましたひでこさんは言葉でのまとめ方がとてもうまくて、シンプルに本質を突いているのですごく納得させられます。

モノは思念の反映であること。
つまり、「捨てられない」のは不安の投影である行為、であること。

自分のいる場所や暮らし方には自分の意識、自分をどう考えているかが反映されること。

片付けは、意識を整理して選択することであること。

モノを主体に考えるのではなく、自分を主体に考える。

自分がどうしたいのかをまず知ることが必要。

で、す、よ、ねー。

うちの母は、典型的な捨てられない溜め込みびとで、わたしが育った家は常にカオスだった。荒んだ空間は、心身にかなり大きな影響を及ぼします。当然ながら、コミュニケーションも不全の家でした。

モノと対話ができてない空間では、人との対話もできないんですよねー。

思うんだけど、戦後、高度成長期を経た昭和後期の家庭は、程度の差はあれ、どこのお宅でも、小さな家にモノがあふれかえっていたのではないでしょうか。

戦後すぐのモノのない時代を経て、昭和40年代以降に生まれて育った人は、モノでぎっしり埋まった狭い家を当たり前だと思って育ってきたのだと思います。

日本の住空間には、もともと、なにもない、なにも置かない、布団もお膳も使ったらすぐ片付ける、緊張した空間の美意識があったのに。

明治から第二次大戦までは、すこしずつ文明開化の洋風を取り入れながらゆるやかに変化して大正モダンなども生んだものの、敗戦とそのあとの爆発的な高度成長で、住空間も、日本人の精神的なよりどころも、美意識も、すっかり混沌のなかにうもれてしまったんだと思うのです。

日本に帰って成田から電車に乗ると、田んぼがなくなってきたあたりから始まる町並みの醜さにつくづく見とれてしまうのだけど、あのカオス。

『千と千尋の神隠し』にでてくる「カオナシ」のごとく、なにもかも、西洋のものも世界じゅうのものも手当り次第に取り込み、自分のものにしようとして食いつくすエネルギーが、昭和の後半の日本にはみなぎっていました。

その結果が、モノであふれかえったリビングであったり、まったくまとまりのない何の折衷なんだかもわからない建物がひしめく町だったんだと思います。

20世紀も末になって、バブルもはじけたあたりから、だんだんとそれに気づいて、なんとかしようとと思う人たちが増えてきて、断捨離やコンマリさんの需要がうなぎのぼりっていうことなのでしょう。 

 


2017年に行ったときの東京。

先日『天気の子』を観たら、話に内容よりもなによりも、東京の街があまりに懐かしくて涙でた。
『君の名は』よりずっと面白かったです。画面がきれいだし、話も楽しめた。

「人柱」というものの解釈がめっちゃメルヘンなのにちょっと驚いたけれど。
遠野物語的、日本神話的、土着の神様的な要素を、殺菌洗浄して小綺麗にパッキングしましたって感じでした。それが悪いとは思いませんが、すこし物足りないのも事実。

でもあの新宿界隈の描写の正確さったら。
それだけで2時間眺めていられる。密度の高い画面のクオリティに感動しました。

やましたひでこさんの断捨離ビデオに感化されて、ちょこちょこと身の回りのモノをまた減らしはじめました。食器や洋服や書籍や。

モノがひとつなくなると、その分だけ、少しピントが合うようです。



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2021/09/23

植物性アイスクリームのアフォガート


近所ねこ。あじさいによく映える、きれいな毛並みの黒猫さん。
あじさいはほんとにいろんな色になりますね。



たいへんクールな猫さんでした。



70thストリートのアイスクリーム屋さん、Frankie & Jo's
CTちゃんから「みそ味が出た!」との速報をきいて駆けつけました。

ここは牛乳でなくココナツミルクやオートミルクなど植物由来の原料を使ったアイスクリーム屋さんで、ちょっと変わった原材料を使ったフレーバーを果敢に開発していますが、「当たったためしがない」とCTちゃんは手厳しい。(そのわりによく通っているようです)




(袋からのぞいてる植物は、散歩の途中で拾った木の枝です)

9月の新フレーバーのうちの「Miso Moon」(creamy coconut and oat milk ice cream with miso oat cookie crumbles and a gooey miso caramel sauce swirled throughout)というのをさっそくサンプルでためしてみたけれど、ココナツの味が勝っていて、あんまり味噌っぽくなかった。

「味噌」って聞いて、白味噌餡の柏餅みたいなのを勝手に期待していたのですが。




で、味噌ムーンはやめて、California Cabinというのにしました。ヴァニラに松のエッセンシャルオイル、シーソルト、カルダモンとブラックペッパーのショートブレッドクッキー入り。

ちょっと変わったヴァニラです。


パッケージもかわいい。
わたしは牛乳があまりおなかに合わないので、植物由来は嬉しい。
レディーボーデン(懐かしい)のようなこってり感はないけれど、おりこまれたクッキー生地がじょりじょりして複雑な風味があり、美味しゅうございます。




アフォガートにしたら激ウマでした。普通のヴァニラよりもふんわり軽くて、カルダモンの香りとクッキーの食感がエスプレッソにすごく合う。思わずおかわりするの巻。



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