2013/03/30

ベニエとチコリコーヒー



ニューオーリンズで食べたもの。まったくツーリストの王道ではございますが。
フレンチクォーターの外せない目玉店、Cafe Du Monde。



 粉砂糖大盤振る舞いのベニエ(Beignet、発音がなかなか覚えられない)とチコリコーヒー。
 床にもテーブルにも盛大に粉砂糖が散乱していてベタベタです。

カフェデュモンド、いつの間にか日本進出していたのね! ミスドのダスキンの経営で。
 「体にやさしいハーブ野菜「チコリ」をブレンドしたコーヒーに、同量のミルクを加えたカフェオレは、高い香りと深いコクが自慢です。揚げたて、あつあつの四角いドーナツ「ベニエ」とともに、おいしいひとときをお届けします。」だって。

 サイトの写真だと、日本店のベニエは粉砂糖が90パーセントくらい控えめ!(笑)
床もテーブルもベタベタになる砂糖の量は、日本では受けるまいw  


 ヨーロピアンな雰囲気の店内だけど、昼間行ったときには店員が全員ベトナム人のおばちゃんばっかりだった。
夜もう一度行ったら、今度はアメリカ人やヨーロッパ人の学生らしいワカモノが働いていました。

チコリコーヒーは不思議な味。
もとは南北戦争中、北軍に港を封鎖されて物資が不足してコーヒーが手に入らなくなったのでチコリの根を代用にしたのがニューオーリンズの伝統になったもの。
コーヒーとしておいしいわけじゃないんだけど、時たま飲んでみたくなる。


根を使っているからか、土っぽい匂いがする。
そういえば昔、タンポポの根を乾燥させて焙煎して炒れるコーヒーというのを頂いたことがある。とても土臭かったように覚えているけれど、似ているかも。


シアトルでは、Trader Joe's でチコリ入りコーヒーを見かけたことがあります。
やっぱり、無性にチコリコーヒーが飲みたくてたまらない!という人がいるのでしょう。


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2013/03/29

ルイジアナの沼ツアー



ルイジアナではぜひとも沼地を見たかった。

ので、「Swamp Tour(沼ツアー)」 に参加しました。

ニューオーリンズから車で40分くらいのところで開催されている、沼地帯をめぐるボートのツアー。


参加料金は1名25ドル。

平底の乗り合いボートでミルクチョコレート色の静かな川を上っていきながら、どこかのゲリラ兵みたいな格好のボートのキャプテンが植物や動物のことなど説明してくれます。

ちょっと『地獄の黙示録』に出て来たベトナムの川を思い出した。川の色も、そしてボートも、あれによく似てる。
 


メキシコ湾に面したこの一帯にある湿地の川は「Bayou(バイユー)」と呼ばれる。

水路が、もつれたレース編みのような、複雑な形にひろがっている湿地帯。


沼地に生えているこの木は「Cypress(サイプラス)」 だとボートのキャプテンは言っていた。

同じ「サイプラス」でもゴッホが絵に描いた糸杉/cypressとは違う種類。

「Bald Cypress」という落葉樹で、米国南部の沼地にだけ自生する大木なのだそうです。

ルイジアナ州の州の樹木でもある。

検索してみたら、日本語名もあった。沼杉(ヌマスギ)または落羽松(ラクウショウ)という、風雅な名前。
新宿御苑にもあるんだって!


腐りにくいのでボートや橋などの建材として使われるそうです。なるほど。沼のネイティブだもんね。



水の上ににょきにょきと突き出しているのは、「サイプラス・ニー(cypress knee)」たち。

根から垂直に伸びてくる、根のオマケ的部分です。

日本語では「気根」とされてますが、実際は酸素を取り込む役には立っていないらしく、何の役に立っているのか不明なのらしい。



サイプラスの枝に、アオサギがいた。

「落羽松」という名前は、秋に色づいた葉が鳥の羽根のようにはらはらと落ちてくるところからついたそうです。紅葉を見てみたい!!

1月初めのこの頃、落羽松はみんな丸裸で、スパニッシュ・モスだけが山姥の髪のように枝から垂れ下がる、不気味な光景でした。
 

 来る季節を間違ったことに気づいたのは、ツアーが始まって5分後くらい。

岸べにも水の中にも、生きているものの気配がまるでない。どこもかしこも、丸裸。

キャプテンがおもむろに顔のマスクを引き上げてボートのスピードをあげると、川の上をびゅんびゅん来る風が、寒いのなんの。

一体どうして私はわざわざおカネを払ってこんな目に遭いに来たんだろう。

と、ボートに乗り合わせたのんきな観光客の全員がそうおもったに違いない。

ワニがいつもたむろしている場所をあちこち試してみてくれたのだけれど、ワニのかけらも発見できませんでした。

そうだ、ワニって、温度が低いと動かなくなるんだったね…………。



水路の上に家を建てて住んでいる人々がいる。

この家々へのアクセスは、船のみ。
海老漁のボートを持っている人もいて、サテライトテレビがあったり、案外に暮らし向きは悪くないんだよとキャプテンは言っていた。しかし相当に偏屈な人が揃ってそうなのは、家の外見からもありありとわかる。



ハリケーン・カタリナの時にメキシコ湾から川上へ流されてきた船が、まだそのままになっている。



このほかにもいくつも流された船の残骸があった。

自治体もこんな奥まったところに流されて来たボートを引き上げる余裕はなく、メモリアル的な存在になっているとのこと。


いきもの発見!
ひっくり返った船のわきに、大きなヌートリアがいました。大きさは猫くらい。
これとアオサギと沼地猫だけが、今回目撃できたワイルドライフのすべて。


逞しそうな沼地猫。

船のキャプテンは、「5月くらいになったらまた来なよ。ワニが出て来るからね」と言っていた。
…最初に言ってよ……。言われてたらこなかったけどな。


ツアーの後で、船長さんたちが飼っているちっちゃいワニ君たちを触らせてくれた。

沼地猫たちよりもフレンドリーなわに君だった。

沼地ツアーに参加するなら、5月から10月くらいの間が良いようです。

リベンジ必ず!


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2013/03/28

馬と自転車



フレンチクォーターの交通手段、主役は花をつけられた馬が引く観光馬車。


ウマつなぎの杭 (hitching post) が舗道に残ってます。19世紀からのものなのか?


フレンチクォーター住人の交通手段は自転車がお手頃のようです。


なにしろ道が狭いこと世田谷区並みだし、ものすごく混雑するので、うっかり車で入り込んでしまうと脱出にけっこう時間がかかる。


マルディグラにはまだ2ヶ月以上もあったけれど、街中にやっぱりビーズの飾りやお面が氾濫してました。

お祭りを待つ町。


ジャズクラブにも行かずじまいだったので、次回はいつか、大人の部で行きたいものです。


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2013/03/26

クレオールのバルコニー




フレンチクォーターの建物はすべからくといっていいくらいに、優雅なwrought iron (ロートアイアン/錬鉄)で飾られています。


精巧な透かし模様の錬鉄製バルコニーは、「クレオール・タウンハウス」と呼ばれるニューオーリンズ独特の様式のデフォルトフィーチャー。


スペインとフランスの伝統、ヴィクトリア時代の流行、カリブ海の風味も加わったフュージョン建築。


 壁に落ちる影がまた素晴らしい。

錬鉄製のアイテムはバルコニーだけでなくいろんな細部に使われています。

ここまでするかと呆れるような精巧なデザインでも、素材が剛健だから、うるさい印象にならないのが面白い。

フレンチクォーターの家の多くは南北戦争以前に建てられたものですが、Marcus ChristianのNegro Ironworkers of Louisiana: 1718-1900という著作によると、こうした錬鉄細工を作った職人たちのほとんどは黒人奴隷や自由黒人、後には有色クレオール人だったといいます。



クレオール(Creole)という言葉の定義は複雑で、混乱しやすい。

もとは、フランスやスペインの本土から来たのではなく当地で生まれた(つまり「二世」以降ですね)世代の白人をクレオールと呼んで、欧州本土から来た人と区別していた。これが「ホワイト・クレオール」または「フレンチ・クレオール」。

アフリカから来た奴隷一世に対して、ルイジアナ植民地で生まれた黒人奴隷も「クレオール」と呼ばれた。

そうして19 世紀には白人クレオールと有色人の間に事実婚関係が増え、間に生まれた混血のクレオールが奴隷とは全く違う、教育を受けた市民の階層を作った。

と、時代が進むにつれ意味が増えていきました。

Merriam-Webster の辞書には 
1)西インド諸島やイスパノアメリカに生まれた、ヨーロッパ人の子孫
2)合衆国メキシコ湾沿いの地域のスペイン人またはフランス人の子孫で、祖先の言語や文化を保持している白人
3) スペイン人またはフランス人および黒人の祖先を持ち、フランス語かスペイン語の方言を話す人

という定義があります。



当地の人によると、「自分たちこそ本当のクレオールで、ほかの用法は間違っている」と考えている人もあるようです。それは多分、ヨーロッパ系のクレオールが有色系のクレオールのことを言ってるのだと思う。

フランス>スペイン領だった時代には有色のクレオール人が中産階級を築いて地位を広げつつあったところへ、アメリカ領になってから政府が南部のほかの地域と同じ所有者/被所有者の2階層制度を推し進めようとした頃、クレオール社会には恐ろしい混乱が起こり、人種間の対立も深まったことでしょう。

ルイジアナ買収から南北戦争あたりのニューオーリンズに興味が湧いてきました。



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バーボン・ストリート



有名なバーボン・ストリートは、くさかった。


とにかく盛り場ですから、まっ昼間でも発酵したニオイがそこここに漂う。

昼間から出来上がっている人多数。

頭がパーティに行ってる人多数。



狭い道を馬が横切り、トラックが通る。


未成年同伴だと夜の部はありませんから、ちょと残念。


 ミント・ジュレップはバーボンに砂糖とミントを混ぜた南部の飲みもの。
フロリダの話に出てきて、おいしそうだったから一度バーで注文してみて、うぇっとなったことが。
死にそうに蒸し暑いときに飲むと、おいしいのかも。

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2013/03/25

アメリカに都市は3つしかない



" America has only three cities: New York, San Francisco, and New Orleans. Everywhere else is Cleveland."

「アメリカに都市は3つしかない。ニューヨーク、サンフランシスコ、ニューオーリンズだ。そのほかの場所は皆クリーブランドだ


テネシー・ウィリアムズの言ったというこの言葉(出典は不明)、ニューオーリンズの土産物店で何度も見た。
半世紀以上昔の出典不明な言葉であっても、「NOLA」と自称するニューオーリンズ人たちのプライドを今もくすぐっていることは間違いなし。



この言葉のいわんとすることは、わかる気がする。

都市を都市にしているのがカオスのような国際性と息のつけないせわしなさ、容赦のなさだとすれば。(その当時ロサンジェルスはまだ都市ではなかったのだろうし)


数日前に滞在したアトランタと比べて、同じ南部の都市でもニューオーリンズは全く毛色が違いました。

カタリナ災害の影響がまだ濃いのもあるのだろうけれど、全体に景気の悪い感がじっとりと漂っている。

フレンチクォーターは観光地だから、のほほんとした観光客から少しでも小銭をむしり取ろうとタップダンスの子どもたちや観光馬車が待ち構えている。


そして人がせわしなく、抜け目ない。南部のほかの場所ではどこでもみられるゆったりした「サザンホスピタリティ」(南部人の誇りとする、南部式おもてなしの精神)は、この町ではほとんど感じられない。
もちろんサービス業はそれなりに愛想は良いけれど、人が皆疲れているようにみえた。

泊まったのはフレンチクォーターではなくガーデン・ディストリクトのB&B。
フロントの綺麗な女の子も、カフェの太ったバリスタも、ドラッグストアのおばちゃんも、なんだかデフォルトで憂鬱そうで、機嫌が悪かった。

車の運転もシアトルやアトランタみたいにのんびりしてません。
道も狭くて建て込んでいるし、ああなんだか東京のようだと少し思った。


一見、優雅そうだけれど、中身はめちゃタフそうな町という印象でした。

住むには相当のエネルギーが要りそう。


いろんなものが爆発寸前なまでにぎゅうぎゅうと詰まっている町。
だけどきっと、近づいてみたらめっちゃ面白いに違いない。

うちの未成年はフレンチクォーターを歩いて、僕はここに住んでみたいと言った。

母は、私にはもはや無理、と思った。

都会の定義はいろいろあるけど、住む人にタフネスを要求するっていうのも都会の特性のひとつだよね。




 町を包むように蛇行しているミシシッピ川。このへんでは意外なほどに川幅が狭い。
川までも、ぎゅうぎゅうに詰め込まれている感がある。


 Voodoo 博物館というのに行ってみた。

小さな家にぎゅうぎゅうと歴史的なブードゥのいろいろを詰め込んだ、息苦しくなりそうな狭いミュージアム。


ブードゥーは、 アフリカの信仰とカソリックの教えと伝統がぎっしり詰まった、ニューオーリンズ生まれのフュージョン宗教。

これもまた、ジャズや料理と同じく、この土地でしか育まれ得なかったもの。


ブードゥ博物館に展示されていた、手描きのブードゥ流入経路。

ニューオーリンズは奴隷貿易の港でもあった。

この狭くるしく、ドクロだらけの怪しい雰囲気いっぱいの博物館の廊下で素朴な手作りの地図を見ていると、この3つの大陸の近さがとても生々しく感じられたのでした。



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