2021/10/07

配慮に欠く表現


 シアトル・ダウンタウンにできた、新しいビル、レーニア・スクエア・タワー

ミノル・ヤマサキの設計した、棒つきアイスみたいな形をした「レーニア・タワー」(1974年完成)と呼応する、末広がりなデザイン。

全面ガラス張りの外壁にアクセントが配されていて、遠くから見ると編んだ籠のように見える表面のデザインも面白く、空を映して品よくキレイです。

「こんなビルができるんだって」というブログ記事を書いていたのが5年半前、2016年でした。

トランプ以前の時代です。

この5年のあいだに、世間にもわたしにもずいぶんいろいろあって、世界はいろいろ激変しました。世の中は、目に見えている以上に、ものすごく変わったと思います。たった5年で。

そして5年たてば、以前は影も形もなかった58階建てのビルが完成していたりもする。

 

2016年の段階では2019年完成予定といわれてましたが、結局オフィスと住居のテナントが入居開始したのはつい先月だそうです。

オフィスの一部にはAmazonが入居するはずだったのが、とりやめになったそうな。

オフィスビル需要、コロナのあと、どうなるんでしょうねー。

まだまだ、シアトルのダウンタウンの真ん中は人影がなく、オフィスビルは静まり返ってひと気がない感じです。新しく完成したのも古くからのも。

AmazonもAppleもまだほぼ全社リモート勤務が続いているそうです。

うちの青年の勤務先も、まだ役員以外は全社リモート勤務。9月にはボストンでのオンサイト勤務を再開するはずが、11月に延期され、さらに来年1月に延期されました。

日本の会社では、かなりオンサイト勤務が戻っているのでしょうか。

一昨日、Twitterで品川駅の構内に掲示された広告の写真が炎上していて、それにも驚いたのだけど、それに加えて、ふつうに出社の人がこれだけいるんだ?というのも意外に感じました。


もちろんコロナ以前のラッシュ時はこんなものではなかったとはいえ。

 

「今日の仕事は楽しみですか。」

この広告が大炎上して、「サラリーマンの心を折る」と批判にさらされ、たった1日で取り下げることになったそうです。


Yahoo!ニュースにも取り上げられて、話題作りとしては大成功でしょうけれども、この広告を作って出したプラットフォーム&メディア企業が「ブランドメッセージにおいて、当駅利用者の方々への配慮に欠く表現となっておりましたことを心よりお詫び申し上げます」
というお詫びをしているのに、またびっくり。
 

「配慮に欠く表現」というのも、この5年くらいというもの、いろいろな意味で注目された考えでした。

「配慮に欠いていたことをお詫びする」とは、つまり、自分の言動が誰か特定の人をいちじるしく傷つけていることに思い至らなかったこと、その人たちの体験に対して想像力が働いていなかったこと、自分が無自覚により精神的な暴力をふるっていたことに気づき、そのことを詫びる、という意味です。

以前は当然のこととして見過ごされていた他人種・他民族・マイノリティへのあからさまな差別表現がいろいろな場面で見直されるようになったのも、ここ最近のことです。そういった見直しを快く思わない人たちからの反発も、当然ながら目にすることが多かった数年間でした。

でもこの広告主がこういう形で「お詫び」するのはどうなん?というか、本当にそう思ってるのかな、と疑問に思います。しかもブランドメッセージという、基本姿勢を示すべき場で。

そもそも、この広告は、どんな狙いで誰になんのメッセージを届けたかったのか。

「仕事は楽しいですか」

という問いは、生き方を問うています。それは、
<毎日仕事が楽しいと感じるのが人間の生活であるべきだと私たちは考えていますけれども>
という前提があっての問いのはず。

そしてそれは、
<楽しくないなら、あなたの毎日は何かがちょっとおかしいんじゃないですか?>
という挑戦をはらんだ問いでもあるはず。

これが広告である以上、
<うちのサービスを使えば、そのおかしい現状を是正して、仕事が楽しい毎日にシフトできますよ>
というメッセージがその後ろにあるはずだと、ふつうは読める。

そしてこの挑戦は、
<この広告ターゲットである、品川駅を歩いている人たちは、このメッセージを受け止め、理解し、あるいはショックを受けて、自分の生き方を変える力のある人々である>
ということを前提としていないのであれば、単なる嫌がらせになってしまう。

「アートは人を傷つけるものだ」と、社会学者の宮台真司さんがどこかで(批判が殺到して話題になった愛知のトリエンナーレについて)言っていたけれど、広告コピーもしかりで、インパクトの強いメッセージは、人を傷つけるものです。

そして送り手の側がそのことに自覚的でなければ、アートであっても広告であってもまったく成り立たないはずですよね。

自分のメッセージがどのような人々にどのような効果を与えるかということに自覚的でないなら、アーティストもコピーライターも送り手として資格がないことになります。

わたしは、この上の写真を最初に見たとき、なかなか秀逸な広告コピーだな、と思いました。

だけど、このコピーを見て、楽しいわけがないだろう、上から目線でイラつく、何が言いたいんだか意味不明、と反応する人たちがかなりの数にのぼることを知って、そのことに衝撃を受けました。

日本がもっともっと元気だったバブルの時代、80年代〜90年代前半の東京で同じコピーが同じように掲示されていても、絶対に炎上などしなかったと思います。
当時はもっと過激な挑戦的なコピーがたくさんあったと思うし。

この広告への反応は、いまの日本がいかに弱っているかを、まざまざと示してしまったようです。

日本が一番浮かれていたころに、井上陽水が「みなさん、お元気ですかぁ〜〜〜」と呼びかけるCMがあったんですが、あれも今やったら「元気なわけねえだろう(怒)」「おめえ何様」って炎上するのかも。

このプラットフォーム&メディア企業は、日本のオーディエンスがいかに追いつめられてイライラしているのかを見切れていなかったのか、それとも、もしかして意図的にそういうストーリーを作りたかったのか、どっちなんだろう。

いずれにしても、
<うちのサービスを使えば、そのおかしい現状を是正して、仕事が楽しい毎日にシフトできますよ>
なんていう提案を届けるにはいたらず、ただ疲れている人たちを言葉で殴ったうえに、謝って逃げることになってしまった。

謝るくらいなら最初から殴るなよ!と思うのだけど。
殴るんだったら最後まで、矢面に立ってその理由をきちんと説明する姿勢が見たいです。

「配慮に欠く表現でした」という曖昧な言い方は、逆にオーディエンス、または批判している人たちを見くびっているように感じます。

「傷ついた」という批判に対しての答えを持つということは、ほかの人の経験への想像力を持ち、そのうえ自分の立場を明確に説明できること。

言葉は暴力になるということをよく自覚して、自分の言葉にどんな意図があるのか、個人のレベルでもちゃんと考えなくては、と思わされます。

 


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2021/10/05

握られている!


もうすでに花がいっぱいのところに、またまたダリアの大きなブーケをいただきました!

ジェニファーちゃんが買ってきてくれた。ダリア園を営む花屋さんからだそうですが、ユーカリやガマっぽい穂もくみあわせたオシャレな花束。

花瓶がこんなジェネリックなのしかなくて残念。美しい白磁か有田焼かなんかの豪華な花瓶に活けてあげたい。



でも午後の日差しを浴びて、うちのワークスペースがまあなんと豪華に。

 



きょうは引き続き仕事中で散歩もなかなかままならないのですが(起きてくるのが遅いからね)、リビングも秋の色だし(積ん読本が散乱してますが)、ここに金木犀の香りが漂っていて、うちにいるだけでも引き続き幸せこの上なし。

いまのプロジェクトはあともうちょっとで終わりです。最後のスパート。
翻訳の仕事は、大きめのプロジェクトが終わったときの解放感がなによりも嬉しいかもしれませんw 

ところで今朝起きたら、Facebookとインスタグラムとワッツアップが世界同時に全面ダウンしているというのでびっくりしました。いったい何があったよ!

数時間で復旧したみたいですけど、うちではザッカーバーグの仕業だという説が有力……。
あやしいよ!

それにしても、私企業に生活のかなりの部分をいろいろとがっつり握られていることに、あらためて気づきますねー。GAFAとついでにLINEがそろっておやすみしたら、ほんとに生活が機能しなくなるですよ。

 


きょうのサラダ、青年の作。いい感じに熟したプラムとゴーダチーズ。
ゴーダは果物に合いますね。



 

 

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2021/10/04

今年も金木犀&鶏めし弁当


今年も、金木犀の枝をいただきました。なんて幸せ〜〜〜!

猫ママにして陶芸家、そして緑の指をもつにゃを子さんがカークランド某所で丹精されているお庭の木が、今年はたくさん花をつけたようです。ファビュラス〜!!


うちの小さなリビングがいま、極楽の香り。

香りって、思い出そうと思ってもなかなか復元できるものではないけれど、かいだ途端によみがえる。不思議なものですね。






今週はやや人並みに仕事をしてる自分をねぎらうために、土曜日はこずも食堂さんの鶏めし弁当を注文!

栗に、オクラに、白あえに、かぼちゃに、牛肉に、お漬物、しいたけ、飛竜頭、その他いろいろ、細やかな品目がちりばめられた秋の錦のようなお弁当。

東京駅から新幹線に乗り込んだつもりで。ひととき行楽列車の妄想をたのしみつつ。

青年のために大容量唐揚げも注文しました。うまうまです。

特製おからのケーキもふわんふわんで、しっとり上品な味。美味しかった〜。





今週末は眠いうえに仕事がたてこんで、起きてる時間は(短い)デスクにむかってる感じですが、うちじゅうに秋の花があって豪華で癒されまくりです。



 

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2021/10/02

秋晴れ


10月ですね! きのうは夕方まで冷たい雨が降っていたのに、きょうは朝から快晴。
気持ちのよい1日でした。

近所でシュウメイギクをよくみかけます。コスモスよりも人気があるようです。



ジャパニーズメイプル、モミジもますます鮮やかな色になってきました。

 


 道のむこうに、発見。


オレンジとらちゃん。
ぐっすりお昼寝中だったのに、下りてきてしばらくにゃごにゃご遊んでくれました。

 

 


きょうはパッタイ。

今週はちょっと仕事中です。




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2021/09/30

秋の味覚と秋の色



秋の仲間たち。もう9月が終わり! しっとり冷え込む曇りがちの日、しとしと雨の日が増えてきました。


ワシントン州秋の味覚といえば、アップルサイダー。
近くで収穫されたりんごの生絞りジュースで、こんなガロン(約3リットル)入りの容器でスーパーに並びます。
シナモンやクローブを入れて温めて飲むと、ついに晩秋だー!という気分が深まります。



ジェニファーちゃんが、秋の色の花をひと抱え持ってきてくれました。
テーブルが突然秋の野に。


毎年きのこ狩りに行くピャットさんから、シャンテレルきのこを頂きました。



なんにしてもおいしいキノコですが、ベーコンとしめじをあわせて、間違いない和風バターしょうゆ味に。




 チキンドリア(コウケンテツさんの「クリーミーにもほどがある」マカロニグラタンレシピをアレンジ)にもきのこを入れて、炭水化物爆発メニューのファミレスみたいな夕飯。ドリンクバーはどこですか。

コウケンテツさんの、「洋食では、カロリーは気にしないでください」ときっぱり断言する姿勢が好き。「カロリーが高ければ高いほど、おいしいです」。はい。

ジュリア・チャイルドとファンを描いたおいしく楽しく少し切ない映画『ジュリー&ジュリア』のてんこ盛りバターを思い出します。

 

 

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2021/09/29

美しい入れ物と豚の思い出


この夏、木工作家のMotokoちゃんにいただいた、美しいいれもの。

Pちゃんからいただいた瀬戸内の美しい藻塩お塩を入れてます。なんと贅沢なことか。

メープルの木目がきれいですねー。

木の肌って本当にいろいろで、木工作家さんたちはその材質の活かし方を知りつくしてるんですね。

先日行ったウィドビー島のギャラリーにも、地元の作家さんのつくった木のボウルなどがあって、マドローナ材のボウルが、明るいオレンジ色で軽くて、木目も緻密で面白く、本当に綺麗でした。


メープルや楓の葉の色が、すごい勢いで変わっています。



ダリアはまだ咲いていますが、もう9月も終わりだものね。


散歩の途中で出会った現場。ここで一体何がw。




小学校の前にあった注意書き。

学校には豚を連れていってはいけないのだそうです。知らなかった。子羊はいいのかな。

ハワイで一番最初に住んだ家には、庭に巨大な豚がいました。大家さんはペットだと言い張っていましたが、たいへん凶暴な豚でした。大家さんは子どものいない白人夫婦で、下の部屋を貸して2階に住んでいて、月に1度は泥酔して派手な喧嘩をして何か家のなかのものを破壊していました。一度は大きな熱帯魚の水槽を壊して、天井から水が降ってきたことがありました。
いろんな人がいるものです。面白い家だった。



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2021/09/28

ウィドビー島の牡蠣とソーシャルプレッシャー


快晴の土曜日、ウィドビー島(Whidbey Island)に行ってきました。

華氏77度(摂氏25度)という、夏が戻ってきたかのような気候。
あったかくて爽やかな秋の一日でした。




ウィドビー島は、くにゃっと曲がったドアの取っ手みたいなかたちの細長い島で、北側には橋がかかっているので地続きで車で行けますが、島の南端にフェリー港があって、シアトルからはフェリーで行ったほうが早い。フェリーだと島の南端までは1時間とすこし。

シアトル側のフェリー乗り場は、ボーイングの工場に近いマカティオにあります。

真新しそうなゲートに、ネイティブ部族に敬意をあらわすアートが設置されてました。



 さすがに快晴の土曜日、フェリーは混んでいて、1隻待ちでした。


いつものことながら出足が遅いわたくしたち、午後2時すぎにようやく島に到着。


 
今回は島の南側だけを訪問しました。

フェリーターミナルから近い小さな町ラングレー(Langley)と島のまんなかへんのクープヴィル(Coupeville)へ。

ラングレーでは往年のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの名前を冠した小さい音楽フェスティバルが開催中で、あっちこっちでジャズのバンドが演奏してました。
 
 


 アーティストもたくさん住んでいる島で、ギャラリーも多い。

ラングレーのMUSEOはとっても洗練されたギャラリーで、 素敵な作品がいろいろありました。

すごく気に入ったのが、ROBIN & JOHN GUMAELIUSさんのセラミック作品でした。

左側の、顔のついている大きめの作品は、2,800ドル。お買い得じゃありませんか。
ウマの上に、おなかがたらり〜んとなったおじさんが座っていて、その上にトリが止まっています。なんだか心あたたまる、不思議な味わいの作品です。

日本の人の作品っていわれてもなるほどって思うような、日本っぽい感覚だと思います。

日本に持っていったら人気がでそう。雑貨カフェとか書店に置きたい感じです。
日本のギャラリーの方、いかがでしょう。

テクスチャがとても面白いです。




クープヴィルは、貝の産地で(このへんでは)有名な、ペン・コーヴという入り江に面した小さな町。



ここのお店で牡蠣を食べるのが遠足の目的だったのだけど、当然のように予約などしておらず(笑)。


開店1時間前にウェブサイトから予約をしてみたら、携帯に電話がかかってきて、本日は満席です、とのことで、ウェイティングリストにのせてもらいました。

午後5時の開店後、直接行って、青年が食い下がる。
実際行ってちょっとねばってみたら、1時間後に席を作ってもらえました。

クレイマーじゃなくて、にこやかな「ソーシャル・プレッシャー」を実践しているのだと青年。
担当者も人間なので、まずラポールを築き、申し訳ないような気分にさせて、そこをやんわりとつつく。するとうまくいくことが多いと。

これほんとに、アメリカでは窓口の担当者次第でかなり融通が効くことが多いので、重要です。銀行とかクレジット会社とか電話会社とか役所とかでも。

日本では、個人としての裁量よりも決まりが優先されていることが多くて、あまり考える余地がないようなのが残念です。


このお店ではQRコードじゃなく、クラシックな紙のメニューでした。



牡蠣。美味しかった。幸せだ。

「カバナ」「クマモト」「ロックポート」という品種。
で、やはり、クマモトがいちばんおいしいね、ってなる。

このほかに、ベーコン味でグリルした牡蠣、フライしたオクラとグリーントマト。

メインはハリバットのグリルをいただきました。


テーブルにかわいい花が飾られてました。

外から見ると漁師の倉庫みたいな建物なんだけど、かなりおしゃれ。

お値段もそれなりにおしゃれ!

ビーツのサラダのアミューズと、メインの前にかりんの小さなジェラートがでてきました。



写真撮り損なってすごいエフェクトになった、ハリバット(オヒョウ)です。

走り去るハリバットみたいな。

日本じゃあんまり見向きもされない白身魚だけれど、ハリバットはアメリカでは高級魚です。繊細なうまみがあって美味しいです。

パンフライで、カリカリの表面がおいしかった。

 

デザートにベニエ。 

ニューオーリンズに行った頃には高校生だった息子も、いっぱし、わたしよりもたくさん稼ぐようになって、ごはんをおごってくれるようになりました。めでたし。

食べるのは2人前以上で、3人分くらいの食費がかかるのに財布はひとり分という、釈然としない時代が長うございましたのよ。





最後に小さいチョコレートのサービス。ローズマリー味でした。


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