2019/01/06

グループセラピー、バベルの図書館@フライ美術館


シアトルのファーストヒルにあるフライ美術館に行って来ました。久しぶり。4年ぶりくらいか。



グループ・セラピー』という展覧会が開催中でした。(1月6日まで)

ものすごい量の情報が交錯し、フェイクニュースの物語ごとに陣営にわかれて相互のコミュニケーションが成り立たなくなってしまったようにみえるこの時代に、癒やしとコミュニケーションの可能性を模索する。
…といった内容の作品をあつめた、なかなかおもしろい展示でした。


Shana Moultonというカリフォルニアの女性アーティストの、プロジェクションを使った作品が面白かった。


ダリっぽい地平に並べられている、いかにもニューエイジっぽいグッズたち。壁につぎつぎと映し出されるマンガっぽい人体の一部。

My Life as an INFJ というタイトルは、マイヤーズ・ブリッグズ の16種類のパーソナリティタイプを示してます。

(ちなみにわたしはINTP。20年位まえにホノルルのカレッジで心理学の講座をとったときにこれをクラスでやって、その当時、まもなく別居する運命であった旦那がまるっきり正反対のESFJだったので、ああなるほど…と思ったのでした。)

もう一方の壁には別のビデオ作品『Whispering Pines』。これもいかにもカリフォルニアチックなニューエイジ/スピリチュアルな傾向に惹かれながら現代生活をおくる白人女性を自演していて、皮肉なのだけど意地悪ではなく、スピリチュアリティに対する希求の切実さがコミカルに描かれてるけど切ない。


もうかれこれ10年ほども続けているシリーズのようです。


この悪意のない皮肉、どうしようもないおかしさと切実さが、わたしはとても好き。
まあその解釈が合ってるかどうかは、わかりませんが。


Lauryn Youdenというカナダ生まれ、ベルリン在住アーティストの作品『A Place to Retreat When I am Sick (of You) 』
黒い砂を敷き詰めた、瞑想のループ。ざぶとんとヘッドフォンがいくつかおいてあり、それぞれいろんなバイノーラル・ビートが聞こえる。



一番おもしろかったのは、Marcos Lutyensという英国人アーティスト(ロサンゼルス在住)の『Library of Babel, a Symbiont Induction』。

薄暗い小部屋のなかに腐葉土が敷き詰められ、クッションとヘッドフォンがいくつかおいてある。中心のガラスケースのなかには、きのこ(霊芝)が生えた螺旋階段を中心としたテラリウム。壁には幾何学もようのタイル(菌糸体を素材とした防音タイルだそうです)が貼られている。

ボルヘスの短編『バベルの図書館』を下敷きにした作品で、ヘッドフォンからはアーティスト自身の声で録音した、きのこの世界にわけいっていくようすをブツブツ呟く催眠術的なモノローグがきこえる(なかなか気持ち良い)。

『バベルの図書館』は 、上にも下にも永遠に螺旋状につながっている六角形の図書室だけでできている世界のなかで生きている図書館司書のモノローグという体裁をとった短編です。

この短編の英語訳を一生懸命読んだのだけど、とにかく単語やイメージが難解で、わたくしには完全に理解なんかできませんでした。

しかし、言葉と幾何学から成る陰鬱な永遠の図書館世界と、その書物に書かれた謎を解き明かそうとして永遠の中の短い生涯を費やすひとびとのイメージは強烈です。

松岡正剛さんのサイトに、この短編の一部が紹介されてるのを発見しました。

(ここから)
その図書館は、その中心が任意の六角形であって、その円周は到達不可能な球体なのである。  そこでは、五つの書棚が六角の各壁にふりあてられて、書棚のひとつひとつに同じ体裁の32冊ずつの本がおさまっている。それぞれの1冊は410ページから成っている。各ページは40行、各行は約80文字で綴られる。  この図書館は永遠をこえて存在しつづける。なぜならば、そこにはたえず有機的な文字をもった書物が一冊ずつ加えられつづけるからである。  しかし、どの一冊をとっても、その一冊が他の全冊と関係をもたないということはない。たとえば私の父が図書館の1594号回路で見かけた一冊は、第1行から最終行までMとCとVの文字が反復されるがごとく並んでいた。しかしそれが意味がないと、いったい誰が決められるだろうか。その一冊は、少なくともそのような配列をもつことによって迷路になりえているのである。
(ここまで)

この展示は、バベルの図書館に収められている、意味のわからない暗号でいっぱいの書籍を、たがいに言葉ではない方法でコミュニケートしあう菌、またはその菌糸のあいだにある情報におきかえて、有機的な空間を作り出しています。

きのこたちにはわたしは昔から異常に親近感を感じているので、これはめっちゃ面白かった。だってきのこってとても妙な方法で互いに信号を送り合って共生している、ヘンないきものではないですか。



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2019/01/03

スタンプタウン、万引き家族、ミスター・ロボット、SATC


先月半ば、病院をプチ脱走して行ったスタンプタウン。

ここのコーヒー、すっげーうめーまじ感動!と思うときもあるのだけれど、この日はわざわざバカ高いポアオーバーを絶賛就活中の息子がなけなしのおさいふをはたいて買ってくれたのに、なにをどう間違えたのか香りもコクもないドロミズのような珈琲だったので、アメリカーノに替えてもらった。それでも格別においしくなくて、ちょっとがっくりでした。

つくる人の気合ひとつで、なんでも大きく変わることがあるのね。不思議なほど違う。

ところで、お腹を切ってもらったりするほかに、12月は重要な映画を2本みてきました。




 『ボヘミアン・ラプソディ』
 (ブライアン・メイとロジャー役が超そっくりで、びびった。)

と、

 

『万引き家族』です。

どっちもめちゃめちゃえがった。どちらももうあと2回くらい観たい。

これはいままでみた是枝監督の映画の中で一番好きだ。

 『歩いても歩いても』や『誰も知らない』の絶望もザクザクと心に刺さったけど、あえてこの情けない人々のありえない優しさをリアルに情けなく描く、あまりにも心優しい是枝監督。


たぶんありえない、だから破綻しているこの優しさがもうどうしようもなく胸に痛い。

情けない男をやらせたら宇宙一のリリー・フランキー、そして安藤サクラさんというはじめて見た女優さんすごい。


鬼女と優しいおばばの顔をもつ樹木希林さん。
子役もすごい。

どちらも、ものすごくよくできたファンタジー映画だと思いますよ。

ところで『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ役をやったラミ・マレック君がハッカーを演じている『Mr.ロボット』をCTちゃんにすすめられて観始めたら、これがめちゃ面白くてどはまり中です。



とてもフレディと同一人物とはおもえない。このドラマでは、穴から引っ張り出されて目をパチパチさせている動物みたいなかんじの、社会性を持てない天才ハッカーくんを演じてます。

それからなぜか今、『セックス・アンド・ザ・シティ』もビンジ中。現在シーズン4で、2001年の7月に放映されたあたりを観ているところ。




シーズン1は1998年放映だったのね!20年前だよ!

イントロにワールド・トレード・センターが出てくるのがなんともいえない。
2001年の8月から翌年1月まで、放映を中断していた時期があったのね。いまそのへんを観ているところです。ドキドキ。

20年前のテレビシリーズなのに、登場するテクノロジーをのぞいてはあまり時代的に隔絶した感じを受けないのはわたしが年取ったからなのか。セックスとか収入についての男女間のダイナミクスとか、LGBTとか結婚観とか既婚女子VS独身女子とか、独身で子どもを持つことのジレンマとか、それほど変わってないじゃんと思うんだけど。これが1960年と1980年だったら、または1970年と1990年だったら、かなり大きく違ってたと思うのですよ。



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2019/01/02

今年のお雑煮とおせち


あけましておめでとうございます。

今年も、平和に明けていきました。

お元日はスーパーママ・Yさんちでのおせち大会。
おかげで今年も素敵なおせちをいただけました。

わたくしはぶり照り(焼いた)とスモークサーモン(買った)、前日と前々日に作ったごぼうと黒豆で参戦。

黒豆は、(ΦωΦ)ママNさんにいただいた立派な丹波の黒豆。ぜってー自分じゃ買わない高級品。
重曹を使わず地道に煮る白ごはん.comレシピでやってみたけどやっぱ硬かった無念。火加減か、ひたし時間が足りなかったかなー。
おまめそのものがとてもおいしいので、硬いなりにおいしいかったですが。昔、おばあちゃんがアルミのなべでことことと煮ていた小さな黒豆はこのくらい硬かった気がする。

伊達巻は、Yさんのお手製ですよ! 煮物もきんとんもなんと美しいことか。
13家族〜くらいが集まって持ち寄り、できあがったビューティフルおせちです。


朝のお雑煮。 小松菜はないので水菜。


舞踏家薫氏作の、博多式豪華お雑煮。イズミダイとあご風魚だし、クレソン入りです。超うま。


この日3杯目のお雑煮。K家のホープ、板前Mくんの、新潟風お雑煮。かつおだしに大根としいたけ、鮭でこっくりうまみたっぷり。こちらもイクラのせの豪華版で超うまうま。

もう無理無理とおもいながらするすると食べられてしまいました。これを幸せといわずしてなんというのだ。

たらふく食べるのに忙しく、K家のかわいこちゃん(ΦωΦ)の写真を取り忘れた無念。

今年ものっけからがつんとインスパイアしてくれる、強くてマメで心やさしい素敵なみなさんに心から感謝。いろいろほんとうにありがとう。



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2018/12/30

シアトルの聖イグナチオ礼拝堂


シアトル大学のキャンパス内にある聖イグナチオ礼拝堂(それとも、英語式に「聖イグナシアス」というほうが正しいのかな?)。

英語で「unassuming」という形容があります。

「控えめな」と訳されることが多いけど、「自分はこれこれである」とあえて激しく主張しないというようなニュアンス。

このチャペルの外見はまさにそんな、アンアスーミングなたたずまい。キャンパスのなかで特別に存在を主張していません。



でもオーガニックな明り取りのある正面扉や、広いリフレクションプールなどの造作が、ただものではなさをかもしだしています。


カトリック教会だけれど、「ZEN」的な東洋の静かさを感じるリフレクションプール。

1回めの入院中にプチ脱走して近所をプチ放浪中、たまたま前を通ったので中を拝見させていただきました。


アンアスーミングな外見とはうらはらに、あまりにも美しい内部の空間に度肝を抜かれました。

エントランスホールの壁にリフレクションプールから反射されるこの光の美しいこと。
細い十字架の繊細さ。

建物全体に緻密に自然光がとりいれられていて、複雑でオーガニックな角度の天井や壁と、そのテクスチャといっしょになって、ほんとうに繊細な、ため息がでるような空間がつくられています。

ところどころに青や緑のカラーが使われているのも素敵。抽象的なステンドグラスといっていいのかもしれません。


設計はスティーヴン・ホールさん。
そういえばCTちゃんからここの教会は有名なんだよって、ずいぶん前に聞いてたのだった。
1998年にこの礼拝堂で米国建築協会の賞を受賞してるそうです。


礼拝堂のサイトより。建築家によるコンセプト画。

「石の箱のなかにおさめられた7つの光の瓶」をイメージしているそうで、不規則な形の屋根が東西南北それぞれ異なる個性を持つ光を礼拝堂のなかに招き入れ、教会がもつ異なる機能(ミサの進行、コミュニティへの貢献など)にそれぞれ関連づけられている、のだそうです。

教会の機能と光の個性というのはちょっとすぐにピンとこないけれど、この繊細で柔らかな自然光のつくる空間は、とても説得力があります。


一方の端にはこぢんまりとした親密な祈りのスペースがあります。


まったく魅力が伝わらないひどい写真でございますが、ほんものはずっと良いです。
ずっといたくなるような素敵な場所でした。



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2018/12/29

言葉が思考に影響するプロセス


NOTEに、先月デジタルクリエイターズに寄稿した内容にすこし加筆して分割したのを載せました。ウェブだと長いので、6回にわけました。1回めはこちら。

年末年始にお暇がありましたら、ご笑覧いただければうれしいです。

こちらのビジュアルはカリフォルニア在住の東村禄子氏の作品です。



かっこいいですね。ほんとこの人才能あるのよ。




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2018/12/28

今年のクリスマス



今年は、文字通り寝ているあいだにクリスマスがやってきてしまったので、息子へのプレゼントも用意する時間がなかった。それなのにクリスマスの朝、うちにプレゼントを持っておしかけてきてくれたM家のひとびと(涙)。

ユーカリの葉とネコヤナギで飾ったオサレなプレゼントをたくさんもらった。



クリスマスディナーはまた近所にかえってきたCTファミリーの家に、おしかける。

CT3号!数年ぶりの対面で、兄弟だったはずのうちの息子に吠えまくり。忘れてしまったわけじゃなくて、「お前いったいいままでどこにいたんや」と文句をいっていたのだとみんなで解釈。


DWELLマガジンにでてきそうなオサレリビングでオサレディナーを。
蟹〜〜!
そしてブラックライスとビーツのサラダ。


わたしのコントリビューションは何の脈絡もなく大根と油あげの煮物。


デザートも代官山のビストロのような美しいスイーツ盛り合わせ。



ペパーミントキャンディにアイスクリーム、CTちゃん自作のホワイトチョコの雪の結晶でした。ビューティフルでござる。なんでみんなこんなにマメなの!

頼れる面白い友人と家族がいておいしいものがたんまりあって、幸せすぎる年の暮れなり。


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おいしい病院食


入院中のごはんなど。

おいしかったシリーズ、鮭のグリル。
持参のお醤油またはシーソルトを足すとさらに上等に。


鮭は3回くらい食べちゃった。この右にあるエンゼルフードケーキはしかし、匂いをかいだだけで血糖値が急上昇しそうなほど甘くて、ひとくちで断念。あまりにも砂糖の量が多すぎるよ。


ポテトクラストつきベークドコッド、というのもおいしかったです。
つけあわせのグリーンビーンズは、不思議なことに注文するたびに仕上がりが違う。この日はにんにく炒めで、ほかの日のはただゆでただけのがでてきた。


フィットチーネのマリナーラソース。チーズがいっぱいのっていた。チキンのローストもおいしかったです。手術後、食欲がもりもりでした。


そしてKちゃんが焼いてもってきてくれた、スコーン。


生クリームとジャムもついてるでよ。
ちょうど検温にやってきた看護師さんが「あらまあ!今年見たなかで一番おいしそうなごはんだわ!」と言ってました。


夜勤の看護師トリスタンちゃんのタトゥーがあんまり素敵だったので撮らせてもらった。
これは『ウォーターシップダウンのうさぎたち』の主人公なんだそうです。
パートナーとおそろいなんだって。
 左腕にはスズメのタトゥーが。


最後の病室(3回入院した)は個室でした。床ずれ防止のため、じっとしてると時々にゅわーんとマットレスが動くこのベッド。


そういえば、夏に日本から送った8キログラムの船便の書籍がどこかに紛失してしまい届きませんでした。この村上春樹「雑文集」はどうしても読みたかったのでアマゾンで書い直してねこパパPさんに日本からもってきてもらった。

この中の「自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)」を読んだあと、ものすごくものすごく牡蠣フライが食べたくなってしまい、退院後3日めに牡蠣フライをつくって食べました。


ワシントン産牡蠣の瓶詰めで。完璧とはいえないけどおいしかった。


病室から見えたなにかの研究施設らしい手前のビル。エドワード・ホッパー的な寂しい窓とあかり。


神々しい朝日。あのスミスタワーのてっぺんの部屋には、まだ同じファミリーが住んでるのかしら。


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