曲がってゆく、猫のあしあと。
日曜は一日じゅう雪が降って、月曜日の朝は朝焼けがきれいでした。
青空の下、朝の気温はマイナス8℃でした。
予報されていたマイナス11℃にはならなかった(ちょっとだけ残念)。
ベランダのラベンダーがこんなありさま。
ハチドリのためのフィーダーは、完全に凍って、割れてしまいました。
道路もかちかち。
こんな日にかぎって病院をハシゴする予約を入れていて、もちろん、うちのプリウスちゃんをこんな道で運転したくはないので、バスと電車で行くことにしました。
翌日の治療のための採血とドクターのフォローアップはいつものクリニックで午前8時からの予定だったのが、雪のために午後に変更になり、ドクターアポは「テレヘルス」(ビデオチャット)に変更に。看護師さんは出なきゃいけないけどドクターは家から診察できるのね。
まずバスで病院1の放射線治療に行き、そこから病院2での採血のために電車とバスをのりついで行くという遠足でした。
うちからバス停までは、ふつうに歩いて10分弱。
ワシントン大学に通っていたときにいつも乗っていた44番のバスで、終点が病院の目の前なので、らくらくです。
青年が雪渓ハイキング用に買って持っていた、靴にひっかけて装着する式のスパイクをわたしのブーツにとりつけてくれたので、滑る心配もなく気持ちよく歩けました。
宮沢賢治の『雪わたり』みたい。
キックキック、トントン、凍み雪しんこ、堅雪かんこ。
お昼ころの気温はマイナス5℃。とはいえ、風はなかったので、それほど寒さは感じませんでした。
ソリにこどもと食料品をのせて、買い物から帰るお母さん。たのもしい。かっこいい。
このところ年に一度は「大雪」が降るので、シアトルの人もけっこう雪の生活に慣れてきたのかもしれません。
それとも、この数年、トランプとかCOVIDとかで「アブノーマル」な状態というものに慣れてきたのかも…。
数年前のようなパニックはあまり感じない気がします。
大半の人が家で仕事をしている、または在宅勤務に切り替えられるのも大きいだろうし。すれ違う近所の人たちもにこにこしていて、落ち着いて雪の生活に取り組んでる感じがします。
雪中行軍中。
なんだかかわいいものが俯いていました。
さくっと予定通り到着した、放射線治療室。
Stereotactic Body Radiation
Therapy(SBRTまたはSRT、定位放射線治療)という単語を覚えました(正確には覚えていない)。
従来の放射線治療は健康な臓器にもダメージが大きいため、腫瘍の箇所を特定して高精度でその部位だけに集中して照射する技術がいろいろ開発されてきて、SBRTもそのひとつなのだそうです。
わたしの場合は転移した肝臓の腫瘍が大きくなってきているので、その腫瘍箇所だけに集中して放射線を当てます。一回20分くらいのセッションを5日間。
治療に先立ち、照射部位を正確に特定するために、小さいほくろ大のタトゥをウエストまわりに3か所入れました。銭湯にはいれなくなるようなタトゥーじゃないけど、初タトゥー。
そしてこの、スノーマンのディスプレイがされているマシンがぐいーんと下がってきて、プラスチックのテーブルのようなもの、ミラーがついた装置、プラネタリウムの投影装置的なものという3つの装置がぐるぐるとベッドの周りを回転して20分くらいなにかが行われ、うとうとしているといつの間にか終わっています。
その3つの装置のいずれから放射線が出てくるのかは聞きそびれました。
例のアメリカの病院のデフォルトである背中あきの半袖ガウン(ひととしての尊厳を奪い去るガウンだと思います)を着ているので、ちょっと寒い以外にはなにも感じないし、痛くも熱くもないので、なにが起きているのか患者にはさっぱりわかりません。
コントロール室ではCT画像をリアルタイムで見ながら照射位置を細かく特定する作業をしているそうですが。
尊厳のないガウンを着せられるけれど、技師さん/看護師さんたちはみんなスーパーフレンドリーで、明るく、我慢強く、親切でした。なんて素晴らしい人たちなんだろう。
病院1からは道をわたったところにライトレールの駅があり、10月に完成したばかりの(いまのところの)ライトレールの終点、North Gate駅を降りると目の前にバス停があって、そこに病院2の玄関まで行くバスが来るので、とってもらくちんでした。
バス内ではとっておきのN95マスクを着用しました。
さすがにこの日はバスも電車も普段より利用者が多かったもようです。
バスに乗るのは何年ぶりだろう。学校に通っていたとき以来かもしれません。
なかなか楽しい雪中行軍でした。
もっと生産的なことに時間を使いたかっただろうにつきあってくれた青年も、ずいぶんいい奴です。
病院2からの帰りは、ジェニファーちゃんが4WDのアキュラで送ってくれました。
そして翌日火曜日のクリニックでの化学療法の予約にも送迎してくれた。
とにかく与えることが大好きなジェニファーちゃんなのです。
パウダースノーの記録。