2011/08/12

エイリアンたち

ホノルルの公園にて。
Octopus Tree (オクトパス・ツリー)に、桜文鳥が来て、蕾(だか、実だか)をついばんでいました。
オクトパス・ツリーは、He'e (ヘエ、「蛸」のこと)というハワイ名がついているけれど、オーストラリア原産の外来種で、ハワイの『Most Invasive Horticultural Plants』(最も侵略的な園芸種)にリストされている。(これがまた、驚くほど長いリストなのです)



オクトパス・ツリー、たこの木は、ハワイ州のサイトで「Extremely invasive, one of Hawaii's worst weed trees.(きわめて侵略的な、ハワイにおいて最もたちの悪い木のひとつ)」と名指しされています。

この木がどのくらい「invasive」なのか、文字通り絵に描いたようにわかる場所があります。

ハワイアンの聖地を通ることなどで反対が起きて、工事が長引き、1997年にやっと開通した新しい高速道路、「H-3」です。(ハワイにも連邦政府の予算で作られた高速道路があって、どこの州ともつながっていないけれど「インターステート」。「I」の代わりに「H」が冠せられてます)

H-3はカネオヘとパールハーバーを結ぶ道路で、コオラウ山脈に穴をあけたトンネルを通って、パールハーバーの方向に開いた長く細い谷を下っていきます。

この谷に、今でも守られているハワイアンの聖地があるのだけれど、この谷の奥の方、道路が出来るまでほとんど人目に触れることのなかったコウラウ山脈の東側のあたりは、本当にはっとするほど静かで澄み切った印象を受けます。

ほとんど外との接触がなかったおかげで、この谷には、オアフ島では例外的に原生種のKoa (コア)やOhia(オヒア)の木ばかりが山腹に茂っているため、ほかの場所と山の色合いが全然違うのです。

若葉が銀白色に近いコアの葉の柔らかい緑の濃淡と、オヒアの木の銀色の幹、その枝にたまにちらちらと咲いている真紅のレフアの花という色彩が、日本の広葉樹林に近い色彩で、谷に入っていくたびに清々しい印象を受けます。道路は山腹にあいたトンネルに向かって上り勾配の高架になっているので、ちょうど木々の梢のあたりが見渡せるのです。

パールハーバーの方からカネオヘに向かうと、谷の奥に進むにつれて外来種の花の赤やオレンジの派手な色が減って行き、トンネルの近くではため息のでるようなコアとオヒアの原生林に変わります。

そうしてトンネルを出ると、反対側の山腹は、このオクトパス・ツリーで文字通りびっしり覆われていて、その間にアフリカン・チューリップの朱色の花が点々と目につく光景。衝撃的です。

カネオヘ側からパールハーバーに下るときも、トンネルのそばの原生林から下って行き、市街地が近くなるにつれてどんどんとオクトパス・ツリーの数が増え、あっという間にコアやオヒアが消滅。まるで、外来種や外来人に「侵略」しつくされたハワイの歴史を早送りで見るような気持ちにさせられる車窓です。


桜文鳥も、この木と同じく、観賞用にハワイに持ち込まれて野生化してしまった「alien (エイリアン、外来種)」のひとつ。
文鳥やウグイスは、日系人が飼っていたのが野生化したのだろうといいます。
かなり前のことですが、カピオラニ公園の近くで餌付けしている人がいて、百羽近い桜文鳥が集まっているのを見たことがあります。さすがにそれだけ「野良文鳥」が集まると、もう可愛くなくて、なんだか悪いものを見てしまった気持ちになりました。

 どちらも目には可愛らしい鳥と花なのだけれど、ハワイの島々にとっては侵略的エイリアン。
 そしてこうやって実を食べに来た鳥がまた、島中に種をばらまいて行きます。
もうここまで侵略が進んでしまうと、すべて取り除くのはほとんど不可能。あの静かな原生林の谷も蛸の木に侵略しつくされてしまうのは時間の問題なのだろうと思うと、残念でなりません。

2 件のコメント:

  1. 外から侵略された歴史を持つ土地は、固有の自然がなくなりつつあって悲しいですね・・・。静かな原生林、なくなるまえに見てみたいです。
    大学で環境マネジメントを勉強していたとき、環境保護の一つとして、「外来種の駆除」というテーマがあり、動物の場合はどうやって殺すか、みたいなことを勉強して、複雑な気持ちになったことを思い出しました。
    そういえば、子どもの頃、タンポポは、ほとんどが西洋タンポポに侵略されたと理科で習って、日本固有のタンポポを必死になって探したことがありましたが、今でもまだ残ってるのか、気になりました。

    返信削除
  2. ZIZIさん、島の環境はとくに繊細みたいですね。
    オーストラリアは、外来種が入って来ないように空港などでの検査が非常に厳しいと聞いたことがありますが、そのオーストラリアの植物が別の土地では侵略植物になっているって、皮肉というか。
    動物の駆除もこれまた難しいようですね。ハワイでは外来のマングースが増えて困っているのですが、これももともとネズミ駆除のために輸入されたものだと聞いたことがあります。
    日本タンポポ、わたしも見たことありません!植物園にしか残っていないとしたら残念ですね。

    返信削除