ごぞんじのとおり、今日はこの国の首都の議事堂にトランプ支持者たちが乱入して、新大統領の確定中だった議会が途中で中断して議員が避難し、議事堂が閉鎖され…という流れになっています。
観光客のように記念撮影をするトランプ支持者たち……。
窓を割って飛び込む「プロテスター」。
この夏、ポートランドでプロテスターたちが連邦ビルの前を占拠したときは「連邦の建物を破壊する奴らは最低10年は牢屋に入れろ!」とツイートしていた大統領は、今日はこの「プロテスター」たちに
「盗まれた不正な選挙に怒っている気持ちはわかる。でもいまは家に帰りなさい。愛してるよ。きみたちはスペシャルなピープルだ。反対側のやつらはとっても悪いやつらだ。気持ちはわかる。でも家に帰りなさい」
とビデオメッセージを送ってます。これが状況を落ち着かせるための 精一杯のメッセージなんだ。「あいつらは悪い。俺らは正しい。でも今は帰れ」というのがメッセージ。
で、このメッセージはTwitterからリツイートも「いいね」も出来ないようにフラグが立てられてます。
(追記:その後、「ワシントンDCの暴力的な状況を鑑み」てトランプのツイート3件が削除され、大統領のアカウントが12時間凍結されました!)
今日はちょうど、ミッチ・マコーネルが、ようやくようやく、トランプの「不正選挙だ」という主張を「陰謀論」だとはっきり退けて、「選挙の結果をひっくり返せという大統領の要請には何の根拠もない。選挙結果を覆せば割我々が敬意をもって共有している基本的なルールに背くことになり、この国の根幹が崩れる。
民主主義が墜落することになる」と明言したスピーチ(こちら)を聞いていたその直後に、「プロテスター」が議事堂に乱入したというニュースを聞いて、午後中ニュースをえんえん見続けてしまいました。
乱入したトランプ支持者の先鋒たち。この水牛の角つけたすっとんきょうないでたちの人はあちこちのデモで目立っている有名なQアノンの人だそうです。
宴会の客みたいにどやどや入ってくる「プロテスター」たち。
これがBLMのプロテスターだったら「全員撃たれて死んでるよ」とうちの青年。
という声はツイッターでもとても多かった。
ツイッターより。
記念に議事堂の備品を持ち帰ろうとするプロテスター、いや、ルーター。
南軍の旗(歴史的に南部の白人至上主義の象徴とみなされています)をかついで議事堂を歩くトランプ支持者。
DCでは夜間外出禁止令が発布され、ナショナルガード(州兵)が展開してます。
この騒乱を「民主主義の危機」だと言う人もいるけれど、いやいやもうそれはずっと前から始まっていたんですから。
トランプは今日のDCの集会で「議会へ向かうのだ!力を見せなければならない」と煽っていたし、その前から「6日には大きなことがあるぜ!DCで会おう!」と支持者を焚きつけていたし、SNSで極右が議会に銃を持ち込む企画をオープンに語っていたし。
今日の結果は、かなりの人が予想していたと思う。
ただ、目の当たりにするとやはり衝撃ですが。
国のトップであるはずのトランプさんがウソを大真面目に語り始め、そのウソを売り値で買う人が続出していた時点で、民主主義の危機というか、劣化は始まってたんです。
ジョー・バイデンは今日のビデオメッセージで「民主主義はフラジャイルな(壊れやすい)ものだ」と言ってました。それは本当にそのとおりだと思います。みんなそれを感じてるはず。
でもまだ、少なくとも、ミッチ・マコーネルの言う「shared respect of ground rules(皆が敬意を払う共通のルール)」は、生きている。
国のすくなくとも半分以上の人は、その共通のルールを信じている(と思いたい)。
この国はすくなくとも法も政府も銀行も機能しているし、大統領といえどもロシアや北朝鮮や中国のように勝手な真似はできない。いまのところ。
このごろ、世界がカオスの第二次大戦に突入していった1930年代が脳裏にちらついています。人びとが疲れ果てて考えるのをやめたら、あっという間に変な流れに呑まれる。そんな変な強い潮流が生まれつつあるのは、たしかに感じます。
でも、まだまだ時間はあるし、民主主義のルールである「共通の基盤」と信頼を築きなおすことはぜんぜん可能なだけのリソースがたっぷり、この国にはあるとわたしは思います。
日本の様子はあんまりよくわからないけれど、むしろ日本のほうがちょっと元気なさすぎて心配。リソースというのはつまり、人の力だから。
騒乱のあいだにジョージア州では上院2席に民主党の議員が当確になったようです。
とりあえず嬉しい。
今日の騒乱は、民主主義の終わりのはじまりでも内戦のはじまりでもなくて、トランプ時代の終わりだと思いますよ。