2019/02/14

スノウマゲドン去る。


シアトルでは珍しい「非常に過酷な」積雪の余韻もさめやらぬ同じ週の金曜日に、また雪が降りはじめました。

しかも週末3日間降り続けるという、この地ではほぼ前代未聞の予報だったので、シアトルは軽いパニック状態に。 


これは金曜日の午後3時ころ。予報どおり午後早くに降り始めたので、学校は2時間早く休校。
仕事を早く切り上げて帰る人が多かったために道路はお昼すぎから大渋滞。



わたしはのんびりショッピングモールに買い物に行っておりましたがどの店も空いていて、レジでは店員さんたちに「このあとは帰るの?」と、当然すぐ帰宅するんだろうなという感じで聞かれ、そこはかとなく緊迫感がただよっていました。

週末はずっと雪に降り籠められる可能性が大だったために人々は食料確保に走り、この午後、スーパーマーケットは超大混雑だったそうで、大型スーパーではレジが長蛇の列で30分以上も並んだとか。

普段は土日にまとめて食料品の買い物をする家庭が多いでしょうから、ずっと雪で閉じ込められると思ったら無理もないですね。

友人が夕方5時ころに買い物にいったら、パンも肉も牛乳もすっかりなくなっていたそうです。野菜売り場にはレタスしか残ってなかったと言ってました。



夜8時ころ、うちの息子に近くのスーパーBallard Marketに行ってもらったら、やっぱりこのように、パンの棚はほとんど空っぽになってたそうです。

 (このスーパーは翌日も翌々日も雪のなか通常どおり営業していて、パンも肉も野菜も乳製品もほぼ通常どおりストックされてました。歩いて行ける距離にお店があって、ほんとに助かりました。)

金曜の夜は実際は車が通行できなくなるほど積もりはしなかったのだけど、その中を街に出ていった息子の話では、いつもならひどい渋滞になるはずの午後5時頃、ダウンタウンの道路はゴーストタウンのようにガラガラで、気味が悪いようだったと言ってました。



金曜の夜の天気予報はこんなかんじ(気温は摂氏です)。
アラスカ?と思うほど雪マークが並んでいるのも前代未聞でしたが、土曜の最低気温が摂氏マイナス11度という予報にもびっくり。

そんな気温はちょっと滅多に体験できないので早起きしてみようと思って目覚ましをかけておいたけど、マイナス11度になるはずの午前6時に「現在の温度」を見てみたら、実際のところは摂氏マイナス6度くらいでした。

金曜日は夜の間中、予報どおりしんしんと降り続き。


土曜の朝。近所はすっかりまた雪景色。


ソリを持ち出している人がいっぱい。犬たちとこどもたちは大喜び。
クロスカントリースキーをしてるご夫婦もいました。



ツイッターやインスタグラムには#seattleSnowmageddon (スノウマゲドン)とか#seattleSnowpocalypse(スノウカリプス)とかのハッシュタグつきで、ノースウェスト住民のパニクりぶりをおもしろがる投稿がいっぱい流れてました。

ハルマゲドン(最終戦争)をもじった Snowmageddon、アポカリプス(黙示録)をもじったSnowpocalypseという、この世界終末的な大災厄をおもわせる単語たち。

これはもともと、2010年冬に東海岸を襲った本気の大吹雪(もちろん今回のシアトルの積雪とは比べ物にならないスケール)のときにメディアでつかわれたフレーズなんだそうです。
今回はおもに「このくらいの雪でシアトルは大パニック」という、自虐的ギャグとしてつかわれてた感じです。

ちなみに『スノウマゲドン』という、どのレビューを見ても星が一個しかついていない確信犯的B級映画(2011)もありました。(今、検索してみて知りました。)アメリカ映画界は懐が深い……。



そして日曜日はまたほぼ一日中降りつづけ、近所がナルニア国みたいになってしまいました。
積雪量は、このへんでざっくり合計20センチくらいはあったと思います。


空港の記録では、日曜が3.5インチ(9センチ)、月曜が6.5インチ(16.5センチ)。
今月の通算積雪量は51センチで、1916年の記録を破る未曾有の積雪記録になったそうです。


見慣れた通りなのに、いったいどこのスキーリゾート?みたいな景色。
富山県出身でシアトルに住んでいる友人が電話してきて「実家にいるみたいだ」と言ってました。 

もうこうなってしまうと、スノータイヤ&4WDでないと車での外出は無理。


フィニーリッジからバラードに降りてくる65thストリートのきつい勾配の坂には即席の「ご近所ゲレンデ」ができていたそうです。
あの坂は滑りがいがありそう。かなり上級者向け「ブラックダイヤモンド」のコースかも。

うちの近所の小公園も臨時のスノーパークに。

そして月曜日にも溶ける気配もないまま、雪が降りつづき。

ほんとに1週間雪が続くんか、とさすがに心配になってきた月曜日の午後、気温が上がってきて雪がだんだんとみぞれっぽくなり、火曜日には完全に雨に変わって、ようやく溶けてくれました。よかったー。

月曜日も火曜日も、学校や会社はほとんどおやすみ。
シアトル郊外では雪のなか停電になってた地域もありました。氷点下で停電てほんと洒落になりません!

さすがに土曜から火曜日まで、新聞は来ませんでした。ごみ収集車も。

でも郵便は大雪の日にも来てた!USPSすごいな。


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2019/02/04

非常に過酷な天候


朝方、外を見たら地吹雪みたいにびゅうびゅう横殴りの雪になっていたのでびっくり。

積雪量はごらんの通り、たいしたことないのですが、なにしろ雪に備えのない都市なのでこれだけ積もってもたいへん。

やっぱり今日はシアトル市内、幼稚園から大学までほとんどの学校が閉鎖。



予約を入れていた病院も、「本日休院です」と 朝電話がかかってきた。たいしたことない内容の予約だったので全然よかったのだけど。

ためしにUBERのアプリを立ち上げてみると、いつもは近所に車がワラワラと群がっているのに、今日はとおーーくのほうに一台あるだけで、しかも一瞬で消えたので、笑ってしまいました。


明日明後日も氷点下の気温が続くようなので、この道路に残った雪がガリガリに凍ることは間違いなし。

メインストリートはもうすっかり乾いているようですが、住宅街ではそう簡単に溶けないので数日間は車の出入りが危険です。



からすのあしあと。

うちはいまどき珍しく紙の新聞を取ってるんですが、きょうはシアトル・タイムズから

「Due to inclement weather across the region many of you may not have received your newspaper or it is severely delayed.
(本地域全域における非常に過酷な天候のため、多くのお客様のお宅には本日、新聞がお届けできないか、もしくは配達が大変遅くなる可能性があります)」

というEメールがきてました。

INCLEMENT weatherというのは見慣れない単語。

「過酷な天候」というとエベレスト山頂とか南極の天候を思い浮かべてしまいますが、氷に慣れていない地域でかつ自動車に依存している社会では、5センチの雪でも充分に過酷な天候になります。しかもシアトル、坂だらけだし。

でもあの朝の地吹雪は、たしかにinclementな風景でした。

で、うちには朝6時の時点で新聞が届いていたので感動してしまいました。

すごーい、あんな地吹雪のなかを配達してくださったなんて!

ごみ収集車は来なかったけど、郵便配達の方もちゃんと来てくれた。すごい重装備で。

過酷な天候下でインフラを支えてくれている人々には本当に頭が下がります。



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2019/02/03

初雪です


今冬はシアトル、例年よりも暖かい感じで桜も咲き始めたし、このまま春になるのかと思ったら、今日は午後から雪になりました。


スーパーボウルサンデー(< 今年もまったくフォローしてない)の雪。

超混みのスーパーマーケットから帰る途中。



午後遅くから降りはじめて、あしたの朝まで降る予報。



シカゴ在住ブロガーさんによると、かの地では体感温度が昭和基地よりも寒くてもジョギングしている人までいるそうですけどww
シアトルは5センチでも積もったら大パニック。

のんきな在宅ワーカーは雪景色が楽しみだったりしますが。月曜の通勤が雪じゃ大変。
あすは在宅で仕事に切り替える人が多いのではないかな。
事故など起きませんように。



Kozumo Kitchenのかなこシェフに、超うまお惣菜とおにぎりをいただいた♡

きんぴら、なす田楽、かぼちゃサラダ、鶏唐揚などなど。
うまうまうまーー。幸せをかみしめる。



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2019/01/18

ビール・ストリートのオダギリジョー


『If Beale Street Could Talk』を観てきました。
邦題は『ビール・ストリートの恋人たち』(無難にまとめましたね)。

よかったです!またもや号泣。

ペースのはやい今どきのドラマに慣れている目には、このバリー・ジェンキンス監督の語り口はまどろっこしく感じてしまうくらいスローで、静か。


ふだん、5秒で何かがわかるとか、15秒ですべてがわかるとか、そういう前提で情報を見ることにずいぶん慣れちゃっているなと思わされました。


心の内面の動きをゆっくりゆっくり、部屋の湿度も感じられるくらいにゆっくり描いていく映画。一コマ一コマがほんとうに綺麗です。

70年代はじめのアメリカで、黒人であるというのはどういうことだったのか。それを言葉をあんまり使わずに描いてるのがすごいです。

刑務所から出てきたばかりの友人が、その経験を語る場面がすごかった。

人を壊してしまうだけ大きな恐怖と、無法なことに鼻をつまんだまま放置している国のしくみも、淡々と静かに描かれているのでとてもこわい。

そしてキャストが全員、光り輝くほどすばらしい。



主演のステファン・ジェームズ君。オダギリジョーに超似てると思うのはわたしだけ?


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2019/01/15

ファー島へ遠足


年末から暗い雨がちのぐずぐずした天気続きだったシアトル近郊、このところ珍しくすかっと晴れた日が続いてます。

快晴の土曜日、スカジットの「ファー島(Fir Island)」のあたりに行ってきました。
ファー島というのは、川にはさまれた平たい土地です。

春のチューリップ畑で有名なスカジットにあります。


このへんです。シアトルからカナダ国境までの中間地点くらい。
こうしてみると、カナダって近いっすね。


この前行ったのは、2012年と2013年だった!
なんと5年〜6年も前なのでした。

ハクガン(スノーグース)とトランペッタースワン(ナキハクチョウ)を見に行ったのですが、前回ほどたくさんの大群には遭遇できませんでした。
 


でも遠くにホコリのように舞っている群れを見つけて車で近くへ接近。

スノーギースのみなさんは一心に草地のなにかをついばんでいて、前回みたいに群れが空を舞う壮大な景色を間近で見ることはできませんでした。



ビジョナリーな1羽が用水路をわたってとなりの畑に移動すると、何千羽もいる鳥たちがじわじわとつられて大移動がはじまりました。

用水路へとことこと下って、対岸へまた上っていくのが多数派のフォロワーたち。
用水路の水にはいったとたんに目的をわすれたらしく、水につかってぼんやりしはじめ、交通を遮断する人たちもいる。
そして中には「なんでわざわざ下におりなあかんねん」と気づいたのか、羽根をひろげて用水路を飛び越すレボリューショナリーな鳥たちも(でもとても少数だった)。

スノーギースの社会の力学もおもしろい。

そもそも、フォロワーたちはどうしてみんな全員の行く方向に行きたくなるんだろうか。

鳥なりの「FOMO」な焦りなんでしょうか。
FOMOって、社会性のある動物に共通の本能なのかしら。どこに書き込まれているのだ。


5年前に行ったときには一眼レフも持っていたのですが、もはやiPhone一択。

なのでこのように、双眼鏡にレンズをつけて撮ったりしてみる。


 …でもせいぜいこの程度ですけど。

ハクトウワシもあっちこっちにたくさんいました。


通りがかりにみつけたミニチュアロバ牧場。


なぜかKちゃんが異常に興奮してロバに草をやりまくり。


「ねえねえどうしてロバちゃんに触りたくないの〜?」とKちゃんに詰問される。耳にはちょっと触ってみたかったかな。でもロバの目は表情がなくてちょっとこわい。


冬の日がくれるのはまだまだ早い。日没は4時半くらい。

このあたりには可愛らしい古い農家がぽつんぽつんと建ってます。


トランペットスワンの小さな群れ。


遠くにみえるのはタコマ山AKAレーニア山。ここからだと小さいプリンのようでした。


反対側、北のほうにはカナダ国境に近いベイカー山。まだ行ったことがない。
いつか行けるといいなー。

鳥は思ったより少なかったけど、のびのびと青空を楽しめた一日でした。



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2019/01/06

グループセラピー、バベルの図書館@フライ美術館


シアトルのファーストヒルにあるフライ美術館に行って来ました。久しぶり。4年ぶりくらいか。



グループ・セラピー』という展覧会が開催中でした。(1月6日まで)

ものすごい量の情報が交錯し、フェイクニュースの物語ごとに陣営にわかれて相互のコミュニケーションが成り立たなくなってしまったようにみえるこの時代に、癒やしとコミュニケーションの可能性を模索する。
…といった内容の作品をあつめた、なかなかおもしろい展示でした。


Shana Moultonというカリフォルニアの女性アーティストの、プロジェクションを使った作品が面白かった。


ダリっぽい地平に並べられている、いかにもニューエイジっぽいグッズたち。壁につぎつぎと映し出されるマンガっぽい人体の一部。

My Life as an INFJ というタイトルは、マイヤーズ・ブリッグズ の16種類のパーソナリティタイプを示してます。

(ちなみにわたしはINTP。20年位まえにホノルルのカレッジで心理学の講座をとったときにこれをクラスでやって、その当時、まもなく別居する運命であった旦那がまるっきり正反対のESFJだったので、ああなるほど…と思ったのでした。)

もう一方の壁には別のビデオ作品『Whispering Pines』。これもいかにもカリフォルニアチックなニューエイジ/スピリチュアルな傾向に惹かれながら現代生活をおくる白人女性を自演していて、皮肉なのだけど意地悪ではなく、スピリチュアリティに対する希求の切実さがコミカルに描かれてるけど切ない。


もうかれこれ10年ほども続けているシリーズのようです。


この悪意のない皮肉、どうしようもないおかしさと切実さが、わたしはとても好き。
まあその解釈が合ってるかどうかは、わかりませんが。


Lauryn Youdenというカナダ生まれ、ベルリン在住アーティストの作品『A Place to Retreat When I am Sick (of You) 』
黒い砂を敷き詰めた、瞑想のループ。ざぶとんとヘッドフォンがいくつかおいてあり、それぞれいろんなバイノーラル・ビートが聞こえる。



一番おもしろかったのは、Marcos Lutyensという英国人アーティスト(ロサンゼルス在住)の『Library of Babel, a Symbiont Induction』。

薄暗い小部屋のなかに腐葉土が敷き詰められ、クッションとヘッドフォンがいくつかおいてある。中心のガラスケースのなかには、きのこ(霊芝)が生えた螺旋階段を中心としたテラリウム。壁には幾何学もようのタイル(菌糸体を素材とした防音タイルだそうです)が貼られている。

ボルヘスの短編『バベルの図書館』を下敷きにした作品で、ヘッドフォンからはアーティスト自身の声で録音した、きのこの世界にわけいっていくようすをブツブツ呟く催眠術的なモノローグがきこえる(なかなか気持ち良い)。

『バベルの図書館』は 、上にも下にも永遠に螺旋状につながっている六角形の図書室だけでできている世界のなかで生きている図書館司書のモノローグという体裁をとった短編です。

この短編の英語訳を一生懸命読んだのだけど、とにかく単語やイメージが難解で、わたくしには完全に理解なんかできませんでした。

しかし、言葉と幾何学から成る陰鬱な永遠の図書館世界と、その書物に書かれた謎を解き明かそうとして永遠の中の短い生涯を費やすひとびとのイメージは強烈です。

松岡正剛さんのサイトに、この短編の一部が紹介されてるのを発見しました。

(ここから)
その図書館は、その中心が任意の六角形であって、その円周は到達不可能な球体なのである。  そこでは、五つの書棚が六角の各壁にふりあてられて、書棚のひとつひとつに同じ体裁の32冊ずつの本がおさまっている。それぞれの1冊は410ページから成っている。各ページは40行、各行は約80文字で綴られる。  この図書館は永遠をこえて存在しつづける。なぜならば、そこにはたえず有機的な文字をもった書物が一冊ずつ加えられつづけるからである。  しかし、どの一冊をとっても、その一冊が他の全冊と関係をもたないということはない。たとえば私の父が図書館の1594号回路で見かけた一冊は、第1行から最終行までMとCとVの文字が反復されるがごとく並んでいた。しかしそれが意味がないと、いったい誰が決められるだろうか。その一冊は、少なくともそのような配列をもつことによって迷路になりえているのである。
(ここまで)

この展示は、バベルの図書館に収められている、意味のわからない暗号でいっぱいの書籍を、たがいに言葉ではない方法でコミュニケートしあう菌、またはその菌糸のあいだにある情報におきかえて、有機的な空間を作り出しています。

きのこたちにはわたしは昔から異常に親近感を感じているので、これはめっちゃ面白かった。だってきのこってとても妙な方法で互いに信号を送り合って共生している、ヘンないきものではないですか。



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