2011/01/04

タコマ山


快晴の元旦、レーニア山麓へ。山はホイップしたてのクリームのようでした。

レーニア山はシアトルの南90km くらいだから、東京から富士山の距離(約100キロ)とそんなに変わらないのに、標高が高いからか(レーニア山は4392m)、シアトルから見るこの山は、東京からの富士山よりももっとずーーっと大きく見えます。

とはいっても、シアトルは曇天の日が多いので、山が見える日はむしろ稀。
あまり稀なのでほとんど存在を忘れてしまいかけているところへ、珍しくパキっと晴れた日、青空を背景に巨大な白い山の姿が突然ビルの後ろに出現するので、見るたび感動するのです。

この山にMt. Rainier という名前はなじまないと思います。

もう百年以上そう呼ばれているのはわかっているけど、できることなら今からでも変えてほしい、と思う人、わたしだけなのでしょうか。

レーニアさんというのは、この辺を18世紀末最初に探検した英国人船長バンクーバーさん(この人もいろんなところに名前を残しています)の友人だった英国海軍将校の名前です。

辺境に「発見」した雄大な山に、バンクーバー船長は自分の友人の名を冠しちゃったのです。

当時の大英帝国海軍船長にとってはまったく疑いもなく正当な行いだったのでしょうが、縁もゆかりもない人の名前を勝手につけちゃうなんて、山にとっては失礼千万なこと、この上ない。

当時レーニアさんは東インド諸島の司令官をしていて、その後まもなく本国へ帰って亡くなっているから、自分の名前のついた山を見ることはついになかったのだと思われます。

もちろんこの山には白人が来るずっと昔から別の名前がありました。
この地の人びとは「mother of waters」を意味する「Tahoma」という名でこの山を呼んでいたといいます(「偉大な白い山」という意味だという説も)。


もっと後から来た日系の移民は、もちろん「タコマ富士」と呼びました。日本人なら、この山を見てまず間違いなく、あー富士山だ、と思うでしょう。

私も、最初にシアトルに来たとき、飛行機の窓から朝日を浴びたこの山を見て、あっ富士山がある!と思ったのでした。富士山があるところなら大丈夫だな、と、なにが大丈夫なのか意味不明ながら、ひと安心した気がします。



ハワイでは、一部をのぞいて地名はすべて古来のハワイ語の名前が保存されています。
土地と、その場所にまつわるスピリチュアルな存在に対するネイティブ・ハワイアンの思いは今でも血の通ったものとして受け継がれています。

先住のハワイアンの血をひいていない住民たちも、ハワイ語の土地の名前を自分たちの文化として尊重しています。

デベロッパーが新しい住宅街を作るときも、道の名前はすべてハワイ語で新しくつけられます。

そんな土地と名前との関わりに馴染んでいたから、こんなに雄大な山に、土地に縁もゆかりない白人がそのまま冠されているというのが、ものすごく無神経なこととに感じられます。

もちろん先住民たちにしてみれば不本意なことでしょうけれど、ハワイとは違い圧倒的な白人社会の中で、抗議の声がまとまることなどないまま、19世紀から20世紀初頭にかけていろいろな土地の名前が定着していったのでしょう。(ウィキペディアの記事によれば、最後にレーニア山の名前をタコマ山にするかレーニア山にするかが議題にのぼったのは、1920年代のことだったそうです)。



そういえば、日本に帰ったときに「Mt. Rainier」という名前のコーヒー飲料をコンビニでみつけてびっくりしました。

スタバ風のパッケージにレーニア山の絵がついてる缶コーヒー。日本の広告屋さんが作った「シアトル風」ブランドなんですね。こっちで売ったら意外にお土産として喜ばれるかもしれません。

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2011/01/02

ニューイヤーの花火

あけましておめでとうございます!
2011年が平和で実りの多い年になりますように。

前年は日本で年越しをしたので、今度がシアトルで過ごす、初めてのニューイヤー。
真夜中近くになって思い立って、息子と二人でアルカイ・ビーチの近くへ、スペースニードルの花火を見に行った。

湾のむこうにダウンタウンのビルとスペースニードルの見えるビューポイントはどこも大混雑で、もちろん駐車スペースなどあるわけがなく、渋滞で動かないのをいいことに消火栓の前に停めて車の中から花火を見物した。写真は息子が道を渡って公園で撮影。クレジットはこちら。


スペースニードルの後ろで花火があがるのかと思っていたら、スペースニードルから花火が吹き出してきて感動した。タワーの胴部分から横向きに赤い小さな火が一列に並んで出て来るところなんか宇宙ロケットのようで素敵だった。花火は10分くらいで終了。

アメリカの花火は、独立記念日と大晦日のもの。家庭で花火ができるのは7月4日と大晦日の数時間だけで、自治体によってやって良い花火の種類や時間が細かく決められている。
花火売り出しの期間も数日間だけ。こちらでは、規制のないインディアン居留地に花火スタンドがたくさん出るようだ。
シアトル市内では花火は全面禁止で、ホノルルに比べたら驚くほど静かな年の瀬だった。どちらにしても本土では独立記念日のほうが花火的には大きな祝日のようで、年末に花火が集中するハワイとはかなり違う。

ハワイの人の花火好きは尋常ではなく、毎年独立記念日と大晦日は大変なことになる。
とくに大晦日。
爆竹を何千発も吊るして壮大な音をたてるのが伝統なので(ええ、民家の軒先ではしごを出して)、住宅街には音と煙が充満して、爆竹や花火のかすが道に散らばり、市街戦のような景色になる。
気管支をいためる人も出るし、毎年のように、だれかが火傷したり、指をなくしたり、家が焼けたりというような惨事がニュースになる。

年の瀬のご近所爆竹パーティにうんざりしている人は少なくないようで、ホノルル市では昨年、今年から花火も爆竹も全面禁止にする議案が提出された。花火と爆竹に毎年何千ドルものお金と情熱を費やす市民があれだけいるのに、そんなものがすんなり通るわけない。結局「爆竹はひとりにつき5000発まで購入可」という法案になって可決されたようです。あんまり変わらないと思うんだけどー?

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2010/12/29

コーヒー・シティ


シアトルはCaffeinated City、カフェイン漬けの街、ときいてはいたけど、じっさい引っ越してみて、カフェの多さには本当にたまげた。シアトル市内のカフェの数は、クリーニング屋と歯医者と花屋を足したよりも多い、たぶん。同じ町内にこんなにたくさんあって、よくつぶれないものだと思う。カフェに何か特別の補助金でも出てるのかと思ってしまうくらい多い。

ホノルルにも素敵なインディペンデントなカフェがないではなかったが、地元資本のカフェは人口80万人のオアフ島全域あわせても、せいぜい10軒あまりだった。
シアトルでは、バラード町内(人口4万人強)だけでも、地元カフェの数が軽く10軒を超える。その上に全国チェーンのスタバやTully's もあるし、スーパーマーケット内にもカフェがある。

そうしてカフェの客にも経営者にも、シリアスなコーヒー通が多いのにも驚く。

コーヒー的に私が一番好きなのは、市内に3店舗、日本にも支店を出してるZOKA

ここのグリーンレイク店では、この秋、コーヒーのテイスティングをやっていた(写真は9月)。
たまたま行った時にやってたのでまぜてもらったのだけど、このときには同じエチオピアの豆を、1)水道水、2)濾過した水、の2種類で、水温を変えてドリップでいれたコーヒーのテイスティングをしていた。うーん、正直よくわかりませんでした〜…。
 
ZOKAのようなロースター直営のカフェもたくさんある。ロースターでないカフェも、ほぼ例外なく、シアトル地元ロースターのどれかから豆を仕入れている。



シアトルいち有名なカフェはここ。パイクマーケットのスターバックス1号店。
1971年に創業した本当の1号店はここじゃなくて、もう1ブロック先にあって、5年後に今のここに移転したとのこと。でもとにかくここが「ファースト・スターバックス」ということになっていて、いつも観光客が店の前で記念撮影し、狭い店内に行列をつくっている。


店の前にはかならず街角ミュージシャンが入れ替わりたちかわり、自主的に音楽を提供していらっしゃる。


 以前はこの店でしか買えない「パイクマーケット・ブレンド」がノベルティだったのだが、去年くらいから全世界で売り出してるようですね。


店内はほんとに狭くて、椅子もないカウンターのみ。


イタリアにもついにスタバが上陸するそうですねえ…。どんなメニューを出すのか。意外に「フラペチーノ」とかがイタリアのワカモノ達に受けて、年配者を嘆かせたりするのかもしれない。

わたしは、去年の暮れに浅草のスタバで飲んでみたら意外においしかった 「ほうじ茶ラテ」を、ぜひこちらでも売り出してほしい。アメリカでも「緑茶」が定着してきたから(砂糖入りのね)、いけると思うよー。

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2010/12/27

ジョージタウン

シアトル市の南端に近いあたりにある George Town。初めてここを車で通ったときはびっくりした。



シアトルのダウンタウンよりも南側は工場や倉庫が並ぶ殺風景な軽工業地帯なのだが、そこにとつぜん、赤レンガの建物群が現れる。高速道路の高架に近い、ほんの数区画なんだけど、そこだけ別の時代から来た建物がひとかたまりあり、そこにどれもこれもアクの強そうな店が入居していて、ただごとでない空気をかもしだしている。


ここは19世紀半ばから入植が始まった、シアトルでも一番古い町だという。
幹線道路沿いのこの建物は、19世紀のビール工場倉庫跡。さいきん取り壊されて、表の壁だけが残っている。夏には音楽や演劇のイベントをやったりもするらしい。


ビニール盤専門のレコード店、小さな出版社兼書店、楽器店、パブ、カフェなどが数軒寄り集まって、ボヘミアーンな雰囲気の一角を作り出している。


 1990年代後半になって、赤レンガ倉庫の広いスペースを発見したアーティストが集まりはじめ、スタジオを構えたりするようになった。




 愛するカフェ、All City Coffee。


Wi-fi は無制限使い放題。近所のアーティスト風や大学の先生風の人がラップトップや分厚い本を開いている。


気取らないシンプルな内装で、適度にくたびれた70年代風の椅子やランプが落ち着く。
バリスタ君の趣味なのか、夕方行くとSharon Jonesがよくかかってる。迫力の70年代風ソウル。この店のビニールばりの70年代風椅子に座ってシャロン・ジョーンズの歌を聴いていると、頭がくらっとして、一瞬、ここはどこ?と思ってしまう。空気が一瞬濃くなって、表のドアを開けて派手な花柄プリントにつけまつげのサイケデリック女子が入ってきそう。

 ここで初めて聴いたんだけど、70年代のレコードだとばっかり思っていたら、21世紀のバンドだった。 単なる真似じゃなくて、リバイバル。「ホンモノ」よりも洗練されていて、イキイキと、あり得ない空気を運んできてくれる。これほどこの店に似合う音楽はないよ。バリスタくんGJ!



この間は、ローカルアーティストの「可愛くないおもちゃ」展をやっていた。渋谷の女子高生にキモかわいい〜とか言われそうな人形たちとか。

 このすぐ南にはボーイングの試験飛行場があるので、次々に飛行機が通る。頭の上をボーイング最新型機がすれすれに飛んでいったりもする。愛すべき変な町。


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2010/12/24

雪山列車とクリスマスツリー



Macy's のショウウインドウのクリスマス飾りは毎年お決まりの、クラシックな 雪山列車。雪山のてっぺんに昇り降りするロープウェイもついている。かなりの年代ものと思われる。大人たちにはノスタルジーをかきたてられるディスプレイ。


小さなこどもたちにとっては、ぐるぐる回る列車がいつまで見ていても飽きないエンターテイメント。

シアトルは、雨のクリスマスイブになった。

シアトルの象徴、スペースニードルの上にも小さなクリスマスツリーが載ってます。


皆様にとっても素敵なクリスマス&新年でありますように。

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2010/12/23

ジンジャーブレッドハウス




クリスマスになると、食料品店やスーパーに「ジンジャーブレッドハウス」のキットが売り出される。

ジンジャーブレッドで壁や屋根を作り、キャンディやアイシングで飾り付けて楽しむモノで、食品売り場にあって食品を使って作るのだけど、食べるものでは、ないらしい。

Ballard の住宅街にあるこのおうちは、毎年自宅をそのジンジャーブレッドハウスに飾りつけ。築80年くらいの煉瓦作りの家が、ほんとにお菓子の家みたい。


毎年、少しずつグレードアップしていくようです。これだけの飾りを仕舞っておくのもけっこう大変でしょうね。

感謝祭が終わると、ガレージからはしごを取り出して屋根に電飾を設置する光景があちこちで見られる。ここの家のはわりと若い奥さんが一人ではしごに乗ってディスプレイを設置していました。

 シアトルはお店の飾りつけよりも、むしろ住宅街のほうが派手で凝ってるとこが多い。
日本のようにクリスマスが終わったらすぐ片付けて門松を出す、ということはなく、ツリーも新年明けて3日くらいまで飾っておく家が多い。年明けまで、町中でキラキラが楽しめる。


2010/12/21

沈んだ町の湖 



不思議な湖に連れていってもらった。

シアトルからは車で30〜40分くらいのところにある、Rattlesnake lake。


湖岸や水の中に、日にさらされて色あせた大木の切り株がてんてんと並んでいる。


昔、この湖の周りには小さな町があった。発電のために近くにダムを建設したところ、ダムの貯水池の地盤から水が漏れだして、この湖の水位がどんどん上がって、ひと夏で町がなくなってしまった。
History Link に当時(1915年)の写真が載っている。屋根まで水に浸かった家々。
その10年くらい前に、近くに鉄道が敷かれるのと同時にできた、新しい町だったらしい。建てたばかりのマイホームだったのね(涙)。


シュールな風景の中、犬のお散歩に来る人が多い。




切り株から新しい枝が出て、なんともいえない形の木になっているのもある。
なにかスピリチュアルな感じのする場所。


湖の水位は季節や雨量によって大変変わるのだそうだ。
夏にはボートを車で持ってきて魚釣りをする人もいるそうだけど、びゅうびゅう寒風の吹く12月の夕方には誰も湖上にはいなかった。