今回のSoy Source 記事には、キングストリート駅のことを書かせていただきました。
1906年建設の、いろいろ折衷な美しい建物です。今年4月に復元の工事を終えてグランドオープンしたばかり。
駅を背にして見たシアトルのダウンタウン。駅前広場も綺麗になりました。
このジャクソン通り側の入口は長い事閉鎖されていて、今年1月まではアヌビス神が立ってたりもしましたが、クラシックな電灯も再現され、植え込みもできてウェルカムな広場に。
ちなみにこの電灯は、工事関係者からGumby というニックネームで呼ばれてたらしいです。
形が「ガンビー」というキャラに似てるのだそうです。
サンマルコ広場の塔を模したデザインの時計台。20 世紀初頭のころの駅にはこういうイタリアン風な意匠の駅が多かったそうです。浪漫時代ですね。
ここの入口から入っていくと、待合室の大ホールを見下ろす2階のバルコニーに出ます。
じゃじゃーん。
思わずおおー!と声が出る、まるで結婚式場のような豪華空間です。
2階廊下の天井です。
シアトル市のサイトに、2008年夏から始まった復旧工事の様子がくわしく動画つきで報告されています。
天井や壁の石膏の浮き彫りは、残っていた部分のをもとに型をとって流し込む方式で再現されました。
5月のはじめに行った時には、まだペンキ塗り立ての匂いがぷんぷんしていて頭がくらくらするくらいでした。
復旧工事の費用は、1000万ドルがシアトル市の特別目的税から、4000万ドルは連邦政府の Federal Transit Administration (FTA)と Federal Railroad Administration (FRA)、ワシントン州の交通局(Washington State Department of Transportation / WSDOT)、それとNGOの歴史ソサエティ(Washington State Historical Society)、 South Downtown Foundation、 4Culture contributeから集まった(明細はサイトでは明らかにされてませんでした)そうです。
市と州と連邦政府のエージェンシーから(省単位じゃなくて、同じ運輸省でもFTAとFRAから別々に)予算が少しずつついているってところが、すごくアメリカらしいプロジェクトの進め方だなあ、と思います。
そしてもちろん、それにNGOの寄付がついて、それから目的税の予算に住民のGo が出るという。
予算の42%は耐震補強に使われたとのこと。
この部分が最初にアムトラックとWSDOTの予算で修復されました。本当に綺麗。
現在この駅からはアムトラックの列車が発着してます。
シカゴ行きの「エンパイア・ビルダー」、北はカナダのバンクーバーと南はポートランドへ行く「カスケード」、それとロサンゼルスまで行く「コースト・スターライト」。
特急ではなくて各駅停車です(そもそも駅の数がそんなにない)。
ロサンゼルスまで36時間。シカゴまで47時間かかる。
1920年代でシカゴまで63時間だったそうですが、その蒸気機関車の頃とあんまり変わってない。インフラほとんど変わってないもんね。日本でいったら、「青春18きっぷ」で行くような超ローカル線の旅です。
でも、シカゴ行き列車乗ってみたい。
大鉄道時代の駅って、本当に今の空港以上に、華やかで別世界な旅の発着点だったんでしょうね。
実は3年ほど前、この駅からアムトラックでポートランドに行ったことがありました。
そのときはまだ復旧工事が始まったばかりで、駅は暗かった。
こんなんでした↑↑↑↑(2010年夏)。
このビニールの天井が吹き抜けの壮大な天井を隠しているなんて、この時は全然知りませんでした。
奥のほう(コンパスのモザイクのある出入り口付近)だけに昔の優雅な駅の姿が残っていて、これは一体どうしたことか、と思ったものでした。
今思い返せば、3年前のその頃は、そこだけ復元工事が終わってたんですね。
高い優雅な天井やモザイクのタイルをビニールの安建材で覆って近代化した改造は、60年代〜70年代に行なわれたもの。
いったいなぜ?と思いますが、70年代には世の中の関心のほとんどは、合理的で近代的なものに吸いつけられていたんでしょうね。古臭い意匠を隠してしまうことが進歩のしるしと受け止められたんでしょう。
明るい午後にぜひ、行ってみてください。
これで構内に気のきいたカフェとレストランがあると良いのですがねー。シアトルとしたことが、まだコーヒーカートもありません。まずカフェとして集客したらどうでしょうか。
今年夏には、ファーストヒルの方に行く市電も近くから出るそうです。
球場わき側(1st アベニュー側)の入口。
アムトラック、21世紀に入ってから利用者が増えていて、特にオレゴン州とワシントン州では、こんな遅い列車にも関わらず、順調に伸びてるそうです。
高速鉄道の話ももう20年も前からあるのに全然進みませんが、WADOTもシアトル市交通局も公共交通機関に関してはやる気満々のようです。