2021/06/25

虹と窓のデザイン


窓辺の虹。

化学療法のときに、抗がん剤の副作用をやわらげるためにまたいろいろな薬剤を入れるのですが、そのなかにステロイド剤もあり、0.25mgというごくすくない量に減らしてもらっているにもかかわらず、投薬日はパッキリ目が冴えてまったく眠れません。

そんな日の明け方、リビングで本を読んでいたら、窓辺に小さな虹がちらちらとあらわれました。



このお宅は、たぶん意匠からすると1930年代前後の建築だと思う。

お庭に面したこの大きなリビングの窓は、ご当主のDOMさんが自分でインストールしたものだそうですが、東がわの窓はおそらく建造当時からのオリジナル。



この窓です。この角度のついた美しい窓をとおってくる朝の光が、きれいなプリズムになるんですね。

 


 

すぐ外に植えられている竹の明るい緑や、歩道沿いのプラムの木の深い紫色の色合いも、このガラス越しに見るとことのほか綺麗です。




このリビングにぼんやりと座っていると、デザインって知性と思想だなあ、としみじみ思わされました。

世界の何が美しく機能的だと考えるか、世界にどんなふうに心を動かされるか、それがなぜだかを考え、表明するのがデザイン。

90年ほど前にこの家をつくった人や、そこに手を入れて丁寧に住んでいる人、椅子やテキスタイルやアートピースをつくった人の意思と知性をふつふつと感じます。

どんなものでも、だれかが考え、手をうごかして作ったもの、て、本当に当たり前のことなのですけど、その意思や思索を、ふと、目の前にその人がいるように、リアルに感じられると、文学や絵画などの作品に心動かされるように、<つながった>感じがします。

 


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2021/06/24

混んできた。そしてガスの威力


青もみじ。

今週末はなんと39度Cという猛暑の予報も出てるけど、今日あたりはもう本当に爽やかな初夏の一日です。


京都のカフェにでも来たような妄想をしつつ(行きたいなあ京都!)、まったりできる幸せなお庭。
あと3日ほどの近所リゾート暮らしです。

先週末あたりから、ちょっと外に出るとずいぶんと道が混んでるなあ、と思うようになりました。
シアトルではワクチン接種がほぼ完了し、飲食店も賑わっているし、もうみんなやる気満々で夏にのぞんでいる感じです。



姫君もほんの少しだけど打ち解けてくれるようになり。

目があうたびに、「やはり釈然としない」という顔をされるのだけど。



そして、キッチンがガスグリルだっていうのがうれしい。

うちのアパートは電熱器みたいなグルグルしたやつなので、火加減のあんばいがぜんぜんできない。

焼き物がかりの青年は、電気コンロの2分の1の時間で肉が焼けるといっていました。




特売ステーキ肉もこんがりおいしく焼けました。

 


フレンチトーストもきれいに焼けます。
電気だと、つい焼きすぎたり生焼けになっちゃうのです。

 

 

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2021/06/23

本当にひどいお父さんの話



夏至でしたね。あっという間に夏が到来していた。

化学療法、今回は1週間長めにあいだをあけたのだけど、なぜかものすごく目が回って、週末はほとんど寝てました。

そして、父の日でしたね。世界中のお父さんたち、おつかれさまです。
お父さんのお役目をどうぞ楽しんでくださいね。

先週は大きな案件を納品したあと、予定通り圧倒的に暇になったので、もう何年も前から積ん読になっていた山のなかからほぼ無作為にひっぱりだした『アンジェラの灰』を読みました。

1930年代から第二次大戦をはさんで戦後まもないころまでの、アイルランドの超超貧乏な家族の話。

これに出てくるお父さんがもう、ほんとうにひどい。

作者は19歳で単身アイルランドからアメリカにわたり、苦労のすえ高校教師になって荒れた高校の生徒たちにシェイクスピアや詩を教え、自分のことを書くようにすすめた人。

そして、生徒たちにすすめていたように、自分でも子ども時代を描いたこの本を退職後に書き上げて、ピューリッツァー賞を受賞した作品です。

次々に子どもを失いながらも生み続ける母、アンジェラも、飲んだくれの父、マラキも、底意地の悪い学校の先生たちも、地獄と永遠の罰を持ち出して脅すことしかしない司祭たちも、そのほか意地悪でシンプルな欲にまみれている哀しい大人たちも、この作者はとても落ち着いた、ジャーナリスティックな目で描いている。だれも美化せず、断罪もしない。

ひどい大人ばかりのなかでも、ほんとうにひどいのがお父さん、マラキ。不況の町でほとんど仕事につけず、たまに仕事があると、おなかを空かせて妻と子が待っているにもかかわらず、給料をすべて飲んでしまう。

なるほど、こういうお父さんが何千人も何万人もいたら、それは、お酒さえなければ…と、禁酒法がグッドアイデアだと思えてくるかもしれませんね。



圧倒されるばかりの不憫で重い話だけど、語り手が子どもで、素直な子どもの視点で描かれているので、あまり暗い感じはしない。

ちょうど近所の無料文庫で原書を見かけたので、もらってきました。

青年が読み始めたのだけど「夏の爽やかな日に読む話じゃない気がする」と言ってました。

 


バゲットがかちかちになってしまったのでブレッドプディングを作りました。




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2021/06/18

エゴノキの庭つきリゾートと冷たい姫様


知人のお宅に猫/ハウスシッターにきています。2週間ほど。

車で10分ほどの距離で、商業地区にも近い住宅街のまんなかだけど、素敵なお庭があるので、まるでリゾートのよう。



着いた日、日曜日はしっとり一日中の雨で、また格別の風情がありました。すっかりくつろいでいる青年。


エゴノキ(Japanese snowbell)がちょうど満開をすぎて、豪快にパタパタと散ってくる。

この木、うちの近所の歩道にもよく植わっていて、なんだろうかと思ってました。

北海道から沖縄まで「日本の雑木林によく見られる」とWIKI先生が言っているけど、日本でインプットされてなかったなー。庭木としては見かけたことがなかった。


いろいろおもしろいフィーチャーのあるお庭です。ハイアットリージェンシーか。


シーサー?落ちてきた花が似合う。



灯籠もあります。家主のDOMさん、ガーデニング上手すぎる。そしてお家のリモデルもかなりの部分自分でやっちゃうのだそうです。
こういうDIYのレベルが半端なく高い人がふつうに多い。


こんな方もいらっしゃる。

エゴノキとカエデがちょうどいい感じに茂っていて、入り口付近には藤棚もあり、椿やシダやそのほか名前を知らない植物たちが元気よく美しくみっしりと育ってます。


夜もまるでパーティー会場。



とても快適に過ごさせていただいてるのですが、もう5日目になるというのに猫姫がなかなか心をひらいてくれない(涙)。
 
昨日からとても天気が良いので、ほぼ外で過ごして、夜、おかえりになると

「まだいるの」「なぜあんたたちがここにいるの」

といわんばかりの心外な表情でわたしたちを見る。




猫にしてみれば大変なストレスなのでしょうから無理もないけれど。
まったく人見知りしない子もいるし、猫の性格もいろいろですねほんとに。

あと1週間のあいだに、もうちょっとハラを割った仲になれたらいいなー。


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2021/06/11

ますます強そうになった


今週はほんとに忙しかった。やっと、ひとやま越えたところです。

おかげさまでなんとか乗り越えられました。まだ終わってないけど。



こちらは先月の末に行った植物園のつつじ。

2月のころに比べると、随分長く歩けるようになってきました。まだ息が切れるけど。



植物園のピクニック。青年はなぜかドストエフスキー『白痴』を読んでいる。

わたしは実は読んだことない。しばらくがっつりした読書をしていなかったので、この仕事が終わったらちょっと腰を据えて長い小説が読みたい。なんて、まるで半年くらい仕事をしていたかのように。でもどうせなら紙の本で読みたいなー。

 


近くの工事現場を囲っている板塀に、しばらく前から故ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事のお顔が描かれております。

ちょっと前、ヘイターの人がこの顔の上に何度かラクガキをしたことがあって、目にするたびにがっかりしていたのだけど、そのラクガキの上にワンダーウーマン的なヘアバンドが追加されて、ますます強そうになりました。うれしい。

喧嘩っ早いクリスチャンの人は、人を攻撃することを本当にもうやめたほうがいいと思うよ。神様とよく相談してください。恐れてはいけない、とジーザスは言っていませんでしたか。

あと進化論とかをむやみに否定するのも、一旦もうやめましょう。科学は悪魔のワナではないし、悪意に基づいたものではないし(本当に!!!)、恐れを持って見なければそんなに怖くないですよ。どうか心を開いて、恐れを捨ててください。心のそこから待ってます。



 いろいろあった1週間でした。いつのまにか、夏ですね。夜9時頃まで明るい。

 

 

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2021/06/05

働きバチの幸せ

爽やかな初夏のシアトルです。

関東はそろそろ蒸し暑い時期? 夏のあいだのシアトルは、蒸し暑い地域にいる方には申し訳ないくらい天国のような気候。

あっという間に6月で、気づけばもうライラックも藤も終わっていて、今は芍薬やバラ、アイリス、ポピーが盛りです。ライラックって意外に花期が短いね。




朝のさんぽで、スポットライトを浴びていた黄色のバラ。かきねから乗り出してるみたいでかわいい。



鬼芥子はどう転んでもかわいくはない。迫力がありますね。

 

アメフラシのようなアイリス。


きのうとおとといは30度C近い、真夏のような陽気でした。それでも風がとっても爽やか。


ここのところ、調子も低調というか地面すれすれだったので仕事もぼちぼち未満の受注だったのですが、今週はちょっとひさしぶりに大型案件をお引き受けしています。ちょうど体調がよくなってきたのと同時に打診があったので、なんとなくできる気がして。
なので世間がメモリアルデーな週末も、サマーブリーズな水曜日も、殊勝に仕事にはげんでおりました。ふだん3時間くらいしか働いてなかったからな。



 

でも、病気をしてから、焦らなくなったというか、無駄な緊張がなくなったようです。
以前だったらきっともっとストレスを感じていたと思う。

無駄な緊張やストレスがないと、空回りしないので、そのぶん仕事がはかどる。



あと数日は働き蜂のようにはたらく(笑)予定。

働き蜂って本当は幸せなんじゃないかって福岡伸一ハカセが書いていたけど、きっとそうだと思う。産卵マシーンとして一生を過ごす女王蜂よりも。世界を見て飛び回り、好きな蜜を集めてまわって。

「働きバチだけが、よく食べ、よく学び、労働の喜びを感じ、世界の広さと豊かさを知り、天寿を全うして死ぬ。おまけにしんどい産卵は他人まかせ。働きバチこそが生の時間を謳歌しているのである」
(福岡伸一「働きバチは不幸か」『生命と記憶のパラドクス』文春文庫)


たとえそれが遺伝子の命令のままだとしても、蜂たちは「やらされてる」とは思ってないよね、少なくとも。やる気まんまんでドーパミン出っぱなしだと思います。夏の蜂たちは。

ヒトななかなか、そういうふうにはいかないですね。



うれしいクリームパン。いろいろ幸せ。

 

 


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2021/05/27

目的なく火を燃やす


ちょっと前だけど、近所の浜に焚き火に行ってきました。

火を燃していると、原始の血がさわぎ出しますよね。

でも風が回ってきてめっちゃ煙かった。

ゴールデンガーデンズ公園にはビーチがあって、ファイヤピットがいくつかあります。
ビーチといっても水に入りたい感じにはあまりならなくて(このあいだは近隣の下水処理施設から処理してない下水が流れ出して遊泳禁止になってたし)そのかわりといっては何ですが、浜はとてもだだっ広いのです。

ほんとうはちゃんとしたファイヤピットでしか焚き火はしちゃいけないことになっているんだけど、ムニャムニャ。

砂に穴を掘って、好きな場所に簡易ファイヤピットをつくって豪快に火を燃している人がたくさんいます。



 ハワイでは生態系が繊細なためもあって、浜での焚き火は禁止されてました。

日本でも焚き火のできる場所が少なくなってきたみたいですね。

むかし、椎名誠さんが全国あちこちの浜辺で焚き火をするようすをエッセイに書いてて、その度外れた豪快なアウトドアがとっても楽しそうで憧れていました。

焚き火は楽しいです。


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