2013/03/26

クレオールのバルコニー




フレンチクォーターの建物はすべからくといっていいくらいに、優雅なwrought iron (ロートアイアン/錬鉄)で飾られています。


精巧な透かし模様の錬鉄製バルコニーは、「クレオール・タウンハウス」と呼ばれるニューオーリンズ独特の様式のデフォルトフィーチャー。


スペインとフランスの伝統、ヴィクトリア時代の流行、カリブ海の風味も加わったフュージョン建築。


 壁に落ちる影がまた素晴らしい。

錬鉄製のアイテムはバルコニーだけでなくいろんな細部に使われています。

ここまでするかと呆れるような精巧なデザインでも、素材が剛健だから、うるさい印象にならないのが面白い。

フレンチクォーターの家の多くは南北戦争以前に建てられたものですが、Marcus ChristianのNegro Ironworkers of Louisiana: 1718-1900という著作によると、こうした錬鉄細工を作った職人たちのほとんどは黒人奴隷や自由黒人、後には有色クレオール人だったといいます。



クレオール(Creole)という言葉の定義は複雑で、混乱しやすい。

もとは、フランスやスペインの本土から来たのではなく当地で生まれた(つまり「二世」以降ですね)世代の白人をクレオールと呼んで、欧州本土から来た人と区別していた。これが「ホワイト・クレオール」または「フレンチ・クレオール」。

アフリカから来た奴隷一世に対して、ルイジアナ植民地で生まれた黒人奴隷も「クレオール」と呼ばれた。

そうして19 世紀には白人クレオールと有色人の間に事実婚関係が増え、間に生まれた混血のクレオールが奴隷とは全く違う、教育を受けた市民の階層を作った。

と、時代が進むにつれ意味が増えていきました。

Merriam-Webster の辞書には 
1)西インド諸島やイスパノアメリカに生まれた、ヨーロッパ人の子孫
2)合衆国メキシコ湾沿いの地域のスペイン人またはフランス人の子孫で、祖先の言語や文化を保持している白人
3) スペイン人またはフランス人および黒人の祖先を持ち、フランス語かスペイン語の方言を話す人

という定義があります。



当地の人によると、「自分たちこそ本当のクレオールで、ほかの用法は間違っている」と考えている人もあるようです。それは多分、ヨーロッパ系のクレオールが有色系のクレオールのことを言ってるのだと思う。

フランス>スペイン領だった時代には有色のクレオール人が中産階級を築いて地位を広げつつあったところへ、アメリカ領になってから政府が南部のほかの地域と同じ所有者/被所有者の2階層制度を推し進めようとした頃、クレオール社会には恐ろしい混乱が起こり、人種間の対立も深まったことでしょう。

ルイジアナ買収から南北戦争あたりのニューオーリンズに興味が湧いてきました。



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2 件のコメント:

  1. ふむ ふむ。お勉強になるな。
    Tomozoさん わかりやすい解説ありがとう。
    ・・・となると、「クレオール」ってその言葉がさし示す人とか集団の年代や、時代背景や、個人や なんやかんやによって全く違うってもことも ありうるんだね。

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    1. りょんさん、こんにちは。
      「クレオール」ってアメリカでも「混血のニューオーリンズ人」的な漠然とした意味で使われていることがあったりするので、私もいまいち良くわからなかったのです。
      人によって使う意味が全然違っている場合もあるんですよね。

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