2021/01/08

トランプの幻想と単純なラベルはり

 



暴徒が鎮圧されてまる一日たった今日の夕方になって、トランプはようやく、昨日の暴動を「mayham (騒乱)」として非難し(自分の関与にはまったく触れませんでしたが)、「新政権は1月20日に就任する」「今はスムースで秩序ある政権移行に注力する」という2分間のビデオメッセージを発表しました。



ホワイトハウスの広報官もほぼ同様の、昨日の暴徒は厳しく非難するという記者発表をして、質問はいっさい受けずに退場。


きのうの午後に公開し、Twitterから暴力を促進する可能性があり危険とみなされて削除された動画メッセージ(議事堂に乱入した暴徒に「気持ちはわかる。君たちはスペシャルだ。愛してるよ。しかし今は家に帰りなさい」と呼びかけるもの)とはずいぶんとトーンが違い、選挙後初めて、バイデン新政権への移行を、つまり自分の敗北を、認めたことになりますね。

きのうの暴動を明らかに焚き付けたトランプを憲法25条により罷免しろという要求が、民主党はもちろんのこと産業界や共和党の一部からも出ていたので、これはさすがにまずいと1日かけて説得されたのでしょう。

前日の、ホワイトハウスの前の、ラリーの支持者を前にしたスピーチでトランプは、

「バイデンの票はコンピュータで捏造されたものだ。第三世界の選挙だってこんなにひどくない。君たちの声を沈黙させはしないぞ」
…など、もうすでにトランプ支持者以外には単なる陰謀論として理解されている「不正」についてえんえんと語り、「民主党の極左」と「フェイクニュースのメディア」への嫌悪を煽り、この国をかれらの手から守らねばならない!と煽り。

「俺は絶対負けを認めない。ドロボウに負けを認めたりしないんだ!」
「地獄のように戦わなくてはならない!」
「民主党員は問題外だ。弱い共和党員に、やつらに必要なプライドと大胆さを見せてやるんだ」
「みんなで議事堂に行進していこう!」
と支持者たちに元気よく焚き付けました。(全文はこちら


本当にこの時点までは、トランプも、まだこの/選挙人投票集計確認の段階で、自分が大統領に選ばれると信じていたっぽいですね。


このときの意気揚々とした表情に比べて、今日の「スムーズな政権移譲に注力する」と語った動画の表情は石のように固かった。終始、「渋柿を噛んだ」というのはこういう顔か!とおもうような顔でした。

さてさて、日本にも、「わたしたちは真実を知っている。アメリカに住む人はマスコミのウソを信じているので、わたしたちの知っている真実を知らない」と本気で考えているトランプ支持者がけっこう多いのに驚きます。

このブログにもそういったかたの一人からコメントをいただきました。
「情報をマスメディアに依存して得ている方たちは、不正選挙の詳細も知らないから驚きます」とおどろかれています。

「不正選挙」を立件しようと、トランプさんたちは2か月かけて60件もの裁判を起こそうとしたものの、そのすべてが「baseless」(根拠なし)だとして裁判所に却下されていて、トランプが指名した裁判官にさえ立件に値しないと判断されているのですが……。トランプ派が「証拠」として示しているものは、「いや、それ普通のルーティンだから」「それ、票が入ってた箱じゃなくて機材の箱だから」などと、ことごとく検証によって退けられています。(トランプさんは昨日の集会のスピーチの中で、判事たちのことを「あの裁判官たちは、自分たちが俺の人形だって記事を書かれて、それが恥ずかしくて、反トランプ的行動をしてるんだ」と説明してましたが…。みなが自分と同じ原理に従って行動すると思っているのか)

人の考え方はそれぞれなので、真実がひとつでないのは、この世の摂理でもありますけれどね。

ほんとにけっこう多いのですよね。トランプは中国から「自由社会」を守ってくれる救世主だと信じている日本の人が。

トランプのスピーチは、name calling (悪口、ある一定のグループに過激なラベルをつけること)と恐怖を煽ることで成り立っています。それが支持者に響いている。こういう過激なののしり言葉は、自分の権利がエリートに蹂躙されている、移民やマイノリティが自分たちより優遇されている、既得権を脅かされている、といったルサンチマンに響くのだとしか思われない。とにかくトランプ支持者は怒っている。

でも日本のトランプ支持者、陰謀論支持者はどうなんでしょう。
やっぱり何かを奪われていると感じる、不安や恐れが強いのか。

「マスコミはウソばかり」「政府は信用できない」と、なにかこう、すべてをシンプルな文脈で理解しようとしている人が多いのではないかと思うのですが。

トランプは、そういう簡単で過激なラベル貼りがとてもうまい、というか、そこにだけ皆の注意を集中させるのがとてもうまい。
「極左が国を乗っ取ろうとしている」
「沼(官僚のせいで腐敗したシステムのこと)を干せ!」など。

世の中を複雑なものだと捉えるのはしんどいものですが、単純なラベルを貼ったとたんに、見える世界が限定されてしまいます。

「マスメディアに依存している人は知らない真実をわたしは知っている」と考えている人は、マスメディアではない独立系メディア=すなわち真実、という短絡におちいっているのではないだろうか。

そしてその根底には、やはり、根深い不信があるのですよね。

この不信こそ、トランプが4年間をかけてアメリカ社会に培ってきたものです。

もちろん、疑ってみることは大切です。メディアはどれもバイアスを持っているものだし、それは人も同じです。
情報の出どころをチェックするのは大切だし、オピニオン記事であればその人がどのような立ち位置でどのようなバイアスを持って書いているのか、理解しようとする態度は大切ですよね。

それは自分自身のバイアスをチェックすることにもつながります。

ジャーナリズムも、法律も、科学の世界も、それぞれに長い時間をかけて無数の人びとにより、一定のルールと基準を守って積み上げられてきたものです。

機能していない部分があるからといって、そのエコシステムのすべてを否定してしまっては、世界を極端に狭くすることになるんではないか。というより、結局自分を傷つけることになるのではないか。

どんなシステムも人が作っているもので、中にはひどい人もいるし優れた人もいる。究極、陰謀論に走ってしまう人は、人間の作った社会、社会のなかの人間を信頼することができなくなっているのではないかと思うのです。

うちの青年が働く企業のデザイン部にも、2、3年先輩にQアノン信者がいるそうです。

その青年は、今日のトランプの「政権移譲に注力する」という動画メッセージを、「戒厳令を実施し政権を奪取する」という暗号だと受け取っているそうな……。

彼はあまり友人もいなくて、孤立した生活を送っているらしい。うちの青年はなるべく彼とふつうにコミュニケーションを取ろうとしているのだけど、彼が「リサーチした」「これを読んだほうがいい」と送ってくるニュースメディアの出どころがすべてQアノン系なので、それには辟易していると言ってました。
彼とは1月21日に誰がホワイトハウスにいるか、バイデンかトランプか、という賭けをしていて、レアなスニーカーを一足、賭けてるそうです。

Qアノンで面白かったのは、昨日、議事堂に乱入したなかで目立ってた水牛の角をつけて毛皮を着、槍を持った半裸の男、この人長年Qアノンの先頭に立ってる人だそうですけど「おれはアンティファじゃない」と怒っているという話


陰謀論者や共和党右派は、「この議事堂の暴動はアンティファが仕掛けたものだ」と主張しはじめてますが、筋金入りトランプ支持者が自分でFBやツイッターにセルフィーをたくさん掲載してるのですけどね……。

 


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2021/01/06

民主主義の危機でも内戦のはじまりでもない。

 


ごぞんじのとおり、今日はこの国の首都の議事堂にトランプ支持者たちが乱入して、新大統領の確定中だった議会が途中で中断して議員が避難し、議事堂が閉鎖され…という流れになっています。

観光客のように記念撮影をするトランプ支持者たち……。

 

窓を割って飛び込む「プロテスター」。



この夏、ポートランドでプロテスターたちが連邦ビルの前を占拠したときは「連邦の建物を破壊する奴らは最低10年は牢屋に入れろ!」とツイートしていた大統領は、今日はこの「プロテスター」たちに

「盗まれた不正な選挙に怒っている気持ちはわかる。でもいまは家に帰りなさい。愛してるよ。きみたちはスペシャルなピープルだ。反対側のやつらはとっても悪いやつらだ。気持ちはわかる。でも家に帰りなさい」

ビデオメッセージを送ってます。これが状況を落ち着かせるための 精一杯のメッセージなんだ。「あいつらは悪い。俺らは正しい。でも今は帰れ」というのがメッセージ。

で、このメッセージはTwitterからリツイートも「いいね」も出来ないようにフラグが立てられてます。 

(追記:その後、「ワシントンDCの暴力的な状況を鑑み」てトランプのツイート3件が削除され、大統領のアカウントが12時間凍結されました!)

今日はちょうど、ミッチ・マコーネルが、ようやくようやく、トランプの「不正選挙だ」という主張を「陰謀論」だとはっきり退けて、「選挙の結果をひっくり返せという大統領の要請には何の根拠もない。選挙結果を覆せば割我々が敬意をもって共有している基本的なルールに背くことになり、この国の根幹が崩れる。 民主主義が墜落することになる」と明言したスピーチ(こちら)を聞いていたその直後に、「プロテスター」が議事堂に乱入したというニュースを聞いて、午後中ニュースをえんえん見続けてしまいました。

 

乱入したトランプ支持者の先鋒たち。この水牛の角つけたすっとんきょうないでたちの人はあちこちのデモで目立っている有名なQアノンの人だそうです。

 


 宴会の客みたいにどやどや入ってくる「プロテスター」たち。

これがBLMのプロテスターだったら「全員撃たれて死んでるよ」とうちの青年。

という声はツイッターでもとても多かった。

 

ツイッターより。

記念に議事堂の備品を持ち帰ろうとするプロテスター、いや、ルーター。

 


南軍の旗(歴史的に南部の白人至上主義の象徴とみなされています)をかついで議事堂を歩くトランプ支持者。

DCでは夜間外出禁止令が発布され、ナショナルガード(州兵)が展開してます。

この騒乱を「民主主義の危機」だと言う人もいるけれど、いやいやもうそれはずっと前から始まっていたんですから。

トランプは今日のDCの集会で「議会へ向かうのだ!力を見せなければならない」と煽っていたし、その前から「6日には大きなことがあるぜ!DCで会おう!」と支持者を焚きつけていたし、SNSで極右が議会に銃を持ち込む企画をオープンに語っていたし。

今日の結果は、かなりの人が予想していたと思う。

ただ、目の当たりにするとやはり衝撃ですが。

国のトップであるはずのトランプさんがウソを大真面目に語り始め、そのウソを売り値で買う人が続出していた時点で、民主主義の危機というか、劣化は始まってたんです。

ジョー・バイデンは今日のビデオメッセージで「民主主義はフラジャイルな(壊れやすい)ものだ」と言ってました。それは本当にそのとおりだと思います。みんなそれを感じてるはず。

でもまだ、少なくとも、ミッチ・マコーネルの言う「shared respect of ground rules(皆が敬意を払う共通のルール)」は、生きている。

国のすくなくとも半分以上の人は、その共通のルールを信じている(と思いたい)。

この国はすくなくとも法も政府も銀行も機能しているし、大統領といえどもロシアや北朝鮮や中国のように勝手な真似はできない。いまのところ。

このごろ、世界がカオスの第二次大戦に突入していった1930年代が脳裏にちらついています。人びとが疲れ果てて考えるのをやめたら、あっという間に変な流れに呑まれる。そんな変な強い潮流が生まれつつあるのは、たしかに感じます。

でも、まだまだ時間はあるし、民主主義のルールである「共通の基盤」と信頼を築きなおすことはぜんぜん可能なだけのリソースがたっぷり、この国にはあるとわたしは思います。

日本の様子はあんまりよくわからないけれど、むしろ日本のほうがちょっと元気なさすぎて心配。リソースというのはつまり、人の力だから。

騒乱のあいだにジョージア州では上院2席に民主党の議員が当確になったようです。
とりあえず嬉しい。

今日の騒乱は、民主主義の終わりのはじまりでも内戦のはじまりでもなくて、トランプ時代の終わりだと思いますよ。

 

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ダメ男と救われない男と



うちのお皿じゃありません。ボストン美術館で見た素敵なお皿。

なんとなくお正月っぽく、めでたい気がして載せてみた。どこの国のお皿かも忘れてしまいました。

ジョージア州で上院の2議席をめぐって追加選挙がありただいま開票中。がんばれジョージア。

例の「1万1780票見つけてちょうだい」と1時間にわたってトランプさんがジョージア州州務長官にネゴシエートしつづけた通話の件、BBCジャパンのこの記事が、いままでで一番、トランプさんの口調を正確に翻訳していると思いました。

 「ものすごく違法なんだから」………(´・ω・`)。


さてただいまHULUで『鬼滅の刃』を消化中。アメリカではNetflix配信じゃなくてHULUなんですよ。なので1か月無料お試し期間中でぜんぶ見てしまおうというせこい戦略。


しかしほんとうは『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』も気になっているのだ。

暮れにはいろいろ映画を観ました。

 


 

アダム・サンドラーが史上最悪のダメ男を演じる『Uncut Gem(アンカット・ダイヤモンド)』(2019)。

ほんとうにひどい話で、人間のわけわからないパワーに圧倒される。面白かったけど、ぐえええ、となる。こういう人実際にあちこちにいるのだろうな。ぞわぞわする。

でもこれダイヤモンドの話じゃないんだけど、どうして邦題はダイヤモンドなんだ。



ケネス・ロナーガン監督の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)。これはもうほんとうに辛気臭い悲しい話で、ずどんときました。淡々とした語り口と、地味だけれど緻密な画面と。しみじみ沁みる、とても良い映画だった。男はつらいねー。

青年はボストンにいたときに友人たちとこの町に遊びにいったことがあり、「クリーピー(薄気味悪い)な町だった」と言ってました。

水べには豪邸が立ち並ぶ端正で静かな港町なのですが、住民のほとんど全員が白人で、よそものを受け入れない偏屈で特権的な(そしてその自覚がまったくない)コミュニティを感じたようです。外部のマイノリティから見るとクリーピーな、そんな小さな町の話。

救われない主人公についてNOTEにポストしたので、お暇でしたらご笑覧くださいませ。

ネタバレ全開なので、観た人限定です。観てねこの映画。


『The Last Black Man in San Francisco(ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ)』(2019)。うーん、とても詩的なんだけど、ちょっと繊細すぎてついていけないところもあった。切ない話。

 

 

 

『One Flew Over the Cockoo's Nest(カッコーの巣の上で)』(1975)。何十年かぶりに観て、ジャック・ニコルソンやっぱすげえと思い、反抗すべき権威を代理しているのが看護婦の「母性」であるところにびっくり。うーんそうだったのか。60年代初頭を舞台にした70年代なかばの映画。女性の描かれ方がこんなだったとは全然覚えていなかった。
なるほどー。

10代のころ、三鷹か高田馬場か下高井戸の3本立て映画館のどこかで観たときには、単純にマクマーフィーの心情にぴったり寄り添って(たつもりで)感動したのだけどなー。

青年は、なにかの映画で「マクマーフィーされちゃう」というセリフが気になっていたのだけど、やっとどういう意味だかわかった、と言ってました。




『Memento(メメント)』(2000)。なぜか観てなかった。ストーリーテリングがとても面白かった。でもクリストファー・ノーランの世界観にはあまり共感できない。

 




 『Ma Rainer's Black Bottom(マ・レイニーのブラックボトム)』(2020)。
戯曲の映画化。
これが遺作となったチャドウィック・ボーズマンと、正真正銘(淡谷のり子じゃなくて)ブルーズの女王を演じるヴィオラ・デイヴィスがとにかくすごいです。ど迫力。

濃い、というのはこのこと。

舞台劇をもとにしているのでほとんどが室内の場面なのに、1920年代のシカゴと南部が迫力たっぷりに描写されていました。必見。



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2021/01/05

パラレルワールドと地獄へのポータル


きのうの青空。雨の合間に。
赤い実が、葉の落ちた梢に豪華。
ロビンやスターリングがときどき集団でやってきます。



山茶花も咲いていた。

きのう、ワシントン・ポスト紙が、トランプ大統領と側近がジョージア州の州務長官に1時間にわたる電話で恫喝のような「お願い」をしていた音声をそっくり入手して公開し、大きなニュースになっています。

これ、最初から最後まで聞いてはいなけれど、本当に、本当に、ひどい。「オレが負けるわけないんだよジョージア州で。それおかしいにきまってるだろ。ラリーにあんなに人が集まってるんだからさ。……オレは1万1780票を見つけろっていってるんだよ。それだけだよ」

…みたいな感じ。

これまでさんざん、裁判所にもまともに相手にされるだけの証拠をひとつも提出できなかったにもかかわらず、「不正があったという噂があるぞ」「オレは勝ったはずだ」という思い込みだけを根拠に、「なんでもいいから票を探してきてちょうだい」とお願いしているわけです。

 デスパレートで、言ってること支離滅裂だし、そもそもこのような交渉が可能だと考えていること自体が奇妙奇天烈すぎるのだけど。

日本の報道ではこの電話自体がどれくらい変なことなのかがちゃんと伝わってなくて、まっとうなチャネルの交渉みたいな書かれ方がしているけど、これはどこからみても常軌を逸しています。

これを聞いてもまだ、この人がまともな政治家だと言いはる共和党の人たちはいったい何を考えているのか。

…そしてまだ、この人が選挙に勝ったと信じ、何か自分たちのために良いことをしてくれるはずだと信じている人たちがいるのが不思議でなりません。どうみても自分のことしか考えてないでしょ??

やはり、すでにパラレルなワールドがここに出現しているとしか。





気を許すとどこにでも苔が生えるシアトル。窓枠にこんなに元気な苔が! 

冬場は除湿を怠るとすぐにカビと苔が増殖します。

大晦日、部屋の隅にたてかけてあった紙類をどかしてみたら、真っ黒なカビが生えまくっていて驚愕しました。

地獄への入り口みたいな! ((((;゚Д゚))))こんなところに! 

モノは思い切って動かしてみるものですね…。





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2021/01/04

風の時代 9年目のコパリス・ビーチ再訪


冬至の日、天気は大荒れでした。

 

午後早くシアトルを出たときには大雨。タコマあたりで豪雨になって、久しぶりに滝のような雨のなかを西の海岸へ向かいました。


 

 スピリチュアル界隈では、今年の冬至から「地の時代」が終わり、「風の時代」がはじまったという話でもちきりです。

「恐怖の夢の中に眠り続ける人たちと、愛に開かれた人たちと、世界は二つにパラレルに分かれていってそれぞれ新しい世界が始まるんだってよ」。

と、海岸にむかう車のなかで自分なりに翻訳した風の時代情報をうちの青年に話していたら、そのあと独自にリサーチしたらしく、TIK TOKやインスタグラムで「風の時代だ!いよいよDNAのロックが外れてブラックピーポーのスーパーパワーが炸裂するのだ!」といったようなポストをみつけてきて、2人で大爆笑しました。


 

泊まった部屋は最上階4階で、ガス式のなんちゃって暖炉があったのですが、着いた晩はその暖炉の煙突から吹きこむ風の音がひと晩中ごうごうと響き渡り、3重の分厚いガラス窓がビリビリ揺れるほどの大風でした。

目の前に広がる草地の上を風がわたるたびに、草が地面低くなぎ倒されて、白いケモノの群れが走っていくように見え。夜には雨は上がって、一瞬だけですが暗い雲のあいだに大きな月が沈んでいくのが見えて、なかなかものすごい景色でした。


 
「風の時代」にふさわしい幕開けだったってことで。いや本当にすごい風だった。

 日の出の前後にはいろいろな鳥がそれぞれ忙しそうにいろいろなお仕事をしているのが眺められました。

ファルコンかなにか、小さめの猛禽類が獲物を探して草の上をウロウロ飛び、かもめがそれにからもうとしている。ゴマ粒くらいに見えるちっちゃい鳥たちの一団が灌木から飛び立ってまた戻ってくる。遠くの波打ち際では、チドリたちの大団体さんが右往左往している。

目の前をいきなりカラスやかもめが横切っていくのにびっくりしたり。



すぐ近くの州立公園、コパリス・ビーチにも行ってきました。

前回、青年とこのビーチに来たのは2011年の2月。青年はまだ高校生だったのよねー。



おかげさまでそれから無事大学に入れてもらって無事卒業し…、2年間の就職活動をへて、自分のやりたい仕事に就くことができました。9年かーー。あっ、ちょっと涙でる。

ほんとに世界のすべてに感謝です。ベタでごめん。


 

ほんとに応援してくださったすべての人に、あらゆる存在に感謝。


高校の話のわかる先生や、話のわからない先生たち、シアトル市のマイノリティ家族の高校生を支援するプログラムのカウンセラー(この人のおかげで大学に入れたといっても過言でない)、愛情深いキリコちゃんやその家族、実の家族よりもよくしてくれたCTファミリーはじめ、信じられないほど優しく賢い友人たち、卒業後に出会ったいろいろなメンターたち。ほんとの話、みなさんのおかげで、この子はいま世の中で楽しく仕事ができてます。

なんか最終回みたいだな。いやいやまだ続きます。風の時代のシーズン2です。




まさかデザイナーになるとは夢にも思っていなかった。堅気のエンジニアになって欲しかったのよw。でも今本当に夢中で仕事をしているのを見ると、よかったねえってつくづく思う。先の保証なんて、何やってたってあるわけじゃないのだから。

靴のデザインや素材について、わたしには8割がたちんぷんかんぷんな話を熱くなってえんえんと語り続けるこの青年を見て、あんたはほんとに幸せだねって思います。

まあこれからも大変けわしい道が待っているでしょうけれども、わたしが25歳のときよりは間違いなくずっとしっかりしてるので、なんとかやっていくでしょう。願わくば世の役に立っていけるように、たくさんお返しをしていけるようにね。
 


ビーチはすぐ目の前なのに小さな川に隔てられているので、駐車場のトレイルヘッドから砂浜に出るまで2キロほど歩きます。

草の生えた砂丘のうえをうねうねと上り下りするコース。

前回9年前に来たときは、このコパリス・ビーチの波打ち際に、何百羽ものチドリたちがいたのでしたが。

 

 

今回は、カモメしかいなかった。


 

 

ときどき日がさして、砂丘ではいろいろな鳥が鳴いていて、風が爽やかなお散歩コースでした。



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2021/01/03

チドリの海辺


 

去年の暮れ、ちょうど冬至のころに、海岸に行ってきました。

うちのアパートで夜間下水工事のために、午後9時から水が流せなくなるというので。
午後9時って、完全に生活時間帯なのでトイレもキッチンも使えないのは無理。ならばいっそのこと広い景色でも見に行こうと。

 


以前にも行ったことのあるカジノ併設のホテル。

 

外は「ザ・荒涼」と呼ぶのがぴったりな浜辺です。

カジノはコロナのホットスポットなので、エレベーターなどの共有スペースを使うのにめちゃめちゃ気を使いました。
 

フロントもチェックイン&アウト以外は近寄らないようにして、あとは部屋にこもってそれぞれ仕事をしたり、すこし散歩をしたり。



この景色を見ながらだと、仕事がはかどるー?

いやいや、わたしはついぼーっと外を眺めてしまっていました。 

そうそう、木星と土星の大接近。
冬至の日は大嵐でなーんにも見えませんでしたが、翌日は日没直前、少しの時間だけ見られました。もうかなり距離が開いていて、ひとつの星には見えなかった。月もキレイでものすごかった。

 


 
前回の旅の反省から、湯沸かしケトル、コーヒー用のドリッパー一式、カップ持参。
つまらないことですが、お茶とコーヒー命なので、ケトルがあるとないとでは、生活の質がずいぶん違う。 

 


ホテルから波打ちぎわまで、野球場2個か3個ぶんくらいの距離があります。

 


前日の大風のためか、おもしろい風紋がたくさんできていました。




 ときどき四輪駆動の車が行き交う砂浜。

 


金属の彫刻のようなテクスチャ―だけど、砂です。とても重い、鉄分の多そうな砂。



砂の上の繊細な影がきれいでした。



チドリたち(たぶん「ミユビシギ」)。

波打ち際に数百羽の団体で右往左往していて、波が来ると波打ち際ギリギリで一列になってうわーーーっ集団で逃げてくる姿が、おかしくて仕方ない。

見飽きません。




3倍速でいきている。めっちゃ忙しい鳥ライフです。

一羽がびっくりして飛び立つと集団で舞い上がる。株式市場や仮想通貨の乱高下みたいねー。集団マインド。遠くからみている分にはとてもおもしろい。



 


 

 

うちのiPhoneでは寄った動画など撮れませんが、かわいい動画がYouTubeにあったのでこちらをご覧くださいませ。こんな感じ。かわいいよー。
この子たちはあちこちの日本の海岸にもいるのね。

 

 

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2021/01/01

雨の元日


あけましておめでとうございます。

2021年のお正月も、無事穏やかに迎えることができました。
すべて穏やかな年とはいかないかもしれないけれど、今年も日々たのしみつつ、過ごしてまいりましょう。どうぞよろしくお願いいたします。





今年はおせちを放棄。

友人たちはみな伊達巻焼いたり、お煮しめ作ったり、偉すぎる。みんなお仕事もプロフェッショナルで忙しいのになー。

しかも餅まで自宅で作るスーパーママPちゃんが、年末にお餅と日本から持ってかえってきたピカピカの新米、自家製梅干しなどのお宝をさしいれてくれました(涙)。うれしすぎる。

黒豆は、セントラルマーケットで買ったできあいのものです。

 


 焼くとまるでパンみたいにコロコロとふくらんで、かわいいったらないお餅たち。

 


お雑煮だけはなんとか作りました。水菜、かまぼこ、鶏肉、里芋。ゆずがないので、瓶入りゆず果汁。


午後は、薬注入のポンプを外してもらいにクリニックへ。いつもの医院がお休みなので、サウスレイクユニオンの大きな病院にて。ここはユニオン湖がみわたせて眺めがよい。しかし雨。

ほかが休みなので元日からけっこう混んでいて、「きょうは110人も患者さんが来てるのよ」と担当してくれた可愛い看護師さんが言ってました。休日返上の医療スタッフのかたには本当に感謝です。 

 


久しぶりに都会をみた感。ここ10年で激変したシアトル・サウスレイクユニオン地区、まだ建設中のビルがこんなにあるのねー。ほんとにすっかり見たことのないピカピカな街になっている。


 駐車場が1か月330ドルですかー。東京都心ほどではないにしても。

 


雨のフリーモント橋。

音をたてて降っているかなり本格的な雨のなか、ジョギングをしている人が何人もいた。

「あれはニューイヤー・レゾリューションだよ」と、うちの青年。
新年から走る!と決めたんだよきっと、と。

そういう本人も、年末に買った新しいシューズを試したくて、すこし小止みになった雨のなかを走りに行ってました。




 フリーモントのレーニンさんは、クリスマスの星を冠にしていました。

がっしり重厚で、なかなか良い彫刻だよね。

静かで穏やかで、なかなか良いお正月でした。
良い年にいたしましょう。

 

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